セクハラ提督と大淀先生のちょっとためになる話 作:同人誌は純文学
時刻は夕食時。提督は約束通り、大淀特製の「地獄の激辛カレー」と格闘していた。
提督「カハッ、ゴホッ……! か、辛い……! でも、大淀の愛情(という名の唐辛子)が喉を焼く……!」
大淀「……さっきの支離滅裂な論理への罰です。ちゃんと完食してくださいね?」
大淀は冷たい視線を送りつつも、手元にはしっかり氷水を用意して、いつでも差し出せる準備をしている。
大淀「実は三段論法とは演繹法の考え方なんです。次はその逆、帰納法について勉強していきましょう」
【大淀のロジカルシンキング講座:帰納法】
大淀「帰納法とは、複数の事実(具体)から共通点を見つけ出し、結論や法則(抽象)を導き出す推論のことです」
具体例1:提督は今日、大淀の服に手を入れた。
具体例2:提督は昨日、大和のスカートをめくろうとした。
具体例3:提督は一昨日、鹿島に抱きついた。
帰納的結論:「うちの提督は、呼吸をするようにセクハラをする」
大淀「ほら、完璧な帰納法ですね?」
提督「結論が身も蓋もねぇ……!ゲホッ、」
提督が激辛カレーでむせると「スッ」と氷水を差し出される。
大淀「はい、どうぞ。演繹法は『前提が正しければ、必ず結論も正しい』という強さがありますが、帰納法は『事例が増えるほど、結論の信頼性が増す』という特徴があります。……つまり、提督がセクハラを重ねるほど、私の結論は真実に近づくわけです」
提督「ぐぬぬ……。じゃあさ、大淀。これも帰納法で証明できる?」
提督は水を一気に飲み干すと、少しだけ真面目な顔で大淀を見上げた。
具体1:大淀は口では怒るけど、いつも俺に勉強を教えてくれる。
具体2:大淀は『激辛』と言いながら、実は俺が食べられるギリギリのラインを狙って作ってくれた。
具体3:今、大淀は俺がむせた瞬間に、頼んでもないのに水を差し出した」
大淀「……。……それが、何か?」
提督「帰納的結論:大淀は、なんだかんだ言って俺のことが大好きである。 ……どうよ、この推論の精度は!」
大淀「……。……。……提督」
大淀は一瞬、言葉を失って固まった。そして、顔に一気に血が上る。
大淀「……それは、データのサンプリングが偏っています!統計学的に有意な差とは認められません!はい、この話は終わり!カレー、全部食べてください!!」
提督「あ、待って!鼻に激辛ルーが入った!ティッシュ!ティッシュで拭いて大淀ちゃん!!」
大淀「もう……!じっとしていてください!ほら、チンして」
大淀に鼻をかんでもらい、至近距離で見つめ合っていた提督は、唐突に不敵な笑みを浮かべた。
提督「……大淀。お前は今、俺が明日も明後日も、未来永劫セクハラをすると思ってるだろ?」
大淀「思っていますし、確信しています。私の脳内データベースによれば、その確率は99.9%を超えていますね」
提督「甘い!甘すぎるぞ大淀!それこそが『帰納法的推論の限界』なんだよ!」
大淀「……はぁ?限界、ですか?」
提督は、カレーの刺激で真っ赤になった顔のまま、ビシッと人差し指を突き立てました。
提督「いいか、帰納法ってのは、過去のデータの積み重ねでしかない。『今までずっとこうだったから、次もこうなるはずだ』っていう推論に過ぎないんだ!
100万羽の白鳥が白かったからといって、100万1羽目が黒くないという保証はどこにもない……これを『ブラックスワン』って言うんだぜ!」
大淀「……。……驚きました。まさか貴方の口から、帰納法の『反証可能性』や『一般化の飛躍』に関する指摘が出るとは」
提督「つまり!俺が明日から、突然『一切お触り禁止の超ストイック真面目提督』に豹変する可能性を、帰納法では否定できないってことだ!どうだ、まいったか!」
大淀「………………」
大淀はしばし沈黙する。提督の言うことは、論理学的には確かに正論だ。どれだけ過去がセクハラまみれでも、未来の行動を100%予測することは理論上不可能である。
大淀「……。……。……ふふっ。あはははは!」
提督「え、何、急に笑って。怖いんだけど」
大淀「……いえ。あまりに滑稽で。提督、それなら『仮説検証』といきましょうか。貴方が明日、一切の不適切な行動を慎み、真面目な『ウルトラスーパージーニアス提督』になれるかどうか……」
大淀は、提督の耳元に顔を近づけ、挑戦的に、そして少しだけ艶っぽく囁いた。
大淀「もし明日、貴方が一度も私に触れなかったら……明後日の夕食は、貴方の好きなものを何でも作って、何でも言うことを聞いてあげますよ?」
提督「……!!ま、マジで!?ステーキ!?それとも……」
大淀「ええ。ただし。もし一度でも指が私に触れたら、来月からの給料明細の管理権は完全に私が握ります。課金は一切禁止です」
提督「ぐっ……!! それは死刑宣告に近い……!」
大淀「さあ、帰納法を裏切ってみてください。……それと提督、最後にもう一つ」
【大淀大先生の追加講座:思考の深化】
大淀「論理的思考や多角的視点を高めるには、まず『なぜ?(Why)』を5回繰り返すこと。そして、『逆の立場ならどう考えるか?』という反証を常に自分にぶつけることです」
論理的思考を高めるコツ:「自分の主張」に対して、「本当にそうか?」「例外はないか?」と自分でツッコミを入れ続けること。
多角的視点を高めるコツ:一つの事象を「自分」「相手」「第三者」「数年後の自分」「歴史的背景」など、カメラの視点を切り替えるように見ること。
大淀「例えば今、提督は『大淀に触りたい』という視点しかありませんが、多角的視点を持てば、『食堂の隅で赤城さんがお代わりを待っている視点』や、『この状況を週報に書かなければならない私の視点』も見えてくるはずですよ?」
提督(どうせ書かないくせに……)
大淀「では、今日学んだ『帰納法』『多角的視点』の仕上げとして、ウルトラスーパージーニアスな問題を出します。これが解けなければ、明後日のご褒美は抜きですよ?」
【問題】
提督は今、大淀を抱きしめています。
ここで、以下の2つの視点から、この状況を「論理的に肯定」または「批判」しなさい。
帰納的視点:「過去、提督に抱きつかれた艦娘たちの反応」から、今後の鎮守府の風紀を予測せよ。
多角的視点:「今、この食堂に入ってこようとしている憲兵さん」の視点から、提督にかけるべき第一声を考えよ。
大淀「さあ、提督。この腕の中にいる私を、言葉だけで論破してください?」