塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。なんかめちゃくちゃ読まれててお気に入りもどんどん増えてて戦々恐々してます。あと、前回実施した緊急アンケートですが、「白亜のままでいい」がダントツなのでこのままにすることにしました。まあアルベドも二つ名だから気にしない方針で。

今回は稲妻に墓参りにきた白亜の話。オロバシについて調べてたら「塩業」ってワードあって閃きました。楽しんでいただけたら幸いです。


※魔神戦争の時代に間違いがあったので修正しました。500年→数千年


オロバシ、貴方は正しく死ねましたか?

 住居を見繕ってもらって一週間。昔の知り合いである仙人たちに軒並み挨拶を終えた私は、今日も今日とて往生堂での仕事を終えて万民堂に通っていた。あのまま胡堂主に雇ってもらえて幸いだった。なんでも私から強烈な退魔の気配がする*1とかで即決採用だったようだ。何のことだかわからないけどラッキーである。

 

 

「ふむ。やはりあの時代とは比べ物にならないぐらい美味しいですね……()さん、お代わりをお願いします」

 

「気前がいいねえ!へい、黒背スズキの唐辛子煮込み、一丁上がり!」

 

 

 まだ働き始めて一月(ひとつき)も経ってないので給料はもらえず、モラは鍾離……モラクスがくれると言っていたが、とんでもない。私の知る「鍾離先生」はモラがないのが代名詞だ。モラを払うのはタルタル*2でなくてはいけない。故に私は、「器」から溢れる塩をある程度小分けにして売ってきた。ただの塩にもまあまあ価値があるみたいで結構なモラを得れたのである。しかしなんであんな慌ててたんだろう。

 

 

「ふう。さて、腹ごしらえもすみましたし、明日いっぱいは仕事も休みです。稲妻まで行きましょう」

 

 

 たしか、今の稲妻*3はまだ鎖国令及び目狩り令*4が発令されてないはずだから、目立たなければ侵入も容易のはずだ。私にはフリーナ*5と似たような水上歩行能力がある。まあ真水の上は歩けない、塩が存在する海水限定ではあるが。正確には海水の塩を一瞬だけ凝固して足場にしてるだけなのだが。それを使えば、海で繋がっていれば私はどこにでもいける。それは例え、旧友のいるところであっても。

 

 

「墓参り、になるんですかね」

 

 

 私はあそこで殺されなければいけなかったが、結局モラクスの手で生き延びてしまった。まんまと死に損なったわけだ。モラクスと仙人たちの一部は今でも生きているが、帰終はやはり生き残ることは叶わず、仙衆夜叉はやはり原作通り、金鵬大将の魈以外*6死んでしまったという。みんな、モラクスにしごかれる中で私の鍛錬や息抜きに付き合ってくれた友人だ。どうやって死ぬのかは知っていたが、私の死後の話なのでどうしようもなかった。今から墓参りにいく魔神も、そんな一人だ。一匹と言うべきか?

 

 

「お、見えてきました」

 

 

 えっちらおっちら海を渡ること数刻。稲妻を形成する6つの島の一つ、ヤシオリ島が見えてきた。目狩り令がまだ発令されてないから当たり前だが、反乱軍の陣地もない。海上にいても目立つのは、雷が鳴り響く豪雨があの一帯だけ覆っていることだろう。そして何と言っても、巨大な大蛇の亡骸が化石の様になったものが島に巻きつく様に存在している。あれこそが私の友人の成れの果て。稲妻で伝えられている名は、海祇(わたつみ)大神(おおみかみ)オロバシノミコト。またの名を、蛇の魔神オロバシ。璃月でモラクスに敗走して稲妻に渡り雷神にも敗れ、そして淵下宮*7に逃れてそこの民たちを地上に導き、そして壮絶な紆余曲折の果てに雷電将軍の「夢想の一太刀」を受けて死した魔神である。

 

 

「……数千年ぶり、ですね。私が殺される前に海祇島に訪れた時に話した以来、でしょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 その日、私は璃月港まではるばるやってきたアビサルヴィシャップ*8の持ってた手紙を受け取り、稲妻の最西端である海祇島に訪れていた。

 

 

「相談があると聞いてきました。如何されましたか?オロバシ」

 

『遥々よく来てくれた、ヘウリア。そなたを噂通りの心優しい塩の魔神と見込んで頼みがある』

 

 

 そう男とも女ともとれる不思議な声で告げるのは、海中から顔だけ出した鼻の上に小さい角を備え、島を一巻きにしようかというサイズの巨大な白蛇の姿をした魔神、オロバシ。私からしたらあまりにも大きすぎて萎縮してしまう。一応璃月にいてモラクスに敗れたことは知っているが、私は若い方の魔神だから面識ないんだよな……。ただ原作はやってるので、いろんなものに振り回された魔神なことは知っている。

 

 

「私にできることなら、手伝いますが……」

 

『その、だな。我が民に塩業について教えてくれぬか』

 

「塩業、ですか?いやまあ、確かに私の得意分野ですけど」

 

『彼らは淵下宮から連れ出したばかりでな。雷神……雷電将軍から居住する認可はもらったのだが、見ての通りこの島はなにもない。農業を教えてみたのだが、今度は金銭に困って道具すら揃えられぬ現状だ』

 

「なるほど。それで、島国故に囲まれている海から手に入れた塩を売買しようと。そういうことなら、手伝いましょう」

 

 

 その後オロバシの民にやり方を教え、見届けるために一ヶ月ほど滞在しているうちにオロバシとは仲良くなった。彼……彼女?が留守の間に非力ながら防衛を買って出たこともある。

 

 

『そなたは、魔神戦争に生き残るつもりはあるのか?』

 

「いえいえそんな、私みたいな貧弱な魔神ではとてもとても」

 

『だがこの間、我が民を襲った海乱鬼(かいらぎ)*9五人を相手に完勝してなかったか?』

 

「貴方が塩を売りに行っていた留守を狙うような卑怯者ですよ?私に負けるような実力だっただけです」

 

『そういうものか。帰って来たら海乱鬼が泣き叫んでいて民が恐れおののいていて何事がと思ったぞ』

 

「海乱鬼が恐ろしかったのでしょう。そういう貴方は?」

 

 

 そう尋ね返すと、オロバシは鎌首を擡げて遠く……璃月の方へ視線を向けた。その視線に宿るは憐憫か、哀愁……もしくは諦念だった。

 

 

『私は、諦めている。岩神にも敗れ、雷神にも敗れた私は逃げ続けた挙句、こうして人々に崇められるまでなった。しかし私では彼らを守れない。すぐにでも、雷神に信仰対象を変えるべきだ、と思う。このままでは私を選んだばかりに、稲妻の民たちと戦争になってもおかしくない』

 

「私も同じです。私が死んだあとの民たちはモラクスに託しました。生き残るであろう神に任せるべきです」

 

 

 私の場合は勝者をあらかじめ知ってるからこの判断に至れるが、オロバシは先見の明もあるらしい。たしか、淵下宮で「禁忌」にも触れてしまったはずだ。

 

 

『そうだな。……責任をもって、民たちを生かそうぞ』

 

「民のために、共に正しい死を迎えましょう」

 

『正しい死か。言い得て妙であるな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 その後、オロバシは彼への信仰が暴走した淵下宮の民と稲妻の民たちの間で起こった戦争を、戦争で友を失って怒った雷電将軍に自ら斬り裂かれることで終結させた……だったかな。さすがにサブクエの、さらに文章でしか見れない出来事だったからうろ覚えだが。以前、私ことヘウリアを一番不遇な魔神と言ったが、彼もそうかもしれない。その亡骸が祟りを引き起こしてあの天変地異を起こしているのだから救われないが。

 

 

「さすがに雷に打たれたくないのでここからになりますが……せめて冥福を」

 

「おや。それだけでよいのですか?」

 

 

 ヤシオリ島が見える海上で手を合わせていると、耳当たりのいい声が聞こえた。振り向くと、空中に紫雷の足場を作って立っている女がいた。なんで、ここに。稲妻の統治者。御建鳴神主尊大御所様。魔神戦争の勝者である俗世の七執政が一柱、雷神バアル……もとい、バアルゼブル。またの名を。

 

 

「雷電、将軍……」

 

「塩の魔神ヘウリア。……魔神の気配を感じてきてみれば。死んだと聞いてましたが、生きていたのですか?」

 

 

 そう言って薙刀を構える雷電将軍に、咄嗟に海水から引き出した塩を固めた槍を手にして身構える。失念していた。そうだ、確かに七執政以外の魔神の気配なんて目立つに決まっている。七執政の中でもっとも会いたくなかったのに。モラクスに並ぶ「武神」と呼ばれる魔神の1人。勝ち目なんてあるわけがない。

 

 

「そういえば、オロバシとは友人関係でしたね。仇を取りに来たのですか?」

 

「いえいえ。ただ墓参りに来ただけですよ。私みたいな木端魔神が仇をとろうだなんてとてもとても」

 

「塩の魔神、貴女の存在は七執政という座を脅かしかねない。「永遠」における変数です。ここで排除させていただきます」

 

「っ!」

 

 

 瞬間。私の「塩の花弁」と呼んでいる自動盾と、一瞬で目前まで踏み込んできた雷電将軍の振るった薙刀が激突する。自動(オート)にしてなかったら危なかった。一瞬目を見開いた雷電将軍は、薙刀をくるりと回して追撃。私は咄嗟に槍で柄の部分を打ち付けることで受け止め、首を狙って振るわれる刃だけ塩の花弁で防御、必死に目を動かして雷電将軍の攻撃を捌き続ける。一応掠りはしているが、あんまり効いてなさそう。

 

 

「これほど耐えられたのは、初めてです」

 

「御謙遜を」

 

 

 手加減されてなかったら死んでるって!本当に!私が海水から塩の剣山を出して攻撃すると、宙返りして距離を取って雷の足場に乗り、その胸に手をかける雷電将軍。あ、それはヤバい。逃げるべく踵を返すが、すでにそこには紫雷が広がっていて。雷雲立ち込めるそこに鳥居が次々と立ち、渦巻き状の枯山水が足元に広がる。今の今までいた海面から一瞬で変わる。

 

 

「どう見ても領域展開、ですね……」

 

 

 彼女の胸の谷間から引き抜かれた雷電将軍の愛刀「夢想の一心」には、「一心浄土」という精神世界が内包されており、その中に本物の雷電将軍……雷電影が瞑想している。まさか旅人より前にここに引き込まれるとは思わなんだ。私の眼の前で「夢想の一心」を構える雷電影が小首を傾げた。可愛らしいが恐ろしいことこの上ない。

 

 

「領域展開、とは何のことでしょう?」

 

「こっちの話です。降参するので出してくれたら嬉しいんですけど。ほら、私を生き返らせてくれたモラクスが怒りますよ?璃月と戦争したくないでしょう?」

 

「モラクスの仕業でしたか……それならば納得です。二大武神を侮っていたわけではありませんが、人形をあそこまで追い詰めるとは想定外でした。故に私も、抜かねば無作法というもの。しかしあの場所ではヤシオリ島も巻き込みかねないためここに移動させていただきました。驚かないのですね?」

 

「なにがです?私からしたら二大武神の名前は貴女にあげたいんですけど……ちなみになにを抜くんですかね?」

 

 

 予想通りだとしたら勘弁してほしいのだが。とか思っていたら「夢想の一心」にバチバチと紫電が迸る。それは不味いて。オロバシの巨体すら一刀両断したそれは不味いって。

 

 

「私の夢想の一太刀……受け切れたら逃がしてあげましょう」

 

「死ねと?」

 

 

 そんな、貴女ならできますよね?って視線を向けられても困ります!困りますお客様!私は本当に、か弱い魔神なんです!?確かに私が生きてたら原作ブレイクしそうだし、もう既に殺される役目は果たしたんだから死んでもいいとは思うけど、そんな目に見えて痛い死に方は嫌だ!自分から刺さりに行った時でも普通に痛かったのに!

 

 

「や、やってやりますよこんちきしょー!」

 

 

 謎空間から『定規』を取り出す。『器』では間に合わない。『定規』を自らの胸に突き刺すと、挿さった鳩尾から溢れ出てくる塩の奔流に意識を巡らせる。体内に溢れた塩が口から吐血の様に吐き出され、目や耳からも溢れて零れ落ちていくのを感じる。息苦しいけどこれしかない。一瞬雷電影が怯んだ様子を見せたが、すぐに右手で握った「夢想の一心」を振りかぶっていて。

 

 

「覚悟!」

 

「できてるよ!」

 

 

 極光が、迫った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、死ぬかと思いました……」

 

 

 結局、璃月に帰ってきたのはその日の夜のことだった。「夢想の一太刀」を百層ぐらい展開した塩の花弁で威力をかぎりなく減衰した上で受け止め、胴体をざっくり斬られて私服をダメにしてしまったが、私の今の肉体は岩塩ゴーレムなので斜めにでかい切り傷が入っただけで済んだ。よかった両断されなくて、とほっとため息ついてたらなぜか顔を青ざめていた雷電影*10に一心浄土から出してもらい、引き留めようとする雷電将軍の誘いを丁寧に断って帰路についたのだが。

 

 

「とりあえず海水の塩を集めて応急処置はしましたけど」

 

 

 鍾離に一度相談した方がいいかも?と考えながら、人知れず闇夜の桟橋から上がって家に戻ろうとした時だった。上から耳当たりのいい声が聞こえた。またですか?

 

 

「私は甘雨。璃月七星*11の使者です。白亜様。天権(テンチュエン)様より、貴方に経済の均衡を崩した容疑がかかっています。ご同行、を?」

 

「身に覚えがないのだけども……どうしましたか?」

 

 

 そこにいたのは、半仙で璃月七星の秘書をやってる人物がいて。身に覚えのない容疑をかけられて困惑していたら、あちらは顔を赤らめてわなわなしてた。顔を赤らめるべきは貴女の格好だと思うの私。

 

 

「どうしましたか?じゃありません!む、胸を曝け出して……なにかで隠してください!!!!!!」

 

 

 きゃーと顔を赤らめてそそくさと去っていく甘雨。そこで思い出す。そういや服、斬られたままだから胸元ぱっくり開いているのか。これは失敬。でもやっぱりそっちの格好の方が恥ずかしいと思う。閑雲の趣味なんだろうけど。

*1
固有天賦:清めの塩

*2
執行官第11位「公子」タルタリヤ

*3
テイワット大陸南東部に位置する雷神が治める島国

*4
原作一年前ぐらいから雷神が発令した神の目の強制徴収

*5
水神様

*6
騰蛇大元帥、浮舎。火鼠大将、応達。螺巻大将、伐難。心猿大将、弥怒。

*7
稲妻西部・海祇島の地下に広がる大空洞

*8
龍族の小型個体の水属性を指す。淵下宮でオロバシによって品種改良された

*9
稲妻に出没する甲冑を纏った浪人。強い

*10
二大武神と呼ばれる実力を見せてくれると思ったら、いきなり自刃して塩を吐いてぶった切られてなお平静を保っている狂人を見た反応

*11
璃月において岩王帝君に次ぐ権力を持ち、璃月の経済の管理を担う7人の統治者




※オロバシについては半分捏造です
※雷電将軍はからくり人形、つまり機械なので「塩撫」によるスリップダメージはめっちゃ効く。
※塩を売って手に入れた結構なモラ→およそ3億モラ(モラを生み出せるモラクスの弟子なせいで金銭感覚バグってる)

夢想の一太刀を受け切って最弱だと言ってる魔神がいるらしい。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

原作行く前にヘウリアに会ってほしい人物

  • ドットーレェ!!(博士)
  • 判決を下す!(ディルック)
  • 吟遊野郎!(ウェンティ)
  • 荒瀧・唯我独尊・一斗(荒瀧一斗)
  • 俺が払うよ(タルタリヤ)
  • グロシをかかげよ!(フリーナ)
  • あらら~?(スカラマシュ)
  • ハイドロポンプ(ヌヴィレット)
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