覇種の使い魔~輝輝臨臨~   作:豚煮込みうどん

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感想お気に入り登録ありがとうございます。自分にとってはまさに「元気のみなもと」でございます。……まぁ使わずにアイテムBOXで死蔵させてるわけですけどもね(ゲス顔)


豚は出荷よ~  優秀なるカプ畜達

~シエスタside~

 

 

おとうさん、おかあさん、お元気でしょうか?今私はとっても大変な事になっています。

 

 

昨晩偶然私がお世話をさせて頂いたミス・ヴァリエールに突然言い渡されたご命令に従って私は今、そのミス・ヴァリエールとその使い魔さん達のいらっしゃる学院内の広場に来ています。

 

件の使い魔はその日のうちに使用人達の間ですっかり話題になっていました…

 

「金と銀の鱗を纏った巨大な飛竜だった。」とか

「人語を解して、食事は処女の乙女を好む。」だとか

「実は胴体はムキムキマッチョな兄貴体型が真の姿」何て物も…

 

基本的には貴族様の使い魔のお世話も使用人の仕事ではありますから、それらの噂も馬鹿には出来なかったりする。案外ちゃんと仕入れておかないと経験上意外な所で困ったりもする事があるからだ。

例えば嫌いな物を食事に与えようとして主人の不興ををかって仕置きを受けた使用人の話なんて有り触れているんだから。

 

噂の中で一番私が気になったのは処女の乙女を食べるという物…

わざわざミス・ヴァリエールが食事を用意しろと言っていたのはまさかそういう意味だったのだろうか?

確かに私はまだ処女だけれどもだからといって…そう思うと私はもう気が気でない…

 

 

 

 

~ルイズside~

 

(大丈夫かしら?このメイド…)

 

私は朝一番、清々しい目覚めと共に私の可愛い使い魔が眠っていた広場へと早速足を運んだ。

広場には昨日命令しておいた通りシエスタが既に居り、その後ろには色んな食べ物が積まれた荷車もある。

 

で、肝心のシエスタは涙目で大きなバケツ一杯に詰まった飼い葉を持ってシルゴルを前にオロオロとしていた。

 

「ご苦労様、ちゃんと朝ご飯の支度してくれたみたいね。」

 

「は、はいぃぃっ!」

 

「どうしたのよ一体…少しは落ち着きなさい。採って食われる訳じゃあるまいし。」

 

「えっ?」

 

 

私が声をかけた事にこっちが驚く位に反応したシエスタを私が嗜めているとシルゴルも目を覚ましたのか立ち上がって、伸びでもするかのような動きをして大きく欠伸をして見せた。

そしてゴルは噴水に顔を突っ込んで水をえらい勢いで飲み始める。

 

 

「さて、昨日はああ言ったけど私もこの子達が何を食べるのか実は良く分かってないのよね。シエスタ、取り敢えずこっちのシルに色々あげてみましょう。」

 

「あ、畏まりました。」

 

何だか若干落ち着きを取り戻したシエスタが私の命令通り、手にした飼い葉をおっかなびっくりといった感じでシルの目の前に積み上げてみる。

 

慌てて駆け足で私の傍まで戻ってきシエスタと一緒に私は飼い葉を前にしたシルの動向を固唾を飲んで見守る。

 

そして意外な結果が直ぐに現れた。

 

 

 

「…食べてる」

 

「ですね…」

 

私もまさか飼い葉なんて食べるとは思っていなかったけど普通にシルは食べてしまった…地面ごとだけど。

 

「つ、次よ、シエスタ。」

 

「はい」

 

続いて積み上げたのは林檎やベリーなんかの果物と野菜類と一般的な穀物飼料、はっきり言えば飼い葉を食べるならコレも食べるだろうという私達の予想は外れる事も無く、シルはまたしても地面ごと一口で豪快に食べてしまった。

 

「NEXT!!」

 

「YAH!」

 

続いて取り出されたのは魚が入ったバケツ。それをシエスタが持ってシルに近寄るとシルが口を開いたのでそのまま流し込むように食べさせてみた。

ここまで来たら当たり前だけど咀嚼する事も無く口に入った魚達はどうなっているのか想像も出来ない魔法の胃袋に直行だ…

 

何だかシエスタも私もちょっと楽しくなってきた。

 

 

 

「シエスタ、次よ!!」

 

「豚は出荷よ!!」

 

『らんらん』とネームプレートを付けられた豚がシエスタに引きずられてシルの前に連れ出された…流石に私もちょっと可哀想に思えた。

 

と言うかシエスタというか使用人連中はカプ畜に名前を付けているのかしら?

 

 

これまたあっさりとシルは豚をその口の中に納めて今度は流石に何回か咀嚼をしていた。

その度に何かが潰れる様な音と豚の悲鳴が聞こえたけど私は気にしない事にした。心なしかシルも満足しているように見える。

 

 

「結局、好き嫌い無く何でも食べるみたいね…」

 

「私こんなに雑食な使い魔見た事ありません」

 

「それを言うならもう何もかもこの子達は規格外よ。」

「フフ…ですね!」

 

問題の一つが解決して気分が良かった私の冗談にシエスタは朗らかな微笑みで答えてくれる。

これからこの子達の世話にはこのシエスタを専属に付けようそうしよう。

 

「それじゃあゴルにもご飯あげなきゃ……ね……」

 

そんな事を考えながら私は噴水の所にいたゴルに視線を向け、次の瞬間思わず唖然としてしまった…

 

 

 

 

何故か?

 

 

 

私の目の前でゴルはあろう事か噴水の中央に佇む水の女神像(もう土台しか無いけど)をボリボリとむさぼっていたからだ…

 

 

 

 

***

 

 

 

 

結局あの後、二匹はよく食べた。

シエスタが用意した食料全てをあっという間に食べ尽くして分かった事だけれど、一応二匹とも好物と言えるのは肉みたいだった。

実験と称して色々な餌を並べて見せたら案の上一番に食いつかれたのはらんらん二号だった。

足りない分は女神像の辛うじて残っていた部分で補った…決して証拠の隠滅なんかでは無い。無いったら無い!!

 

最終的にはシエスタも私の使い魔達の愛らしさを理解したらしく撫でる事を許した時はキャーキャーはしゃいでいた。理解者が出来てちょっと嬉しい。

 

そうそう、食事を終えて片付けをしているとシルゴルの金銀の鱗を数枚拾ったので

銀の鱗を今日の礼にと一枚シエスタにあげた。

 

「家宝にさせて頂きます!!」

 

とシエスタは言っていたけど実際問題この鱗どれ位の価値があるのかしら?

 

 

私は懐にしまった重たい鱗に思いを馳せながら今朝のやり取りを思い返して教室までの廊下を歩く。

通り過ぎる最中、すれ違う他の生徒の傍らには小型の物は使い魔が寄り添っていた。

カラス、蛇、フクロウ、カエル、犬、猫、アヒルそれぞれの使い魔達が常に傍に居るというのはちょっと羨ましい。

 

 

(フフフッ、持てる者故の贅沢な悩み。…と言った所かしら?)

 

 

今の私には他人の使い魔が可愛く見えて仕方がないのだ。

 

「何一人でニヤついてるのよ頭でも打ったの?ルイズ。」

 

そんな愉悦タイムを邪魔してくれたのは偶然教室前で出くわしたキュルケ、おまけのタバサだった。

 

「失礼ね、朝から良い気分だったのにあんたのせいで台無しよ…」

 

「それだけ憎まれ口叩けるんならもう平気みたいね?昨日は突然倒れたから私達は本当良い迷惑だったんだから。」

 

「…不器用」

 

「うぐ」

 

タバサの声は聞き取れなかったけどキュルケの言葉に私は昨日の失態を思い出して私の言葉が詰まる。癪だけどキュルケに借りが出来てしまっているんだった…

何とか話題を変えようとした時思い出した。そうだ。タバサだ。

 

「そう言えばタバサ!!あんたゴルの鱗持ってったでしょう?返しなさい!!」

 

「もう無い。使った」

 

顔色一つ変えずにこの子はなんと言う事を平然と言うのかしら…

 

「何に」

 

「使い魔の餌代」

 

嘘だ、だって明らかにいっつも本を読んでるこの子が今読んでる本が新品だもの。

 

「まぁまぁ、ルイズ倒れたあんたを運んでくれたのはタバサなのよ?魚の鱗の一枚で怒らないでいいじゃない。」

 

「な?あんたさっきまで自分が運んでやったみたいな態度だったじゃない!?ふざけないでよ、色々モヤモヤ考えて損したわ全く。」

 

「あら私は私が運んだ。だなんて一言も言ってないわよ~~勝手に勘違いしたのは貴女じゃない。」

 

本当この女むかつく!!

 

でもそういう事情があるのなら私も一つ落としどころを見つけられる。

私が改めてタバサに向き直ったらタバサは相変わらず視線を本に固定したままだ。全くこの子は一体何なんだ…

 

「そういう訳なら、タバサの鱗の件はチャラってことで良いわ。でもいい?今後勝手に鱗を持って行ったら怒るからね、後絶対にはぎ取ったりしない事、良いわね?」

 

「………」

 

無言で頷かれた…本当何なのこの子

と思っていたら突然タバサが何かをズイッと差し出してきた。なんだろう?

 

「…交換」

 

私に手渡されたのは金貨位の大きさの鮮やかな青色の一枚の鱗

コレがタバサの使い魔の鱗なのは見れば分かるけど…タバサ?その差し出されたままの手の平は何?

 

 

「今度は…銀がいい…」

 

「あげないわよ…」

 

私はこんな澄んだ瞳であこぎな事を言ってのける人物を知らない。

 




タバサェ…何故か守銭奴チックに…
そして竜といえばホルクも雑食だし超雑食性にしました。何処ぞの「サラマンダーよりはやーい」世界だと毒だろうが武具だろうがアレだろうが竜は食べてるし(白目)

そしてらん豚の悲鳴は運営には届く事は無いのであった…

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