璃月港に忍び込んでいた悪意。楽しんでいただけたら幸いです。
「ふんふんふーん♪」
屋台が並び賑やかな璃月港の通りを、両手にいっぱい食べ物を抱えながら、岩王帝君や塩華女帝、真白空我真君を始めとした仙人たちのお面を被った子供達や、軽装で歩く大人たちの間を、軽やかにスキップで歩く人物がいた。上機嫌に右手に持ったフライドポテトを口に放り込み、咀嚼しながら容器を片手間に投げ捨てると、容器は空中で灰となり焼失する。
「やっはは!たっのしいなあ!
その少女は、異様だった。くすんだ銀髪を岩裂の花と呼ばれる花の様な結晶体で二つ結びにして腰まで伸ばした童顔で、その肌は異様に白い。裸足で石畳の上をペタペタ歩き、身に着けているのは一見ナタの“豊穣の邦”の伝統衣装によく似ているものの、やはり灰色と黒色で構成されており、よくよく見れば煙の様に先端が崩れていて服かどうかすら怪しい。そして極めつけはその、目。その真っ黒な眼孔の中は、まるで篝火の様に煌々と炎が燃えていた。比喩ではなく、本当に燃えていた。あまりにも異様、だがしかし誰もその異様に気付かない。まるでそこに在るかの様に受け入れていた。
「あてしのいた時代とは比べ物にならないぐらい、ごはんが美味っしいなあ!特にこの揚げ芋だっけ?いくらでも食べれるね!!」
そうケラケラと目をガッと見開きながら笑う特徴的な笑みを浮かべながら、クルクル回る少女。その手に持っていたものは次々と燃えて焼失していき、その残骸を周囲に揺蕩わせながら、少女はグルグルグルグルと勢いを増して駒の様に回転していき、そして多くの人間が集まるその中心で、ぴたっ!とまるでバレエかなにかでもするかのような華麗なポーズで固まった。
「やっははは!あてしの体が身軽に動く!さっこう~!」
璃月港の下層部と上層部を繋ぐ階段の最上段から空中に飛び出す少女。明らかな危険行為に、誰も視線を向けない。少女は笑い、落ちていき……そして、階段に激突するかどうかというところで、ボフン!と音を立てて消えた。そこに駆け付けるのは、本来ならばヘウリアの迎えを担当するはずが、主である岩王帝君からある頼みを受けて奔走していた降魔大聖である魈だった。傍の建物の屋根の上から周囲を見渡し、異常がないことを確認する。
「……いない?帝君のおっしゃった通り、異様な気配を感じたが、影も姿も見せないとは……何者だ?海灯祭の喧騒に紛れて璃月に紛れ込むとは……」
異様な気配が現れるたびに急行し、そして影も掴ませない侵入者。護法夜叉として、逃がしては置けないと意を決したところで、目の前に、篝火の様な瞳が、虚空から現れた。
「なっ……!?」
「んー?なに驚いてるの?あてしを捜しに来たんでしょ?やはは!」
「くっ……!」
空中に逆さまとなって浮いている状態で現れた少女に、魈は咄嗟に手にした槍を突き出すも、信じられないことが起きる。触れるか触れないかのところで、何かに阻まれたかのように槍の方が突っ込むごとに焼けて、押し込んだ部分が焼失してしまったのだ。あまりの出来事に、魈は大きく跳躍して後退し、離れようとするが、まるで纏わりつく様に、浮いたまま魈から一切離れない少女。
「あぶないあぶない。モラクスのワンちゃん。やけどすっぜー?」
「貴様は……なんだ!?」
「あてし?あてしはねー」
逆さまのまま、人差し指を魈の額に当てる少女。その瞬間、まるで太陽の様に快活だった少女の感情が、まるでスイッチを切ったかの様に消え去り、炎が消えて完全に真っ暗な孔の様になった眼と無表情で魈を見下ろしていて、次の瞬間魈は体内を何かに突き抜けられて、璃月港の路地裏に落ちて行った。
「あの人曰く、
直後に電源が入ったかのようにその瞳に炎が灯り、くるりと回ってスタッと屋根に着地。裸足をぶらぶらさせながら、上層にある不卜廬方面を見上げた少女は目を見開き、三日月の様な笑みを浮かべた。
「どうか、素敵な「静寂」がこの国に訪れますように」
一人称は「あてし」笑い方は「やはは」とあまりに濃すぎる謎の少女。見た目は銀髪のバーニス(ゼンゼロ)です。並行同位体でスタレからアトラスが出たので、じゃあゼンゼロからも誰か出したいなとなったらこの子しか思いつかなかった。正体は後々。
次回、10年はええよご来客。次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
旅人の話は……
-
旅人視点でモンドの最初から
-
白亜視点でモンドの途中から参戦
-
旅人視点で璃月で白亜と初遭遇
-
白亜視点で旅人の旅路をモンドから見守る