逆襲のギュネイ   作:黄金鉄塊騎士

9 / 9
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第二章 三話

 

 

インダストリアル7、造成区画。

 

 

バナージ・リンクスは、隣を走るオードリー・バーンの手を強く握っていた。

 

 

マリーダ・クルスたちの追跡を振り切る際、バナージの脳裏を過ったのは、皮肉にもつい数時間前まで「補習」に付き合ってくれていた少女、クェスの存在だった。

クェスの存在だった。

 

(……クレスタ。君があの時、さりげなく工専のマスターキーを貸してくれなかったら、今頃捕まっていた)

 

 

クレスタは「忘れ物しちゃった。バナージ、これ持ってて。返却は明日でいいから」と、茶目っ気たっぷりにカードキーを渡してきた。

 

その「偶然」のおかげで、今バナージは封鎖された隔壁を次々と突破できている。

 

(……おれは、彼女のために動いているんじゃない。オードリーが言う『戦争』を止めるためだ。個人的な感情じゃない、これは義務なんだ……!)

 

 

バナージは自分に言い聞かせた。

 

オードリーが空から落ちてきた瞬間、自分の中でズレていた歯車が噛み合った感覚。

 

それを「恋」と認めるには、クレスタへの不義理を感じ、何よりオードリーの背負う目的が重すぎた。

 

 

彼は自分を納得させるために、これは「正義」、もしくは「運命」なのだと心の中で何度も言い訳を繰り返した。

 

 

 

 

 

同じ頃、コロニー外縁に停泊するガランシェールのブリッジでは、グラーブ・ガスが腕を組み、刻々と変化する戦術モニターを凝視していた。

グラーブ・ガスが腕を組み、刻々と変化する戦術モニターを凝視していた。

 

 

「……やはり来たか。ロンド・ベルの巡洋艦、配置についているな」

 

 

グラーブはあえてカーディアスとの直接接触を避けていた。

 

自分のような「先を知りすぎている亡霊」が物語の中枢に踏み込めば、バナージの覚悟も、世界が辿るべき試練も霧散してしまう。

バナージの覚悟も、世界が辿るべき試練も霧散してしまう。

 

彼の今回の任務は、この後の「撤退」における被害を最小限に抑えること。

 

 

「キャプテン。財団の内部で情報が漏れている。

……マーサ・ビスト・カーバイン。あの女が、交渉を意図的に壊そうとしている」

 

 

「……マーサだと? 自分の兄が進めている取引をか」

 

 

ジンネマンの言葉に、グラーブは短く頷いた。

 

マーサ。

地球連邦の既得権益を体現し、宇宙世紀の均衡を暴力で維持しようとする冷徹な女。

今回の「箱」の譲渡を阻止すべくロンド・ベルを動かしたのは彼女の仕業だ。

 

(……分かってはいるが、止めようがない。

ここでマーサの介入を潰せば、バナージはユニコーンに乗る理由を失い、ラプラスの箱はただの火種として財団の中に埋もれる。……未来の最適解は、この地獄を通り抜けた先にある)

 

 

グラーブは歯を食いしばり、モニターを見つめた。

友軍のギラ・ズールが撃墜される光を、冷徹な観測者として見届ける。

それが、彼の選んだ役割だった。

 

 

 

 

 

メガラニカ内部、ビスト邸。バナージとオードリーはカーディアス・ビストと対峙していた。

 

 

「必要ない」

 

 

オードリーの言葉が、バナージの胸に鋭い刺となって突き刺さる。

 

自分が必要だと言ってほしかった。自分の居場所を認めてほしかった。その願いは、一国の姫君としての責任を負う彼女によって、無残に拒絶された。

 

 

「あなたは、もう私に関わらない方がいい」

 

 

バナージはよろめきながら屋敷を去る。

 

その背中を、屋敷の通信用回線を通じて傍受していたクェスが、冷たい微笑を浮かべて見ていた。

 

彼女は、バナージが逃走の際に使ったマスターキーから、彼のバイタルデータと位置情報を完璧に補足していた。

 

 

「……かわいそうなバナージ。

あんなに必死になって助けたのに、最後は一人ぼっち。

……でもね、仕方ないことなの。君の覚悟がないと、一角獣は目覚めないんだから」

 

クェスの手元には、グラーブから託された「NT-D」という単語の解析データが表示されていた。彼女は、バナージへの憐憫を、スパイとしての達成感で上書きするように、次の操作へと指を動かした。

 

 

 

 

 

爆音。そして火炎。

インダストリアル7は、マーサ・ビスト・カーバインが放った「猟犬」たちによって無秩序な戦場と化した。

 

 

「……マリーダ、出撃だ! 逃走経路を確保しろ!」

 

 

グラーブの怒声がブリッジに響く。

 

彼は自らも、パラオへの緊急回航を視野に入れ、撤退戦の指揮を執った。

 

一方、バナージは死にゆく父、カーディアスから「ユニコーンガンダム」を託されていた。

 

 

「お前の……たった一つの、望み……」

 

 

バイオメトリクス・レジストが完了し、真っ白な巨体が炎を裂いて立ち上がる。

その瞬間、クェスの端末が激しく明滅した。

 

 

「……来た! 起動を確認! バナージ、君の代償による覚悟……見せてもらうよ!」

 

 

グラーブは、モニター越しにユニコーンがクシャトリヤを押し返していく様を見ていた。

 

 

 

「ここから、出ていけええええええっ!!!」

 

 

(……始まったか。マーサの筋書き通り、だが俺たちの戦いはここからだ。バナージ、お前の純粋さがこの絶望を塗り替えるまで、俺は亡霊としてお前を見届けよう)

 

 

 

白い一角獣が宇宙へと飛び出す。

それは、少年の幼い自己弁護が終わり、過酷な「現実」という名の戦争へ足を踏み入れた瞬間だった。

 

 

 

 

 




UCのOVAが16年前、アニメが10年前ってマジ?

久々に見ても作画等クオリティ高すぎると感じました。
あと単純にミネバが可愛すぎる。
ちょっと妬ましいだけでバナージ君は主人公として大好きです!

クレスタというクェスの偽名が入っていなかった所を訂正しました。

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