今回は復活のドゥリンVSヘウリア。楽しんでいただけると幸いです。
毒の魔神ダスタリオは元を水スライムに由来する不定形の魔神である。魔神化した際に人型になれるようにはなったが、それでも元は水元素のスライムである。普段は人型ではあるが、生命の危機に瀕するとスライム型に戻ってしまう悪癖があった。
能力故に厚着が意味を成さないため必要最低限の薄着で、ただでさえ苦手な環境である雪山での能力行使。
突風が吹き荒び地上より凍てつく上空でのヘウリアとの取っ組み合い。
不定形の身体で極寒の氷水に落水し、なんとか這い出て来て身体が凍りつきそうなところに、容赦のない三節棍の一撃。
いくらなんでも致命傷である。故に生命の危機から際限なくドラゴンスパイン中の水分または水元素を取り込み、肥大化して回復していたダスタリオが顔を上げると、そこにはちょうどドラゴンスパインに眠る邪龍ドゥリンの未だに鼓動する心臓部が存在していて。
「……アハァ」
ドクン!と。死してなお力強い生命の脈動に、ダスタリオは目を奪われる。そして脳裏にフラッシュバックするのは、かつての死。レムリア人でもなく、今のフォンテーヌ人でもなく。魔神戦争時代のフォンテーヌに少数ながら住み着いていた旧フォンテーヌ人ともいうべき人間たちに、その毒性から生態系の頂点に立っていたのを担ぎ上げられ、神として崇められたダスタリオ。
彼らの居場所を守るために奮闘したものの、ピンチになるとスライムに戻ってしまうため、レムリアの神王レムスとの戦いで正体が露呈。自らの神が弱小魔物のスライムだと判明したことで掌を返した旧フォンテーヌ人に口汚く罵られたあとに見捨てられ、致命傷を負ったまま一人寂しく死んでいった孤独の最期。
そんな最期を迎えた、紫色の泥のようになって漂っていたところを回収され、復活させてくれたアビス教団の王子と姫。彼らに求められたことが、嬉しくて。やれるだけやった。頑張った。なのに。あのヘウリアとかいう塩の魔神が邪魔しただけで飽き足らず、自分は捨て駒なのだと、騙されていると言ってきた。
その言葉で戦意が喪失してたのは否定しない。薄々分かっていた。アビス教団が求めていたのは戦力となるトワリンを手中に収めるために憎悪を増幅させるための生贄だった。その目的のためにはトワリンが苦しんでいる元凶たる「邪龍ドゥリン」が最も適切で、現に色違いのトワリンでしかない擬態を行った自分にも反応していた。
求められていたのは自分ではなく、邪龍ドゥリンだ。トワリンが憎悪を向けたのは自分ではなく、邪龍ドゥリンだ。ヘウリアも危険視していたのは自分ではなく、邪龍ドゥリンだ。ああ、死してなおそんなに求められるなんて、羨ましい。羨望は嫉妬となり、嫉妬は欲望へと変わる。
「そうだ、本当にドゥリンになれば、王子様は喜ぶかな。騙されていたとしても、私がドゥリンになったら、姫様は褒めてくれるかな」
そんな湿った感情を吐露するダスタリオの身体が、ドラゴンスパイン中の氷元素から無理やり引き出した水元素を吸収して肥大化して広がっていく。邪龍ドゥリンの心臓が鼓動する洞窟から洪水のように湧き出た紫色の濁流は、いきなりの出来事で驚くしかないヒルチャールや、すぐに異変を察知して逃げようとしていたファデュイの構成員も飲み込み、ドロドロに溶かして取り込みながら、洞窟の外にある、巨大すぎてオブジェになっていた邪龍ドゥリンの骨をも取り込み、その怨嗟を心臓に注ぎ込むことで活性化させる。
毒液が肉となり、骨を組み立て文字通りの骨組みとし肉付けする。激しく脈動する心臓をそのうちに納めて閉じれば、その力を全身に行き渡らせて赤い血管の様な刻印が全身に刻まれた、雪山とほぼ同じ巨体が起き上がる。まるで早すぎた*1かのようにドロドロと崩れた肉体を有し、ところどころから骨が露出した様は、まさにドラゴンゾンビ。赤く光る目を持つ醜く黒い龍が、復活の宣言とばかりに咆哮を上げる。
「グゥウオオオオアアアアアァアァアアアッ!!!」
本来ならば「背理」と呼ばれる事件にて、魔女Bの預言通り徐々に復活せんとし、親と同じくする錬金術師アルベドと、同じ名を持つ小さな龍による「偉業」により、新たな道を歩むはずだった。しかし自らとあまりにも相性がいい毒の魔神の介入により、彼女と半ば融合する形で復活を果たしたそれの名は、
――――――毒魔龍ドゥリン・ダスタリオ
「なんで!ドゥリンが!復活することになるんですか!?五年後ぐらいならわかるんですけど!!」
「五年後?」
「いや、なんでもないです。ほら、説明!」
グレメリーを抱えてひた走る。着物姿だから若干動きにくい!けど、急がないと原作のストーリーが滅茶苦茶になる!
「そもそも!ダスタリオは倒しました!それがなんでドゥリンが生き返ることになってるんです!?またあのパチモンではなく!?」
「厳密には違うかもだけど、限りなく本物に近いドゥリンが復活しちゃったんだよ……ダスタリオちゃんが生きてたまではよかったんだけど、なんかドゥリンの心臓を見つけちゃって……何を考えたのか骨と一緒に取り込んじゃった」
「はい?」
ダスタリオあれで死んでないとかタフすぎないか。というかなんであんな悍ましいものを取り込む気になったんだ。正気を疑う。いや正気じゃないのかあれは。
「多分今頃体を完成させている頃だと思う。あてしも詳しくは知らないけど、ドゥリンがやばいのは知ってるよ?トワリンを刺激するために本物を使ったら本末転倒だから、ダスタリオに化けてもらおうって王子様も言ってたから。あ、やばいなって」
「王子様とやらはなんと?」
「今別行動してるから知らない……」
「つまり?現場監督の貴女がちゃんと見張ってなかったから最悪の事態になったと?」
「えへっ?」
詰め寄ると、私に抱えられたまま舌を出すグレメリー。本日二度目である。パイモン来て。
「さっきもそうですが、自分でやるならともかく他人にやられると苛つきますねこれは!」
「ポカしたヘウリアの悪癖じゃん?」
「そうでした親友でしたねこんちくしょう。ところで、なんでこの狐面の効果がないんです?」
ガイアたちから逃がしてくれた時から、この狐面にかけられた認識阻害の呪いが聞いてない様に感じるんだけど。
「あ、やっぱりなんかついてるんだそのお面。その呪い?があてしに干渉した瞬間焼け落ちてるから効かないんじゃない?」
「本当にチートですね。あなたなら炎神になれたのでは?」
「やだよ。天理のしもべだなんて。それに炎神ハボリムは代々人間が受け継ぐから仮にシトリウスやあてしが勝ち残ってもナタじゃなくて別のところの七執政になってたと思うよ」
「そういやそうでしたね」
そんな会話をしながら、風立ちの地を抜け、ダダウパの谷を横目に駆け抜け、雪山が見えてきた。先刻向かった際のアカツキワイナリー側の道は遠回りだから直線距離で来たけど、間に合うだろうか。そう、思っていた時だった。
「グゥウオオオオアアアアアァアァアアアッ!!!」
「冗談でしょ……!?」
雪山に隠れていたその巨体が、のそりと起き上る。ドラゴンスパインにあるオブジェになってるドゥリンの骨があるのは知っている。骨のサイズから逆算して、ドゥリンのサイズがドラゴンスパインとほぼ同じぐらいだとも考察されていた。だけど、これは……!?
「はえー、でっか……」
「説明不要ってやつですかねえ……」
どっかの怪獣王みたいなサイズのドラゴンゾンビが翼生えて飛び立とうとしているとか、本当に終わってる。飛ばしたらダメだ。すぐさま思考を戦闘に切り替える。グレメリーを投げ捨て、加速しながらホップ、ステップ、ジャンプ!某配管工のスーパースターの三段ジャンプの要領で空中に飛び出し、さらに空中に塩の粒子を飛ばしてそれを足場にスピードを緩めることなく空中を突き進む。
「間に合え……!!」
あの巨体、ただの武器じゃ無理だ。私の全体重を乗せれる……そう、足だ。足に塩を纏い、更に一点集中。駆け抜けた際の摩擦で炎を纏った右足を構え、全速力で振り抜く。イメージは、海賊王を目指す漫画の黒足コックの大技「悪魔風脚」の一つ。私は塩の魔神だからどっちかというと上位の「魔神風脚」の技がふさわしいんだろうけど、炎の色は赤いからこっちにする。名前的にも今の状況にぴったりだ。技名を叫ぶのは、気合が入るからあ!
「
「!」
今にも飛び立とうとしていた巨竜の横っ面に、炎を纏った右足が突き刺さる。体勢を崩すこともできなかったが、炎は毒を気体化させていくが、あまりにも層が分厚すぎてぶち抜けない…!?
「フッ。ゴガアッ!!」
「がはあ!?」
挙句には鼻で笑われ、巨大な前脚が伸びて来たかと思うと、蠅か何かの如く叩き落とされ、私は毒液に塗れて雪山の下の海に落ちてしまう。そして私は、泳げない。最悪、だ……。
「
もがきながら手を伸ばすが、届くはずもなく。力なく沈んでいくしかなかった。
このドゥリン・ダスタリオは、某巨神兵の如くドロドロに溶けているトワリンを大きくした感じの見た目になってます。本物のビジュがわかってもダスタリオが融合してるからっていう言い訳。本来ならちびドゥリン関連のあれで復活するのが歪められた感じになってます。
ダスタリオの民だった旧フォンテーヌ人は、いわゆる初代水神であるエゲリアの民である彼等でもレムリア人でもなく、島にもともと住んでいた先住民です。少数ながらいてもおかしくないよね。簡単に言うと因習村みたいなもので、そんなところで神に崇められたのがダスタリオの運の尽きでした。ダスタリオもまた魔神戦争の被害者ですね。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
ダスタリオの末路は?(ストーリーに関わるかどうかは未定)
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新たな邪龍ドゥリンとして倒される
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倒されるも弱体化しグレメリーに回収される
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本音を吐露してヘウリアに同情されて救済
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博士に目を付けられてファデュイに鹵獲
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アルベドが何とかする
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グレメリーに処刑される