目に見える範囲すべてが燃えていた
ここは、辺境にある村だった
普段であったら、子どもたちは遊び周り大人は注意をしながら仕事をする
そんな平凡な生活が送られていた
しかし、ある日急に村に火が放たれ、村人の多くが殺されていった
男や老人、醜い者は村の広い場所で一纏めにされていて女は小さい者も含めて陵辱されていた
襲ってきたのは盗賊団だった
この時代、盗賊団などどこにでもいて力を持たない者は殺され陵辱されるなど、奪われるのが当たり前だったのである
そして今回、この村が標的となったというわけだ
盗賊たちは殺し陵辱し金品を盗んだ後、笑いながら村であった場所から出ていった
あとは燃えきった村と遺体だけが残った
ガサッ
否、1人だけ残っていた
その者は小さな男の子であった
燃え尽きた家から這い出るように出て来て、残酷な状態になった村を見続ける
数分ほど経っただろうか、男の子の目から涙が溢れ出し膝が地面につく
そうして男の子が慟哭するようにただただ泣き叫ぶ
幸せな日常が一気になくなり去った
それはどれほどの悲しみだろう
どれほどの怒りだろう
様々な感情が男の子の中で渦巻いている
それが呼び水だったのか、男の子の体から白いモヤのようなものが溢れ出してきたのだ
その瞬間だった。男の子の体を泥のようなものを覆ったのだ
そうして数分後、体が赤くなり胸元に花のような白い刺青が描かれていた
普通ではありえない変化をした男の子が顔を上げたあとの第一声は
「あれ?俺転生してんじゃん」
だった
ーーー
俺の名前はアルス
北方大陸の辺境にあるヘラス村のアルスだった
だがそれは以前までの話で、今はヘラス村があった場所でたった1人生き残ったアルスだ
転生して5年、家族も友達もみんないなくなってしまった俺はもうなくなるものはないと思っていたが、なんと元々の体の要素もなくなってしまった
俺が転生したアルスという男の子の体は、黒髪に普通の肌の子どもだった
しかし、今の俺の体は全身が赤くなっていて、胸元に花のような白い刺青が浮かんでいた
なんじゃこりゃと思っていたら、視界に何かが浮かんできた
ーーー
名前:アルス
クラス: アーチャー(+アヴェンジャー)
筋力: E
耐久: E
敏捷: E
魔力: A
幸運: B
宝具: A++
クラス別能力・保有スキル
復讐者:A
単独行動:C
対魔力:A
歪曲:A(アヴェンジャーの特性を付与されたことによるもの)
心眼(真):B
勇猛:E(元は高ランクだったが、変質によりランクダウン)
戦闘続行:A+
主要宝具・能力
十二の栄光(キングス・オーダー)
ランク:C~A++
アルケイデスの「十二の難行」で得た宝具を具現化する能力。宝具を複数持ち、自在に使いこなす。魔力消費が非常に激しい
射殺す百頭(ナイン・ライブズ)
ランク:C~A+
種別:-
レンジ:臨機応変
手にした武具、あるいは徒手空拳により様々な武を行使する、言わば『流派:射殺す百頭』という技能そのものが宝具化したもの
武具の力を最大限に引き出し、対人から対軍、城攻めに至るまで状況に合わせて様々な形を見せる
本来であれば神気を纏った技となるはずだが、復讐者と化したアルスのそれは毒蛇か邪竜とでも呼ぶべき姿へと変貌している
天つ風の簒奪者(リインカーネーション・パンドーラ)
ランク:EX
復讐者のクラスに歪まされた事で発動する、隠された第三宝具
敵対する相手の宝具を奪い取り、自身に合うよう改変することが出来る
その他
ヒュドラの毒矢(20km先から狙撃可能)
アルケイデス
ランク:不明
アルスの無意識な念の習得により、発露した発
効果は元の世界にいた最強の人物を自身にインストールすること
インストールした人物の能力を今の自分に合ったスペックで使えるようになる
制約
自身が人生で最も復讐を誓ったときにしかこの発は獲得出来ない
自身のものを一度すべて失わなければならない
誓約
これ以上発は開発出来ない
備考
転生者
復讐者
ーーー
「…」
俺は絶句した
そしてこのパラメーターには見覚えがある
fate/strange fakeに出てくる真アーチャー兼アベンジャーのアルケイデスのパラメーターだ
まぁ説明文にアルケイデスって書いてるし
読んでみると、少々パラメーターに差はあるが、人間としてありえないくらい強いだろう
しかも、説明文を読み終わった瞬間にまるで最初からやり方がわかっているかのように体が動く
「体が軽い。宝具があるのがわかる。これならあいつらを殺せる」
自然と殺すという単語が口から出てきた
元の世界の自分だったら絶対に言わないような言葉だ。しかし、この体を手に入れた瞬間そんなものはなくなった
これはアルケイデスの経験からなるものなのだろうか?
それとも、アルケイデスという英雄に自身が歪められたからであろうか
だが、今はそんなことどうでもいい
まだ盗賊団はそこまで離れていないはずだ。今なら間に合う
そう考えたときには俺は地を蹴り、村だった場所を飛び出していた
ーーー
その場所は山の中にある人の手で作ったであろう広場だった
その中には多くのテントのようなものがたっていて、数十人の人間がいた
その人間たちは酔っているようで、大きな焚き火を囲み、酒と豪勢な食事を楽しんでいた
「がっはっはっは!今回の狩りは楽しかったぜ!」
「本当ですね!かしら!」
「あいつらの反応驚き過ぎて俺たちが一人目殺してからやっと動き出しましたもんね!」
「がっはっはっは!それにあいつらの部族は顔がいいのは多いが、最後まで抗って来やがるから全員殺しちまったんだよな」
かしらと言われた男はアルスの村の者たちをまるで催し物のように殺したと楽しんでいたようだった
周りの者たちもそれに呼応して、バカ笑いをしていた
「…」
だが、この宴はアルスには聞こえていたし、見えていた
アルスは歯を食いしばりながら、この盗賊団の動きを観察して1人残らず逃さないよう機を待っていた
それからも盗賊団の宴は続いていて、明け方までアルスはその場から動かなかった
そして、見張りの者以外のほとんどが酔って寝た後に行動を起こした
「っ!?」
まず、東西にいる見張りたちを音もなく腰にさしていたナイフで処理していく
あまりにも華麗な手さばきに、他の見張りさえも気づいていない
反対側の見張りも含めて処理した後は、素早くそして気付かれないよう寝ている盗賊たちの喉元を掻っ切っていく
半分の人数を過ぎたところで、ついに盗賊1人が喉元を裂かれた瞬間に声を上げてしまった
その声に反応してかしらとその側近と思われる者たちがすぐさま立ち上がって、構えを取った
流石は盗賊団を纏めてここまで大きくさせた者たちなのだろう。今だに眠りこけている部下とは、経験が違うのだ
しかし、アルスは声が出た瞬間に近くの茂みへ隠れていた
「おい、早くそいつら起こせ!」
「へい!」
かしらの指示の後、2人の内の片方が警戒しながら部下たちを起こしていく
そして、もう片方の側近が空間から武器と思われるものを出してかしらに渡している
「(なんだあれは?)」
アルスは突然の出来事に驚愕していたが、自分という例がある以上、気持ちを切り替えて敵の戦力を調査する
「(側近1は空間から物を取り出す能力、側近2は起こす度に盗賊が二日酔いから正常な状態にする能力、かしらはガントレットを嵌めているが、側近たちように能力があるかは不明)」
アルスは主力の戦力を確認した後、行動を開始する
それは呪いに満ちていた。残りの盗賊たちがアルスが射出した弓矢に貫かれていく
一気に何本も放たれた弓矢は回復された盗賊を主力以外全員を一瞬で木っ端微塵にした
「なんだとっ!?」
かしらは自身が反応出来なかった速度で放たれた弓矢に驚愕の表情の浮かべる
側近たちはなにが起こったかわかっていない
「おいっ、お前ら!固まっていちゃ敵の思う壺だ!なるべく離れて攻撃を分散させるんだ!」
「えっ!?でもかしら、どこから攻撃が出てくるか分かんないですよ!これじゃあ、俺たちもバラバラになっちまう!」
「うるせえ!クッカは盾を重点的に出して、出来るだけ奴の攻撃を耐え続けろ!ヤックは俺たちの後ろに隠れて、怪我をしたらすぐに治せるよう準備だ!」
「へ、へい」
「わ、わかりやした。かしらはどうするんで?」
かしらは側近のクッカとヤックに向かって指示を出した後、敵がいるであろう場所に向かって走り出す
「俺は奴を直接叩く!クッカはなるべく奴の攻撃が俺に当たらないようにしろ」
かしらはそう言って、手に嵌めたガントレットを構え上空に飛ぶ
その瞬間、先ほどと同じ弓矢がかしらを襲ったが、かしらの前に盾が出現して防ぐ
盾は粉々に砕けたが、かしらの準備は整ったようで、アルスがいる場所に半径10メートルほどの四角い枠が出来たと思ったら、いくつものガントレットを纏った拳が襲ってきた
その拳は絶え間なく打ち込まれ、反撃をさせる暇を与えない
周りの木々が折れたり、へし折れるなど地形さえも変えてしまう攻撃だった
これにはかしらも側近も敵は押し潰れただろうと思っていた
この盗賊団はクッカが防ぎ、かしらが攻撃、そしてヤックが回復させるという常套手段で、今まで色々な街や村を襲ってきたのだ
これまで討伐軍を派遣されても、この3人がいれば捕まることもなく逆に返り討ちにさえにしていた
だからこそ、今回もこれで終わったと思った
しかし、聞こえるはずのない声がかしらたちの耳に届いてきた
「なるほど。今の攻撃は中々のものだ。原理はわからないが、勝算に値するだろう」
かしらたちは驚いて声も出ない
「ありえない」
側近のヤックが思わずといった風に呟いているが、無理もないだろう。実際、この攻撃をさらされた者は全員潰されるだけだったのだから
「ありえないことはないだろう。貴様らの攻撃は俺には通用しなかった、それだけのことだ」
アルスがは内心で「まぁ、この衣がなければ怪我くらいしていたかもしれないが」と思いながら、自分が羽織っているネメアの獅子の毛皮を見て思う
第一の試練「ネメアの谷の獅子退治」で獲得した獅子の毛皮
人類の文明、すなわち人理を否定する神獣の皮を加工した衣は人が生み出すあらゆる道具を無効化する特性を持つ
「(こいつがガントレットを嵌めていたのが、無効化に当てはまったのだろうな)」
アルスは宝具、十二の栄光(キングス・オーダー)にてこのネメア獅子の衣を使っている
そして、かしらたちが動揺している隙に次の一手を打つアルス
「ぐふっ」
「なっ!?クッカ!」
アルスはこの中で1番厄介なクッカの心臓を高速で動き貫いた
「お前がいなくなれば、後は楽に殺せる」
「ガキだとっ!?」
かしらはアルスが子どもだったことに驚いているが、それよりも防御の要であるクッカがいなくなったことに焦りを感じていた
「てめぇ!よくも弟を!」
「ま、待て!ヤック早まるんじゃねぇ!」
物凄い形相でヤックがアルスに迫っていくが、かしらが止めるよりも早く弓矢を刺されて倒れる
頭に弓矢が刺さっているのでもう生きてはいないだろう
「くそっ」
かしらはヤックまでもやられて悪態をついてしまうが、それよりもここをどう生き残るか考える
「お前何者だ」
「お前覚えていないのか?」
「俺はお前みたいなガキは見たこともねぇ」
「あぁ、なるほど。そういえば姿が変わっていたな」
姿が変わる?とかしらは疑問に思ったが、情報を吐き出させる方を優先する
「お前念使いだな。どんな能力を持っているんだ?」
「念使い?貴様は何を言っている」
「…念をしらないのか?」
かしらはそれ以上は答えなかった。相手の情報は得ても、自分の情報は与えない。盗賊稼業で生き残るために学んだことの1つだ
「答えないか。ならば無理矢理にも聞き出すまで!」
アルスは弓を構え射出する
弓矢がかしらを貫こうとするが、またでかい拳が出て来て弓矢を弾く
だが、弓矢の威力に勝てなかったのか、かしらの腕は血を流していた
「くそっ、どんな威力してんだよ」
「貴様が念とやらにすべて答えるのならば、苦しまさずに殺してやる」
弓矢を準備しながら言うアルスに、かしらは脂汗と血を流しながら答える
「はっどうせ殺すんだろ!ならてめぇが悔しがるほうを選ぶね!まぁ、殺されるつもりはないがな」
その返答に、アルスは無言で弓矢を放つ
それを読んでいたかしらは、木々を盾にしつつ上空に飛び上がり先ほどと同じように一帯を巨大な拳で殴っていく
もちろんアルスは無傷でそこに立っているが、辺りは土煙で視界不良である
「気配が消えた?」
さらにかしらの気配が突然消えたことで、アルスは次の一手が打てないでいる
「なるほど。これも念というものの類というわけか」
おそらく、と思いながらゆっくりかしらを探し回っていく
実際かしらはそう遠くない場所で機を狙っていた
アルスが後ろを向いた瞬間に一気に詰め寄り殺す
その一瞬のために待つ
汗が頬を伝って地面に落ちるが関係ない。この子どもは強い。おそらく自分よりも
だが、逃げることも出来そうにない
ならば、最大火力の攻撃で一気にかたずける
先ほどの自分の攻撃が効かなかったのは、面で叩いたからだ
ならば、巨大な拳を一点に集中して火力を上げて仕留めればいい
そのときこそ、自分が勝つときだ
10秒、20秒、30秒と時間が過ぎたとき、やっとアルスが後ろを向いて隙を見せた
「(今だっ!)」
木の後ろからかしらが飛び出しアルスに最大火力の攻撃を打つ
「死ねぇ!」
獲ったと思った
だが、それはまやかしだった
アルスは攻撃を受けた瞬間に上空に飛んで躱し、弓矢をつがえた
「滑稽だな。わざと後ろを見せたことにも気づかないとは」
そう言って、弓矢をかしらの四肢に放ち地面に縫い留めていく
「ぐあっ!?」
かしらは四肢に刺さった弓矢が地面深くまでいっているせいで、動くことも出来ないでいる
「さて、これで終わりだ。念とやらについてありとあらゆることを話してもらおうか」
「はっ誰が言うかよ」
「ふぅ、そうか残念だ」
アルスがそう言って、指を鳴らした瞬間かしらは絶叫する
「ぐああああああああああああああああああ!?」
その声は人生でも発したことのない音量で叫ばれていた
「ああああああああーーー」
「言う気になったか?」
「はあはあ、なん、だ、今の、は」
「質問に答えろ」
また指をならす
「いぎゃああああああああああ!」
「答えろ」
「はあはあ」
指をならす
「うがあああああああああ!」
「答えろ」
「ま、待ってくr」
指をならす
「いぎゃあああああああああ!」
「答えろ」
「あっ、あっ、あっ、あっ」
指をならす
「あああああああああああああ!」
「答えろ」
………
かしらが答えるまで延々と拷問は続いていく
この拷問には、あるものが使われていた。それはとある呪いだった
この世のすべての悪を凝縮したような呪いが少しずつ、濃度を濃くしながら使われている
普通の人間であれば、とうに精神が崩壊していてもおかしくないほどの呪いをアルスは使っていた
幸か不幸かかしらは呪いに耐えているようで、精神崩壊まではいっていない
だが、それも時間の問題だろう。この呪いは人類の負の部分すべてだ。そんなものを使われ続けていれば、いずれ自我はなくなっていくだろう
「答えろ」
「い、言うから。待って、ください」
心が折れた
もう涙からなにから、あらゆる液体を垂れ流しながら懇願するようにアルスに言う
それから、念について知っていることすべてを吐き出すように語っていくかしらであった
その顔は頬は痩け、何十歳も老けたような外見になっている
すべてを話終えたかしらにアルスは問う
「最後に何かあるか?」
「殺してくれ」
かしらはもう生を諦めていた
いや、生きているのが辛いというところだろうか。一刻も早く殺してほしい、ただそれだけが今の望みだった
それを聞いたアルスは躊躇なく頭に弓矢を放ち、かしらの息の根を止めたのだった
かしらの外見は呪術廻戦の禪院甚一さんです
お読みいただきありがとうございます