前回の続きとなります。楽しんでいただけたら幸いです。
今日は風が強い日らしい。こんな格好ではさすがに寒い。あの、本当に寒いんです。あの、サンドローネさん。あの。視線も痛いし正座している足も痛いんです、あの。
「そ、れ、で?うちのコロンビーナとは、本当に何もないのね?」
「ない……はずです……だと思います……」
「だと思う?」
「あの、私大賢者でして……こんな格好で更地で正座しているのはさすがに威厳がですね…?」
「あら、いい様じゃない?他国の重鎮に手を出した報いよ」
「だから多分手は出してませんってばあ……」
素っ裸で自宅跡地の残骸の上に正座って、どんな罰なんですか!?ねえ!?コロンビーナはそこで普通に保護されてるのに私だけとか抗議しますよ!?
「コロンビーナにそんな知識がある訳ないじゃない!悪いとしたらあなたの方よ!酒を飲ましたのは事実なんでしょ!?」
「それはその……はい……」
「そんなことよりもよくも、私のプロンニアを塩漬けにしてくれたわね!?錆塗れになってしまったじゃないの!!!」
そう言ってサンドローネが指さす先には、ぎこちない動きで錆取作業しているプロンニアの姿が。それは、えっと、ごめんなさい。プロンニアがサンドローネの弟的存在なのは知ってるから罪悪感がすごい。
「自宅でミサイルぶっぱなしたらそら止めますよ!?」
「塩の津波を起こすことないじゃない!?」
「いきなりのことで制御間違えたんですよごめんなさいね!?服着ていいですか!!!」
「いいわよ。人目もついてきたし、私も目立ちたくないわ」
許してもらったのでいそいそと、タンスの残骸から引っ張り出した服に着替える。購入した土地がスメールシティのはずれの方で本当によかった。すると、ひょこっと扉の残骸からナヒーダが顔を出す。
「終わったかしら?」
「ああはい、終わりましたナヒーダ」
「まだよ。まだ説教は終わってないわ」
「そんなご無体な……」
「わたくしは許すわ。だってシオンのやりたいようにしてほしいもの。例えファデュイの執行官と仲良くしたくても、止める権利は何もないわ」
「だから誤解ですって!?ナヒーダなら心読めるから私の潔白わかるでしょう!?」
「忘れたの?わたくしは貴女の心だけは読めないのよ?なんでわたくしの名前を貴女が知っていたのかも知らないわ」
「そうでしたああああ……」
ワンチャン、ナヒーダに証明してもらえると思ったがそうだった。おのれ……私の体が憎い……。
「クラクサナリデビの名前も知ってたの?へえ、貴女物知りなのね?名乗ってないはずの私とコロンビーナの名前も知ってたものね?」
「な、ナノッテマシタヨ?」
「棒読みじゃない……大賢者じゃなかったらスパイの容疑でスネージナヤに連行しているところよ。コロンビーナを襲ってたりしたら私の機械の生体ユニットにしてやるわ」
「わたくし思ったのだけど、コロンビーナさんはサンドローネさんにとってどういう関係なのかしら?」
「へあ!?」
するとナヒーダからの問いかけに、声が裏返り動揺するサンドローネ。そういやそうじゃん。私の知るイチャイチャしているサンコロは、10年後での彼女たちを描いた二次創作だった。あまりに違和感なさすぎて受け入れてたや。
「た、ただの同僚よ!?それ以上でもそれ以下でもないわ!あんなぽやぽやしている天然が私より序列が上なのは気に喰わないってぐらいかしら!?」
「おやおや?だったら私とそういうことをしても咎める権利はないのでは?」
「あの子に手を出したのね?」
「暴力反対です」
思わずニヤニヤしながら揶揄ってみたら、拳を握ってわなわなと震わせるサンドローネに慌てて両手を上げて降伏する。ナド・クライで神も同然の存在となった博士相手にステゴロで挑みかかった、通称ステゴローネは伊達じゃない。いやおふざけなしにサンドローネはロボ娘なので、普通に鋼鉄製の拳だ。絶対痛い。
「シオンもコロンビーナさんも酔っぱらっていたというし、シュレディンガーの猫ね。やってないなんて証明は誰にもできないわ。あ、でも、今の貴女はヘウリアから独立したのだったかしら。だったらもしかして?」
そう言って指フレームを向けてくるナヒーダ。せっかくなので笑顔でピースをしてみる。あれ、待てよ。もし本当に心を読めたら諸々がバレちゃうんじゃね?やばい、止めないと。
「あ、待ってナヒーダ……」
「どれどれ……え?きゃああっ!?」
「ナヒーダ!?」
すると、私を指フレームで見ていたナヒーダが何かに驚いたかと思えば、何かに弾かれたようにひっくり返った。慌てて駆け寄る私とサンドローネ。すると騒ぎを聞きつけてコロンビーナも目覚めた。
「ふわぁ……なになに?どうしたの……?」
「寝坊助の相手をしている暇はないわ!大丈夫、クラクサナリデビ?」
「ナヒーダ、ナヒーダ、しっかりしてください!」
「ううん……」
気を失ったナヒーダを抱えて呼びかけるも、身動ぎをするだけで目覚める気配がない。どうしよう、と焦っていると、コロンビーナがふわふわと近寄ってきた。
「どうしたの?」
「それが、ナヒーダがいきなり倒れて……」
「ふうん。ちょっと見せて」
そう言って、ナヒーダの頭に手をかざすコロンビーナの手が淡く輝く。これは、クーヴァキだろうか?まるで検査するかのように動かしていく。
「……おかしいな。異常は何もないよ。健康体といっていいかも」
「じゃあなんで……」
「肉体じゃない何かに悪影響が起きているのかも。何か、心当たりはある?」
「肉体じゃない何か……」
それは、ある。ナヒーダは夢郷を操る力がある。夢の世界を自在に操ることができるというものだ。そこに何か異変が……?そう考えていると、ナヒーダの目が開いた。
「あれ、わたくしなにが……」
「ナヒーダ!よかった、目覚めてくれて…!」
「シオン?えっと、なにがあったの?」
「わかりませんけど、本当に良かった…!」
ナヒーダを抱えて喜んでいると、ナヒーダも私をしっかり掴んでくれた。なんか力が強い気もする、強く振り回し過ぎただろうか。
「……あれ?」
「怒る空気じゃなくなってしまったわね……どうしたのよ?」
「なんだろう。なにか、変わった……?気のせい、かな」
「はあ?……まあいいわ。大賢者、ひとまず貴女がこの子に手を出してないってのは信用してあげる。プロンニアの修理代はあとで請求しておくわ。貴方もこの家の修理代を【傀儡】相手に請求しなさい。家を壊したこと、悪かったわね。これで手打ちにしてあげる」
「えっと……それは、ありがとうございます?」
「あ、シオン。あのお酒、美味しかったよ。また飲ませてね」
「そんな「また」は来ないわよ!!!」
「え…サンドローネ、だめ……?」
「っう……おねだりしてもダメなものはダメよ!ほら、散兵がこっちに来たせいで仕事が溜まってるんだから。帰るわよ、コロンビーナ!」
そう言ってコロンビーナの手を引いて、歩行機能だけは復旧させたらしいブロンニアを連れて去っていくサンドローネ。最後辺りコロンビーナのおねだりに負けそうになってたな。てえてえ。
「とりあえずナヒーダ、教令院に向かいましょう。検査をしてもらわないと。医師にも見せましょう。そうですね、たしかティナリが薬学に詳しかったはずです」
「いいえ、必要ないわ」
そう言って、私の手から離れてちょんっと入り口前に立つナヒーダ。くるりと振り向いて、いたずらっ子の様な笑みを浮かべる。
「それより、シオン。ワタシとデートしましょう?」
「ナヒーダ?」
「ね、いいでしょう?コロンビーナばっかり、ずるいわ」
少し様子がおかしいナヒーダに首を傾げつつ、私はそれに応じるのだった。
ナヒーダに何が起きたか。この時点で真相に気付けた人は本当にすごい。ヒントを言うと、シオンの心は読めないのではなく、濁っているようにフィルターがかかっていて見えない様になっている、かな?あとナヒーダが心を覗いたタイミングも結構重要だったり。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
原作より10年早く解放されたナヒーダ、原作時系列でどうなる?
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容姿は一切変わらない
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10年分成長、華奢な体の少女に
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成長しマハールッカデヴァータと瓜二つに
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少しだけ成長、原作よりも大人びた少女に
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夢郷世界でのみ大人の姿で見栄を張る