姫様の隣のお犬様   作:超かぐや姫!映画館でも観ろ委員会

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脳みそ垂れ流しで書いただけなので文章は終わり散らかしてますわぁ〜


導入

 

 

 

 

 

 ──いまは昔……。

 

「はぁ……はぁ……っ、や、やっと見つけた!」

 

 絶え絶えになる息を携えながら、快活そうな声が辺りに響く。

 振り向くと、そこには小さな女の子が1人。

 見た目は小学生か中学生辺りか。容姿は日本人離れした美しさを持った顔立ちだった。

 

 ──では、なくて。

 

 女の子が、息を整えてこちらにやってくる。その勢いのまま私の両手を、自身の両手で挟み込んで持ち上げる。

 

 ───超未来だったり? 

 

「わぁーお。彩葉モテモテじゃん」

「え〜、可愛い〜」

 

 左右から友人達の野次が飛んでくる。いやいや、そんなんじゃないでしょ? 

 第一見たこともない女の子に、こんな対応されるようなことしたこともない訳ですし。

 

 ──いや、これは大昔でも超未来でもない。

 ──いまとあんまり変わらない。少しだけ未来の話

 

 

「私と、結婚を前提に……付き合ってくださいっ!」

 

「…………は??????」

 

 

 ──それより、少しだけ"前"から始まる話。

 

 

 困惑から声が漏れる私の左右から黄色い悲鳴があがって、私の耳に痛みを与える。

 自信満々に私の手を取る銀髪少女と、姦しく騒ぎ立てる友人達に私の精神は、何処へやら。宇宙の彼方にまで飛んでいってしまった。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

「ねぇねぇ、どこから来たの? 彩葉の知り合い?」

「リアル銀髪初めて見た。日本語上手だし、ハーフ?」

 

 …………はっ、意識飛んでた。

 気が付けば、件の少女は友人2人に捕まり隅の方で囲まれていた。マズイ、傍から見れば完全に事案だ。

 一応、止めた方が良いか。

 

「生まれは日本、父親が外国人なんだよね。んで、お母さんが日本人!」

「へぇ〜、そうなんだぁ外国の美味しいご飯とか知らなーい?」

「それはわかんない! 父の生まれ故郷とか行ったことないし、料理とか作れんし! お母さんが作る和食が1番美味し!」

「え〜、ほほえま〜」

 

 いや和やかに話しとるんかい。というかハーフなんだ。通りで顔立ちが綺麗だと……ってそうじゃない。

 真実は、ダメだ女の子の母親が作るご飯の話で釣られてる。

 てかさ? 聞くべきことはもっとあるじゃない? 

 

「ねぇ、さっきなんで彩葉に告ったの? 昔からのお知り合い、かな?」

 

 そう! それ! 芦花、流石そこに目をつけてくれる! 

 

「そうといえばそう! そうじゃないといえばそれもそうかも!」

「曖昧だねぇ。教えてくれないんだ」

「そのイロハって子のことは知らない!」

 

 いや、知らないんかいっ! じゃあなんで告った!? 最近の子供の考えることは私には分からん……。

 

「いやいやいや、違う違う。キミ、どこの子? 私と面識ないよね?」

「犬飼 茜15歳でーす! よろしく〜」

「名前を聞いとるんじゃないよ。はぁ、まったく。面識のない人にいきなり告白しちゃダメなんだよ? わかる?」

「恋は情熱、止まらぬ熱さに、私はもう……っ! 一目惚れでした、付き合ってください。イ•ロ•ハさん♡」

 

 目尻をトロンとさせ私を見てくる少女は、妙に色気を纏っていて……なんだか、こっちまで変な気分に──。

 

「いや……いやいやいやいや。ほら、私なんかじゃなくたって、もっといい人沢山いるよ。同級生の男の子とか、ダメなの?」

「同級生の男の子は魂が綺麗じゃないからやーだ」

「魂って……」

 

 最近の中学生はみんなこうなのだろうか。たった1、2歳、歳が違うだけで思考が理解できないことなんてあるのだろうか。あるんだろうなぁ……実際目の前の女の子の考えていることは全く私には理解出来ない。

 スピリチュアルなものなんて信じられる気もしないし、一目惚れなんて…………まぁ、恋だのなんだのとか未体験だし。

 

「てか、あれ? あいつは?」

「あいつ?」

「ほら、近くに居ない? なんかやたら喋ったり飛び跳ねたりするちっさいナマコみたいなヤツ」

「は? ナマコ?」

「そ、こんくらいのサイズでー」

 

 女の子が両手で大体のサイズを提示してくる。見れば、まぁ想像出来る範囲のナマコのデカさはそれくらいだろう。

 

「で、白くて。なんかふわっとしてる」

 

 いや知らん。一気に想像上のナマコが別の生き物に成り代わったな。

 私は新種のナマコ見つけた海洋学者でもなんでもないんだけどな。

 

「ねぇ、彩葉」

「うぅん? なに、芦花?」

「ナマコみたいなので、白くてふわふわしてるのってアレじゃない?」

「あれ? ……なんかいたっけ?」

「ほら、ヤチヨのFUSHI。この子の言ってる条件に合ってない?」

「あっ」

 

 そう言われればそうじゃん。喋ったり飛び跳ねたり、ナマコみたいなサイズで白くてふわふわしてるのなんてFUSHIくらいなもんじゃん。

 うわぁ……っ! なんで出て来なかったんだ私! それでもヤチヨファンか! 

 

「て待てよ? もしかして、ヤチヨの中の人だと勘違いされてる?」

 

 バッと振り返ると訝しげにこっちを見てくる女の子。いや、そんな目線で見たいのはこっちなんだけど。

 私とヤチヨを間違えるって……いや烏滸がましすぎるでしょ。バカ言わないで欲しい。ヤチヨはもっと可愛いし綺麗だし優しいし美しいし、何より声が良いし歌声だって良いし……もっと話し上手だし。比べるのも恐れ多い存在なのだ。

 

 

「多分、別の人と勘違いしてるんじゃないのかなぁ? 私はキミの探してる人じゃないと思うよ」

「うーん、あれがいないとなると本当にそうなのかも……はぁ、また一から探し直しかぁ……この人だと思ったんだけどなぁ。私も鈍ったかな?」

 

 ひとまずは誤解が解けてひと安心ってところ『ピピピッ、ピピピッ!』

 

「ってやっば!? ば、バイトの時間じゃん! 完全に頭から抜けてた。ご、ごめん芦花、真実先帰るね!」

「いってら〜」

「がんばってー彩葉〜」

「ありがとー!」

 

 私には色恋にうつつを抜かす暇なんてありはしないのだ。少しだって時間は無駄には出来ない。

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

「んぉ〜、どこにいるんだァ」

「大丈夫?」

「大丈夫、大丈夫じゃないよぉ……折角見つけたと思ったのに、なんであいつ横に居ないんだよぉ。ぐぅ、簡単に見分ける唯一の手段だったのに」

「ヤチヨファンでFUSHIのことあいつ呼ばわりするの珍しいね。そんなに必死に探してるってことは、ヤチヨファンなの?」

 

 私に話し掛けてくるのは、どの時代でも誰もが一度は2度見するであろう整った顔を持つ女子高生だった。その顔に統一され美的センスを伴った化粧も合わさり、かなり美しく見える。

 確か……芦花とか言ったか。彼女は、彩葉という子には及ばないがそれでもキラキラとした輝きを魅せている。彩葉という子に会わなければ、彼女が我が運命の人であるとそう言えたであろう。

 

 それにしてもヤチヨ……ヤチヨか。聞き覚えのない名前だな。それの隣にあいつがいるなら、是非とも一度お目通り願いたいものだ。

 これは乗っておくのが無難だろう。

 

「そうそう、そうなんだよ。ヤチヨファンなの。前に1回見てからファンになっちゃってさぁ。どこに行けば会えるかなぁ?」

「ヤチヨに会うのは難しいと思うなぁ。会うならライブのチケット当てなきゃ」

 

 次に話し掛けてくるのは真実といった、芦花とは違って少しぽやぽやした女子高生だ。

 タレ目の目と、その雰囲気は人好かれしやすいであろうな。

 

「チケット? ヤチヨはアイドルか何かなの?」

「うん。そうだよ仮想空間『ツクヨミ』の代表アイドル。8000年生きてるって設定のAI」

「なんと、仮想空間! AI! なるほど、そこまで日の丸は工業成長を果たしていたのか……これは現代が楽しみになってきたな」

「日の丸って、茜ちゃん難しい言葉遣いよく知ってるね。お母さんに習ったの?」

「似たようなものかな。それで、そのつくよみ? というのはどうすれば行けるの?」

「『スマコン』って機械買って、それを使えば行けるようになる……けど。すっごく高いからねぇ」

「高いねぇ。いまいくらだっけ?」

「13、4万くらいじゃなかった? 全然値下がりしてないよ」

「じゅ、14万円……え、えぇと私の母からのお小遣い……にお年玉…………ギリギリ足りる……? いや、足りないな。父に甘えてみるのもアリか? いや、しかし……しかしなぁ……」

 

「100面相みたいにコロコロ表情変わるの可愛い。──ね、真実」

「言いたいことはわかってるけど、良いのかなぁ」

「この子の親御さんに許可貰えればいいんじゃないかな。それに私、この子とちょっと仲良くなりたいカモ」

「うぅん、まぁたしかに彩葉のびっくりする顔もちょっと見てみたいかも」

「それなら話は決まりだね。ね、茜」

「んぅ、いま私は資金繰りに忙しい……お手伝いすればお小遣いが増えるか。こんなことならもっと知識を蓄えておくんだったな……」

「その話なんだけどさ。スマコン、お姉さん達が買ってあげようか」

 

 ──ん? いま面妖な発言が聞こえた気がするぞ? 

 この子はいまなんて言った? 14万円もするものを買ってあげようか??? 

 

「えっ……正気?」

「うん」

「芦花は1回決めたこと曲げないよ〜? テコでも動かん! まぁ、友達優先だけどねぇ」

「恥ずい、それやめて真実」

「顔赤くなってる〜、いひひ」

 

 仲睦まじいのは構わないんだが……いや、これは願ったり叶ったりではあるな。少し、いやだいぶ申し訳なさがあるが、手持ちの金で大部分は負担できるし、足りない部分を彼女達に出してもらえれば金額は足りるだろう。

 

「えっと、それじゃあ私もちゃんともってる分は払うから……芦花お姉ちゃん、真実お姉ちゃん……おねがぁい?」

「「んっ!!」」

 

 なんか胸抑えてる。怖い、持病の発作かな? 

 

 

 

 ◆

 

 

 さて一旦、少女達の物語は小休止。

 

 ──時は移り変わり。果てなき昔の時代へ

 

 人が未だ言語を得ず、そして知恵を築き始めた太古の時代。そこに1人の人が産まれ落ちた。

 要領は悪く、目の前のものに直ぐさま齧り付くような頭の悪さをした猿がごとき男が1人おった。

 

 その男は、ある流星を見た。空を渡る、神々しさを感じる光の軌跡を。

 男は追った、その光は海の中へと落ちていった。頭も悪く要領も悪い男は困ったことに、泳ぐことも出来ない。落ちたものが気になれど、それが何だったのかは、ついぞ知ること無く生を終えた。

 

 

 ──時が流れる。

 

 とあるところに1人の男がまた産まれ落ちた。やや文化が成長した時代だ。その男は他のものと違い不思議なことがひとつあった。

 

 それは、前世の記憶を覚えていることだ。要領は悪く、頭も悪い。ついでにいえば泳ぐことも出来ない阿呆は、そのお陰で少しばかりマシな知能を得ることができた。他の者より上手く身体を動かせた。他の者より上手く狩りを行えた。

 

 しかし、男には未だ後悔が残っていた。それはあの空を横断し、海へと落ちたあの光である。キラキラと輝く、あの謎のもの。アレがなんだったのか気になって気になって気になって……結局、それが何だったのか分からずその人生も終えた。

 

 ──時が流れる。

 

 3度目ともなろうと、驚きもなくさすがに慣れてきた。その時ばかりは男ではなく女であったが、それは彼もしくは彼女にとってみれば些細なものだろう。記憶を重ねる毎に彼女の人としての強度は上がっていく。魂とも言うべきものなのか、活力や精神力が増大しているように思う。

 

 そのお陰か、何をやっても上手くいくようになった。何をしても他人より優秀であった。1度目の馬鹿で阿呆でどうしようのない男とは違った。満足出来る人生を歩めたと、ソレは思っていた。

 

 けれどやはり、真に満たされることはなかった。

 あの光がずっと心の奥底で、瞬いている。

 

 

 ──時が流れる。

 

 

 

 4度目である。うん、慣れた

 正直ここまで来るともう考えることもない上に、人生に飽きてきた。いや、大体100年ペースで生まれ変わる訳ですよ。時代の変遷もスゴいし、次から次へと文明が生まれては朽ちていくわけなんですけど。

 うん、ここらへんで飽きた。見たことないものを体験するのも、学びを得るのも……確かに楽しい。

 楽しいのは楽しいのだが、結局生まれ変わる頃には大半の知識と記憶を落としていくようになった。それに気がついたのはこの頃である。

 

 1度目と2度目は殆ど猿のようなものだった故に差したる問題もなかったが、知能が上がって行く事に普通にキツく感じるようになった。

 

 また産まれ変わったという感覚と、多少の知識と記憶を持って1からまたやり直しというのはあまりにとひとりの人間に課して良い苦しみではない。

 それに、あの光が私を苦しめる。

 

 なので物は試しに自ら命を絶ってみた。

 

 

 ──時が流れた。

 

 

 また産まれ落ちた。これは呪いだ。見たい見たいと思っていたあの光はもしや、私自身を呪う凶兆の星だったのではなかろうか? 

 そうも思い始めてきた。この頃になると、また一つおかしな技能を身につけるようになった。それは人の『魂』を見る力だった。

 輪廻を廻りすぎた弊害か、魂とも言えるものが見えるようになってしまった。

 次から次へと襲う不可思議なものに辟易としていたものだったが、それが裏返ったのはひとつの出会いだった。

 

 

「なんと、七色に光る電柱から女の子が!」

 

 

 そんな声を聞きハタと見てみれば、木の棒を持ち飛び跳ね回る海洋生物がそこには居た。頓珍漢な光景に思わず思考が止まった。

 はて、人以外に言語を操る生物がこの世には産まれ落ちるようになったのだろうか? 

 そんな風に一旦思うことにして、私は謎生物を追うことにした。

 そこから私の生き方は大きく変わるようになった。

 

「取り敢えず、あっちいけば全部まるっと解決だから」

 

 時代の変遷と共に気が付いたことだが。必ずその時代に影響を与える力ある人間の傍らに謎生物は存在した。

 それに『魂』とも言えるべきものが見えるようになっていた私は、謎生物の隣にいる人間の『魂』が他のものよりいっとう輝いて美しいものであることに気が付いた。

 

 少し光にはトラウマがあったが、やはり根本的に変わらないのだろう。私は謎生物を追う理由が、その魂の煌めきを見る為にと変わった。

 

 ──時が流れる。時が流れる。

 

 

 何時しか謎生物のことが羨ましく思えてきて仕方なかった。

 何故アレだけがあの輝かしい魂を独り占めしているのか、私もそれに触れたくて、手の中に収めたくて仕方なかった。

 

 

 だから、1歩踏み込んだ。謎生物がいるのも気にせず、その魂に近付いた。手頃な話土産を持ち、交流し談笑し、ときに笑いときに泣きながら、その魂に近付いた。

 

 

 けれど1度たりとも、その魂が私のものになってくれることはなかった。全員が全員、あの謎生物へ気を惹かれるようだった。

 どれだけ友として接し、私以外の友など居ないものでも。

 最上の愛を注ぎ、囁いたとしても。

 

 必ずその魂は謎生物を愛し、謎生物の為ならんと尽力していた。その命が尽きるまでである。

 

 そうして、手に入れたいものがあるのに手に入れられないことに気が付いた私はついぞ話さまいとしていた謎生物に、話を掛けた。どうやら向こうは私という存在が、自身のことに気がついているとは思ってもいなかったようで、最初彼女に話し掛けたときはたいそう驚いていた。

 

「もし、もし……そこの人。麗しき金の髪をもつ、海の怪異よ」

 

「…………あれ? もしかして私の事、見えてるの?」

 

「貴方以外に誰がいましょうか。海の怪異」

 

「いや誰が海の怪異じゃい。私には……かぐ、や……って、名前……が…………っ」

 

 

 私が話しかけると彼女は泣き始めてしまった。まさか泣くとは思わず、オロオロとしてしまったことを覚えている。

 イタズラ心をくすぐられ、彼女の魂の輪郭を言及したのが良くなかったのか、どうやら彼女はただの海洋生物ではなかったようで。

 しかしまぁ、同じ形をした生き物が泣いているのは少々私も心が傷んだ。

 

 謎生物、改めかぐやと言うらしいソレとはそこから長い付き合いになった。どうやら、長く生きる不老のような存在らしく、私とは相性が良かった。

 何度も生まれ変わり生を為す私にとって、語り合える意思の持つ生物というのはかなり少ない。生まれ変わりの合間の期間はバラバラであったが、何となしに魂の綺麗な人間を見たいこともあり、かぐやに会いに行くことからが私の最初の人生の目標になった。

 

 

「わたし、約束があるんだ」

 

「約束。はぁ、貴方みたいな謎生物? にもそんなものが。約束した人間なんてとうに死に絶えてると思いますけど。律儀ですね」

 

「ねぇ! 真面目な話なんだけど!? たまにはちゃんと聞いてくれても良くない!?」

 

「嫌ですよ。自分のことで手一杯なのに、他人のものまで背負いたかありません。それより、今回の魂も私にはくれませんので?」

 

「いや、あげるとかどうとか……それ以前にわたしのモノじゃないし」

 

「そうですかねぇ」

 

 

 まぁそれなりに楽しかった。彼女との馴れ合いは。

 

 他の人間とは出来ない、屈託なく己をさらけ出せる相手は彼女くらいなものだろう。だからこそ、かぐやの抱えているものは聞きたくなかった。

 何千年も死ぬことも老いることも、あまつさえ不自由な身体を携えてまで生きる彼女の『約束』というものなぞ、聞けば。あの魂を持つ人間達同様。情が湧いてしまうからだ。

 

 私達はこれでいいのだ。互いに軽口を叩きながら適当に話して、まだ次の人生で会いに来る。それくらいの関係で良いのだ。

 

 そもそも、私はあの魂が欲しいだけで、別にかぐやのことなんて一切気にしてないけどね? 

 

 

 

「ねぇ、また死んじゃうの……」

 

「何言ってんだ。人は死ぬものだぞ」

 

「そう……だけど……死んだらまた100年、私ひとりぼっちになっちゃうよ。ねぇ死なないでよ……寂しいよ……」

 

「え、キモすぎ。そんなに私に依存しないで? そっちと違って、いつ終わるのか分からないんだから。自立しなよ泣き虫かぐや」

 

「いいよ、泣き虫でも。依存って言われても良いよ……」

 

「最近のお前、暗すぎ。そろそろ何歳になるんでしたっけ?」

 

「4000歳くらい……」

 

「ほら、いい大人ですよ。そんなメソメソして暗くてどうすんだ。あんまり気負うなよ、そんなんじゃ生き辛いぞこの世界」

 

 

「…………うん」

 

 

 どうしようもなく善性で、他人を思いやる彼女は。どこまでも甘ちゃんだった。不老で何千年も生きてきた筈なのに、精神性は変わらず人の生き死にに一々涙を流すのだ。

 だから、いつ壊れてもおかしくなかった。というより、徐々にヒビは入っていたのだろう。

 

 欠ける度に破片を拾って、元の形に戻そうとしている彼女の姿を何度も見てきた。

 いっそ壊れきってしまえば楽なのに、何故か彼女はそうしない。それが『約束』という楔によるものせいなのだろうか。

 

 そこまで苦しんで嘆いて、立ち上がれない程に絶望している彼女を縛る『約束』なんて。無い方が良かったんじゃないだろうか。

 

 

 

 何時しか私は彼女の傍にいる『魂』に目を向けなくなった。

 

 

 

 

 

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