塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

54 / 90
どうも、放仮ごです。バトルはお腹いっぱいになったと思うので、また日常回に戻ります。まずはスメールが具体的にどうなったのかの一幕をば。

今回は大賢者となったシオンの日常。楽しんでいただけたら幸いです。


新生スメールの日常

 何故か私が大賢者となり、アザールがスネージナヤに連行されてから数日。ヘウリア……正確には白亜と名乗る個体から完全に分離したヘウリアであるシオンとなったわけだが、まだ慣れない。いや記憶自体はフォンテーヌで作られるまでは同じものを共有しているはずなのだが、スメールに来てからの経験でだいぶ変わったと思う。

 

 原因はわかっている。今まで私より強くて賢いモラクスやヌヴィレットがいた環境と異なり、スメールではその位置に私がいたからだ。私なんか、と弱音を吐ける場合じゃなかったのである。あとナヒーダに一人目の賢者とされたことが、旅人ではなく自分がという事実が嬉しくもあり、頼られるのは悪くない気分だった。なんというのだろうか、私自身に自信が持てたというか。ヘウリアの役割を捨て、新たに役割を得て生まれ変わった気分である。

 

 ナヒーダすら知らない裏事情……「禁忌の知識」関連の真実を知っているのもある。………あれ、そういや「禁忌の知識」関連どうすりゃいいんだろう。原作だと紆余曲折あって手にした神の心二つを使って彼女に接触できたわけだが、あれを解決しないと、毎日ここにナヒーダと遊びに来てくれるドニアザードとか、多分まだスメールにいないと思われるコレイとかが患っている魔鱗病どうにもできないんじゃ………………な、なんとかしよう。大賢者なのだから。

 

 

「草神様!タフチーンをお持ちしました!」

 

「クラクサナリデビ様!あのね、あのね!今日はこれを夢で見たいわ!」

 

「ありがとう、ニィロウ。これが貴女の好物なのね、すごく美味しいわ。ドニアザードは……英雄譚かしら?いいわね、素敵よ!でも二人とも、わたくしのことは気軽にナヒーダと呼んでちょうだい?」

 

「「無理です!?」」

 

「そ、そう……残念だわ」

 

 

 そんな会話が聞こえ、視線を向ければ大賢者用の執務室*1の隅で三人の同い年ぐらいの少女三人が戯れてる。一人は我が神、ナヒーダ。そして、原作で特に熱心なクラクサナリデビ信者だったニィロウとドニアザードである。アトラスとの戦いでグランドバザールに避難を促してたのが記憶に新しい。子供らしく、微笑ましくはあるのだが。

 

 

「ナヒーダ?元気で大変よろしいのですが」

 

「なにかしら?シオン、貴女も混ざる?」

 

「今、建物の修繕に使う建材のモラを計算しているので静かに」

 

「「「はーい」」」

 

 

 いいお返事で結構。だけど私からしたら旧知の仲であるモラクス相手に下手(したて)に出て、できるだけ安く仕入れないといけないのだ。運営は任せろと言ってしまった手前、疎かにするわけにもいかない。

 

 

「ああもう、誰ですかね……ファルザン先輩とかいう有用物件を賢者なんかに据えたのは!!ドリーはちゃっかり教令院専属コンサルタントの座についてますし!!!」

 

「貴女でしょ?一人でも信頼できる人間が賢者になって欲しいって言ってたじゃない」

 

「深夜テンションの私でしたぁ!!!!!!!」

 

 

 ナヒーダの答えに思わず両手と膝をついて項垂れる。こら、お子様2人。面白がってつんつんしない。君達小学生換算したら立派な上級生でしょうが!!!ナヒーダも面白がって私の背に座って椅子にするんじゃないの!

 

 

「でもシオン?モラなら貴女の塩を無限に出せる定規でなんとかならないのかしら?」

 

「いや、別れ際にモラクスから釘を刺されてまして……これは経済を簡単に狂わせるから、本当にどうしようもないときに換金しろと。復興はスメールの費用を捻出してどうにかしろと……師匠の言葉なので無視できません……」

 

「政治って大変なのね?わたくし、490年も引きこもってたからなにもわからないわ」

 

「安心してくださいナヒーダ。10年かけてでもみっちり政治の何たるかを仕込んで見せますので」

 

 

 不思議そうにしているナヒーダにそう返すと、一瞬固まったナヒーダ*2は、妙にムカつく笑顔でサムズアップを向けてきた。

 

 

「政治は貴女に任せたわ、わたくしの一人目の賢者!」

 

「ええいどこで覚えたのかサムズアップするんじゃないですよ、何でもかんでもそれで通せると思うなあ!」

 

「きゃあっ、シオンが怒ったわ!」

 

「逃げろー!」

 

「あははっ!」

 

 

 軽く怒鳴ると、楽しそうに逃げていく子供達。……ああもう。子供らしく遊んでいて大変よろしい。私の精神構造がナヒーダに対して激甘になってしまったのどうにかならんかね。そう机に突っ伏していると、エレベーターが動いて誰かがやってきた。学生の身でありながら書記官*3に任命された……にも拘らず分厚い本を歩き読みしているアルハイゼンを連れた、【博士】の被害分は協力するという名目でスメールに常住することになったファデュイの外交官だった。

 

 

「おい、大賢者。この僕が演算して算出してやった資材のモラはどうなっている!?」

 

「ああ、【散兵】殿。それは今計算しているところですよ」

 

「あららぁ?大賢者ともあろうものが、この程度の計算がまだ終わってないのかぁい?大きく賢い頭脳を持っているんじゃないのかぁい?」

 

 

 散々煽り散らしてくるのは、まさかの【散兵】スカラマシュ。スメールになんの縁もゆかりも……なくはないが、それは未来での話だからこの時点では何の接点もないスカラマシュがこの時点でスメールに常住することになったのは意外だった。何故か私のもとに顔を出しに来た【少女】曰く、やりすぎた罰も含めて氷の女皇に命令されたんだとか。結果、私のアドバイザー的な立ち位置になってる。

 

 

「あら、スカラマシュ。いらっしゃい。ナツメヤシキャンディは如何?」

 

「何度言わせれば気が済むんだ。僕は甘いものが苦手だ。ブエル」

 

「ふっ。お前はいらないのか?俺はもらうが」

 

「なんでいちいち真顔で言うんだい君は?」

 

「ならナツメヤシキャンディ……風の塩飴は如何でしょう?」

 

「……それはいただこう」

 

 

 ナヒーダがナツメヤシキャンディを勧め、それをスカラマシュが断り、アルハイゼンがどや顔でナヒーダからナツメヤシキャンディを受け取り、スカラマシュが苛ついているところに私が塩飴をあげると受け取ってくれる。最近よくある流れである。たまにファルザン先輩が加わってうんちくを垂れ流して、ナヒーダの賞賛とスカラマシュの怒号が重なることもある。

 

 

「そうだ、大賢者。今日も砂漠の人間がアーカーシャ端末を受け取りに並んでいたぞ」

 

「あ、もう並んでましたか。申し訳ないことをしました……直ちに参りますと伝えてください」

 

 

 そうそう、アーカーシャなのだが。これがないとスメール全員の知恵を結集させたりとかができないため、アザール一派による都合よく改造されていた部分のみを取り除いたうえでスメール全域に行き渡るように手配している。砂漠の人間も傭兵などしか付けられなかったアーカーシャを一般普及しているのである。その為その開発を賢者の一人として任されているファルザン先輩が「うがーっ!」と叫んでいる光景もよく見られる。いやすいませんって、機械に一番詳しくて信頼できる人間が貴女しかいないんですもの。

 

 

「大賢者ともあろうものが、下々の人間なんかに媚びを売るのかい?理解に苦しむね」

 

「大賢者もまた人であり、同じ神に仕える同士です。そこに上下関係を作ること自体が間違っていたんですよ。ナヒーダも民と共に生きることを望んでいます。スメールは、神と人が共存できる国を目指すべきだ」

 

「お前は人形だろう?ヘウリア。どこが人間だ」

 

「貴方もそうでしょう?スカラマシュ。貴方も人なんですよ」

 

 

 スカラマシュの煽りにそう返すと、舌打ちしながらそっぽを向くスカラマシュ。このままなんとか、できるだけショックにならないように彼の真実も伝えたいものだが……その場合、【博士】にそのことを知っていることについてバレそうだから本当に慎重に考えないと。【博士】の断片も無事スネージナヤに送還されたらしいからスカラマシュから伝えられない限りは伝わることはないと思うけど。

 

 

「もう、喧嘩しないの二人とも。せっかくだからみんなで直接向かいましょう?ウェネト、おいで?」

 

「ギシャー!」

 

 

 ナヒーダが外に通じる窓を開けて呼びかけると、大樹の上からそれは蜷局を巻いて飛んできた。風蝕ウェネト。ただのフィールドボスの身でありながら、ナヒーダ及びスメールの守護獣だと民衆に知られるようになった魔物だ。すっかりナヒーダに懐いて言う事を聞くようになったのだ。現在はスメールシティの大樹の上層に巻きつく様にして住処にしている。相変わらず私に対してはなぜか警戒心を向けているが、はてなにかしただろうか。

 

 

「神様だもの、たまには壮大に現れないとね?そうでしょう?」

 

「ウェネトさん、いい子だねぇ」

 

「クラクサナリデビ様の一番の信者は私なんだからね!」

 

「俺もいかないといけないのか?」

 

「君、僕のお目付け役だろ。仕事はしなよ」

 

「下に行くだけなんですけどねえ」

 

 

 ナヒーダ、ニィロウ、ドニアザード、アルハイゼン、スカラマシュ、私とウェネトに乗り込んでいく。見渡すは、蟲に貪られた跡こそ痛々しいものの、復興途中のスメールの全容。……少なくとも10年、旅人が来るまではこの国を守らないと、か。……せいぜい頑張るとしよう。

*1
ゲームでエレベーターに乗って行ける最上階。アルハイゼン渾身の演技を披露した場所

*2
NowLoading

*3
本当は賢者にしたかったが学生の身では無理だった




スカラマシュが外交官としてスメールに残ることに。荒れてるから頭を冷やしてこい、とのこと。コロンビーナも何故かシオンを気に入ったご様子。


次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

原作より10年早く解放されたナヒーダ、原作時系列でどうなる?

  • 容姿は一切変わらない
  • 10年分成長、華奢な体の少女に
  • 成長しマハールッカデヴァータと瓜二つに
  • 少しだけ成長、原作よりも大人びた少女に
  • 夢郷世界でのみ大人の姿で見栄を張る
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。