覇種の使い魔~輝輝臨臨~   作:豚煮込みうどん

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ちょっとずつでも一話一話を長くしたい。
そしてこれを読んでMHFをやってみようと思う人が増えたらいいなと思ってる。(震え声)


異世界際のガノスさん

それは見上げる様な巨体だった…長く教員をしているコルベールですら今回の様なケースは初めてであった。

それは1匹だけというルールすらもねじ曲げていた。メイジの実力を見たければ使い魔を見ろ。と言う格言があるが一体これが使い魔だと言うならばルイズ・フランソワーズが落ちこぼれ等と誰が思うだろう。

 

 

 

 

それはまさに魚だった……

 

 

 

 

 

今はようやく落ち着いて居るが、あれから二匹の使い魔はしばらく揃って地面の上で「ビタンビタン」と撥ねていた。とは言え撥ねているだけでその巨体、頭の先から尾先まで30メイルはあるであろう巨大な魚×2の跳躍によって地面は陥没と隆起を起こす。それに加え、ゲートから飛び出した際に起きていた先住魔法なのか周囲への敵対行動なのかどういう意図で起こしていたのか全くもって不明な轟雷を伴った猛吹雪、それらのせいで広場の大地は凍り付き、焼け落ちるという不思議な惨状を晒していた。

 

 

「ミス・ヴァリエール…コントラクトサーヴァントを。」

「ミスタ……この場合、どっちとすればよろしいのでしょうか?」

 

 

「……ここは……チャンスが2回あると思えば良いんじゃ無いでしょうか…ハハハ」

 

(わけが分からないわ。)

 

誰も彼もが呆然と目の前の非現実的な現実を見上げる最中、いち早く正気を取り戻したコルベールがルイズに使い魔契約の執行を促し、ルイズの尤もな疑問に目を逸らしながら答えたコルベールは思わず乾いた笑いを溢す。

ルイズの疑問の答えはコルベールとてむしろ知りたい側なのだから。

 

「とにかく。あの二匹の使い魔、今はどういう分けか大人しく周囲の様子を覗っているだけのようです…召喚された使い魔は基本的に召喚者に敵意を持っていないはずです。口元までは私がレビテーションでお運びしますのでくれぐれも気をつけて下さい。」

 

コルベールの言う通り、今は二匹の使い魔は器用にと言うよりは当然の如く腹びれが進化した様に見えるその2本の足で立って落ち着いた様子で周囲をキョロキョロと見回していた。

ルイズはコルベールの言葉に従う様に先ずはどちらかと言えば近くに居た金色の魚の足下まで駆け寄る。

同時、金の魚も足下に駆け寄ってくるピンクブロンドの髪の小柄な少女を見つけてその視線が明確な意思によって固定される。

かなりの遠巻きからクラスメートが不安げに見守る中、ルイズは改めて己の使い魔の姿を見上げて思う…

 

 

(でかい…でかすぎるわ……と言うかこいつの牙なんてまるで竜じゃない…人なんて一口で飲み込んじゃいそう。それにしても先生が言ってた様にさっきから暴れたりする気配が無いけど、もしかして意外と大人しいのかしら?)

 

思案するルイズの身体が宙に浮き、主従の距離が徐々に近づいていく。

 

ここではっきりと言えばルイズの考えは間違っている。この二匹の魚は別に大人しく等決して無いのだ。この二匹が本気で暴れたりすればこの周囲はまさにアビ叫喚の地獄絵図である。

 

 

 

 

 (便宜上)彼等の正式名称はそれぞれ黄金の魚竜が『ゴルガノス』白銀の魚竜が『アルガノス』と呼ばれ、溶岩竜『ヴォルガノス』を祖とする(そもそもヴォルガノスの祖が彼等である可能性もあるが。)ルイズ達の住まうハルケギニアとは異なる異世界のモンスターである。

 

その世界では人々の中には驚異的身体能力とアタリハンテイカ学なる若干怪しげな世界法則をもってモンスターをハンティングするモンスターハンターなる職業の者達が多数存在している。

そしてそんなハンターや多種多様なモンスターが跋扈する世界で人々が作り上げたハンター協会によって、彼等はその驚異性によって最上位のハンターのみが立ち向かう事を許される存在、『覇種』と言うカテゴリーに据えられたモンスターであった。その桁違いとも言える危険度から、現在覇種認定を受けたモンスターは他には僅か5種であり今後増える事は無いだろうと思われる。

 

この覇種の更に上にG級モンスター等も存在するがそれらは実際にはハンター側にある種の制約が加わる事によって相対的に狩猟が困難となる部分があるのだ。故に純粋な生物的強さで言えばまさに彼等ゴルガノスアルガノスは覇という名を冠するのに何ら恥じる事の無い存在と言える。

 

つまり魔法が使えるとはいえ一人間であるルイズが近づいてこようと彼等は別に警戒なんぞ必要無いのである。何せ彼等はハンターがよっぽどのんびりしていなければ斬りかかられてようやく戦闘態勢に入る様な可愛い所がある。

人は子猫がヨチヨチと歩いてきて警戒するだろうか?爪を立てられでもしなければ敵対はすまい。つまりはそういう事なのだ。

 

 

 

 

~ルイズside~

 

「さて…行くわよ、我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!!」

 

ちょっとだけファーストキスが魚?というのに抵抗がある気もするけどそれ以上に私はこの幻獣達が自分の使い魔になるという事で喜びでどうにかなってしまいそうだった。

それでもあれだけ連日練習し続けた契約の為の呪文は淀みなく口から流れ、正直自分でも抱いていた「危険なのでは無いか?」という周囲からの心配も何かも全て無視するかの様に契約の口づけはあっさりと交わされた。

予想通りというか何というか冷たい金属質な感触と若干のぬめりの様な嫌な感触。油でも塗られた彫像の様だった。こうして私のファーストキスは無事この黄金の魚?に捧げられた。

それもこれも金色の方の子が全くと言って良い程警戒をしていなかったからだけども。

 

「良い子ね…」

 

そうして見てみれば金色の子の胸にその巨体から見ればあまりにちっぽけと言える様なルーンが刻まれたのが私にははっきりと確認できた。思わず頬が緩んでしまい、そうして改めてみればさっきまで何とも思っていなかったのになんとこの使い魔は愛くるしい外見なのだろうと思えてきてしまう。

 

 

我ながら現金だ。

 

(だめだめ、駄目よルイズ、私にはまだ契約をしないといけない使い魔が居るのよ、気を引き締めないと………そうよ…私にはもう一匹も使い魔が居るのよ!!それもこんな立派な子がね!!)

 

気を引き締めた直後に頬が緩み、こちらを興味深げに見ているクラスメート達とその使い魔達に思わずドヤ顔をさらしてしまった私は慌てて己を律して視線を銀色の子へと向け直した。

 

目の前を羽ばたいていた蝶々を鼻先に(鼻無いけど)止めてこっちを眺めていた銀色の子、よく見ればこっちも可愛い顔をしていたりする。それにその眩いばかりの身体が観察の為に近寄ってきたコルベール先生をより一層眩しくしてしまっている…全く、お茶目さんだわ。

 

「ん?おや、これは?…ミス・ヴァリエール、そちらの未契約の筈の個体よく見れば既に胸にルーンが刻まれておりますぞ?見た事の無いルーン…しかし両方とも全く同じルーンですな。」

いつの間にやら手にしたメモに書き写したルーンを見比べて先生が唸る、私も直ぐに確認したけど確かに二匹とも同一箇所に全く同じルーンが刻まれている。

 

「もしかして片方と契約した時点で両方とも使い魔になったんですかね?」

 

「確証は無いが恐らくそういう事だろう…なにせ前例が無いからね、この様な事は…。何にせよ使い魔召喚の儀式は無事に完了だ。ひとまずおめでとうミス・ヴァリエール。」

 

コルベール先生がそう言って私の肩をポンと優しく叩いてくれた。

不覚にも実技で褒められた事の無かった私は思わず緩んだ涙腺に思わず力を込めてしまう。今日はまさしく私にとって最良の日と言えるだろう。

 

 

(さっそくこの子達に名前を付けてあげなくちゃね。ゴールドとシルバー…は安直かしらね?うーんどんなのが良いかしらね…?)

私の前に並んで立つ二匹の使い魔に思いを馳せながら緩む頬と涙腺に力を入れる私の隣でコルベール先生が不意に真剣な口調で私に声を掛けてきた。

 

「それにしてもこれからが大変ですぞ、ミス・ヴァリエール。」

「ふぇ?何がですか?」

 

「これ程巨大な使い魔、しかしその成体は完全に不明、それもそれが二匹。食事と世話をする環境…まぁ君の場合は幸いにも実家がかの公爵家だきちんと報告をすれば少食事位は何とかなるやも知れんが。私の様な貧乏貴族であったならばこれ程の使い魔だ、喜びながらも自らの甲斐性の無さに頭を抱えて居る所だよ。はっははは」

 

 

先生の言葉に私の顔を思わず冷や汗が流れ落ちていった。

 

私はこれからこの子達の世話をしなくてはならないのだ…何を食べるのかしら?普通の食事量じゃ無いのは見れば分かる。それこそ毎日牛1頭ずつで済めば良い方だと思う。

どう見ても陸上生物じゃ無い。だってエラが付いてるもの…魚っぽい割に普通に地面を歩いてるけどこの子達が自由に泳げて生活できる湖なんてラグドリアン湖しか思いつかないわ。

そもそも海で生きてたとしたらほんとどうしよう…

 

 

「さしあたっては…この広場、どうにかしなくてはいけませんな…」

 

 

そう言って荒れ果てた大地と凍り付いて焼け焦げた芝生を見て、気が抜けた様に笑ったコルベール先生の頭は金と銀の光を反射して私の目を焼いたのだった。




次で命名。ギーシュと決闘?残念ですが彼はSRが300に到達している様にはみえないからねぇ…
後、USUGEMANの方達ごめんなさい

『アビ叫喚』アビオルグという本家のイビルジョーに似たモンスターが二匹同時に出てくるクエストで良く見られる光景。恐ろしいのは討伐目標が1体の筈のクエストなのに平然と二匹並んでうろうろしている事があるという事である。二乙の後でパーティー四人纏めて打ち上げ花火にされて幻の6乙というのは良く聞く話。

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