今回は前回の旅人視点前編。楽しんでいただけたら幸いです。
「旅人のお姉ちゃん!もうすぐモンド城だよ!」
「待ってよ、クレー!」
「ううっ、ちっこいのに速いぞ……しかも立ち塞がるヒルチャールが全部どっかーんされて……」
「ま、まあ楽だよね…?」
両腕をピンと伸ばしてタタタタタッ!と走っていくクレーを追いかける。ドラゴンスパインというらしい雪山に落ちた偽トワリンを調査しに向かったハクアとは別行動して、クレーと一緒に各地の四風守護の神殿を目指していた私達。三つめも無事攻略し終え、今は帰還している最中だ。たびたびやはり群れになっているヒルチャール*1に出くわすが、火花騎士と呼ばれるだけはあるクレーの大火力で蹴散らされていた。これをジンから浴びせてもいい言われてるハクアは何者なんだろう。
「ねえ、クレー」
「なあに?旅人のお姉ちゃん!」
「ハクアって何者なの?」
「そうだぞ!あいつ、オイラたちと違って、あの偽トワリンの対処をほぼ一人で引き受けてたんだろ?アイツ、なんなんだ?」
「んー?白いお姉ちゃんのこと?……えーとねえ、クレーは知らない!アルベドお兄ちゃんに挨拶に来たのが最初で、そのあとファルカおじさんが騎士団に入れたんだよ!」
「え、じゃああいつはこの国の出身じゃないのか?」
「違うよ?あ、でもママが、白いお姉ちゃんにはあまり近づかない様にって言ってたけどなんでなんだろ?」
「クレーのママって……」
「あ、見えて来たよ!モンド城!きれー!」
クレーが指さした先を見て、思わず感嘆の声を上げる。初めて見た、龍災の荒れた天気ではなく、青空を背景にしたモンド城がそこにはあった。ああ、この感覚は。お兄ちゃんと一緒に、新しい世界に来たときのあの感覚と……。
「うん、綺麗だね」
「急ごうぜ!おいら、もうお腹空いたぞ!ぺこぺこだ!」
「クレーも食べていい?」
「もちろんだ!ほら、行こうぜ蛍!」
「うん」
……なんだろう。誰かに見られてる気がする。
その、遥か上空にて。空中に寝っ転がる灰の衣装をドレス風に纏ったグレメリーがいた。
「あぶなっ。あてしの視線に気づくなんて、さすが王子様の妹ちゃんだあ。
ドラゴンスパインに視線を向け、自分たちが蘇らせた魔神の生存を確認してほくそ笑む。
「さすが、毒沼から生まれたせいで色が違くて仲間からも除け者にされた毒性水スライムちゃんから魔神になっただけはあるねえ。あんな小さなわずかな隙間から逃れるなんて。……あれ?ちょっと待って?それは不味いかも。一応生の執政の生み出したバケモノだから、そんなの使ったらさすがにモンドどころかテイワット中が取り返しつかなく……待って待って待って!?」
想定外の事態に悲鳴を上げるグレメリーの叫びは、残念ながら誰にも、帰還中のヘウリアにも届かなかったという。
アルベドお兄ちゃんとやらに会いに行ったクレーと別れた私とパイモンは、騎士団本部に向かう途中でジンとファデュイの【淑女】の問答を目撃し、ハクアと合流。そのまま騎士団本部に向かうと、私がトワリンに最初に会った時に拾った紅い結晶が、私以外には触れない危険な代物だとわかってまた預かることに。さらに、今回の頑張りやトワリンを追っ払った功績から西風騎士団の栄誉騎士の称号をいただくこととなった。この世界で旅するにしても、肩書きはあった方が何かと便利だから嬉しいな。
「おめでとうございます、蛍。これで正式に仲間ですね!あれだけ強いのだから当然です!」
「正式じゃなくても仲間なのは変わらないぞ、ハクア。君は何かと理屈づける悪癖をなんとかするべきだ。蛍、君のお兄さんについては、尋ね人の張り紙や遠征に行っている騎士団からも得た情報を君に与えることにする。今回は本当にありがとう」
ハクアとジンに褒められ、照れくさくなって頬を掻く。でも、1人で偽トワリンをなんとかしたらしいハクアに比べるとな……。
「困ったときはお互い様だよ。それに私、神殿はともかくトワリンに関しては巻き込まれた火の粉を払っただけだし……栄誉騎士だなんて、いいのかな?」
「蛍、そこは謙遜するんじゃなくて誇るべきだぞ!経緯はどうあれ、すごいことをやったんだからな!」
「そうだぞ、蛍。あんまり謙遜し過ぎるとハクアみたいになるぞ」
「え。私みたいって何ですか?」
「ノエルを褒めたり、クレーに何かと理由をつけて爆弾を必要以上に使わせないのはいいのだけどね。そのために自分から大剣にぶつかったり、爆弾にぶつかったりする?ってことよ。本当に困ったちゃんなんだから……」
「ひどい!?いやいや、でも二人とも成長したでしょう?」
「やり方を考えろと言っているんだ。君は本当に、か……」
「?」
苦言を呈すリサと共にハクアを怒りながら何かを言いかけたジンが、私を見て口をつぐむ。か…なにを言いかけたんだろう?
「蛍。モンド城に来たばかりで神殿に行ったりして、疲れただろう。ゆっくり休むといい。宿は騎士団の宿舎の空き部屋を貸そう。あとでアンバーに案内させる。なにかわかったことがあれば来てくれ。風の加護があらんことを」
「部屋だってさ蛍!やったぞ、一国一城だぞ!」
「お、押さないでよパイモン……」
どうやらジンとリサとハクアはまだ話があるようで残るらしい。私はパイモンに押されるまま、騎士団本部を後にした。
「蛍、なんで言わなかったんだ?あの時、オイラたちが見たのはトワリンと結晶の他に……」
「……悪い人には見えなかったからね。もし言ってたら、トワリンを暴れさせてる犯人ってことになって、騒ぎ立てた結果、出てこなくなるかもでしょ?」
「おお、さすが蛍!考えてあるんだな!あの緑の野郎、何処に行ったら会えるかなあ……」
騎士団本部から離れて、パイモンに問いかけられた通り、私たちがアンバーと出会う直前、まどろみの森で見かけたのはトワリンと結晶だけじゃない。緑の服を着た、少女……いや、少年だろうか。その人物が、トワリンになにか話しかけていて、そこに私達が来たせいでトワリンが飛び去った。それが私達の見た全てだ。
「僕のことかな?」
「え?」
声が聞こえて、振り返る。騎士団本部から外れた、湖を見下ろす壁の縁に、緑の衣装を身に纏った彼はライアーを手に佇んでいた。それに、この声……あの時、トワリンと戦った時に聞こえた……。
「うわあ!?驚かせるなよな!」
「あははっ。話は風に乗せて聞かせてもらったよ。10年後に解決策が現れる……彼女の言う通りだ。トワリンを驚かせたときはそうは見えなかったけど、結晶の穢れが効かないのは間違いないよね」
風に乗せて。10年前。彼女の言う通り。トワリン。結晶の穢れ。気になる言葉がいっぱいだ。
「……ジンたち以外のモンドの人は、風魔龍って呼ぶのに名前で呼ぶなんて、トワリンと親しいの?」
「風魔龍だなんて呼び方、味気ないだろ?名前で呼ぶのが一番さ。そう思わないかい?君も旅人と呼ばれるよりは蛍、って名前で呼ばれた方がいいだろう?」
「うわっ、いきなり呼び捨てだなんて馴れ馴れしいぞ!」
「パイモンも人のこと言えなくない?でも、それはそうだと思う。もう知っているみたいだけど私は蛍。こっちは相棒で非常食のパイモンだよ。君の名前を聞かせてもらえるかな」
「だ・あ・れが非常食っだあ!この流れ、二回目だぞ!?」
「僕はウェンティ。吟遊詩人さ」
「あの時、助けてくれたのもウェンティ?」
「さあね。なんのこと?それより、ね。結晶を見せてもらえないかな?」
「いいけど……」
ウェンティと名乗った彼は笑顔ではぐらかしてきた。いつも仮面を被っているハクアよりはマシだけど胡散臭いな……。そう思いながら結晶を取り出すと、驚くべきことが起きていた。禍々しい赤だった結晶が、清純な青色に輝いていたのだ。まるで浄化されたかのように。いつの間に…?
「あれ、結晶が浄化されてる!?い、いつからだ!?」
「さっきまで赤く濁ってたのに……」
「やっぱりだ。これがトワリンが苦しんで流した涙だ。優しかったのに、今はこんな風に苦しんで、怒りに満ち溢れている……それだけじゃない。あの時現れた偽トワリンに対しての憎悪も膨らみ続けている」
そう真剣な表情を見せたウェンティは、軽く歌でトワリンとドゥリンの関係を教えてくれた。かつて、モンドを滅ぼさんとしたドゥリンを風神バルバトスの命令でトワリンが撃退したけど、その時受けた毒に蝕まれていると。説明を終えたウェンティは、紅い涙の結晶を取り出した。
「僕も涙の結晶を持っているんだ。浄化をお願いできるかな」
「やってみる」
意識を集中させて、穢れを取り除くイメージ……すると、みるみる内に結晶は蒼く染まった。それを満足げに手に取るウェンティ。
「君は本当に不思議な力を持ってるみたいだ。彼女は退魔しかできなかったけど、君の力はそれを遥かに凌駕しているかもしれない」
「彼女って誰のこと…?」
「僕の……古い友人さ。君は吟遊詩人の詩の主人公に選ばれる素質があるよ。でも、君のために詩を作っている暇はないんだ。こうしている今も、トワリンは怒りで自らを燃やしながら、あの偽トワリンを自らの命を使ってでも排除しようとしている……浄化してくれて本当にありがとう。作戦を思いついた。じゃあね」
「おい、何処に行くんだよ!?」
「モンドの、英雄の象徴さ」
そう言うと突風が巻き上がって思わず顔を庇い、再び視線を向けると、ウェンティはもうどこにもいなかった。……私を助けてくれたのも恐らく彼だ。それに今の風、まるで彼が操っていたかのような……まさか?
「パイモン、私達も行こう」
「お、おいどうしたんだよ!?」
「お兄ちゃんのことが何かわかるかもしれない」
「え、ええ!?」
グレメリー、ヘウリアから移ったのかポカをやらかす。ポカは感染する…?地味にダスタリオが元々は水スライム(毒)だったことも判明です。不定形の体はもともとでした。
ウェンティからしたら、10年前にエリゴルス戦でヘウリアに言われたことが現実になってるからそら嬉しい限り。原作のゲーム的ムーブはさすがにカットです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
現在へウリアと旅人のW主人公制ですが……
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ヘウリア視点メインで進める
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旅人視点メインで進める
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今みたいに交互にそれぞれの視点を進める
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交互だけど同じ時間軸じゃなく、進めていく
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作者の塩梅(ノリ)でやってどうぞ