塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。スメール編最終話となります。ラスボスはアトラスではなくヤンデレナヒーダ。

章名である「虫食いだらけの二律背反(アンチノミー)」回収回。楽しんでいただけたら幸いです。


二次創作はいいけど実際になられると解釈違い

「あ、あの……ナヒーダ?そんなしっかり握らなくても私は逃げませんよ?」

 

 

 ナヒーダとのスメールシティの散歩。片手間に適当な衛兵に私の家を直すように伝えて、スメールシティの市場に出向いたのだが。なんというか、痛い。ただ握られているだけなのに、なにかに締め付けられているような感覚がする。

 

 

「ダメよ?コロンビーナとは体を重ねたんでしょう?ワタシと手を繋ぐぐらいわけないはずよ」

 

「意外!それは誤解!!いや本当に誤解なんですよ?多分……」

 

「フフッ。貴女はワタシの一人目の賢者なの。貴女はワタシ以外と仲良くなったらダメなのよ」

 

「え、いやあの……このあとスカラマシュと資金の調整を話し合わないといけないんですけど……」

 

 

 そもそも大賢者という立場の時点で、人と大なり小なり関わるからその命令は聞けないのだけど……。

 

 

「彼はダメよ。貴女に熱い視線を向けていたわ。別の人間に仕事を引き継がせるべきよ」

 

「そもそも大賢者と任命したのはナヒーダでは?」

 

「あら、不服かしら?ワタシの所有物なのよ?それにふさわしい役職なのは当然じゃないかしら」

 

「うーん、会話が繋がってないですね?」

 

 

 いつの間にか所有物扱いされている件について。いや否定はしないけども。私はナヒーダの矛で盾だけども。って、あれ?なんかナヒーダの髪の緑色の部分がなんか濃くなっているような。明るい緑から暗い緑に変わっているような?気のせいかな…?

 

 

「……あれ?」

 

 

 そんなことを考えていたら、違和感。スメールシティを歩いていたはずなのに、人の気配が消えた。なんなら手を繋いでたはずのナヒーダもいつの間にか消えた。なんだ?とキョロキョロ見渡していると、背後から腰に抱き着かれる。振り返れば、ナヒーダだった。

 

 

「ああ、シオンの匂い……ワタシだけのシオン……」

 

「ナヒーダ?本当にどうしたんです?それに、周りに人の気配がしないのはどうして……」

 

「シオンとワタシ以外はいらないから、消してしまったわ。これでずっと二人きりね?」

 

「冗談ですよね?」

 

「貴女こそ、ワタシに抱き着かれているのに顔を赤らめもしないなんて冗談よね?」

 

 

 そう、抱き着いたままむすっとした顔で見上げて睨んでくるナヒーダ。状況が状況じゃなければ恥ずかしいですけども。

 

 

「それとも、こんな小さな姿じゃ劣情を抱くこともないのかしら。それとも、無垢なワタシを穢すのが嫌?」

 

「いや、あの、ナヒーダ?」

 

「じゃあ、こんなのはどうかしら」

 

 

 そう言って、ぴょんっと私から飛び退くと、ナヒーダの体が光り輝いて、シルエットが大きくなっていく。そして、私と同身長ぐらいになると、光が晴れて姿を現したのは……一瞬マハールッカデヴァータかと思ったけど、違う。背丈は私とほぼ一緒、腰まで長く伸びた髪は暗い深緑に染まって先端は鮮やかな紫に染まって茨で編み込まれていて、ワンピースドレスの様になった衣装は真っ黒で、瞳は真っ暗な闇の様に染まっている。裸足だった足は、踝当たりが紫のグラデーションになっている黒いニーソックスと深緑のハイヒールに包まれていて……なんというか、大人になったダークナヒーダとも言うべき姿に変貌したナヒーダは、唇に人差し指を当てて妖艶な笑みを浮かべた。

 

 

「それ、は……」

 

「どうかしら?大人っぽいでしょう?それに無垢な純白でもないわ。これなら貴女も劣情を抱いてくれるかしら」

 

 

 そう言って艶やかな手つきで私の顎に右手を添え、私の眼前に顔を近づけるナヒーダ。いや確かにドキドキはするし、魅力的なのは否定しない。だけど、だけどもだ。

 

 

「解釈違い!!!!!!」

 

「え、ええ?」

 

「ナヒーダはね!ちっちゃいのがいいんですよ!未発達な手足がぷにぷにしていて、その姿は可憐な子供のよう!なのに500年の歳月を感じさせる落ち着きと、お転婆な姿から感じるギャップが……最高なんです!!!」

 

「え、あ、そ、そう……?」

 

 

 なんかナヒーダが顔を赤らめてドン引きしているが、知ったこっちゃない。

 

 

「大人の姿が悪いとは言いませんし、悪そうになったナヒーダは正直大変グッドです。ですけども!大人の姿で、私に迫ってくるナヒーダは、解釈違いです!!!!」

 

「……ワタシは貴女が思っているほどいい子じゃないわよ?」

 

 

 そう言ってナヒーダが手をかざすと、周囲から茨が伸びてきて私を拘束する。ナヒーダの変身といい、世界そのものがナヒーダに操られているような……これは。

 

 

「夢郷の力ですか……いつの間にか私を眠らせていたんですね」

 

「さすが、よく知っているわね。言った覚えはないのだけど……関係ないわ。愛して愛して、傷つけて痛めつけて……ワタシ以外のことを考えられない様にしてあげる」

 

「……その台詞、は」

 

 

 覚えがある。なんなら、今のナヒーダの配色もすっごく見覚えがあるし、今縛られている茨もこのシチュエーションも覚えしかない。でもまさか、あそこでちゃんと倒したはず……。

 

 

「……まさか、エリゴルスですか?」

 

「違うわ、ワタシは貴女のナヒーダよ。茨の魔神エリゴルスは完全にヘウリアによって倒されたわ。今のワタシを形作っているのは、貴女に宿っていた彼女の残滓よ。貴女の心を覗いて目を合わせてしまったわたくしと一体化してワタシになったのよ。でも関係ないの!ワタシはシオンのことが好きで大好きでワタシだけのものにしたいって気づけたから!」

 

「エリゴルスの【束縛】ですか……そんなものが私の中に……いやたしかに、エリゴルス倒した辺りから、ちょっと積極的になっていた自覚はありますが!」

 

「そんなことはどうでもいいわ!ワタシを見て!ワタシだけを見てちょうだい!」

 

 

 そう言って、背後で大量の茨を束ねて巨大なウェネトの様な形状にして鎌首を擡げさせ、上から襲い掛からせるナヒーダ。私は慌てて力づくで茨を千切って、飛び退いて回避する。

 

 

「逃げないで…?ワタシのものになって!」

 

「今の貴方のものになるのは、ごめんですかね。私はナヒーダの一人目の賢者ですので」

 

 

 右腕の皮膚を突き破って伸びてきた茨を伸ばし、鞭のようにして薙ぎ払うナヒーダ。私は逆にそれを右手で受け止め、グルグル自分の体に巻いてナヒーダを自身に引き寄せる。その際、棘が引っ掛かって傷が入った。

 

 

「ああ、ワタシの手で傷つけられて嬉しいわシオン…!」

 

「ナヒーダの教育を間違えていた様な気はしてましたが………こんなことしなくても、私は貴女のものですよ。ナヒーダ」

 

「嘘よ!ワタシには手出しを一切しないじゃない!コロンビーナにはしたくせに!」

 

「だからそれは誤解なんですって!?ええい、どうすれば納得してくれますかね!?」

 

「ワタシを愛してるって証明してちょうだい!せっかくシオンと同じ背丈になれたのに、解釈違いだなんて酷いわ!」

 

 

 私と密着状態になってなお、両拳に茨を巻きつけてポカポカ殴ってくる涙目のナヒーダ。擬音は可愛いし非力なのに痛い。すごく痛い。非力なのが却って変なところに掠ってめっちゃ痛い。なにがなんでも私を傷つけて愛してやるっていう、エリゴルスと同じ歪んだ愛情表現だ。証明、証明……うーん、現実だったら完全にロリコン案件だからできないけど、ここでならいいか……?

 

 

「……ええい、ままよ」

 

「ワタシだって、傷つかないわけじゃ……むぐっ!?」

 

 

 泣き叫ぶその口を塞いでやると、ナヒーダはボンッと爆発したかのように顔を真っ赤に染めて、静かに受け入れた。

 

 

「……証明できましたか?」

 

「は、はひ……」

 

「そんなに変わってもらって酷いかもしれませんが、私はいつものナヒーダが好きです。お願いなので、戻ってください」

 

「………ちゃんと言葉にしてくれれば、わたくしもこんな暴走しなかったわ」

 

 

 すると、背丈も色も一人称も戻ったナヒーダが、不貞腐れたかの様にそう見上げてきて。その頭を撫でる。

 

 

「いやあの、世間体があってですね?」

 

「現実でも大きくなれば、わたくしの愛を受け入れてくれるのね?」

 

「いやだから、私は貴女のものですよ。こんなことしなくても」

 

 

 すると、いつの間にか現実に戻っていたようで、スメールシティの喧噪が戻ってくる。夢遊病みたいに寝たまま歩いていたりしたのかね。それか一瞬だけ夢郷にいたか。

 

 

「じゃあ私はこれから仕事があるので、また」

 

「待って。ワタシの話は終わってないわ」

 

「ワタシ?」

 

 

 ナヒーダを置いて教令院に向かおうとして、口調と一人称に違和感を持って振り返ると、背丈も髪の長さも服装もそのまま、髪色だけ暗い深緑と紫に染まり、目の色が少し暗くなった緑になったナヒーダがいて。

 

 

「え、エリゴルス!?ナヒーダは!?」

 

「エリゴルスじゃないわ。ワタシもナヒーダよ。貴女がさっきまでのワタシではなく、いつものわたくしが良いというからワタシとわたくしが別たれちゃったの。ワタシも貴女に愛されたいから、わたくしの体を借りてたまに出させてもらうわ。ああ、安心して?わたくしがピンチの時にはワタシが戦ってあげるから」

 

「に、二重人格ですか……?」

 

「でも、どっちもナヒーダだから呼び名が必要ね。なにかないかしら?」

 

「え、じゃあ……ダークナヒーダで?」

 

「いいわ、それで。ナヒーダの名前を削っていたら怒っていたかも」

 

 

 そう言って、ぴょんっと跳ねたダークナヒーダが後ろ手を組んだまま、くるりと振り返ると、白いナヒーダに戻っていて。

 

 

「めんどくさいわたくしだけど、愛してちょうだいね?」

 

「…それはもう」

 

 

 ああ、原作が崩壊していく音ぉ………。




このあとスカラマシュに怒られた模様。

誕生、ダークナヒーダ。夢郷内では大人(エリゴルスが大人の女性だったからできた状態)だけど現実では子供のままです。いい子のナヒーダと悪い子のナヒーダ。現実世界でも茨を操る能力を得て、二重人格みたいな形に落ち着きました。イメージは長夜月と三月なのかです。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

次に行くのは……

  • 白亜と家族全員で璃月に帰郷
  • 雷電将軍が手合わせしたそうに白亜を見てる
  • 生きていた虫けら視点
  • 大賢者シオンが先代の後始末でナド・クライ
  • 旅人の話もそろそろ見たいぞ!by非常食
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