塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。前回、一応罪を捏造して増やしたのに、感想で誰一人アザールがやらかすことに異議を唱えなくて笑うしかなかった。

今回は襲撃されたアアル村の話。原作キャラが一気にたくさん参戦します。楽しんでいただけたら幸いです。


死斗!アアル村大決戦

 アアル村。親父のもとから離れた私が世話になった村。商人の護衛依頼を終えて、昔なじみのキャンディスに会いに行ったところに出くわした、最悪の光景。地響きと共に、外に出た私達が見たのは、森林地帯側の山を越えて姿を現した、目を紅く光らせた漆黒の蟻の様な大の大人ぐらいの大きさの魔物の群れ。中には蟷螂や蜻蛉なども混ざっているが、すべてが蟲のバケモノが、襲来した。

 

 

「キャンディス!戦えない人間を高台へ!」

 

「ダメですディシア!空を飛ぶ蟲もいます!高台も危険です!」

 

「じゃあどうするんだ!?もう谷の下は蟻の大群でいっぱいだ!」

 

 

 言いながら、崖下から這い上がってきた蟻の魔物の首を断ち、横から襲い掛かってきた別個体を蹴り飛ばして崖下まで叩き落とす。アルル村の入口方面ではキャンディスが盾と槍を用いて片っ端から蟻型魔物を薙ぎ払っているが、じり貧だ。他の神の目持ちの人間や屈強な大人たちも武器を手に応戦しているが、一向に減る気配がない。

 

 

「とにかく家屋の中に隠れてもらうしかありません!」

 

「ディシア!空から別の魔物!蜂型だ!サポートを!」

 

「わかった!」

 

 

 炎の元素エリア「浄焔剣獄」を発動して範囲内の味方へのダメージを減らす。気休めにすぎないが、それでもないよりましだ。私もキャンディスも神の目をサポートよりの使い方をしているから、大群を圧倒できる火力がないのが仇になっている。そう思って、いつも通りグラマパラを連れてきたところを巻き込まれた教令院の連中がアーカーシャで救援を呼ばせているのだが。

 

 

「なんでだ!?なんで、この蟲の魔物たちに対する情報が閲覧不能なんだ!?」

 

「賢者に誰一人として繋がらない…!」

 

「もしかしてスメールシティも襲われているんじゃ……」

 

「誰か!助けてくれえ!」

 

「俺だけでも逃げ……うわ、うわあぁぁあああぁぁあっ!?」

 

 

「ああくそ、男どもが揃いも揃って情けない……」

 

 

 そんな弱音が出てしまうぐらいには無様だ。うんざりしながらも、1人逃げ出そうとして潜んでいたナナフシ型の魔物に襲われたところを助けて屋内に逃がしていると、紫電が瞬いてこちらに迫っていた蟻の大群が塵となる。その中心に立っていたのは、ここに来ていた教令院の連中のなかで最も若手の色黒の美青年だった。

 

 

「すまない、下層の逃げ遅れていた者たちを助けていて遅れた」

 

「へえ、教令院にも骨がある奴がいるじゃねえか。あんた、名は?」

 

「セノだ。ジュライセン先生からグラマパラについて学んでこいというお達しを受けてついてきたが、まさかこんなことになるとはな」

 

 

 言いながら、セノは槍を手に雷を纏って凄まじい速度で蟲の魔物たちを蹴散らし、恐らく上位の強さである蟷螂型を一撃のもとに貫いた。その強さは、傭兵としてかなり戦ってきた私から見ても研鑽されたもの。こんな実力者が教令院にいたとは、正直驚きである。

 

 

「ジュライセン先生が言っていた。“世界に永遠不滅のものはない”と。例え無限に見える物量であっても、実際に無限であるはずがない」

 

「そうだと嬉しいんだけどな?こうまで延々と来られると、な」

 

 

 セノの言うとおりであってほしい。それほどに、私達は疲弊している。セノもやせ我慢しているようだが額から汗が滴っている。こちらもかなり限界らしい。キャンディスも、盾を構える手が震えている。他の戦える人間も、大なり小なり疲弊が見える。対して蟲どもは疲弊どころか仲間が薙ぎ払われているのに一切の躊躇も恐怖も見せない。まるで感情がないバケモノと戦っている気分だ。ヒルチャールやスライム、キノコンみたいなのとは性質が違いすぎる。

 

 

「……悪いキャンディス、セノ。そっちは任せた」

 

 

 “それ”に気づいて、大剣を両手で構える。不味い不味い不味い不味い。全力で脳が警鐘を鳴らす。生命の危機、明確な“死”のイメージ。そこにいたのは、飛蝗の様な無機質な人型だった。全てを喰らわんとする蟲の魔物たちとも違う、ただそこに立っている、それだけなのに。蟲の群れの間を抜けて静かに歩み寄るそれは、圧倒的な存在感を醸し出していた。ここにいる全員でかかっても勝てるかわからない。ならせめて私一人で時間を稼いで、少しでもキャンディスやセノたちの疲弊を避けながら救援が来ることに賭けるしか無い。

 

 

「ダメです、ディシア!死んでしまいます!」

 

「俺が相手をする!君は下がれ!」

 

「……あんなのを持ってこられて、冷静でいられるかよ!」

 

 

 

 その手に無造作に握られ、引きずられているのはあらぬ方向に体が折れ曲がったエルマイト旅団の衣装を身に纏った人物。その何が起きたのか理解もしていない恐怖に歪んだ顔は、先日一緒に商人護衛の依頼を受けて、共に生き抜いた顔見知りだった。

 

 

「うおおおおおおっ!歯ぁ食いしばれよ!てめえ!」

 

「ギギッ……!」

 

 

 元素爆発「炎哮獅子咬」。灼熱の怒りを解き放ち、大剣を手放して四肢に灼熱の業火を纏い、熾鬣拳、残火蹴として繰り出す奥の手。四肢の業火を推進力に変えて飛び出し、立ちはだかる蟲の魔物を蹴散らしながら突き進む。しかし飛蝗野郎は手にしていたエルマイト旅団を無造作にこちらに投げつけて来たかと思えば、その場から姿を消していて。

 

 

「なっ!?がはぁっ!?」

 

 

 気付いた瞬間には真横に立っていて、咄嗟に挟んだ腕ごと腹部を蹴り飛ばされて私は宙を舞っていた。なんて速さ、なんてパワー…!元素爆発を発動して耐久力を上げてなかったら、今頃私はミンチになっていた。そう確信できるほどの衝撃と共に、私は宙をかっ飛んで岩壁に埋められていた。

 

 

「なんという……っ、ぐうっ!?」

 

「セノさん!?」

 

 

 意識を保ってなんとか視線を向けるとともに、衝突音と悲鳴。咄嗟に槍を構えて防御していたのかセノが吹き飛ばされ、その目の前に飛蝗野郎が蹴りつけた体勢で立っていて。さらに、入り口側でセノがやられているのを見て振り返っていたキャンディスの背後に現れたかと思えば今度はわざとゆっくりと見えるように拳を振りかざし、それに対して盾を構えたキャンディスを殴りつける。それだけで蟷螂野郎の刃や蜂野郎の弾幕針にも耐えていたキャンディスの盾が見るも無残なほど拉げて弾き飛ばされ、吹き飛ぶキャンディス。周りにいた戦える人間たちが一斉に飛蝗野郎に襲い掛かるも、何一つ攻撃が効かず、無造作に掴まれ投げ飛ばされ、目にも留まらぬ速さで蹴り飛ばされ、拳で胸を貫かれては、蟲の魔物たちに餌だとばかりに投げ捨てられていく。このままじゃ、キャンディスも…!周囲にばらけていた他の戦える人間が気付いて駆け寄ろうとするが、蟲の魔物の猛攻を耐えなきゃいけないので近づけない状況だった。

 

 

「キャンディスッ!!よせ、離れろッ!動け、動けよ私の体……!」

 

 

 親友の危機に、岩壁に埋まった両手を引っこ抜こうとするが、焦るばかりで全然抜けない。しかも、空を飛べる蟲の魔物たちがこちらに気付いて目の前まで飛んできて。その向こう側で、キャンディスに歩み寄って血に濡れた拳を掲げる飛蝗野郎が見えて。

 

 

「やめろっ……やめてくれっ、だめだっ!」

 

 

 懇願するしかない。私が弱いから、失うしかないのか……?誰か、誰でもいい。助けて、くれ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったれウェネト、はいドーン!」

 

「ギギシャァアアッ!?」

 

「ギッ!?」

 

 

 次の瞬間。空から巨大な蛇?が降ってきて、飛蝗野郎に正面衝突。あまりのできごとに反応しきれなかった奴を崖下まで突き落とし、さらに巨大な蛇の上から複数名の人間が降りてきて、加勢してきた。

 

 

「いやあ、ウェネトに風蝕弾をばら撒かせた傍からドリーの雷元素で爆裂させて超加速させて奇襲!上手く行きましたね!」

 

 

 そう言いながら黒髪を振り乱した剣鬼を思わせる狂気を感じる笑みを浮かべながら、手にした太刀で蟲の魔物をばっさばっさと軽やかに叩き斬っていく女。

 

 

「こ、このむちゃくっちゃさせた分の対価はしっかり払ってもらいますのぉ~~」

 

「なんだ、疲れたのか?俺は疲れてないが」

 

「そうでしょうね!!ムキー!!こうなりゃ八つ当たりですわあ!」

 

 

 漫才の様な掛け合いしながら、的確に手にした片手剣と両手剣で蟲の魔物を薙ぎ払う長身の青年と対照的にちんまりした桃色の髪の少女。

 

 

「騒がしいのぉ……いや、90年の静寂を考えれば全然良いのじゃが!」

 

「もう既に犠牲者が出ているわ!これ以上犠牲者を出さないためにも、踏ん張るわよ!」

 

 

 それに呆れながら風を纏った矢を放っているツインテールの少女と、指フレームを作って片っ端から蟲の魔物に向けている二人は、何故か見た目通りの年齢とはかけ離れている気がした。

 

 

「ディシアとその仲間を救え!アフマルの鬚よ!」

 

「「「「「「おおー!」」」」」」

 

 

 そして、信じられない声がする。信じられない光景が広がっている。そのうちの一人が、宙に浮かぶ蟲の魔物たちを足場にしながら跳んできて、私に襲い掛かろうとしていたカブトムシの首を撥ねて私が埋め込まれている壁に飛びついてきた。間近で見たその顔は、老けてこそいるがまさしく。

 

 

「“これにて勝利を宣言する!悪竜はもういない!”さあディシア姫よ、この台詞を今こそ宣言するためにいざ参ろうぞ!」

 

「親父!?それにアユーブ、イドリシ、サタール、ティクリッティ、バシャール、ミルザ!」

 

 

 親父の……クセラが率いるアフマルの鬚が、私の家族がそこにいた。

 

 

「砂漠の各地であのようなバケモノたちが暴れていてな!そこに彼らが現れて襲撃をしのぎ、ここが襲われていると聞いて同行を申し出たんだ!無事でよかった、ディシア!我が愛しの娘よ!」

 

「親父、なんで……」

 

「俺も会うつもりはなかった。だがしかし、ヘウリア様の言葉にハッとしたのだ。娘のピンチに駆け付けない親が、どこにいる!!!」

 

「っ!」

 

 

 その言葉と共に壁から引き抜かれて抱き寄せられ、抱きしめられる。……ああくそっ、ここは戦場だぞ。気を抜くな、ディシア。

 

 

「あ、思う存分堪能してください!いや本当に!後悔してからじゃ遅いんですから、もう思いっきり堪能してください!偶然とはいえ会えてよかったです!」

 

「へウリア、貴女興奮し過ぎだと思うわ……」

 

 

 そしてあっちのテンションがおかしいことになってる黒髪……じゃないな、暴れてずれて白髪が見えた、カツラか?……の女は一体何なんだ。ヘウリアという名前らしいが、よそ見しながら蟲の魔物を蹴散らしているのはもうギャグにしか見えないんだが。

 

 

「ギッ…!」

 

「っ、あぶねえ!親父!」

 

 

 すると、崖下に落ちていた飛蝗野郎が跳躍してきて、咄嗟に庇うも衝撃は何時まで経っても来ず。なんで、と目を開けると、全身を撃ち抜かれて蜂の巣になった飛蝗野郎が、落ちていく姿が。

 

 

「親子の再会に水差すとかどういう精神してんですか」

 

 

 それを行ったのは、煙を吐いている掌をこちらに向けたヘウリアが。いや、あの。あいつ、私達がまとめてやられそうになったヤバい奴で……あれえ?




ディシアにキャンディスに加え、まだ教令院の生徒時代のセノ、そしてアフマルの鬚、参戦。ディシアの伝説任務やった時から、もし原神で小説書くならここ救済したいと思っていたのが実現できました。一応クセラは渋ったけど、原作の悲劇を知っているヘウリアに一括され部下たちにも後押しされて参戦しました。

そして相変らず散々な目に遭っているウェネトに乗って参戦、ヘウリア達。セノたちを圧倒して死の直前まで追い込んだ、蟲の軍勢の将軍に当たる飛蝗を瞬殺するヘウリアマジヘウリア。なお、さすがに塩を消費してるのでそうポンポンとはできません。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

ウェネト君は⋯⋯

  • 全部終わったあと、ナヒーダのペットに
  • 全部終わったあと、野生に返す
  • 擬人化してナヒーダの傍に(男)
  • 擬人化してナヒーダの傍に(女)
  • 擬人化してナヒーダの傍に(無性別)
  • 犠牲となったのだ⋯⋯
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