塩の魔神のしょっぱい備忘録   作:放仮ごdz

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どうも、放仮ごです。昨日、今やってるイベントストーリーを終わらせたんですけどね。あまりにも救済したいキャラが出てきまして。悲劇が起ったの十年前らしいから救えるじゃん!と思い至って急遽書いた番外編です。それはそうと本日情報で、やっぱり奴は生きてたみたいですね。そう来なくちゃなあ…!

というわけで、イベント「波と岩礁の邂逅」にて登場した彼の話です。同イベントストーリーのネタバレがあるのでまだの方はお気をつけて。楽しんでいただけると幸いです。


10年前の小話①とある学者の話

 それは、ダークナヒーダを受け入れてしばらくのこと。草神自らダークナヒーダが代わる形でスメール中に蔓延する“死域”の対処をしていた時の事だった。死域に巻き込まれていた過去の遺物である遺跡ドレイクを茨で雁字搦めにして何もさせずに圧殺させていたダークナヒーダが、何かを思い出したかのように首を傾げたのだ。

 

 

「そういえば、シオン。覚えてる?ワタシたちがアルル村に救援に行くとき、変なことがあったわよね」

 

「え?ああ、遺跡ドレイクを利用して蟲どもを蹴散らしてたやつですか?」

 

 

 アルル村に急行する途中でアフマルの鬚を回収した時のことだ。エルマイト旅団の集落が砂漠各地にあるのだが、そのうちほとんどが遺跡ドレイクやら遺跡ハンターやらの攻撃の矛先を操って蟲軍団を相手に耐え凌いでいたのだ。おかげでそれらを集めて連合軍を率いてアルル村を助け、スメールシティへの決戦まで持って行けたわけだが……さすがに遺跡ドレイクたちは危ないので置いてきた。なので詳しくは聞けなかったのだが……。

 

 

「なにかあると?」

 

「ええ。シオン、貴方なら遺跡ドレイクの矛先を変えるなんてどうすればいいと思う?」

 

「それは……生物じゃありませんからね。少なくとも、原始的な方法では無理です。ハッキングするとか、例えば目標を誤認させるとか……?」

 

「それを、言い方は悪いけど教養がないエルマイト旅団にできると思う?」

 

「……なるほど。教令院の人間ですか」

 

 

 アザールの体制の時になにかしらやらかして砂漠に追放された学者がその技術を悪用したと考えてるわけか。さすがはダークナヒーダ。ナヒーダと違う「疑う」視点と知能を合わせるとすごいな。

 

 

「では早速当時の賢者に……いや、誰かもわからないのに当時なんてわかりませんね。教令院の所属学者の記録を見ましょう。追放処分を受けててそういう技術に長けた人間がいればビンゴです」

 

 

 教令院に戻り、アザールの資料……は正直捏造だらけで何の参考にもならなかったのだが、「重罪人リスト」などというあまりにも趣味の悪い名前のそれに書いている情報だけは確かだったようだ。

 

 

「いました。アシュヴァパティ……妙論派。あらゆる武器のテクノロジーに精通した武器技術の研究者で、半年前に教令院で禁忌を犯して砂漠に追放されたとありますね。巨大で強力なもの、小さいものの致命的なものといった過去から現在までの「機構」としての武器技術の研究に熱心だったようです。持論は「妙論派のあらゆる学術が武器には凝縮されている」「武器とその技術は常にこの世界を前進させ続けた」だそうですが……なんともまあ、アザールのもとにいるには惜しい人材ですね」

 

 

 原作にいなかったはずの名前であるけど、思想自体はかなり先進的だと思う。いや、私が知っている海灯祭のあとだったらわからないけど。

 

 

「へえ。その禁忌って?」

 

「機密性の高い資料を無断で借りたこと、のようですね。よりにもよってアザールのいる教令院でそんなことしたらそりゃあ如何に優秀でも追放されるでしょうね」

 

「……でも、遺跡ドレイクってカーンルイア製なのよね?複製は難しいんじゃないかしら?」

 

「難しいでしょうねえ。ようわからん技術ですからあれ」

 

 

 【博士】がタルタルの任務で出てた秘密基地で製造だか改造だかをやってたみたいだけど、あれは【博士】が500年前の人間だというのが大きいだろう。少なくとも現代人には無理だと思う。たしか元はカーンルイアの耕運機……といってもこれはコードネームで、農業ではなく「土地は農具で耕すものではない、鉄と血で簒奪するものだ」という国是のもと作られた無人自律型の侵略兵器だという話だった気がする。スメールには超巨大な遺跡重機の成れの果てが眠っているけど、なんとまだ動いてビームを撃てる個体もある。あ、あとアビス教団の王子もしくは姫が遺跡重機を従えてた映像があったはずだから、多分カーンルイアの関係者の言う事は聞くっぽいね。どういうAI積んでいるのやら。……AI?

 

 

「あの、もしかしてですけど遺跡ドレイク自体を量産したんじゃないかもしれません」

 

「どういうこと?」

 

「恐らく、遺跡ドレイクの攻撃対象を誤認させて誘導する機械なんじゃないでしょうか。それならば、砂漠各地に眠る遺跡ドレイクをそのまま流用できます」

 

 

 遺跡重機系統は妙に頭がいいが、知能と言うほどではない。敵を見つけたら執拗に追い回して殲滅する、そういう単純な機械だ。だからその標的を変更できるのなら、それはもはや……。

 

 

「それは……兵器と言っても過言じゃないわね。あの時はアトラスの軍勢に使われていたけど、本来の用途は……」

 

「たしか、今日もアーカーシャを求める砂漠の民が来ているはずですよね。話を聞いてみましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、教令院から追放され砂漠を彷徨っていたときに拾ってくれたエルマイト旅団の集落で暮らしている。だが俺の技術の使い道はせいぜい子供達におもちゃを作ることしかできず、燻ぶっていた。学者が学術的研究を諦めることなんかできるわけがなかったのだ。特に遺跡ドレイクは、その自律機能こそ誰も再現できなかったが、俺は一種の囮装置を作ることで特定のターゲットに攻撃する様に仕向けることができれば、それも立派な武器となる。

 

 そんな折に、一度集落を見捨てて他所の集落に逃げていたという、評判が悪い男セネジェムが俺に目を付けた。諦めきれない俺が広げていた設計図を見てその有用性に気づいた欲深い奴は、俺の自尊心を言葉巧みに刺激して取引を持ち掛けてきたのだ。曰く、彼等は商売に長けているがそのための商品がない。故に資金と資材を用意するので作ってほしい、と。砂漠各地のエルマイト旅団がこぞって買おうとする価値がある、と。さらには俺が恩義を感じている集落の人間に被害が及ばない様に断ろうとした俺の懸念も、その集落に野心も争おうとする意思もないから問題ないと言い包められ……俺は、その取引に乗ってしまった。

 

 だがそれが間違いだったとわかった。俺が作りセルジェムの一派が売りさばいた誘導装置は、砂漠の火の海に変えてしまったのだ。セネジェムたちは商品を売るために販促行為として裏工作を行い、各地の集落が殺し合うように仕向けていたのだ。幸いと言うべきか、突如現れた蟲の軍勢を殲滅することに用いられたため被害は最小限で済んだが……許されることではなかった。

 

 

 

 蟲の魔神アトラスの災厄が終結してしばらくして。俺は、俺を拾ってくれた族長であるカエムワセトに全てを白状することに決めた。その前にセネジェムを呼び出し、協力関係を終わらせる旨を告げた。最近大賢者が変わったらしい教令院から手に入れたアーカーシャを身に着け、たっぷりモラを稼げたと笑ったセネジェムは、自分を受け入れてくれたにも関わらす集落を「こんな僻地」と吐き捨て離れようとした。その矢先に、それは起きた。

 

 

 爆音。そして、煌々と燃え盛る業火。何事かと見に行けば、俺を受け入れてくれた集落が火の海になっていた。それを行ったのは、遺跡ドレイクだった。そんなことができるものは、一つしか存在しない。俺の武器が、俺を拾ってくれた集落を襲ったのだ。

 

 

「な、なんで……ここは、襲われる理由なんか……」

 

「お前は最初に選択を間違えたんだ、砂漠に仇敵のいない旅団なんか存在しない。砂漠の人間には上出来だが、スメールシティから来たお前はそれを知らなかった。以前ここのオアシスの水源を奪おうとした連中が追い払われたことをずっと根に持っていたのさ」

 

「俺の作った武器を、彼等を恨む者たちに売ったのか!?よくもそんな真似を……お前たちが行き場を失った時!あの蟲どもに喰われようとしたとき!助け、受け入れてくれた恩人なんじゃないのか!?」

 

「相手に上乗せを要求するのに、ちょうどいいだろう?」

 

 

 そう吐き捨てたセネジェムを無視して、せめて誰か一人でも助けようと向かおうとしたとき、違和感を感じた。これほどの被害にも関わらず、死体がどこにも……?

 

 

「なるほどなるほど。いやあ、まさか【博士】やアザールと並ぶド外道がまだいたとは驚きですよ。貴方、フォンテーヌでもやっていけたんじゃないですか?貴方ほどのしたたかさがあれば貴族までのし上がれたでしょうね。ああ、もちろん?最終的にメロピデ要塞行きでしょうけどね」

 

「でも残念ね。貴方は他のエルマイト旅団を侮り、名前を偽装することすらしなかった。他の土地に顧客がいれば、学んでしまって厄介なことになっていたかもしれないけど。始めたてでよかったわ」

 

「ぐあっ!?なんだ、これは……!?」

 

 

 俺の背後で、セネジェムの悲鳴が聞こえ何事かと振り向けば、砂漠から伸びた茨の蔓が奴とその仲間全員に巻き付いて締め上げていた。こんな砂漠で茨だと…!?

 

 

「他のエルマイト旅団から証言をいただき、ウェネトに乗ってきてみれば、ノコノコとこの集落に遺跡ドレイクを誘導する馬鹿共が見えるじゃありませんか。ですが、砂漠の民にしては珍しく頭が回る外道です。逃がしたら最悪なことになる、ので?」

 

「先回りして、ワタシ自ら族長のカエムワセトに事情を説明して既に集落の住人は全員避難させたわ。下手人の貴方たちとアシュヴァパティは既に離れてたから気付かなかったみたいね?」

 

「な、何者だ…!なんなんだお前らはあ!」

 

 

 セネジェムが俺に向けて絶叫する。すると、俺の背後にいつの間にか二人の人物が立っていた。一人は黒髪に白い肌、翡翠の瞳を持つ教令院の賢者たちの服を改造したものを身に着けた人形のような美貌の女性。もう一人はその女性の左腕に座った、茨を思わせる色の小柄な幼女。女性はにっこりと笑みを浮かべ、幼女は呆れたような視線をセネジェムたちに向けていた。

 

 

「誰って……そのアーカーシャを通して見れば一目瞭然でしょうに。あ、それとも?見栄えだけを気にして手に入れたら満足して、ろくに使い方もわかりませんか?」

 

「仕方ないわね。ワタシがレクチャーしてあげるわ」

 

 

 そう言って幼女が指を振ると、セネジェムたちのアーカーシャ端末が点滅し、何かの情報を映し出したのか徐々にその顔色が青ざめていく。

 

 

「あ、あんたたちは……そんな、なんでこんな僻地に!」

 

「これでもスメールの責任者なんです。隅々まで見れないと務まりませんよ。改めまして、私は大賢者シオン。こちらは草神クラクサナリデビです。何かご質問はございますか?」

 

 

 シオンと名乗った女性の言葉に驚く。なんと……大賢者がアザールから変わったとは聞いていたが、このような若い女性とは。しかも、幽閉されていた草神様までここに……?しかしセネジェムは諦めない様で、身を捩って何とか引っこ抜いた手にリモコンの様なものを握っていた。それは…!?

 

 

「馬鹿な!貴様、自分たち諸共…!」

 

「そうだ、誘導装置はまだこの手にある!いくら大賢者と神様でも、遺跡ドレイクは倒せねえ!遺跡ドレイクと言えど、完全に殲滅できるわけじゃねえ!逃げれるチャンスがあるなら、やってやる!」

 

 

 そう叫び、スイッチを入れるセネジェム。すると村を燃やしていた遺跡ドレイクがこちらに向かってきていた。まずい、このままでは……!

 

 

「お逃げください、クラクサナリデビ様!大賢者!集落の人間が生きているなら、俺が囮に……!」

 

「そんな馬鹿なことをおっしゃらないでください。貴方の頭脳は、宝です。武器を作る人間が悪いとは言いませんが、真に悪いのは其の武器を使う人間です。武器と言うのは、他人を傷つける手段にも、身を守る手段にも……子供達を楽しませる手段にもなるのですよ」

 

「な、なにを……!」

 

 

 クラクサナリデビ様をその場に降ろした大賢者シオンが、無手で遺跡ドレイクに歩み寄っていく。その間にセネジェムたちは逃げようとしたが、クラクサナリデビ様が指フレームを向けると、茨がさらに伸びて完全に拘束してしまった。パンパンッと手を叩いたクラクサナリデビ様は、近くの岩を椅子の様にして座り込む。逃げる気はないらしい。

 

 

「安心して。彼女はワタシの……わたくしの大賢者シオン。このスメールの、守護者よ」

 

 

 途中から穏やかな雰囲気と色合いになったクラクサナリデビ様が、子供の様に目をキラキラ輝かせて前方に向け、俺もつられて視線を向けると、そこには。

 

 

「アトラスに比べたら、全然ですよこの単純AI!」

 

「む、無駄だ!そんな剣一本で勝てるわけがねえ!」

 

 

 ミサイルを、火球を、全て紙一重で回避しつつ歩み寄る大賢者シオンが、その手に煌めく何かを集束しているのが見えた。そうして形成されたのは、芸術品かのような純白の剣。セネジェムが負け惜しみとばかりに叫ぶ中、それを顔の前で構えた大賢者シオンの姿が、かき消えた。

 

 

「何か。言いましたか?」

 

 

 そして、一拍遅れて遺跡ドレイクの背後に立っていた大賢者シオンが返り血をとるかのように剣を振るうと、遺跡ドレイクの目に亀裂が入り、大爆発。大量殺戮兵器は、ただの一人によって消滅した。その光景に絶句するセネジェム。俺も同じ気分だ。あんなことができる人間がいるなんて……剣一本でアレを倒せるのか、やはり武器は無限の可能性が……!

 

 

 

「アシュヴァパティ。大賢者シオンとして命令します。教令院に戻りなさい。貴方の技術は、人が神と共に歩むために必要だ。もちろん、ここの集落の者たちもです。もう誰も、貧困になどさせません」

 

「……ああ、貴女が大賢者なら、何の憂いもない。このアシュヴァパティ、全力を捧げよう」

 

 

 こうして俺は、俺を拾ってくれた恩人たちに恩返しすることができた。賢者の一人にされたのは驚いたが……それはまた、別の話だ。




原作知識と現代知識を持つヘウリアと、知恵の神であるナヒーダ(ダークナヒーダ)が揃ったら無敵が過ぎる。まあ今更遺跡ドレイクに負けるわけがないよね。

アシュヴァパティさんの過去があまりにも、すぎたのでこうさせていただきました。住民だけ逃がして集落を襲わせたのは、セネジェムたちを油断させるためで、ナヒーダが事前に住民たちを安全なスメールシティに移住させると話をつけています。

次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。

ダスタリオの末路は?(ストーリーに関わるかどうかは未定)

  • 新たな邪龍ドゥリンとして倒される
  • 倒されるも弱体化しグレメリーに回収される
  • 本音を吐露してヘウリアに同情されて救済
  • 博士に目を付けられてファデュイに鹵獲
  • アルベドが何とかする
  • グレメリーに処刑される
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