荒瀧・最近出てくるたびにギャグ要員でしか無くて悲しい・一斗がメインの話となります。以前アンケートでヘウリアと絡ませるかで話題に出たぐらいかな?今作だと。楽しんでいただけたら幸いです。
これはいまより、十年ほどまえのおはなし。いなづまにすむげんきいっぱいの赤鬼は、ともだちと虫ずもうをするべく、“すごくつよくてりっぱな”オニカブトムシをさがしておりました。
なぜなら赤鬼は、れんせんれんぱいだったからです。すでに虫ずもうをしってから99ものたたかいをくりひろげていましたが、かれはけっしてかてませんでした。赤鬼は、たとえ子どもあいてのあそびでもぜんりょくでとりくむ男のなかの男。*1
くやしいので、よどおしつよいオニカブトムシをさがしていたとき、みどり色にかがやくながれ星がおちました。海をはさんだとなりのしまです。おどろいた赤鬼がいちじかんほどおよいでみにいくと、そこにはでっかいクレーターがありました。のぞきこむと、ふつうのものよりも小がらながらも、ほうせきのようにきらめく緑いろのこうかくをもつオニカブトムシ(?)がちゅうしんで、ヒルチャールにいじめられていました。オニカブトムシ(?)はとぼうとしますが、ヒルチャールになぐられてにげることができません。*2
赤鬼は、なにもかんがえずにヒルチャールたちにとびこみました。パンチ!キック!赤鬼はつよいのでヒルチャールをけちらして、よわったオニカブトムシ(?)をあわててひろいあげました。赤鬼はやさしいので、めずらしい色だからつよいにちがいないとか、そんなしたごころはありましたが、そのオニカブトムシ(?)をてあつくかんびょうしました。「ヒスイ」と名づけて、たべれそうなごはんをよういし、きずとよごれだらけの体をみがきあげ、どこにいくにもつれていき、まるできょうだいのようにともにすごしました。*3
たたかえるサイズにまで大きくなったので、ためしにと虫ずもうにだすと、あっというまにてきをたおしてしまいました。赤鬼はよろこびましたが、ヒスイはしあいがおわってもあいてをしつようにこうげきするあばれんぼうでした。赤鬼は友だちにあやまり、ヒスイをしかりました。わるいことをしたらちゃんとしかる、赤鬼をそだてたオニバーバのおしえです。ヒスイはめんくらっていましたが、しぶしぶとなっとくしました。げんきいっぱいにやんちゃするヒスイにふりまわされながらも、赤鬼はわるいとおもったことはちゃんとしかりました。たまにおこってはんげきしてくることもありましたが、そこは鬼いちぞくのがんじょうな体でへっちゃらです。*4
はん年もたつころには、ちっちゃかったヒスイは子どもよりちょっと大きいぐらいにせいちょうしました。ここまでくるとさすがの赤鬼もへんなことにきづきました。すると、かくしきれないとおもったのかヒスイはそのせなかをわって、そこから目にもうるわしい少女があらわれました。これには赤鬼もびっくりぎょうてんして、はだかのかのじょにあわててうわぎをわたしました。ヒスイはきんちょうしながらも自分のしょうたいをはなします。*5
かのじょのほんとうのなまえは、むしのまじんアトラス。スメールというくにであばれていましたが、よってたかったたくさんのまじんにおいつめられ、とどめをさされるちょくぜんにいそいでぶんれつし、いのちからがら海をわたってにげてきたぶんしん、それがヒスイなのでした。*6
せいたいけいのちょうてんにたっていたアトラスは、赤鬼にあうまでヒルチャールにすらまけてしまういまのじぶんのよわさにぜつぼうしてました。ほかのまじんにきづかれないほどじゃくたいかしたいま、いきることすらままなりません。そんなかのじょをひろい、むしょうでそだててくれてヒスイという名前までつけてくれた赤鬼は、ヒスイにとってここちいいそんざいでした。ヒスイはたしゃをじゅうりんすることしかコミュニケーションをしらなかったのです。かのじょはあたまがいいので、赤鬼が自分をオニカブトムシだと思ってそだててくれたことはわかっていました。そして、稲妻かくちをめぐるたびに、じぶんがスメールであばれたことがしれわたってることもしりました。*7
そんな赤鬼にじぶんのしょうたいがバレたヒスイは、オニカブトムシでないじぶんに赤鬼とそばにいるかちはないとおもったので、赤鬼のまえからさろうとしました。アトラスだとこわがられるのがいやだったのです。しかし赤鬼はばかでした。アトラスだかまじんだかいわれても、だからどうしたといっしゅうします。*8
「翡翠!お前がどこの誰かなんて関係ねえ!翡翠はこの俺様の兄妹分だ!」
そのことばに、ヒスイはほうけたかおになるとほほえんで、うなずきました。かのじょのりっぱなつのは、鬼いちぞくに見えないこともないので、赤鬼はヒスイをじぶんのかぞくだとふれまわってどうどうとともにくらしました。赤鬼があばれ、ヒスイがあらごとをちからづくでかいけつし、けっきょく赤鬼があやまるものの、あいてのげきりんにふれて二人でにげだすこともしょっちゅうでしたが、しあわせでした。*9
そのうち、赤鬼をおやぶんだとしたうわかものがつどい、一派となりました。なかには、ヒスイをにせものの鬼だとみぬいてといただそうとおそいかかってきた青鬼いちぞくのせいねんをかえりうちにして一派にいれたり、おやにきめられた巫女のしごとから逃げてきた少女もうけいれ、はみ出し者たちの派ばつとして赤鬼の一派は有名になりました。そしてきょうも、赤鬼はじしんまんまんに名乗るのです。*10
「俺の名は、荒瀧・唯我独尊・一斗!翡翠の兄貴分にして、荒瀧派の親分だあ!!わーはっはっは!」
……親分。せっかく絵本風にしてるんだから、もう少し上品にだな……ほら、翡翠姉さん。翡翠姉さんと親分の馴れ初めの話なんだからアンタからも何か言ってくれ。
「それでこそ、我の一斗……!」
あー……うん。卓也、マイクを下ろしてくれ。フォンテーヌからせっかく取り寄せたのにちゃんと機能を使えずにもったいないことしたな……ここらへんでお開きにしよう。え、なに?幕府から客?いったい何の用で……目狩り令だって?
雷神たる雷電将軍が治める島国、稲妻。そこは今、ここ一年ほどで急に政治方針が変わり、誰であろうと国内外の出入りを禁ずる「鎖国令」と、神の目を強制的に徴収する「目狩り令」を公布・実行し始めていた。
鎖国令自体は前々から一応存在していたのだが、規制がさらに厳しくなり恒久的な嵐で稲妻全体を囲まれることでそもそもに出入国が一部を除いて不可能。唯一許された離島の滞在にも複雑怪奇な許可の申請や莫大な費用……と言ってもほぼ少量で残りは実質的な賄賂であるそれや税金を要求され、滞在している商人は弾圧されているのが現状だ。
目狩り令は鎖国令ほど影響力はない。そもそも神の目の所持者が、テイワット全体においても二割いればいい方だからだ。しかし稲妻で神の目を所有していると発覚した者は例外なく没収され、神の目自体は雷神でも破壊出来ないために、回収後は稲妻城前の「千手百目神像」に嵌められ管理・死蔵されることとなる。問題は神の目を奪われたものの末路だ。元々、所有権さえあれば投棄したとしても戻ってくる神の目だが、神直々ならば没収することで所有権すら奪うことが可能であり、もし奪われると神の目を授かる切っ掛けとなった「渇望」、すなわち願いや情熱やそれに関する一切の記憶を失う危険性が存在し、酷いと人格障害や記憶障害に陥ることとなる。
これに異を唱えたのが、抵抗軍だ。過去の幕府に対して長年対立を燻らせている海祇島の珊瑚宮が、目狩り令に反抗する者達を取り込んで組織したもので、もう一年以上も幕府軍と小競り合いしている。正直に言って、雷電将軍が出向けばそれで片が付きそうな戦力差である。
そんな体制の中で大罪人とされ、しかして人々の英雄ともされる人物がいた。幕府自ら懸賞金として100万モラを提示して意地でも捕えんとしているほどの人物。
曰く、徴収において実行役であった幕府軍およそ30人を全滅させ逃走する(命に別状はなし)。
曰く、稲妻の妖怪の一種たる鬼一族の末裔で、身の丈はある金棒を軽々振り回す怪力自慢。
曰く、彼が現れるところには赤い雷が振り注ぎ、彼に仇なすすべてを駆逐する。故についた異名は「赤鬼」。
曰く、荒瀧派と呼ばれる子分たちの一人である少女が目狩り令で捕まった際に、自ら千手百目神像の前に現れ、幕府軍相手に民衆の前で大立ち回りを披露したあげくに「こいつは俺のもんだ!」と宣言して将軍の前から掻っ攫う。
曰く、鬼神の如き強さの子分がいる。その子分は兜虫を模した甲冑を身に着けた七尺はある大女で、彼曰く兄妹分らしい。噂によれば雷電将軍と激突して痛み分けを演じたとか。
曰く、彼が率いる荒瀧派は、自分が頭じゃないと気がすまないとして、熱心に勧誘している抵抗軍には入る気はないらしい。
曰く、曰く、曰く、曰く……彼は、稲妻における最後の希望である。その名を………
その日。神無塚にて、ひとりの子供が幕府軍の侍に追われていた。立派な甲冑を身に着けたその男の名は、
「はっはっはあ!どうした!魅せてみろ!神の寵愛の証を!」
「や、やだ!来ないで!」
子供が夢中で放った岩の礫を、目を見開いた笑顔のまま目にも留まらぬ斬撃で斬り捨てる穂希。子供にすら大人げなく本気を出すのは、侍として正々堂々の矜持か、それとも単なる外道か。その理由は関係ない。一つだけ確かなのは……今ここに、悪逆非道があることだ。そんな非道を、この男は許さない。
「てめえら!幕府軍!まぁた懲りずに目狩り令してんのかあ!?」
白髪に赤い二本角の青年が金棒を手に割り込んだ。凄まじいパワーに咄嗟に防いだものの弾き飛ばされる穂希。しかし乱入者が自身の目的の一人だと気付いて目をかっぴらいたまま醜悪な笑みを浮かべる。
「お前は、荒瀧派の大罪人「赤鬼」だな!勝負、勝負!今の一撃で貴様の力量は見抜いたり。その程度ではこの俺の相手にはならぬ!その首置いてけ!」
「ああ?「赤鬼」だなんて、そいつはてめえのことを「おい!人間!」って呼ぶのと一緒だぞ。よーし、大サービスだ!いいか!耳の穴かっぽじって、よーく聞いて覚えていきやがれ!俺の名は、荒瀧・天下無双・一斗!!目狩り令だなんて、雷様が許しても、この俺が許さねえ!」
そう啖呵を切った青年、一斗の金棒の一撃を今度は完全に防いで返しの刃で金棒を細切れに斬り捨てると、胸ぐらをつかんで一本背負いの要領で投げ飛ばす穂希。悪辣ながら、その実力は本物だった。
「なにぃ!?あいたあ!?」
「妖怪とはいえ、この程度の男を大罪人などとは……雷電将軍も人が悪い。覚悟!」
腰を強打して無防備な一斗に、振るわれる大太刀。次の瞬間、目にも留まらぬ高速で地を駆け抜けてきた小さな何かが穂希に飛び込み、その鎧ごと脇腹を抉り取る。何事か、と目を見開いた穂希が目にしたのは、自身の肉を咥えた蟲が、炎上して自壊する瞬間。ハンミョウ―――最速の蟲と名高いそれを模した魔物だった。
「なに、が……?」
左手で傷口を押さえ、片手で大太刀を構えて周囲を警戒する穂希。異様な気配が周囲に充満している。そして、その大元に。
「……なんだ?」
七尺*11はある女が、海を見下ろす崖の上に立っていた。腰まで届く赤い長髪は手入れされているのか艶やかに風に揺れ、白目が黒い緑色のツリ目で額から巨大なカブトムシを思わせる角が生え、豊満な肉体を覆う黒緑色を基調とした昆虫めいた甲殻の鎧が特徴の巨女だった。およそ稲妻人とは思えない風体に、疑問を覚えた直後に。瞬きした瞬間にはすぐ目の前に、彼女は立っていた。
「速い…!?」
「お前、我の一斗に、刃を向けたのか?」
「え、いや……」
大柄なはずの自分より大きい女に、冷や汗を流す穂希。しかし、彼の脳裏ではこの女こそが「赤鬼」の理由だと察し、近づいてきたのをいいことにその首を断ち切ろうとした。しかし、甲殻に覆われてないはずのその首に刃は通らない。柔肌にしか見えないその皮膚は傷一つついていない。自身を冷えた目で見降ろしたその手が伸び、死を覚悟する穂希。
「おい翡翠。俺様の前で、殺しはご法度だぞ!約束したよな?」
「―――だって。命拾いしたな?」
「っ……」
自分より弱いはずの一斗の鶴の一声で、穂希は頭部を掴まれわしゃわしゃとされただけで解放された。翡翠と呼ばれた女が見守る中で、自身が先ほどまで追っていた子供に手を差し出す一斗に、屈辱が募る。大太刀を握った手に力がこもる。せめて一斗の首だけでも獲らんと翡翠の背後から剣を振り上げ……。
「蟲の複眼は、お前の愚行を見逃さない」
「がはああっ!?」
翡翠に顔面を鷲掴みにされ、持ち上げられる穂希。二度目はない、とばかりに地面に叩きつけられる。鎧の下で強打し、身動きが取れない自分に一斗が驚いている。屈辱である。
「おいおい翡翠、またやったな?」
「一斗のお願いだから殺さないでやっただけ喜んでほしい」
「殺すのはダメだって何度言えばわかるんだ翡翠。いいか、お天道様に顔向けできないことだけはやっちゃいけねえんだ!それを守らねえなら、荒瀧派から出て行ってもらうからな!」
「一斗は我の所有物だから一緒に出て行くんだな?」
「お前が俺様の妹分なんだぞ。俺より大きくなりやがって。たしかに幕府のやり方は気に入らねえが、それでも通す道理はある。お前は忍たちから嫌われたくないだろ?」
「……それは嫌だ」
「そうだろう?ほら、このチビを連れてって飯にするぞ。そんでその後に家に送り届けるんだ。……翡翠、その恰好じゃ怖がっちまうだろ。ほら、脱げ脱げ」
「わかった」
そう言って、どういう原理か鎧と角が消えて翠色の着物……といっても丈があっておらずぱっつんぱっつんのそれを着た姿になる翡翠。それでも身長が高いので目立っているが、バケモノには少なくとも見えない。去っていく彼らを、視線で追うことしかできない。すると、一斗と子供が歩いて行った方向についていこうとしていた翡翠が、こちらの視線に気づいたのか振り返って。
「雷神に伝えろ。我の一斗を傷つけるなら許さない、とな」
白目が黒い緑色のツリ目が見開かれて睨む翡翠への恐怖に、穂希はついに失神。発見されたのは、半日後のことであった。
何故なら赤鬼は、連戦連敗だったからです。既に虫相撲を知ってから99もの戦いを繰り広げていましたが、彼は決して勝てませんでした。赤鬼は、例え子供相手の遊びでも全力で取り組む男の中の男。
まさかまさかの生き残っていたアトラスが一斗の妹分として絆されていた!はい、生きてました。さすがに全盛期ほどの力はありませんけど、雷電将軍を追い返すぐらいはできる強さを持ってます。
アトラスの生存ルートを考えた時、どうすればまた暴れさせられないようにできるか、と考えたら一斗しかありませんでした。馬鹿は世界を救う。
翡翠と言う名でオニカブトムシとして一斗に世話されて、初めて弱者としての生活で絆されちゃった結果、「一斗は自分の所有物だから言うことぐらい聞いてやろう」な感じになってますが、本質は全然変わってません。一斗に嫌われるとショックを受けるのでしぶしぶいうことを聞くけど、隙あらば平気で命を取りに行ってるのがまんま本性です。
一応蟲軍団は、一度披露した際にオニバーバから「生態系を壊しかねないねえ」と苦言を呈され、一斗の傍にいるために「召喚はできるが役割を終えたら自壊する」とプログラミングし直してます。ヘウリアの塩の花弁と似た感じ。また、荒瀧派のみんなのことは、慕ってくれているのもあって普通に好きです。
あと、オリジナルキャラである侍、
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
10年共に過ごした荒瀧一斗なら翡翠を……
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任せられる。たまに小話とか見たい
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任せられる。稲妻での活躍が楽しみ
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任せられない、雷電将軍に討伐されるべき
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任せられない。俺にくれ
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いいぞもっとやれ