ヘウリアの青春のある日。楽しんでいただけたら幸いです。
はてさて。ヘウリアの「中の人」は結構後から原神を始めたため、そのイベントを動画でしか知らないために違和感に気づいていなかったが、グゥオパァーは力も知能も失い、自分が魔神だったことですら理解できなくなってしまった竈神マルコシアスのなれの果て、というのが本来の姿である。なのにも関わらず、今でもヘウリアと喧嘩友達でいるのには、一つ
それはシトリウスを倒して璃月で名を馳せた後に、グレメリーと友人関係になったヘウリアのその後の話。自分の都市があるにも関わらず、暇さえあればモラクスと
「ぎゃああ!?」
「はっはっは!どうしたヘウリア!魔神ですらない我に勝てない様ではまだまだだぞ!」
「うるっせえんですよ浮舎!!せっかく魈まで倒して四人の仙衆夜叉を下したんです!四本腕とかずるいんですよ!?この、カイリキー*1!両面宿儺*2!」
「ハハハッ、まったくわからないが誉め言葉なのはわかるぞ!」
「チートだってんですよ!このポジティブ野郎!」
「ちーと?ぽじてぶ?ヘウリアはいろんな言葉を知っているな!」
いつものお淑やか(笑)はどこへやら。豪胆に笑う四本の強靭な腕と紫の模様、屈強な体が特徴的な男……岩王帝君の配下たる夜叉たちの中でも最も強き五人である仙衆夜叉……その長たる騰蛇大元帥、浮舎に一本背負いされて怒鳴り散らすヘウリア。今回はモラクスの指示で仙衆夜叉相手に勝ち抜き勝負をしていた。武器なし元素無しでの組手である。
「私達が兄者より弱いみたいに言われて、少し複雑ね……」
「私達が浮舎の兄者より弱いのは認めるけど、それでも仙衆夜叉の私達に勝ててるヘウリア様の方がおかしいかと……」
「うむ……あのヘウリア殿に似合う衣装はどういう装飾にするべきか……やはり白か、いや白を引き立てる黒も捨てがたい……どう思う、金鵬?」
「どうでもいい……だが、あれで帝君に師事する前は戦いとは無縁だったとは、信じがたいな」
「浮舎に喧嘩売れるのすごいよねえ。私なんかビビって何もできないよぉ」
「帰終……魔神としてそれはどうかと思うわ」
「浮舎と渡り合える者の方が少ないからな。ヘウリアはよくやっている」
「あてしの熱線も軽々避けるからねえヘウリア」
火鼠大将の応達、螺巻大将の伐難、心猿大将の弥怒、金鵬大将の魈、塵の魔神ハーゲントゥス、歌塵浪市真君、岩王帝君のモラクス、そして現在はこの場にいる全員に認知された状態で逆さまに胡坐をかいて器用にお茶を啜っている灰の魔神グレメリーたちが、お茶を飲み茶菓子を食べながらそう零す。ヘウリアの修行は、戦争がないひと時の日常を象徴する光景になっていた。
「だらっしゃああ!」
「おおっ、威力が増したな。その意気だぞ、ヘウリア!」
「ほあぁあぁあああっ!?」
塩を右手に集めて質量を上げて放った渾身のアッパーカットを、軽々と片手で受け止められたばかりか、そのままブンッと天高く放り投げられるヘウリア。咄嗟に塩をばら撒いて空中に固定しその上を歩くことで距離を取らんとしたが、当たり前の様に空気の面を蹴って迫ってきた浮舎の掴みかかりを、その巨腕を跳び箱でも乗り越えるかのようにして頭上を取り、回避。右足に塩を集束し、左足の下に塩でしっかりとした足場を形成。腰をしっかり入れたハイキックを浮舎の頭部に叩き込むも、浮舎はなんと自ら頭突きすることで衝突のタイミングをずらすことで威力を殺し、面食らったヘウリアの腹部に右腕二本による二連パンチが突き刺さり、ついにダウン。浮舎に身を預けるように崩れ落ち、勢いをつけながらも繊細な動きで着地した浮舎により草地に寝かされた。
「空中での足場を作っての全力の蹴りはやられたと思ったぞ。貴殿は強き戦士になるぞ、ヘウリア!」
「うるせーんですよ自分の力の制御ぐらいできないと私の目的ができねえってだけですよ……ああ、私はまだまだ弱いです……」
「「「「「「「「弱い……?」」」」」」」」
強面を満面の笑みにして褒め称える浮舎に、自身への無力感からか地面に顔を向けてうじうじしだすヘウリアに、ギャラリー揃って首を傾げる。するとそこに、来客を伝える兵士の伝令が来て。やってきたのは、人間大の狸のような色合いの
「やむぅ!」
「おお、マルコシアスか。息災だったか?」
「むむぅ!」
「なに、俺と帰終、ヘウリアとお前は盟友なんだ。助太刀の礼などいらん」
「あ、マルコだ!元気してた?」
「むぬぬぅ!」
「え、ちゃんとマルコシアスってフルネームで呼べって?白亜と同じ愛称だよ、仲がよさそうでしょ?」
彼は竈の魔神マルコシアスが自らの民に食と温もりを与えるため分裂した個体の一つだった。分裂しながらも数多の魔神と渡り合える力を持ち、温厚でありながら武力を持つモラクスと同じ規格外の一人であった。ちなみに人の言葉は喋れぬが、魔神や仙人は意思疎通ができる。
「今日はピリ辛キムチ鍋の材料を持ってきたからこれから作る、だと?それはいい、ちょうどここにいる皆が鍛錬したばかりで腹を空かせている」
「え、今から鍋作るんですか?そんな長いこと待たないといけないぐらいなら私が軽食作りますよ?」
すると、苦言を呈したのはヘウリア。マルコシアスと共々、璃月を代表する食文化を形成した一人、なのではあるのだが。この二人自体の相性はそこまでいいわけではなかった。
「むうう!!」
「え、なんですか?ただ芋を切って油で揚げて塩をまぶしただけのものを料理とは認めない?またその話ですか?いいですか、美味しくて、お手軽で、量も作れて、見た目もよく、なにより速い!!食べる者を満足させられてるのだからこれが至高でしょう!」
「むぅ!むぅううう!!」
「はい?手間暇かけて、試行錯誤を重ねて味の組み合わせを研究し、栄養もきちんと考えている結論付けた味に勝るものなしぃ?美味しいのは認めますが、貴方のは作る時間がかかりすぎるんですよ!そんなに待たされた挙句に熱々だから冷めるのを待たないといけない、お腹を減らした人たちには酷すぎます!あとこの夏に鍋とか正気ですか!?」
「むう!ぬぅ!むうう!!」
「なんですって?汗を流せるから体にもいいし、空腹もまた味を引き立たせるスパイスだあ?んな空腹任せの味なんか本物の味なわけないでしょうが!!え、そもそもあんな油で揚げた炭水化物は体に悪い?んなこと承知の上です!体に悪いとわかっていてでも食べたくなる罪の味!これこそ至高の領域!ビバ!ジャンキー!」
「ぬぬぬぬぅ!」
「はあ!?そんなものを子供の頃から食べさせて、璃月の民を堕落させるつもりか?ですって?そもそもですねえ、璃月の料理は凝ったものが多い割に味気ないんですよ!辛いか塩味か優しい味かそんなんばっかでしょう!そんな食生活が嫌だからフライドポテトを作ったことに文句は言わせませんよ!?はい?栄養が悪いと自覚してるなら、栄養も考えた料理はないのか、ですって?えーと、牛の乳と油を合わせたもので似たトウモロコシとかどうですか?バターコーンっていうんですけど……また油か、ですって?油の何が悪いんだああああああああ!!」
ついには手が出るヘウリアの拳と、マルコシアスのモフモフながら筋肉が詰まった拳が交差。見事なクロスカウンターが突き刺さり、両者ともに倒れるとすぐに起き上がって殴り合いに発展する。そもそも零から璃月特有の食文化を発展し続けたマルコシアスと、前世に置いて現代で研究され尽くされ完成されたジャンクフードの味が恋しいあまりにテイワットで自分で作り始めたヘウリア、相容れるわけがなかった。
「ハハハッ!いいぞヘウリア!怒ったお前は何より強い!俺にも匹敵しうる!」
「あははっ、いいぞもっとやれえ!あいたっ!?」
「し、塩神様と竈神が御乱心だあ!」
「騒ぎになったようだな」
「我は止めに入るべきか…?」
「やめとこう、兄者。巻き込まれたらワンチャン死ぬから」
「ふ、二人とも喧嘩しないで…?」
モラクスが腹を抱えて爆笑し、同じくお腹を抱えて空中で笑い転げていたグレメリーに余波で飛んできた石がぶつかり、戦争でも何でもないのに魔神同士の戦いを始めたことで兵士たちが慌て始め、夜叉や仙人も気を引き締める始末。慌てて止めに入る帰終。
「お、落ち着いて!?ね、白亜?私は厚切りホクホク揚げ芋、好きよ?」
「ええ当然です、この世界にも広がるべきなのです!まだパンがないから不可能ですが、ゆくゆくはハンバーガーも作って見せるんです!!」
「はんばーがー…?マルコシアス、わたし、キムチ鍋食べたいなあ?」
「む、むぅ!」
「はあ?自分はヘウリアより大人だからこれぐらいにしといてやる、実際に食べればこちらの真の料理を選ぶはずだ?上等ですよ!ならどっちが美味しいか勝負しようじゃないですか!!!」
帰終の尽力で、料理対決に落ち着いたその一幕は。モラクスたちや民全員が食した結果、同票に終わり。互いに食べた結果、どっちも美味しいのは認めてひとまず、幕は降ろされたのだが。
今から10年前、シトリウスを倒した後の復興途中の璃月港で。ピンばあやと鍾離が立会人としてグゥオパァーとして復活したマルコシアスと対面したヘウリア。今のグゥオパァーなら単純に自分の料理を食べて喜んでくれるはずだ、と本当に善意でポテトを差し出した。結果。グゥオパァーの渾身の跳び蹴りがヘウリアに突き刺さった。
「ぬむぅぁ!!」
「げふう!?」
「おや、マルコシアスが目覚めた?こんなことが……」
「魂の底から気に入らない味だったんだろうな、こんな方法で記憶を取り戻すとは……興味深いな」
曰く、油分が多すぎる、塩のかけ方も雜、大きさもまちまちで切り方も雜、昔は味は良かったのに作り方が雑になっている、腕が落ちたか!とダメ出ししまくるグゥオパァーに、ヘウリアも逆ギレ。仕返しに殴りかかろうとして、ピンばあやの仙術による衝撃波で吹き飛ばされ老いてもなお変わらぬ実力を思い知る羽目になったとかなんとか。
ちなみに腕が落ちたのではなく、そういう雜さが単に今の流行りなだけという、時代の流れではあったのだが。また、ヘウリアは初コンタクトでこれなのでそもそも記憶がなくなっていたことも気づいてない。こうしてヘウリアの友人の一人、マルコシアスは今日もヘウリアと口喧嘩を繰り広げるのだ。
マルコシアスは力を失う前からあの姿を大きくした感じだから、喋らせていいのか迷った結果こうしました。
喪った記憶を取り戻させるヘウリアの衝撃よ。ヘウリアがドットーレやアザールとは別の意味で遠慮せず怒鳴り合える相手、マルコシアス。仙衆夜叉のみんなとも仲良しです。
次回も楽しみにしていただけると嬉しいです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。
次で100話、どんな話がいい?
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少し未来の物語
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ヘウリアの「中の人」の前世について
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1年前の稲妻で国外追放された事件について
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一方その頃、博士は今