覇種の使い魔~輝輝臨臨~   作:豚煮込みうどん

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今回もオリジナルモブが出しゃばってます。戦争が起きるのは確定しちゃいましたけどこれから一気に話を進めたいようなのんびりしたい様な。

みなさん今年最後の更新です。皆様良いお年を!!

ちょっと修正しました。
エミットの名前を「カナリア」から『ジーエフ』に変更。


それぞれのマイミッション

トリステイン王国にアルビオン王国の敗北の報が届いたのはアンリエッタが魔法学院を訪れてから凡そ6日の後の事である。

 

ワルド子爵の裏切りによるウェールズ皇太子の暗殺、そこからのニューカッスルにおける最終決戦と王家の玉砕。

 

その凶報を伝えたのはその現場に居たアルビオン王国魔法衛士隊の王族近衛兵である女性隊員、『エミット・ジーエフ・ド・ラ・ギュロス』

アルビオンの名家ド・ラ・ギュロス家の女性騎士であり風のスクウェアであり二つ名『冥雷』を持つメイジだった。

 

エミットは幼い頃に落雷に打たれて瀕死に陥って以来、雷を操る魔法を類を見ない程の早さで極めた才女であり、何よりも優秀な軍人だった。

そんな彼女は決戦の前夜、ウェールズの身辺に偶然居合わせることとなったその場でワルドと闘い、偏在を破り尚且つワルドに重傷を負わせ、件の手紙を取り返し撤退に追い込むもその結果としてウェールズを守る事は叶わなかった…

 

エミットが直ぐにアルビオン国王ジェームスにその旨を報告すれば彼女に与えられたのは使い魔と共にトリステインへと亡命し、レコンキスタの目的と次はトリステインが狙われるであろう事を綴った新書を届けよという命令。

これが王とアルビオンという国から賜る最後の命令と理解し、国と共に果てるという誓いを己の身体と共にニューカッスルの断崖絶壁から投げ打ってエミットが口笛を吹く。

 

 

彼女の使い魔、大いなる白の翼サンダーバードがアルビオンの死を超えてトリステインの空を舞う…

 

 

_______

 

~ヴァリエール公爵side~

 

アルビオン王家の陥落の報を聞き、対策の為の相談に王城に来て鳥の骨に話を聞いてみればなんと言う事か…わしが後見人を務めていたワルドが裏切り者であった等…

 

「それでわしを呼びつけたのはもしやとは思うが我がヴァリエールに疑いを持っての事か?」

 

睨み付けるのはテーブルを挟んで対面に腰掛ける痩せぎすの男、トリステインの内政に血肉を捧げ、搾り取られた鳥の骨…

 

「ご冗談を良い召されるな。私はヴァリエール公がレコンキスタに通じておるとは思っておりません。こう言っては何ですが我々は互いに中々相成れぬ仲ですがそれも互いにトリステインを思うが故にこそ。

国内で最も信頼が出来る貴族は皮肉ですが政敵とも言える貴方なのです。」

 

鳥の骨、いやマザリーニ枢機卿がほとほと疲れ切った表情で本音を吐露する。

 

「ふん…世辞はいい、それはお互い様というモノでもあるしな。それで用件はなんだ?わしも忙しい、最近は国内も国外もきな臭いからな。」

 

用件は多々あるであろう事はいやでも分かる…神聖アルビオン帝国と名を変えたレコンキスタは一方的に我がトリステインに不可侵条約を押しつけてきた。

これを自国の防衛強化に当てられる時間と捉え、ありがたいと受け取るかレコンキスタの進行の準備を許す危険な時間と捉えるか…それは国家の有力貴族達の間で大きく揺れている。

しかし、レコンキスタが掲げる旗は「聖地の奪還と王家の打倒」いずれトリステインにその杖を向ける事は明らかであるし時間が経てば経つ程内部の裏切り者の動きを許す事となる…

 

「今一番の危惧はいずれ攻め込んで来るであろう敵を前に近く完全に結ばれるゲルマニアとの同盟を盾に安穏としている事だと私は考えます。然るに戦の備えは急務で御座います。」

 

「ふむ…通りだ。」

 

「そこでヴァリエール家からの国庫へ贈与して頂いた金に戦費として手を付けさせて頂きたい。無論国内の財源も放出し、戦後にはその功労に見合った報いを約束しよう。勿論殿下もご納得しておられます。」

 

鳥の骨の言う金とは我がヴァリエールの納めている税の事では無いだろう。例の金か…

 

「あの金で何をする?」

 

「まずは戦列艦の購入と傭兵の流出を防ぐ為に囲い込みを、その為にも兵糧の確保を行いまする。」

 

私と同じでこの鳥の骨も既に戦端がいずれ切られるだろうと睨んでいるか…わしはアルビオンに攻め入るというのであれば反対するが国土を守る闘いであるならば全力で支持してやろう。

 

「私は構わん、元々アレはルイズが作り出した金だからな。ルイズ自ら国の為に使って貰う為姫殿下個人に献上したのだ。」

 

「流石ですな…『無限財公爵』、さぞクルデンホルフ公国には疎ましく思われているでしょう。」

 

「下品な呼び方をしてくれるなマザリーニ殿。貴公までルイズの使い魔のあの二匹に金の価値しか見いだせて居らぬ愚昧な輩と同列か?」

 

態とらしい言葉に態とらしい返しの応酬、これこそトリステイン流の相手の真意を探る腹芸だろう…全く持って愉快で腹立たしい。

 

「失敬…しかしお忘れか?私もあの使い魔を使い魔品評会にてこの目でしかと見ております。アレが財貨に見える様な曇った眼ではこの魑魅魍魎が跋扈する王宮では生きておれませんよ。」

 

そう言えばこいつはわしより早くわしの可愛いルイズの使い魔を直接目にしていたのか…あれ?なんか腹が立ってきたぞ…

 

「まぁ良い、軍備の増強の件承知した。戦列艦はグラモン卿、兵糧はグランドプレ卿辺りと密に話を付けるが良かろう。ただし!!奴等は信用は置けても浪費家の大馬鹿だ、その点だけはしっかりと気をつける様にくれぐれも頼みましたぞ!!」

 

鳥の骨はわしがそう言うと満足そうに頷いた。

 

わしが無限財公爵等と揶揄される様になったのはルイズの使い魔の噂が王宮へと大量の…正に山の様な金と銀と共に送り届けられた事からだった…

正直財務官連中には悪いと思ったが急激とさえ言える勢いで潤った国庫に国中の貴族は驚いただろう…何をしてその様な財を築いたと多くの人間に問われ、すり寄られた…

 

それが二度目になった時、わしの耳に入ったのは誰が呼んだかヴァリエールの無限財という不愉快なあだ名であった。

 

 

 

__________

 

 

…時は遡り

 

 

~ルイズside~

 

姫様が魔法学園から去った日、あの夜の出来事は無事に無かった事になったわ…とは言っても正直私もよく覚えていないのだけど。

姫様も私もかなり飲まされて、起きた時にはエレオノール姉様に抱きしめられてベッドに寝ていた…翌朝ミス・ロングビルにかなり睨まれたけど鱗を渡すと大分機嫌を直してくれて良かった。

 

あれから直ぐに学院の隅の方にミスタ・コルベールとミス・ロングビルそれとエレオノール姉様監修の元に火と土のメイジ式溶鉱炉が設置された。

 

実際魔法による冶金技術の習得に有用だと言う事で学院内でも完全にその存在が認められる事になった。

 

「こうなると鱗と違って価値が解りやすい分、壮観だね…」

 

「私もうヴァリエール家に使用人として仕えようかしら…」

 

その近くに建造された固定化が厳重にかけられた倉庫の中で片付けをしながらギーシュとモンモランシーが堆く積み上げられた金と銀のインゴッドの山を見上げる…手を動かせと言うのに…

 

「雇っても良いけど給金は上がらないわよ。」

 

「ケチ臭っ!?」

 

「一体私にどれだけそういう話が来てると思ってるのよ!!」

 

そうなのだ…改めて語るまでも無いけど私に雇って欲しいと言い出す使用人や(シエスタ経由で)やたらしつこく茶会に誘う女子生徒、果ては交際を迫ってくる男子生徒は日増しに増えてくるばかりだ。

 

「この前の先輩なんていきなり『貴女の事、噂には聞いていましてよ。私達きっとお友達になれますわ!!』何て言って目の色が完全にエキュー色になってるし…

ラブレター書いて寄越してきた男なんて私のむ、む、む、胸が小さくて可憐だ。とか書いてたりするのよ…魔法の腕は褒めようが無いのは解るけどほんと、死にたいのかしら!!?」

 

私の憤慨した様子を眺めていた二人が顔を見合わせる。

 

「…だったら僕達が近づくのは良いのかい?こう言っては何だけど僕は前科持ちだよ。」

 

「言って置くけど私もお金で苦労してるからね、正直あなたの事を当てにしてるのよ。」

 

意地の悪そうな顔で言ってくれるわこのバカップル…

 

「だからこき使ってるんでしょ、精々私のご機嫌を伺ってればいいんだわ。」

 

私はついつい憎まれ口を叩いてそっぽを向く。

 

「あら、残念…私は純粋に友達に付き合ってるだけなのに。心外だわ。」

 

「全くだね、僕のモンモランシー。僕らの友人は薄情だね。」

 

解ってる…見れば分かる、どういう意図で私に近づいて来てるかなんて。二人の目はだって私の事をちゃんと見てくれているもの。

ミス・ロングビルなんてエレオノール姉様の影響なのか私を見る目が姉様に似てきてる…今思えば最初なんてもっと殺伐としてたと思うのに。

 

「いいから、ほらもう終わったんだから行くわよ二人とも!!」

 

二人の態とらしい言葉に何だか手玉に取られている様なむず痒い感覚を覚えた私は溜まらず多分赤いだろう顔を見られない様に俯かせて怒鳴ると倉庫を飛び出した…

 

 

私の周りでは色々あるけれどシルとゴルは今日も元気だ。




『冥雷龍ドラギュロス』覇種の一体で龍属性の黒い雷を操るHR帯での化け物の一角。覇種と幻個体は戦闘中一度絶命した後、元気百倍で大暴れするという特徴がある。副翼尾が空を飛ぶ時非常に美しいが非常に鬱陶しい!!

わかりにくいかもですがルイズsideだけが前回からの直接の時間の流れです。なんでそんな書き方したのかって?さぁなんでだろう?


ワルド「くらえー、ライトニングクラウドー」
ウェールズ「ぐあぁぁやられたー」

エミット「雑兵め貴様ごときの雷がこの冥雷に通じると思うな!!本物の雷の魔法という物を見せてやる!!」
ワ(嘘っ、この人雷効いてない…)ジョバァー

みたいな闘いがきっとあったと思うんだ…

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