塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。やっと旅人を書けて感無量であります。何話かかってるんだって話だけど。

旅人とヘウリアの邂逅。楽しんでいただけたら幸いです。


序章:モンド編【二匹の魔龍と金髪の異邦人】
塩塗れの異邦人


「旅人!おい、しっかりしろ!たーびーびーとー!」

 

 

 なんでこんなことになったんだろう。どこか遠くに聞こえる案内人の声を他人事みたいに聞きながら、ぼんやりと考える。たしか私は、七天神像から風元素の力をもらって、それで……巨大な竜と少年に出くわして……。

 

 

「ヤーッ!」

 

「ヤーッ?」

 

「ヤッヤー!」

 

「起きろ!旅人!やられちゃうぞ!」

 

「パイ、モン……!」

 

 

 殺気。痛む体に鞭打って立ち上がり、それを避ける。棍棒が今の今まで頭のあった場所を穿っていた。視線を前に向ける。数は、およそ40。盾や棍棒で武装した……皮膚は黒く、角を生やし、例外なく仮面を被っている人型の魔物……パイモンが言うところのヒルチャールが群れを成していて。そうだ、たしか竜と出くわした後に出会った西風(セピュロス)騎士団の偵察騎士らしいアンバーが、モンド城に案内してくれるけどその前に、近くにヒルチャールの集落があるからそれを処理するのを手伝おうってなって、それで……。

 

 

「そうだ、アンバーは!」

 

「あっちだぞ!」

 

「ううっ……ごめん、旅人……巻き込んじゃって……」

 

 

 傍で私を揺り起こしていたらしいパイモンが指さした先には、頭から血を流して倒れているアンバーの姿が。そうだ、最初に数体だけ見つけて、一緒に蹴散らそうってことになって……そしたら、既に囲まれててアンバーがやられたところを私も……。剣を引き抜く。やることは決まっている。

 

 

「風よ!」

 

 

 突き出した右手に風の渦を発生させ、アンバーに今にも棍棒を振り下ろそうとしていたヒルチャールたちを引き寄せ、纏めて斬り上げて吹き飛ばす。駄目だ、やっぱり力を失っている私じゃこれが精いっぱいだ……!

 

 

「旅人!上だ!矢が狙ってるぞ!」

 

「くっ……!」

 

 

 倒れているアンバーの傍に立ち、降り注いだ矢の雨を斬り弾く。崖の上に十体のヒルチャールが弓を手に私を狙っている。さらに周りにはまだまだ前衛のヒルチャールが次々と襲い掛かってきて、それをアンバーを守りながら、たった一人でこれを切り抜けるのはさすがに難しい。どうすれば……!

 

 

「ちょいと失礼しますよ」

 

 

 すると。清涼感のある匂いと声がした。同時に、私達を狙っていた弓兵のヒルチャールが、背後からなにかに頭部を撃ち抜かれたかのように体勢を崩し、ゴロゴロと転がり落ちて、下で黒い靄となって崩れて消えた。

 

 

「ヤーッ!」

 

 

 すると、ヒルチャールの一匹が先程まで弓兵ヒルチャールが陣取っていた崖の上を棍棒で指す。そこには、奇妙な人物がいた。二本の角が目立つ大きな目のお面で顔を隠し、長く真っ白な長髪を纏めることなく風に揺らし、純白の裾が長い体にぴったり密着する薄手の外套*1に身を包んだ、大人びたプロポーションの女性だった。女性は腰を下ろしてしゃがみながらこちらを見下ろし、仮面から覗く顎に手をやって何かを考えこんでいる。

 

 

「おかしいですね……アンバーが対処するヒルチャールは三体ぐらいだったはず……いくらなんでも多すぎません?周囲のヒルチャール全部集まってますよねこれ」

 

「やーっ!」

 

「うるさいですね、考えているのが見えないんですか」

 

 

 ヒルチャールが一体、なにやら地面を掘り始めて取り出した炎のスライム入りの樽を投げつけるも、それは女性の顔面にぶつかりそうになるも、何かに阻まれたかのように弾かれて女性の頭上をクルクル回転し、後方で爆発。爆発を背負いながら立ち上がり、一瞬にして純白の無地の杖を手に取って肩にかける女性は、お面から覗く口元を不敵に笑んだ。

 

 

「まあいいです。やることは一つ……そこの金髪のお嬢さん?助けはいりますか?」

 

「え、あ、うん!」

 

「そう来なくっちゃ、ですね!」

 

 

 杖で地面を突いてそれを基点に宙返り。杖を振り回して、鎖付きの三節棍だったらしいそれを広げてまるで乱舞の様に全てのヒルチャールを打ち付けながら着地する女性。凄い……今の一撃、回転を調節して、鎖を伸ばしながら全員に当てる軌道にしていた。それを片手間に。ただものじゃない。

 

 

「ヤーッ!?」

 

「ヤーヤーッ!?」

 

 

 見れば、直撃を受けたヒルチャールはボロボロと崩れて消滅。掠っただけでまだ健在のヒルチャール二体も、武器を捨て掠った部位を押さえて泣き叫んでいる。そんなヒルチャールの一体の腹を容赦なく蹴り飛ばして崖に叩きつけ消し飛ばした女性はそのまま三節棍を連結させて、軽く放って持つ部位を先端に持ち替えると、手首の力だけでもういったいのヒルチャールの頭部を仮面ごと叩き割って、消滅させた。

 

 

「な、なんだあ!?三十秒も経ってないのに、あの数を倒しちゃったぞ!?た、旅人!知り合いか!?」

 

「私も知らないよパイモン……。あなたは、誰?」

 

「よし。息はしてますね。よかった、死なれていたらどうしようかと……あ、私ですか?」

 

 

 三節棍を投げ捨てて消し去ってしまい、アンバーを抱きかかえて安否を確認していた女性は、私の問いかけに振り返る。大きな、感情を感じない目が少し怖かった。

 

 

「えーと、そう、ですね………私のことは、謎の仮面の美少女ヒロインホワイトとでもお呼びください」

 

「……えっと?」

 

「なぞのかめんのびしょーじょひろいんほわいと……?長すぎるぞ!!!」

 

 

 もしかしたらただの変な人かもしれない?それが、私とパイモンと、彼女の初邂逅だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、風が吹いた。突風でもない、穏やかなそよ風でもない。凍てついているような、身体に張り付くような、寒気が走る嫌な風だ。

 

 

「むっ?」

 

 

 視線を上に向ける謎の仮面の美少女ヒロインホワイト……長いから謎のホワイトでいいや、の視線を追って上空を見上げる。さっきアンバーに出会う前に見た青緑色の巨竜に一瞬見えたけど、何か違う。赤紫色で、邪悪な気配だ。青緑色の龍が落としていった赤い結晶にも似た気配だけど、それよりダントツに大きい。あれは……?

 

 

「なんだ……?」

 

「……魔龍ドゥリンがここで来ますか。最悪ですね。ちょっと話が変わりました。ついてきてください、安全なところまで行きます。貴女の名を聞いてもよろしいですかね?」

 

 

 アンバーを抱いた謎のホワイトが案内をしてくれるようで駆けだしながら、私に名を訪ねてきた。ああ、そうか。忘れてた。私は……。

 

 

「私は蛍。通りすがりの旅人だよ」

 

「おいらはパイモンだ!」

 

「私の非常食だよ」

 

「そうそう、旅人の大事なひじょうしょ……全然違う!」

 

「あはは。面白いですね?」

 

 

 笑う謎のホワイトに連れられて、私達が訪れたのは、モンドの首都、モンド城だった。

*1
印象がだいぶ変わるが鍾離の服の色違いである




魔龍ドゥリン参戦。原作通りには進まないみたいです。

ちなみになんでヒルチャールが群れになっていたかというと、長期的にヘウリアがたびたび訪れてたせいで魔除けに追い立てられて集まってた、となります。アンバーが怪我したのは本人は気づいてないけどヘウリアのせいです。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

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