塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。白状します。今回を書くためにスメール編を書き始めました!原神世界でも最高峰の災厄たる蟲の魔神アトラスを出したのは、このときのため!

前回は昨日の日付が変わる瞬間に投稿したのでまだの方はそちらから見てね。

絶望の戦力差を見せるアトラスを相手に、分身へウリアが一人で挑む。大ボリューム8000字超でお送りします。楽しんでいただけたら幸いです。


絶体絶命、此処に万雷の喝采を

 蟲の魔神アトラスの並行同位体だと思われる、崩壊:スターレイルに登場する【繁殖】の使令、砕星王虫スキャラカバズ。【繫殖】の星神、砂の王/蟲の王タイズルス……「繁殖」の権能により無限に自己増殖する蟲の眷属『スウォーム』を生み出して、宇宙全体に『宇宙の蝗害』と呼ばれる災禍を呼び幾万もの文明を崩壊させた、他の星神が手を組んで排除に乗り出したほどの災厄の化身から直接的に力を分け与えられた存在。

 

 タイズルスの顎を継承した巨大な蟲の様な姿をした怪物で、その顎で星を砕き、子孫を育てる苗床にする他、攻撃を受けるとスウォームと呼ばれる小型の個体を際限なく生み出せる力を持つ。スターレイルのストーリーでは本物と戦うことはなくタイズルスともども遥か昔に死んでいたのだが、天才クラブの一人がそのクローンを生み出してしまい、主人公はその対処を押し付けられる……という話なのだが。

 

 問題はこのスウォームの時点で、一般個体ですらターン経過やスキルで自己増殖してくる上に攻撃力も高く耐久もあり、さらにスキャラカバズ本体は部下召喚に加えて自身も増殖してくる。……そう、自身も増殖するのである。猛攻を耐え凌いで最終段階まで削ったところに、倍加するのである。バカなのかな?

 

 一応スウォームは倒すと爆散するので敵全体にダメージを与えることができ連鎖も狙えるが、処理に手間取れば無限に増え続ける個体を捌ききれず猛攻に沈むこととなり、爆散と言う事はゲームではなく現実的に考えれば敵味方ともども巻き込むので、雜兵ですらそれなのだ。こんなのが宇宙を埋め尽くしていたというのだから、当時の地獄度合いがうかがえる。

 

 

「あれが……三神が力を合わせても勝てなかった蟲の魔神の力、なのじゃ……!?」

 

 

 で、目の前の蟲の魔神アトラス。本体がただでさえ高火力でめちゃくちゃ硬いのをなんとか倒したと思ったら全く同じ姿のアトラスが現れて、さらに目の前で二体に増えやがった。しかも、二体とも躊躇なく自分の腹部を鋭い指で抉って、そこから際限なくあの爆発するカブトムシ……よく考えればこれもスウォームそっくりだな……の群れを生み出して私達を取り囲んできたのだから、洒落にならない。

 

 

「みんな!退避してください!地下のグランドバザールなら立てこもれるはずです!ナヒーダ!」

 

 

 もう温存しておく意味もないので、散弾ソルトスプラッシュでカブトムシを撃ち落としながら、下のみんなに指示を送る。この中で従軍経験*1があるの私だけだから、私の指示には従うように伝えてある。しかし、最終決定権はスメールの神であるナヒーダにある。

 

 

「でも、アトラスを放っておいたら……」

 

「命あっての物種です!ナヒーダ!問答している暇はありません!アイツは、愉しんでいる!こちらなんて何時でもどうとでもできる、故にまだこちらを侮っている!退いて作戦を練るんです!さあ!」

 

「っ……みんな、グランドバザールに退避よ!」

 

 

 決断したナヒーダの声に、急いでグランドバザールを目指すアルハイゼン達。最悪、スメールシティの人間が逃げ込んでて締め出されるかもしれないが……と、そんな心配は杞憂だったらしい。

 

 

「こっちに!急いで!」

 

「ディシア!こっちよ!」

 

「ドニアザードお嬢様!?」

 

 

 グランドバザールに続くトンネルから手を振るのは、まさかの幼い少女時代のニィロウと、ドニアザード。怖いだろうに、いい子達だなあ!ニィロウとドニアザードに続いてナヒーダを連れたアルハイゼン、ドリー、ディシア、キャンディス、ゲブ、セノとどんどん入っていくのを確認し、後に続く。

 

 

「ヘウリア!早く!」

 

「……すみません、ナヒーダ」

 

 

 ナヒーダがこちらに促すも、私はセノが入った時点で大扉を閉めて、塩を噴出してコーティング。外からも中からも開けられないようにした。ドンドン、と中から抗議の音が聞こえる。

 

 

「なんで!?開けてちょうだい、ヘウリア!」

 

「俺達もまだ戦える!」

 

「アンタでも、1人でなんて無茶だ!」

 

「魔神と言えど、三神ですら力を合わせて封印した上でようやく勝てたのじゃぞ!?」

 

 

 ナヒーダ、セノ、ディシア、ファルザン先輩の声が聞こえるが、私はトンネルに突っ込んできたカブトムシを塩で固めた拳で殴りつけながら、外に進んでいく。

 

 

「私と違って貴女たちはスメールの未来です。ここで無駄死にするのだけは論外です。大丈夫、私が死んでも代わりはいるもの」

 

 

 恐らく本体も、スメールでのこの大事件は伝わっているだろう。フォンテーヌの人たちを引き連れて救援に駆け付けてくれるはずだ。そうすれば、ナヒーダたちはまだ助かる。でもなにもしないのはただ死ぬのを待つだけだ。なら、私が時間稼ぎをする。どうせこの身は分身だ。例え本体に記憶が共有されないとしても、私は。

 

 

「クラクサナリデビの一人目の賢者としての、責務を果たします」

 

 

 両手に一本ずつ、大剣を生成して構える。トンネルを出れば、待ち構えるのは空を覆い尽くすカブトムシの群れと、その中心に鎮座する二体のアトラス。ああ、もう。完全に宇宙の蝗害の再現である。だけどそれがどうした。

 

 

「「たった一人で、我等に勝てるつもりでいるのか?虫けら」」

 

「申し遅れました。わたくし、塩の魔神ヘウリアと申します。塩華女帝とも二大武神とも呼ばれ、今は……マハールッカデヴァータの後継者クラクサナリデビの一人目の賢者をやっております」

 

 

 大剣二本の柄から塩を噴出し、空に舞い上がる。カブトムシを足場にして近くのカブトムシを斬り捨て、さらに蹴ってアトラス二体に迫る。それを、余裕の笑みを浮かべながら同時に右腕と左腕をそれぞれ拳を握り、振りかぶるアトラス二体。

 

 

「以後、お見知りおきを」

 

 

 そうして。アトラス二体の拳と、私の大剣二本が激突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大したものだな、虫けらにしては」

 

「大層な肩書きに恥じない奮闘ぶりだ」

 

「お褒めに預かり光栄ですよ、くそったれ……」

 

 

 それから小一時間。アトラス二体の、時々思い出したかのように振るわれる攻撃を受け流しながらカブトムシやら百足やら蜻蛉やら蜂やらを殲滅すること、それぐらい経っただろうか。私を構成している塩も、もはや四肢を維持するので精一杯なほど消費し、顔に至っては避け損ねたカブトムシの自爆特攻を受けて半分崩れてしまっている。しかし、これほど暴れても、アトラス二体は斬っても刺しても異様な再生力で回復し、未だ無傷。普通分裂したら力が弱くなるものだろうに、こいつスペックはそのまま分裂するとかいう頭おかしい性能をしていた。しかも、蟲召喚で失ったリソースを互いの四肢を貪ることで体力回復までしていた。自己補完はずるくない?明らかに、原神本編時間軸にいていい怪物じゃない。

 

 

「「そろそろ飽きてきた。配下の虫けらではお前を殺しきるのは無理らしい」」

 

「そうですね。どんどん出して消費してください?そのうち追いつかなくなったら私の勝ちですので」

 

 

 まあそうなるまでこの五倍はかかるんだろうな、とほぼ諦めているが。とか思っていた時だった。

 

 

「誇れ、お前はキングデシェレトよりも強い」

 

「真正面から戦って拮抗できている、素晴らしい」

 

「「お前は強い。だから、油断はしない」」

 

 

「………はい?」

 

 

 二体に増えただけでも絶望だったのに。目の前で、蟲の魔神アトラスが増えていく。二体から四体、四体から八体。八体のアトラスが、スメールシティを取り囲むように、空に浮かんでいる。揃ってにんまりと嗤った。

 

 

「「「「「「「「さあヘウリア。遊ぼうか?」」」」」」」」

 

「……お手柔らかに?」

 

 

 瞬間。翅を羽ばたかせて、二体のアトラスが同時に突撃してきて。私は教令院に続く螺旋通路を走ってアトラスの角がつっかえるように試みて拘束することに成功するも、さらに二体が襲来。口をカパッと開けると雷撃の様な雷元素のビームが放たれ、咄嗟に跳躍して回避。家屋の屋根を走りつつ、ドリーから受け取っておいた商品の一つである護身用火炎瓶を投げつけ、それを一点集中ソルトスプラッシュで空中で撃ち抜き爆散。煙幕代わりにする。

 

 

「今襲ってきたのが四体、残り四体は……!?」

 

 

 とりあえず鍛冶場に飛び込んで、物陰から様子を窺うと、襲ってこなかったアトラス四体はなにやら集中して両手の間に人型を形成していて。それは四体の飛蝗将軍となって、スメールシティに着地。さらにアトラス八体が空を移動して私を捜しているらしい。この後に及んでさらに雜兵ではなく質が高いのを増やすか。最適解ですけどね!敵でなければ!

 

 

「……何て名前だったか忘れましたけど、申し訳ありません。お借りしますよ」

 

 

 原神において、鍛冶場に素材とモラを払って作ってもらえる星4鍛造武器……恐らく納品直前であったであろう「白影の剣」「斬岩・試作」「万国諸海の図譜」「原木刀」「金珀・試作」を持ち出す。特に「金珀・試作」は助かる、塩は増えないけど体力は回復できる。「白影の剣」を背中に背負い、周囲に「万国諸海の図譜」「金珀・試作」を浮かばせ、「斬岩・試作」と「原木刀」を両手で握る。さあ、行こうか。死ぬまで抗ってやる。

 

 

「私はここです!さあ、来なさい!」

 

 

 鍛冶場から出ながらそう叫ぶと、すぐに反応した飛蝗将軍四体が凄まじい勢いで襲い掛かってきて。私は法器二つから塩の弾丸を飛ばして牽制しつつ、飛び込んで片手剣二本で片っ端から叩き斬る。飛蝗四体の首を撥ね、見上げると空から全身に紫電を纏いながら落ちてくるアトラスが一体。

 

 

「っ!?」

 

 

 片手剣二本をしまい、「白影の剣」を盾のように地面に突き刺したと同時。落ちてきたアトラスが満面の邪悪な笑みを浮かべると共に、カブトムシ爆撃などとは比べ物にならない大爆発が発生。私は耐えきれるはずもなく、ゴロゴロと転がっていく。「斬岩・試作」のバフで防御力を上げて「金珀・試作」で回復してなかったら死んでたぞ!!!!!見れば、本来は賑わうストリートだったはずのエリアが、焦土の更地になっていた。下は大丈夫だと信じたい。

 

 

「……貴女が焦土作戦実行してどうするんですか、本当に」

 

 

 ホタルのことを嘲笑うように簡単に命を捨ておってからに。許せん。しかも分身しているとはいえ本体が自爆って。あんなのができるならそら三神も手古摺りますよ。だって本体が一つでも無事なら、いくらでもこの火力をぶっ放せるんでしょ?しかもさっきの感じ、致命傷受けた状態からでも増えれるんでしょ?無理じゃん。モラクスの元素爆発の石化拘束ぐらいしないと無理じゃね?

 

 

「どうしたヘウリア、こんなものか!」

 

「うるさいですよ、一対一で戦え!」

 

「いいだろう」

 

 

 ダメもとで吠えてみたら、本当に一体だけ近くまで降りてきた。他のはなにもすることなく、空から傍観している。素直かな?いや、一体だけでも私に負けるはずがないと思っているのか。舐めプか。そらそうでしょうね!

 

 

「ナヒーダから一人目の賢者を任命されたからには、ですねえ!」

 

「ふんっ…!」

 

「無様だけは晒せないんですよ!」

 

 

 だってこの肩書きは勝利フラグなんでね!アトラスの振るってきた拳を大剣で受け止め、投げ捨て片手剣二本を取り出しながら肉薄。法器から塩の弾幕をばら撒いて目を攻撃しつつ、甲殻の関節などの隙間を見つけて、そこに塩を付与した刃を突き刺し、抉っていく。もう私の体、見るからに痩せぼそってるけどこれぐらいしないと無理だ!

 

 

「ぐうっ!?痛いぞ貴様!」

 

「痛くしてるんですよ!」

 

 

 目元を押さえながら怒りに顔を歪ませたアトラスの、浮かび上がっての翅を高速で羽ばたかせたことによるソニックブームで法器が二つとも吹き飛ばされ、アトラスは着地。右腕による薙ぎ払いを宙返りで避けてその腕の上に着地。手首部分の隙間に片手剣両方とも突き刺してダメージを負わせると、嫌がったアトラスが私を空まで吹き飛ばした。片手剣は二本ともアトラスに突き刺さったまま、丸腰で宙を舞う私。それを見てゲラゲラ嗤う他のアトラスども。せめて一体だけでも持ってってその笑いを凍らせてやる。

 

 

「配分……右腕に9、残りに1!」

 

 

 私の肉体を構成している塩の9割を右腕に集中させ、見せ筋みたいに膨れ上がらせ、急降下する。イメージはあれだ、前世で読んだ最高のヒーローを目指す漫画の平和の象徴最後の戦い。戦力差的にもあれと同じだろう。だけど、それがどうした。意地を見せてやる。

 

 

「うおおおおおおおっ!!!私の必殺マジシリーズ、盛り塩パンチ+元素爆発!」

 

「返り討ちにしてくれる!!!」

 

 

 翅を羽ばたかせてソニックブームを引き起こしつつ、紫電を纏わせ光らせた角を向けて突撃してくるアトラス。あれ喰らったらただじゃすまないのが確信できる、それぐらいの密度の雷元素を感じる。今更だけどアトラス本体は雷元素なのか。

 

 

「咲き誇れ、塩の花!満開塩華畑(まんかいえんかばた)!!!」

 

「ぐ、ぬぅうううおおおおおっ!?」

 

 

 そして、私の右拳と角が衝突。右拳が砕けて行きながらも、塩の華を空中に展開。そこから塩元素を送り込んで、角からアトラスを塩で覆い尽くしていく。私の元素爆発は、モラクスよりは弱いけど拘束ができる……!よく考えれば、最初にこれをアトラス一体だけの時ぶちかませていれば、こうならずにすんでたか?相変らず、私は詰めが甘いな……そんなことだから、せっかく塩の像にしなくてすんだのに民たちが自害するんだ。

 

 

「でも、せめて!だからこそせめて!今回だけは、守ってみせる、んだぁああああ!!!!!」

 

 

 体を震わせて塩に包まれていくのをしのいでいるアトラスに、全身全霊で追加分を叩き込む。私の体が消えてもいい、だけど、せめてこいつ一体だけでも倒せば、私なんかでもおまえを倒せるんだと示せれば怯んで逃げてくれるかもしれない!だから、もうどうなってもいい、ありったけを籠めろ!!!!!そして。完全に塩の像と化したアトラスを粉々に粉砕し、私は力なく宙を舞った。

 

 

「ヘウリア、だめ!!?」

 

 

 すると、眼下にグランドバザールから出てきたのであろうナヒーダたちが見えて。ああ、私が弱ったせいで塩の壁が崩れたのか……しまったな。ああ、そんな悲しそうな顔をしないでくれ。私は、分身でしかない私を、1人目の賢者だと言ってくれたナヒーダの役に立ちたく、て……。

 

 

「大したものだな、塩の魔神ヘウリア」

 

「お前は危険だ。そう実感した」

 

「単独で我々を殺しうる存在がいるとはな」

 

「弱っていようが関係ない」

 

「ここで潰す。ここで殺す」

 

「お前の仲間も全員餌にしてくれる…!」

 

 

 力なく風に流れていた私が、鷲掴みにされる。見れば、残り六体のアトラスが集まって来ていて。ああ、だめだ。もう、力が出ない……。ナヒーダたちが、殺される……。

 

 

「お願い、来てっ!ウェネト……!」

 

「ギシャァアアアアアアアアッ!!」

 

「ヘウリアを取り返すぞ…!」

 

「彼女を死なせるわけにはいかない!」

 

 

 すると、ナヒーダの呼び声に応えて、スメールシティの外で蟲の殲滅をしていたはずのウェネトが襲来。さらに何故か熱くなっているアルハイゼンとセノを中心に、みんなが立ち向かおうとしていて。だめだ、逃げて。今すぐグランドバザールに逃げ込んでくれ。そこなら、まだ助かる見込みがあるんだ。貴方たちは、無駄死にするべきじゃないんだ……。

 

 

「ギギシャァアアアアアアアアッ!!」

 

「半端物の龍が生意気な…!」

 

「うおおおおっ!」

 

「後輩たちや砂漠の人間たちだけに任せてられないわ…!」

 

「ああ、賢者が止めようが関係ない!僕たちも!」

 

「魔神ですらない矮小な人間めが!」

 

 

 ウェネトが首根っこを掴まれながらも尻尾からのレーザーで応戦し、アルハイゼン、セノ、ディシア、ゲブ、キャンディス、ファルザン先輩、ドリーに続いて、上の教令院から出てきたのか、若かりしリサやティナリ、カーヴェが参戦。しかし、煩わしいとでも言うかのように手の一振りで薙ぎ払われる。

 

 

「今ならわかるぞ、マハールッカデヴァータの出涸らしだろう貴様?我等に勝てると?」

 

「ヘウリアはわたくしを草神だと認めてくれた!クラクサナリデビではなく、スメールを共に生きる者たちとして!わたくしたちは、諦めないわ!!」

 

 

 ナヒーダは巨樹から蔦を伸ばして私を握っているアトラスの一体を拘束しているが、この時点で額から汗を垂らしていて限界なのは目に見えていて、それもいつまで持つかわからない。そして、私を握っている手に力が込められていく。

 

 

「そんなにこの人形が大事か?クラクサナリデビ」

 

「待って、やめてちょうだい!?」

 

「マハールッカデヴァータには終ぞこの屈辱は果たせなかった。お前に清算してもらうぞ…!」

 

「あ………」

 

 

 バキン!と。大きな音を立てて、私の体が砕け散る。半分しか残ってない頭部が落ちて、ナヒーダの傍に転がった。ああ、もう声を出すこともできない……そんな、涙を流さないでくれナヒーダ。私は貴女を泣かせたくなかったのに、いつも笑顔でいてほしかったのに。

 

 

「終わりだ、クラクサナリデビ。スメールは、我等のものだあ!」

 

 

 そう、油断なく蟲を次々と生成しつつアトラスが勝利を確信して、膝をついて泣き崩れるナヒーダをゲラゲラと嗤う。終わり、なのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天道、此処にあり」

 

 

 

 

 

「むうっ!?」

 

 

 瞬間。聞き覚えのある声と共に、空から隕石が降ってきて。アトラスは慌てながらも口から雷撃を放って破壊する。え、まさか。

 

 

「稲光、即ち永遠なり」

 

 

 さらに紫電の斬撃が走り、空中のカブトムシが真っ二つに切り裂かれたかと思えば爆散していく。いや、まさか。

 

 

「逃げようなんて思わないでよね♪」

 

 

 さらに、迸った雷元素を、放たれた竜巻が大地を埋め尽くしていた蟲ごと飲み込んで拡散させて消し飛ばしていく。そんなことがありえるのか?

 

 

「負けてられないぞ!やるんだ、ヌヴィレット!」

 

「いささか不快だが……友の窮地だ、仕方ない。高き者を、私は蔑む」

 

 

 さらにハイドロポンプが直撃し、ウェネトを掴んでいたアトラスが手放して吹き飛ばされる。2人ともきたの!?

 

 

「蟲の魔神、確かにお前たちは強いのだろう。それでも、俺たちが歩みを止めることはない」

 

「月の下では、皆平等……だよ?」

 

「蟲如きが天下を取った気でいるなんて、実に滑稽ね」

 

「チッ…煩わしい。どうして僕たちが害虫駆除なんかに駆り出されないといけないんだい?」

 

「同感だけど、氷の女皇の命令よ。仕方ないわ」

 

「分身とはいえ白亜さんをあのような姿に……許すわけにはいかないな」

 

「いいねいいね!戦い甲斐がありそうだ!」

 

 

 さらに、飛蝗将軍をそれぞれ撃破しながら顔を出したのは、まさかの面々。第一位【隊長】、第三位【少女】、第七位【傀儡】、第六位【散兵】、第八位【淑女】、第四位【召使】、第十一位【公子】……ファトゥスの面々がそこにいた。【博士】が味方面して出てきたらキレてた。と言っても、【散兵】【淑女】は確執あるだろうに来てくれたのか……。【召使】ことアルレッキーノはワンチャン来るかな?と思ってたけど。

 

 

「いやはや、まさかの援軍すぎてビビってます。まあそれぐらいの相手なんでしょうが」

 

「お前!?確かに潰したはず……」

 

「私の分身がお世話になりましたね?」

 

 

 さらに、いつの間にかナヒーダの傍に歩み寄ってきていた純白の女……私の本体(ヘウリア)が立っていて。信じられないといった表情を浮かべるナヒーダの前で掌をかざし、襲い掛かろうとしたアトラスを、凄まじい物量の散弾ソルトスプラッシュで押し返した。うわあ、羨ましい物量だあ。

 

 

 

 

 

 

 そして、天空にて。もう一つの太陽が輝いた。

 

 

「聞け!太陽の咆哮を!」

 

 

「うお、おおおおおおおっ!?」

 

 

 太陽を手に落ちてくる燃える長髪を靡かせた女に、アトラスは気づいて雷撃ビームを放つもまるで意に介さず。スメールシティ上空にて、太陽が爆発した。

 

 

 

 

 

 

 草神クラクサナリデビ。岩神モラクス。雷神バアルゼブル。風神バルバトス。水神フォカロルス。そして、炎神ハボリムことマーヴィカ。

 

 氷神を除く七執政(+水龍及び塩の魔神)に、ファトゥスが7人。恐らくテイワットでこれ以上はないほどのドリームチームが、テイワットの危機に参戦した。

*1
魔神戦争時代に千岩軍を率いることもあった




 地味に武器5つ同時装備とかいう無茶をやってた分身ヘウリア。一矢報いるも完全敗北、絶望からのあの男の台詞の安心感。タイトルでネタバレしないでこの大集合を表すのに苦労しました。

今まで登場した七執政+初参戦マーヴィカ。さらに【道化】【博士】【富者】【雄鶏】【十位】以外のファトゥス全員集合。テイワットの危機ならばこの両者が共闘してもいいじゃない、と。

次回、スメール編最終決戦。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

全員集合、この展開は?

  • こういうのが見たかった
  • 予想外で驚いた
  • いいから早く現代編をやれ
  • 健気ウェネト君可愛い
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