塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。ギリギリだったのでいったん投稿してから前書きあとがき書いてます。

皆お待ちかねアザールの顛末。楽しんでいただけたら幸いです。


アザールの人権在ざーる。ふっ、餞別だ

「馬鹿な、馬鹿な……」

 

 

 大賢者アザールはたまらず、隠し部屋から飛び出していた。クラクサナリデビの一人目の賢者を名乗ったシオンが放った、規格外の一撃は。クラクサナリデビみたいな出来損ないの神が見出した賢者だと高を括っていたアザールの謎の自信を砕くにはあまりあった。しかしこれはアーカーシャによる幻だと信じるしかなく、たまらず外に飛び出し、アトラスが完全に討伐された光景を肉眼に収めて完全に崩れ落ちる。周りの学生たちや教師たちは、これがどういうことなのか理解せず、ただただ厄災が討ち果たされたことを喜んでいる。そのことが、腹が立った。

 

 

「大賢者様!クラクサナリデビ様とその賢者がやってくれました!」

 

「さすがは草神様ですよね!」

 

「他の国の神たちも集めるなんて、本当にすごい……」

 

「き、貴様らは……これがどういうことかわかっているのかああ!?」

 

 

 アザール、怒髪天。周りの人間が怯えて離れたことにも気付かずに、頭をかきむしって吠える。処刑人がゆっくりと近づいていることにも気付かない。

 

 

「クラクサナリデビに、そんな知恵など存在しないっ!!!あの賢者を名乗る女の入れ知恵に決まっている!!それに、スメールの問題を一人で解決できずっ!!他国の神に頼るなど、自分に大した力がない証左ではないか!?我らが神はマハールッカデヴァータただ一人だ!!あのような無知な神を、我等が神などと断じて認めてなるものかっ!!!出でよ、衛兵!!大賢者命令だ!!今すぐ、クラクサナリデビを捕えてスラサタンナ聖処に連れ戻せ!これ以上、他国にスメールの恥を見せるな!!」

 

「ええ、まったく同感ですよ」

 

 

 何時もなら命令に従うはずの衛兵たちも躊躇して狼狽える中、そこに歩いてやってきたのは、怯えた表情のナヒーダを背負ったシオン。その背後にはアルハイゼン、ファルザン、ディシア、セノと仲間たちが並んでいる。奥では、神々と執行官全員が、「恥」の後始末を見届けていた。

 

 

「貴様ッ……なにが一人目の賢者だ!お前は賢者ですらない!!出来損ないの神もどきに気に入られただけの木偶であろうが!!関係ない部外者はすっこんでいろ!!!」

 

「おや、私が人形だと気付いているとは。さすがは聡明な大賢者様……いいえ?違いますね?私が人形だと知る協力者から教えられましたか?おかしいと思っていたんです。執行官の面々がいることから、今回のアトラス復活騒動が【博士】の仕業なのは察しがついていましたが……あの男は外道ではありますが天才です。間違っても自分の不利益になることはしない。ではどうしてアトラスが復活したのか……原因は貴方ですね、大賢者アザール!」

 

「ふ、ふん!何の証拠があって……」

 

「証拠なんてなくても関係ないんですよ、我が神にはね」

 

「ぜんぶ、丸見えね…!」

 

 

 ナヒーダが指フレームを向け、読み取ったアザールの、突きつけられてたまらず思い出してしまった心の記憶をアーカーシャを通じてスメールの民に見せる。さらには、草元素を用いて作りだしたキューブ状の巨大立体スクリーンに、四方向に向けてその映像を映し出す。映されたのは、アザール視点での、ドットーレにあれこれ口出しして自身の理想……アザールの進言を何よりも優先し、アザールのためにその知恵を振るうという神を私物化せんとする欲望……のデミ・マハールッカデヴァータを作るように命令し、そして村人を「マハールッカデヴァータの遺産を独占した反逆者」として皆殺しにしたうえで回収し、研究したものの単なる元素の塊でしかないと結論付けた御神木を使えと指示を出し……その結果、誕生したデミ・マハールッカデヴァータを食い破ってアトラスが復活した一連の映像だった。

 

 

「やめろ!やめろやめろやめろ!!!こんな事実はない!!クラクサナリデビの捏造だ!!!」

 

 

 慌てて手を振って隠そうとするアザール。しかし止まらないと気付くや否や、無理矢理止めようとナヒーダに掴みかかろうとして。

 

 

「その薄汚い手でわしの神に触れるな、外道」

 

 

 それは、怒りに震えたファルザンが放った矢が地面に着弾して破裂した風圧で吹き飛ばされることで阻止された。

 

 

「わしは、こんな阿呆を大賢者に選んだ教令院に所属しているのが恥ずかしい。貴様ら賢者はどうしてそう、代を経ても愚かなんじゃ。わしのいた頃でさえ、誰もクラクサナリデビを出そうとはしなかった。少し考えれば、閉じ込めることなんぞ愚かでしかないと馬鹿でもわかるというのに。その上、マハールッカデヴァータから先祖代々守り抜く様に受け継がれていた御神木を守り続けていた一族を皆殺しにし、終いには伝承を知った上で回収したばかりかそれを使ってマハールッカデヴァータをよみがえらせようとした挙句にこの騒動じゃと!?大馬鹿者め!!!!」

 

「き、貴様……そんな年でよくもこの大賢者たる私を阿呆などと……」

 

「ほう?わしが誰かもわからんか?教えてやろう。わしは今から90年前、妙論派に所属していたお主の大先輩、ファルザンじゃ。礼儀を、知らんのかー!!!!!」

 

「ぐああああっ!?」

 

 

 風元素を使って飛び上がって急降下しての飛び蹴りがアザールに突き刺さり、慌ててどいた学生たちの間を抜けて吹き飛ばされるアザール。するとファルザンの名を知っているのか、リサやティナリを始めとした教令院の面々がざわめき出す。

 

 

「フィールドワーク中にキングデシェレトの遺跡に閉じ込められておったがの。この、クラクサナリデビとその賢者によってわしは助けられ、この知恵を使ってアトラスの軍勢を押しとどめることに成功したのじゃ。わしからも証言しよう、クラクサナリデビがいなければ、一週間前にスメールは滅んでおる!」

 

「俺も偶然居合わせ、同行していた。同意しよう」

 

 

 ファルザンだけでなく、いろんな意味で有名人であり優秀だと知られているアルハイゼンまで同意したことで、疑いようのなくなるクラクサナリデビがいたからスメールが救われたという事実。しかしアザールは足掻く。

 

 

「わかっているのか!?他国の力を借りて、自国の問題を解決したのだぞ!?なにか要求されても、断ることはできない!?クラクサナリデビに政治はできない!!私がいなければ、スメールは終わりだぞ!?」

 

「貴方にもできないでしょう。スメールの恥さらしですよ今の貴方は」

 

 

 そう告げたのは、今まで黙って見ていたシオン。アザールがまだ吠えようとするので、片手で胸ぐらを掴み上げて持ち上げた。

 

 

「ぐ、ぐるしい……」

 

「これ以上口を開いてスメールの立場を悪くするな。政治なら問題ありません。私が担当します。こう見えて、昔は一つの国を運営してました。あるものを使って交渉するのは得意分野です」

 

 

 ヘウリアとして、国を運営していただけでなく、限りある財を切り売りして、戦いを逃れてきた経験を持つシオン。これに関しての自信だけはあった。ヘウリアとモラクスもうんうん、と頷いている。

 

 

「ば、ばかめ……貴様は部外者だ!スメールの人間でもないやつに、そんな大仕事を任せられるわけが……」

 

「ならこうするわ。クラクサナリデビの名において、アザールを大賢者から除名処分とし、次期大賢者にわたくしの一人目の賢者たるシオンを任命するわ」

 

「なあ!?」

 

「は?」

 

 

 これに驚いたのは、シオンの方だった。アザールを投げ捨て、いやなに言ってるんですか、とでも言いたげな視線を背負っているナヒーダに向けるが、ナヒーダはにこやかに、アーカーシャとキューブスクリーンを介して今の発表を伝達していた。

 

 

「また、アザールに与していた一部の賢者たちや教師も、マハマトラの捜査のもと事実確認したうえで処分するわ」

 

「貴様……クラクサナリデビ!何の権利があって、貴様…!」

 

「そう、わたくしはクラクサナリデビよ!マハールッカデヴァータの正当後継者!スメールの神として、スメールはおろかテイワット全体まで危機に追い込んだ報いは受けてもらうわ!衛兵!アザールを捕らえて地下牢に閉じ込めてちょうだい!」

 

「「はっ!」」

 

「くっ……捕まってたまるか!」

 

 

 ナヒーダの命令を受け、オロオロと様子を窺っていた門番をしていた衛兵2人がアザールを捕らえようとするが、アザールは当然抵抗する。どこに隠し持っていたのか煙幕を用いて逃げようとする。小賢しさだけは大賢者並みだった。

 

 

「待て…!」

 

「待ってくださいセノ、巻き込まれます」

 

「しかし……!?」

 

 

 セノが捕らえようとするも、シオンに止められる。その視線の先で、炎が舞い、水が弾け、風が吹き荒れ、岩が突き出て、雷が落ちる。煙が晴れると、情けない悲鳴を上げてへたりこんだアザールを取り囲んでいる四神とヌヴィレットがいた。

 

 

「お前が今回の事態を引き起こしたという話だったな?戦争をしたいのか?」

 

「スメールでの処罰を断るならば、フォンテーヌに招待しよう。正義の名のもとに公平な裁判を約束しよう」

 

「君は、僕たち魔神を舐めているのかな?自由もそこまでいくと、害悪でしかないよ?」

 

「契約を守っていた者たちを皆殺しにするとは、いい度胸だ。岩喰いの刑に処してやろう」

 

「浅はかな願望で永遠を妨げる愚か者……やはり願いとは、只人が持っていいものではありませんね」

 

「ひ、ひぃいいいいいっ!?」

 

 

 完全に怒っている神々に震えあがるアザール。腰が抜けたまま必死に逃げようとするが、その背を踏みつけにして着地した者がいた。

 

 

「今僕はご機嫌斜めなんだ……お前が余計なことをしなければ、こんな思いはしなくてすんだんだ。神々は優しいから直接手を下す気はないらしい。だけど、僕は違う。まだ神じゃないからね……!」

 

「ま、待て……私は、大賢者だぞ……?」

 

「だからどうした?僕は神になる男だ」

 

 

 怒髪天の【散兵】スカラマシュの、八つ当たりでしかない雷撃が、踏みつけにしている足を通じてアザールに直撃した。

 

 

「アザールの人権在ざーる。ふっ、餞別だ」

 

「セノ、それはなにかしら?」

 

「今のは、アザールをかけた大変面白くないジョークですね」

 

「面白く、ないのか……!?」

 

 

 どや顔でジョークを言っていたかと思えばショックを受けているセノに、シオンとナヒーダは思わず笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。シオンは、新たな大賢者としてアザールのものを撤去して新しく新調した机に突っ伏していた。その机の上にはナヒーダが座って足をぶらぶらさせている。

 

 

「アザールが全部責任を負う形でスネージナヤに送還されることとなりましたが……スメールの復興、ナタやフォンテーヌ、璃月へのアトラスの被害の補填、やることがいっぱいです。はあ……私なんかより、ファルザン先輩とかを大賢者にした方がよかったと思うんですけど」

 

「あなた以外に考えられないわ。頑張って?わたくしの、1人目の賢者」

 

「はいはい……頼りにされるのも、悪くないですね」

 

 

 こうして、本来のスメールの物語は完全に崩壊した。いずれ旅人が来たる未来はどうなるのか。それはまた、のちに話すとしよう。




多分史上最も豪華なアザールの処分でした。

そして大賢者となったシオン。なんだか自己肯定感が強まっている様です。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

アトラスは………(特に本編展開には関係ありません。アトラスならこうしてるだろう、というアンケートです)

  • 完全に消滅している
  • 誰かに寄生して生存
  • 消滅したものの、蟲の一匹が10年後に…
  • 最後のリソースで最小個体を生み出し生存
  • ドットーレが再利用
  • アビスに再利用
  • アザールが自棄になって培養して……
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