みんな大嫌いであろうあの男が登場。アトラス復活の真相が明らかに。楽しんでいただけたら幸いです。
スメールシティ、教令院の最奥にある秘密の部屋にて。スメールを実質的に支配している大賢者アザールは、荒れに荒れていた。書類を散らし、机を蹴り飛ばし、ポールハンガーで殴りつけられた衝撃で本棚の本が全て床に散らばり、踏み荒らされている。そんな荒れた様子の最高権力者を前に、机が蹴飛ばされてなお平然と椅子に座り紅茶を嗜む仮面の男が一人。
「貴様……【博士】ッ!あれはどういうことだ!私が依頼したのは、マハールッカデヴァータの再生だ!人造魔神としてかの草神を蘇らせる、そのために貴様を迎え入れたッ!断じて、あのようなバケモノを生み出すためではないッッ!!それどころか、クラクサナリデビまで奪われる始末だ!」
そう怒鳴られる仮面の男……【博士】ドットーレの断片の一人は飲み干した紅茶の入っていたカップを投げ捨て、パリンと割れたそれを立ち上がってブーツで踏みしめ、アザールの手で散らされた本の一つ……かつての蟲の魔神アトラスの引き起こしたスメールが不毛の土地となる寸前だったという大災害についての記録が記されたそれを手に取った。これは禁書とされ、代々この部屋と共に大賢者に引き継がれていた代物だ。
「ふん……私としても想定外だ。マハールッカデヴァータの残滓があるというから部下に命じてそれを回収し、デミ・マハールッカデヴァータの作成に取り掛かり、成功したまではよかった」
「ああ、そうだとも!我々は喜んだ!500年の悲願が叶ったのだとな!だが……」
確かにドットーレは、ナヒーダを大人にしたような姿の魔神の再生に成功していた。蘇った直後デミ・マハールッカデヴァータが、牙が生え揃った口が三日月の様な弧を描いて嗤い、目を大きく見開いた大変素晴らしい笑顔*1を見せるまでは。
「ああそうだ。貴様らが……いや、500年前の大賢者が「マハールッカデヴァータとキングデシェレトが力を合わせていた」という、スメールシティの人間にも砂漠の民にとっても不都合な事実をもみ消すために、蟲の魔神アトラスについての記録を処分していたがために……「マハールッカデヴァータの残滓とされていた、かつて生み出した大樹に、蟲の魔神アトラスの厄災に等しい力が封印されていた」という事実に誰も気づかなかった」
先にこれを読んでおけば、このようなことにはならなかったと本を投げ捨て、暗にアザールを責めるドットーレ。アザールはその事実を認めないとばかりに地団太を踏む。その姿から、スメールで最も偉大な知恵を有する大賢者の面影は一切見られない。自身の思い通りにならないことに癇癪を起こす子供の様だった。
「デミ・マハールッカデヴァータの肉体を食い破って復活を果たし、そのままクラクサナリデビを攫うとは……恐ろしいものだ。蟲というよりは寄生虫だな、あれは」
デミ・マハールッカデヴァータの華奢な肉体を脱皮する様に突き破って顕現した光景を思い出しながら、クックッと思い出し笑いを浮かべるドットーレに、アザールは噛みつく。
「言ってる場合か!どうしてくれる……このままでは、マハールッカデヴァータとキングデシェレトが争っていたわけではないことが明るみになり、砂漠の民を排斥する理由がなくなる!あのような知恵の欠片のない者たちを認めるなど、断じて……」
「これは忠告だが、保身に走っている場合ではないと思うぞ大賢者。蟲の魔神アトラスを放っておけば、スメールの生態系は食い荒らされ、かつてスメール三神が力を合わせて再生させた不毛な土地へと逆戻りだ。砂漠など生温い地獄へと変わるだろう」
「そんな馬鹿な……蟲の魔神アトラスは、魔神戦争の敗者で……」
「それを成したものは、既にこの世にいない。そうだな?」
「……それもこれも、クラクサナリデビが不完全な神のせいだ…!あの出来損ないさえ、いなければ……!」
ついにはナヒーダに責任転嫁を始めた下衆に対して心底見下した視線を仮面の下から向けながら、ドットーレは続ける。
「スメールだけですめばいいが、あの蟲の魔神アトラスがそれで満足するとは思えない。璃月やフォンテーヌ、ナタに手を伸ばし……海を越え稲妻すら蹂躙し、テイワット全土を不毛の土地へと変えるだろう。我がスネージナヤは執行官がいるから対抗できるが、そうなれば……蟲の魔神アトラスを復活させた張本人たる貴様は、テイワットを滅ぼした大戦犯として後世に語り継がれ……るといいな?人が生き残ればの話だが。その場合、少ない食糧を奪い合う地獄の果てなのだろうが」
「き、貴様!復活させたのは貴様だ【博士】!逃げられると思うな!」
「生憎と、私は表向きにはスメールを追放されている身なのでな。私が関わった証拠など何一つないのだよ。私が関与してないと見せかけるために手を回したのはお前たちだ。そうだろう?」
「ぐぬっ……」
ついにはぐうの音も出なくなったアザールに嘲笑を浮かべたドットーレは、踵を返して扉に向かう。
「ではな。生憎とスメールの破滅に付き合うつもりはない。女皇陛下に進言して軍備を整えてもらわねばならないので、帰らせてもらう」
「待て。【博士】、待ってくれ……」
「失礼します、大賢者!」
すると、数少ないここへの入室を許されている賢者の一人が扉を開けて顔を出した。醜態を見られて顔を真っ赤にするアザールを気にすることなく、焦った様子で賢者は告げる。
「アーカーシャの一つに、クラクサナリデビと接触したとの情報が!」
「な、なんだと!?あの怪物から逃げ出したのか……いや、それはどこだ!?」
「ローカパーラ密林付近で反応が!そして、会得した情報によりますと……」
報告に興味なさげに背を向けたドットーレは秘密の部屋を出て行こうとして。
「クラクサナリデビは現在、塩の魔神ヘウリアと共にいるとの情報が!」
ただ一言、そう嗤うドットーレ。アザールと賢者が恐怖に震えあがる。それほどに、それはそれは邪悪な笑みを浮かべていたという。
「なるほどなるほど。蟲の魔神アトラスは、伝説によればマハールッカデヴァータの生やした巨樹に封印されていたと……それをどこで?」
「なぁんのモラのぉ足しにもならなそうな襤褸本でぇすわね~ぃ」
「現地民の口伝を集めた“民間伝承集”だとあるな。取るに足らない、何の根拠もない噂話を集めた著書だ。だが時に、こういうものの方が真実を描いているとも載っている」
「興味深い本ね。著者は何と言うのかしら?」
「90年ほど前に失踪したというファルザンなる教令院の学生の自由研究とあるな」
「ファルザン先輩ですか!?」
「「「先輩……?」」」
「あ、いやこっちの話ですよははは……」
どっちにしろファルザンとかいう有能先輩による書籍が残ってたとかいうガバ。どんなに改竄しても口伝までは消せないんだよなあ。
というわけで、アトラス復活は大方の予想通りドットーレが実行犯でしたが、大元は目先の利益に囚われていた大賢者アザールが原因でした。時系列順に話すと。
魔神戦争時代、アトラスが大暴れ。スメールが一度不毛の土地に
↓
どうにかしなければと草・花・赤砂の魔神三人が手を組んで対抗
↓
ある理由で倒しきれず、やむなくアランナラの一人に協力してもらい巨樹を生やしてアトラスの力を封印
↓
完全撃破、アトラス本体消滅。なんとかスメールの自然を再生させる
↓
↓
色々あって花と赤砂が脱落、勝者となったマハールッカデヴァータ失踪、クラクサナリデビ誕生
↓
クラクサナリデビを忌避して当時の大賢者が幽閉し、さらに三神が力を合わせた証拠となるアトラス関連の書籍を処理。大賢者がスメールを支配する時代が続く。
↓
↓
↓
↓
およそ400年後、ファルザンが自由研究(厳密には違うが宿題の一環)でとある土地での伝承を集め、その後行方不明。できがよかったので教令院の図書館に。
↓
↓
その90年後、デミ・オロバシの噂を聞きつけ【博士】を招き入れた現大賢者アザールがマハールッカデヴァータの復活を企てる(ヘウリアがフォンテーヌで暴れてた頃)
↓
デミ・マハールッカデヴァータが誕生するも、封印していた大樹を利用したせいでアトラスの力に侵されていたその肉体を乗っ取り、食い破って復活。そのままナヒーダを攫う(スメール編第一話でアザールたちの対処が早かったのは、その場に居合わせていたため)
こんな感じです。つまりこのアトラス。これまでのデミ・オロバシやデミ・エリゴルスみたいな不完全なデミでも何でもない、ほぼ魔神戦争時代のままとかいうバケモンなのである。アザールが大戦犯なのは言うまでもない。ドットーレが呆れ果てるレベル。
次回、指名手配された身でナヒーダの1人目の賢者として反撃開始。でも戦力が足りないよねって話。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
スメールにてヘウリアに関わって欲しい人(年齢は憶測含まれていて、また既に出会うことが決まってるキャラもいます)
-
アルハイゼン(15歳)
-
カーヴェ(17歳)
-
セノ(16歳)
-
ティナリ(15歳)
-
ファルザン(110歳)
-
ニィロウ(9歳)
-
ディシア(18歳)
-
キャンディス(18歳)
-
ドリー(19歳)
-
ドニアザード(12歳)