「やはは、久しぶりにヘウリアと遊ぶの、楽しかったなあ。変わってないなあ」
「見てたぞ。なにがしたいんだ、アンタ」
チ虎岩の埠頭の造船所の屋根の縁で足をバタバタさせるグレメリーの背後に煙が立ち込め、それは不卜廬にてテスカと呼ばれていた男として実体化。お手製の葉巻から煙を吹かしながら訪ねたテスカに、グレメリーは視線を向け、わかってないなあとでも言いたげに肩を竦めた。
「あてしの力がちゃんと通用するかの確認だよ。寝起きだからねー、あてし。起きたばかりなのにヘウリアに喧嘩売ろうとしていた武闘派のけむりんと一緒にされたら困るっての」
「誰がけむりんだ。俺は戦士だ。あの時の敗戦を俺は認めない。戦士として正面から奴に勝つ。その機会を用意してくれて感謝はしているが、あんな戦い方、俺は認めないぞ」
「ナタ出身だからってみんながみんな闘争が好きなわけじゃないんだけどなあ。しゅばらんも別に争いは好きじゃないし。マーちゃんももう休んでいいと思うんだけどなあ」
「しゅばらん?シュバランケのことか?アンタ、奴の何を知っている?」
そう尋ねられて目を丸くするグレメリー。少し寂し気な表情を浮かべてから、「よっ」と立ち上がり、振り返る。
「けむりん。あなたこそ、あてしを覚えてないの?」
「はあ?覚えて居るも何も、アンタは姫君だろう?」
「その呼び方慣れないなあ……あ、そうだ。気を付けてねけむりん。ヘウリア、数千年前と同じだと思ったら痛い目を見るよ」
「タネも仕掛けも割れているのだ、今度は負けん。そのために既に仕掛けは済ませてきた。ヘウリアとモラクスに必ず勝つ。勝ってこその戦争だ」
「五月蠅くなりそうで嫌だなあ、あてし。静寂より素晴らしいものはないのに」
「契約の通り、手伝ってもらうぞ。有象無象の相手は任せたからな」
「はいはい。バアルゼブルもいるのに無茶言うなあ……やははっ、楽しいからいいけど」
葉巻の煙を燻ぶらせ、男は笑う。グレメリーが準備運動とばかりに伸びをしたと同時。それは、突如発生した。
「あ、いたいた。白亜さん!こっち!」
「クリーヴ、今行きます」
とりあえず、ずっと屋根の上にいても目立つだけなので、早々に屋根から降りて、仕方ないので雷電影を連れたままみんなのもとに戻ると、ほとんど全員が好意的に接しているのに対し、ペルヴェーレが目を見開き、ピンばあやも少し気配が険しくなった。
「……白亜さん。この、方は……」
「ほっほ。なんたる剣気か。老輩には厳しいのう」
「ああ、えっと。とりあえず私が目的らしいので変なことはしないと思いますよ。というかしたら戦いませんからね?」
「変なこととは何ですか?あ、おかわりください」
「そのお金は誰が出すんです?」
「もちろん、将軍モラはちゃんと持ってきて………………おや。モラがない」
何故か胸の谷間*1を漁って、なんでもないように何も持ってない手を見せる雷電影。う、うーん………そういや七執政の最初の三人は金欠じゃった……!*2ええい、悔しいが満足度高いな…!
「解釈一致だから許します!ハイ財布!」
「おお、ヘウリア!心の友という奴ですね!」
「貴女今すぐ自分の国で狐に謝りなさいマジで」
「なんか白亜姉が面白かったり怖かったりしてる…!?」
最後の親友を差し置いて私を心の友とか呪い殺されても文句言えないぞ。あの狐もだいぶこじれてるからやらないだろうけど。すごいよね、親友って。羨ましい限りである。私にはいないからなあ。帰終とかは私を親友だと言ってくれたけど、私なんか恐れ多いし。オロバシは同じ目的を持った同志って感じだし。友人はいるけど親友はいないのが私だ。………んんん?なんだろ、違和感。私に親友はいないよね……?
「んんー?」
「どうしたんじゃ、白亜」
「いえ……なんでもありません」
なんにしてもだ。躊躇なく私のモラを使って大量の甘味を購入して山と積み上げる雷電影にみんな笑っている。こんな光景を守りたい、と。そう思って……フォンテーヌでの作戦を成功させないとな、と決意を固める。この笑顔を消してはならない。もしも私の家族から笑顔を奪うなら、私がどうなってでも天理にだって抗ってやる。
「……おや?」
上層に向かおうと港から踵を返そうとして、ふと違和感に気付く。角の隅に置かれいるのは……小瓶の中に入れられた、薬草の束……?ミントだろうか。あれ、たしかあれってついさっき……。よく見れば、小瓶は木製の蓋で密閉されており、その蓋には線香のようなものが……待て。そのまま炎が内部まで行ったら……!?
「伏せてください!」
「「「「「「!」」」」」」
咄嗟に塩で大盾を作って振りかぶった私の言葉に反応する、ペルヴェーレ、クリーヴ、クロリンデ、ナヴィア、ピンばあや、雷電将軍。すぐに子供達を庇う体勢となり、私は盾を手に突撃。しかし間に合わず。次の瞬間、密閉された瓶の中の空気と薬草が一気に燃焼し、爆発。妙に息苦しい煙が辺りに充満する。
「げほっ、ごほっ!?」
今の爆音、立て続けに起きていた。璃月港中で複数が爆発している。現世で言うなら爆破テロだろうか。この璃月で……!?しかし衝撃こそ凄かったが殺傷能力は感じられなかった。どちらかというとこの煙を広げるのが……?
「◎△$♪×¥●&%#?!」
「○!※□◇#△!」
「……嘘でしょう?」
煙の中から現れたのは、豹の頭に必要最低限の武装しかしていない獣人が数体。私はこれを知っている…!
「煙の魔神シトリウス……!」
私の、最初に戦った魔神。なんで今更……剣を構える。被害は絶対出させない!
煙の魔神シトリウス、再臨。テスカさんが彼の人間態でした。こちらは元ネタ通りです。最初の敵が最後の敵って熱くないだろうか。
ほのぼのパートが数多すぎてちょっと手に負えなくなったのは認めます。わちゃわちゃしているのを外から眺める保護者ポジがヘウリアに似合うから猶更書くのが難しい。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
旅人の話は……
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旅人視点でモンドの最初から
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白亜視点でモンドの途中から参戦
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旅人視点で璃月で白亜と初遭遇
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白亜視点で旅人の旅路をモンドから見守る