塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。わたくし、最推し漫画が「常住戦陣!!ムシブギョー」で、「ポケットモンスター蟲」なる小説を書いてその作中で蟲の解説回をやったりと、蟲のメカニズムが大好きでして。リアルの虫は苦手なのですが、フィクションとしてはかなり好き。蟲の魔神はそれもあってかなり盛っています。

今回はそんな蟲の魔神の大進撃を前に、スメールの頭脳で立ち向かう話。楽しんでいただけたら幸いです。


目には目を。魔物には魔物を!

「ウェネトとかいう足を手に入れたので移動は問題なさそうですね」

 

「ギギィ……」

 

 

 千尋の砂漠の上空をウェネトの背に座りながら優雅に飛ぶ私達。いやあ、快適快適。砂漠の探索は本当に気が滅入るから助かる。おっと、速度が落ちてきた。えいっ、と塩のダガーを突き刺して加速させる。でかい図体のくせにこの程度のダメージで音を上げるとは情けない。

 

 

「え、えっと、いいのかしら……?」

 

「快適だ。何に問題がある?」

 

「このま~まっ、移動商店にしてもいいかもですわねぇい」

 

「クラクサナリデビよ、わしは考えるのを辞めたぞ」

 

「わたくしには荷が重いわファルザン!?」

 

 

 後ろでは、突起を背もたれにして本を片手に寛ぐアルハイゼン、あぐらをかいて商品の手入れをしているドリー、遠い目をしながら体育座りしたファルザン先輩と、そんなファルザン先輩に泣きつくナヒーダと、カオスな空間が広がっていて。愉快な仲間達である。唯一真面枠である私がしっかりしなくては。

 

 

「ヘウリア、貴女は大人しくしていてちょうだい」

 

「おや、なにか言ったつもりはないんですが」

 

「顔が物語っていたわ。心を読まなくてもわかるぐらい」

 

「え、そうですか?」

 

 

 私だけナヒーダに心読まれないから安心していたのに。解せぬ。まあいいや。とりあえず、だ。

 

 

「これ、どうしますかね……」

 

 

 身を乗り出して見下ろした眼下には、砂漠を覆い尽くさんとする赤く輝く黒い津波が存在していて。答えは簡単だ。蟲の軍勢が、キングデシェレトの痕跡を全て捻り潰そうとしているのだ。改めて観察して、その脅威を理解できた。あれは、「繁殖」する。最初は1体だけだった。それが、一時間も経たずに鼠算式で増えていきこの規模にまで膨らんだ。しかし、それだけではないらしい。繁殖しているのは蟻型の魔物だけで、他の形状の蟷螂とか蜻蛉とかカブトムシとかは、特に増えない代わりに、大型ヒルチャールすら蹂躙する特殊な能力を有しているらしい。歩兵で削り、精鋭で仕留める。妙に合理的である。

 

 

「ウェネトがいなかったら巻き込まれていたわね……助かったわ、いい子ね」

 

 

 ナヒーダがウェネトの頭の上でなでなでしている。心なしかウェネトも嬉しそうである。その横でファルザン先輩も蟲の軍勢を見下ろして難しい顔をしている。

 

 

「見た限り、蜻蛉はソニックブームを引き起こす圧倒的なスピード、蟷螂は遺跡重機すら真っ二つにする斬撃、カブトムシは炎上して突撃する特攻、鍬形は雷を引き起こし、蝉は大音量の衝撃波、蜂は針を無限に乱射し、百足は猛毒の体液を飛ばして再生能力が高く、蜘蛛は頑丈な糸をまき散らし、ナナフシは透明化……じゃろうか。あと、ひときわヤバいのが一匹おるな」

 

「あれですね……」

 

 

 蟲の軍勢の能力を分析しているファルザンが言っているのは、蟻型魔物の先頭に立ち、先陣を切るバケモノだ。人型の飛蝗、というべきだろうか。飛蝗の顔と脚部はそのままに、人型に無理矢理変形させたような不気味な造形で、基本的にアニメ調をしている原神世界のモンスターとは到底思えない。言っちゃうとグロい仮面ライダーである。なんか前世で見たことあるな。あれだ、BLACKの漫画版があんな見た目だった気がする。すっごいグロい奴。それが、地面を蹴ったかと思えば500m先で杖を掲げていたヒルチャール・シャーマンの顔面を粉砕し、そこを狙ってヒルチャールが矢が放てば、その矢が届いた瞬間にはその場におらず、矢を射ったヒルチャールが既に消滅している。恐ろしい脚力だ。特殊能力と言うか身体能力に全振りしている感じである。

 

 

「……蟲人とでも呼ぶべきですかね。あれが、蟲の魔神が支配した世界での人類なのでしょう」

 

「無機質で残虐で冷酷で感情を持ち合わせない……あんなもの、人類などとは呼べないわ」

 

 

 前世の漫画から取った名前だが、間違ってなさそう。ナヒーダが怖い顔で全否定するぐらいには人類と呼びたくないが。

 

 

「同感だ。だが、その怪物を止められそうにないのも事実だ」

 

「教令院なんかと小競り合いしている場合じゃありませんわ。このままではモラの価値がなくなってしまいますの!」

 

「神の目持ちなら蟲の魔物ぐらいなら対抗できるからか人里付近は被害が少ないが、人が少ないエリアはほとんど飲み込まれておるの。それも、あの蟲人が参戦したら一瞬で瓦解するじゃろうが」

 

 

 ファルザン先輩の分析が正しいのだろう。ちらっとアアル村やキャラバン宿駅に視線を向けてみたが、壊滅的な被害はまだ起きてない。元素攻撃に弱いらしく、神の目の所有者や元素攻撃を使えるエルマイト旅団が奮闘しているようだ。だがしかし。

 

 

「アアル村も襲われているのに、教令院は何のアクションも見せませんね。増援の気配すらありません」

 

「……腹立たしいことじゃが、90年経とうと賢者共の能無しっぷりは治ってない様じゃ。クラクサナリデビを閉じ込めていることすら馬鹿げているというのに、砂漠の人間を人間とも思っていない、滅んでも構わないスタンスなのじゃろう。砂漠が滅んだら次は自分たちじゃと言う事にも気づいとらん!」

 

「耳が痛いな。俺の聞いた噂だと、賢者たちが秘密裏に人を集めて何かしらの実験をしていたというものがあった。恐らくそれが……」

 

「蟲の魔神が目覚めた理由、なのね」

 

 

 ナヒーダが心苦しい、とでも言う様に表情を悲痛に歪める。ファルザン先輩も怒り心頭だし、アルハイゼンすら苛立っているように見える。

 

 

「わしの知る限り、アトラスはマハールッカデヴァータ(先代草神)ナブ・マリカッタ(花の魔神)が足止めを行い、キングデシェレト(赤砂の魔神)がその力を持って仕留めた、とされておる。キングデシェレトは炎元素を操ったという、故に炎が効くのじゃろうが……それだけならば、キングデシェレト一人でも勝てたのではないかとわしは睨んでおる。しかし、事実として三神が力を合わせてアトラスを仕留めた。しかも、マハールッカデヴァータの生やした巨樹にその力を封印した上で、というのが肝じゃ」

 

「つまり……アトラスにもなにか、能力がある?」

 

「それも、常識はずれの代物じゃと思う。知恵を司る三神が揃って封印しか手段がないということじゃからの」

 

 

 そうだよなあ。スメールは「知恵」を司る国。大馬鹿ものだろうが、大賢者と呼ばれるぐらいにはアザールもちゃんと頭がいい。なんなら、知恵は割と低い方であるニィロウすら、未知に対する理解力は高かった。そんな国の三大魔神が揃って封印するしかない、しか解決策がないのは不自然だ。

 

 

「わたくしがアトラスから逃げる際に心を読んだ時、一つおかしいところがあったわ。アトラスには、躊躇がないの。その話を聞いて確信したわ、自分が負けることなんて心の片隅にも存在しない、自分が絶対的強者だと確信しているのだわ」

 

「躊躇がないのは恐ろしいでぇすわね。つまり、自分が勝ち続けると信じて全額投資できるのと道理ですわ。そんな恐ろしいことができるだけでも、恐ろしいですの…!」

 

「ドリー、その例えはちょっとわかりません」

 

「あれえ?」

 

 

 ドリーの謎理屈に、思わず笑う私達。アルハイゼンも失笑している。それを見て、嬉しそうに笑って頭を撫でているドリー。ああ、絶望しかなかった空気が緩んだ。さすが取引相手の機敏が何より重要な商人だ。

 

 

「躊躇しない、か。……それなら一つ思いついたことがある。ウェネトを避讓の丘に向かわせられるか?」

 

「わたくしの力の応用で意思を伝えることができるわ。でも、なぜ?」

 

「そこにいるやつに用があるのじゃ」

 

 

 自信満々に笑うファルザン先輩。避讓の丘っていうと……ああ、あれか。多くの旅人たちにとって、恐らく最もサンドバックにしてきたであろうフィールドボス。でもそれをどうする……ああ、そうか。ファルザン先輩の得意分野は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 避讓の丘にやってきた私達。アルハイゼンとドリー、ウェネトが外を見張っている間に、ピラミッドを思わせる遺跡内部に入ると、待ち構えていたのは三角形を主体とした機構。半永久統制マトリックスだ。

 

 

「シオン、いやヘウリア!しっかり拘束しとるのじゃ!」

 

「わたくしも手伝うわ!」

 

「わかりましたよ!」

 

 

 すっごく不本意だがこのメンバーの中で一番パワーがある私が無理矢理引っ掴んで物理的に動きを止め、さらにナヒーダが草元素を付与した床から蔦を伸ばして縛り上げ、そこにファルザン先輩が飛び乗って弄繰り回す。ファルザン先輩は「妙論派」の専門である機巧の権威だ。時間さえあれば……。

 

 

「よし!改造が終わったぞ!人は襲わず、蟲型の魔物を殲滅する様にプログラミングし直した!」

 

「さすがファルザン先輩!そこに痺れる!憧れる!」

 

「すごいわファルザン!貴女をわたくしの二人目の賢者と呼んでもいいかしら!」

 

「神二人に褒められると悪い気がせんのう!クラクサナリデビ、その誉れ、ありがたく受け取るぞ!」

 

 

 

 私とファルザン先輩が離れると、柱の様な機構を横に配置し、ジェット噴射のように入り口から飛び立っていくマトリックス。慌てて追いかけ、ウェネトに飛び乗り上空からその軌跡を見守る。

 

 

 マトリックスは真っすぐ蟲の軍勢に飛び込んでいくと、その姿を透明化。さらにそこからオールレンジにレーザーを放ち、さらにそれを反射して蟲の軍勢を薙ぎ払っていく。うわあ、やばっ……。

 

 

「目には目を!魔物には魔物をぶつけるのじゃ!」

 

「これでなんとか……いや、結局奴の血肉を媒介にまた出てくるのか……時間稼ぎにしかなりませんね。でも、今なら!ナヒーダ、アアル村に向かいましょう!」

 

「何故?あそこは教令院の……あ、そうか!そういうことね!?」

 

「そうです!教令院は致命的な間違いを犯した……その間違いを利用させてもらうんですよ!」

 

 

 反撃開始だ。絶対スメールを救うぞ!




本日のウェネト君「なんか下が怖いことになってる………白い人は凄く痛くするから嫌いだけど、ちっちゃな子は優しくて好き。この子のためなら頑張れる」

ファルザン先輩本領発揮。工具はドリーが用意しました。

蟲の軍勢は「繁殖」が能力の蟻の歩兵の他、特殊能力を備えた他の種類+上位版の蟲人という編成。蟲人以外なら神の目が元素攻撃があればなんとかなるけど、蟲人が参戦したらすぐ壊滅するという塩梅。つまり普通に不味いのである。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

ウェネト君は⋯⋯

  • 全部終わったあと、ナヒーダのペットに
  • 全部終わったあと、野生に返す
  • 擬人化してナヒーダの傍に(男)
  • 擬人化してナヒーダの傍に(女)
  • 擬人化してナヒーダの傍に(無性別)
  • 犠牲となったのだ⋯⋯
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