SEKIGAKU DIARY   作:nami73

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 基礎テストを終えたリコはビワと一緒にカエデのスイーツを楽しんでいた。
 試合の後の甘味を味わいながらナンジャモと戦っていたドットの勝利を配信越しに見届けるのであった。


LOVE ROCKETS

 午前中に座学を終わらせ、午後に実技の基礎テストをクリアしたリコたちはテーブルシティに帰還。セキガク生徒が皆共通で寝泊まりする拠点のホテルへと戻った。

 これでテラスタル研修において残すは応用テストのみというところまで来た、このままの勢いで一気に……とはならなかった。

 

「スター団の人たちと練習試合?」

 

「あぁ。キハダの奴と話が盛り上がってるうちにそういう流れになってな」

 

 寮と変わらぬ部屋割りでひと息ついていたリコたち4人をロビーのラウンジに呼びつけたフリードが練習試合の話を持ってきたのだ。

 

「アカデミーのバトル部としちゃあ土日は遠征があるみたいでさ、来週末にはもうお前ら帰っちまうだろ? だから試合できるとなりゃ明日くらいしかねぇよなって」

 

 翌日は金曜であり、試合をするとなれば必然的にトレーナーもポケモンも体力を大きく消耗する。応用テストのために遠出するのも厳しいだろうとリコは思った。

 それにパルデアの公認ジムが優先的に相手をするのはあくまでジムチャレンジ目的のリーグ挑戦者であり、土日の休日に関しては研修目的のバトルは受け付けないとも聞いていた。

 事実上、明日試合をすれば応用テストは来週まで持ち越しとなるのだ。

 

「せっかくだしやろうよ試合! パルデアに来てどれくらい強くなったのか、その途中経過を実戦でチェックだ!」

 

 いの一番にソファから立ち、意気込みを見せるのはアンだ。

 

「よーし! 僕も賛成! やるぞ〜!!」

 

 次いでロイが立ち上がる。

 

「せっかく試合するなら勝ちに行こう!」

 

 続けてリコも立ち上がり、

 

「……誰も反対なんて言ってないだろ。分かったよ」

 

 3人の視線に根負けし、ため息ながらにドットが最後に立った。

 

「分かった。明日やるってことで話通しとくわ。それじゃあお疲れさん!」

 

 やる気じゅうぶんな1年生4人組に頷きながらフリードも立ち上がり、スマホロトムを操作しながらホテルを出ていく。キハダ先生に試合のお誘いの返答をするのだろう。

 リコたちも解散をし、それぞれの部屋へと戻ることにした。

 滾る気持ちを体を動かして発散させたい気持ちはあるが、ホテル宿泊の身の上で無茶は出来ない。

 寮とは監視カメラの数も倍以上、校外学習中に無茶をやらかして生徒指導をかまされては面倒なので戻った部屋での筋トレやポケモンへのマッサージに終始することにした。

 まぁ、寮の方でも馬鹿なことはするもんじゃあないという正論は当然あるのだが……。

 

 

 

 翌日を迎え、リコは早朝5時起きでマラソンに出ていた。バトル部の一員となり、心身ともにすっかり定着した毎日の自主トレの一環だ。

 

「あっ、ドット。おはよう」

 

「ン……」

 

 それはドットも同様で、互いに相棒ポケモンのニャオハ、ウェルカモを引き連れ並走する。

 セキガクでは互いに別のルートを走っているので顔を合わせることはないが、他地方交流でやって来た慣れぬパルデアの地ではそうもいかなかった。

 お互い滞在期間がたった2週間ということでテーブルシティ周りの走行ルートをいちいち決める気にもならなかった。

 リコ的には下手に活動範囲を広げて両親なり両親の知り合いなりの目や耳に入るのが煩わしいのもあったが、そこに関してはドットからすれば預かり知らぬ話だ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 言葉を交わすことなく、暫しの並走。

 

「ふっ、ふっ、ふっ、ふっ……」

 

 やがてどちらもスピードを上げていく。

 

「「おおおおおッ!!」」

 

 黙々と並走する中で互いへの意識を捨て切れず、やがてペース配分などはかなぐり捨ててリコとドットは対抗意識のままに全力疾走を開始。

 

「にゃにゃ!?」

 

「うぇ〜いと!!」

 

 たまらずニャオハとウェルカモは主人の後を追従していくしかなかった。

 

「「負けてたまるかあああああッ!!!」」

 

 

 

「それでまぁた今日もデットヒートしてきたわけだ」

 

「うん」

 

 ロードワークがいつの間にやらドットとのかけっこへと変貌し、そんなつまらない『意地の張り合い』から帰ってきたリコのシャワーの音が、パルデア滞在時のアンの目覚ましとなっていた。

 色気のかけらもないスポーツブラとショーツで胸と局部を隠してるだけの姿でベッドにあぐらをかいてるのアンに対し、ユニットバスから出てくるリコは全身をバスタオルで拭っている。

 熱いシャワーを浴びて汗を流し、ほんのりと紅気が差す肢体は、140cmを少し越す身長に対して乳房が入寮時より大きくなり始めていた。

 乳房の先のピンク色をした乳頭もシャワーの刺激で若干起っている。

 全身より湯気を立たせながらショーツに足を通すリコにアンは普段の笑みを崩すことはない。

 試合を前に『燃えている』のが分かったからだ。

 

 

 

「くっそーッ!」

 

 同じ頃、シャワーを浴びながらドットは無意識にユニットバスの壁を蹴っていた。

 蹴り足から続くラインの先の局部は当然何人の侵入も許してはいない綺麗なピンク色で、恥丘にはただの1本たりとも茂りはない。

 両手はなだらかで、こちらもまた綺麗なピンク色をした乳頭以外の突起が一切ない胸周りに伸びている。

 悔しさの源泉は意地の張り合いで負けたから……ではない。

 ロードワーク帰りにロビーでジャージを脱いだ際、汗で張り付いて見えたシャツ越しのリコのバストとの絶対的なサイズ差を目の当たりにしての、我ながらにしょーもない嫉妬であった。

 かといってドットには別段女性らしい体つきに対して憧れがある、というわけでもない。

 ただただ、気に食わない奴を相手にあらゆる面で負けたくない、それだけの話だ。

 

 

 

 そうした早朝のやり取りを経てリコたちセキガクバトル部は試合用のユニフォームに身を包み、アカデミーのバトルコートへと向かう。

 

「凄い人だかりだね」

 

「めっちゃ気合い入ってんじゃん向こう側」

 

 ロイが周囲を見回しながら呟く。

 キハダ先生の授業が入っていない午前の授業開始とともに試合開始となる外野には、既に大勢の生徒が詰めかけていた。

 その雑多な集まりの中で唯一共通点として見出せるのは、星型のサングラスとヘルメット。

 彼らがオレンジアカデミーのバトル部……いや、スター団として結束するに必須なユニフォームなのだろう。

 

「練習試合の申し出を受けてくれてありがとう! セキエイ学園の諸君!!」

 

 ハキハキとした声音はその主がキハダ先生であると聞く者たちに即座に判断をさせる。

 初対面の時と同様にキハダが背後に従えるはスター団の面々である。違うのはその服装と顔つきだ。

 思い思いに着こなしていたオレンジアカデミー指定の制服から、校章が左胸にプリントされているアカデミーの名前通りに全身オレンジを基調とし、薄いピンクのラインが縦に入ったユニフォームを着用している。

 何より彼らの表情は、これから始まる試合を控えてほどよく引き締まり、気合いが入っているのが分かった。

 

「やぁセキガクの皆さん。ボクはピーニャ。スター団あく組こと『チーム・セギン』でボスをやっている。今日はよろしく頼むよ」

 

 外に跳ねる形の黒髪に、茶色の瞼をした好青年が昨日の4人を取りまとめる雰囲気を出しながら右手を差し出す。

 セキガクからは代表してアンが握手に応じた。

 

「よろしくお願いします! あなたが部長さん?」

 

「いや、ボクはあくまで副部長さ。マジボスの相談役をやっていたからなし崩しに、って感じだけどね」

 

「マジボス……?」

 

 初めて聞く単語にリコもロイも首を傾げるのを見れば、ピーニャは4人が水先案内人として内部事情をベラベラと口外していないことを確認する。

 

「ボクたち5人はあくまでスター団のメンバーたちをそれぞれ5つのチームに分けて統率しているに過ぎない。そんな5人のボスを束ねて部全体のリーダーとして存在するのが『マジボス』……キミたち的に言うなら部長でキャプテンってところかな」

 

「なら誰がマジボスなの?」

 

 ロイからの問いかけが純粋な疑問であるのは百も承知としながら、ピーニャの反応は鈍かった。

 

「うーん……マジボスはね。とっても恥ずかしがり屋さんで、基本的に表には出て来ないの」

 

「我らを空の上に輝く星の如く見下ろし、その行く先を照らして下さる……まさしくマジボス殿は尊き存在でござる」

 

「その例えじゃまるで死んでるみたいじゃんかよ」

 

 答えに窮するピーニャに代わってビワが答えを引き継ぎ、しみじみと語るシュウメイにオルティガがツッコミを入れる。

 バトルコートに整列したまま、和気藹々とした空気で話す様子をスター団マネージャーとして後方から見ているボタンはバツが悪そうにしながら眼鏡を拭くので合法的に俯いた。

 

「で、お前ら4人しかいねーの?」

 

 そんな中でメロコがリコたちを見回す。

 

「は、はい」

 

「じゃあ補欠はなしの親善試合方式しか無理か」

 

 リコの返しにメロコは、分かってはいたがと若干がっかり気味になる。

 ポケモンバトルの学生競技、その団体戦においてはダブルバトル担当に2人、2回のシングルバトル担当にそれぞれ1人ずつの計4人いれば試合そのものは可能だ。

 だが、公式ルールとしては引き分けが発生した場合の勝敗決定を行うための補欠戦を戦う控えの選手も登録する必要があり、1チームごとにメンバーは5人が正式に定められていた。

 その源流はポケモン歴1950年よりある『シングルマッチ勝ち抜きルール』より流れを汲んでおり、そこから1985年よりダブルバトルが団体戦へ導入されることとなった。

 さらにルール整備を重ねた結果、2000年にはダブルバトルを2回、シングルバトルを3回の5戦3勝勝ち抜き制を導入した『PNTTルール』が採用され、一時的にメンバーは7人に加え、控えを1人の8人制に移行した時期もあった。

 だがそこからポケモン歴2010年にポケモン愛護団体からの圧力を受けたことで3戦2勝勝ち抜き制へと試合規模が縮小し、現在に至っている。

 地方予選が近い今、公式ルールそのままで試合を行うのが如何に経験を積む上で重要かというのをメロコは意識していたのだ。

 

「話は聞かせてもらった」

 

 そんな中突如現れる影が1つ。爽やかな風を引き連れてやって来る。

 

「ならば俺が代役としてセキエイ学園チームの控えに回ろう」

 

 我こそはと立候補し、フィールドへ足を踏み入れる存在にリコたちはびっくりしてしまった。

 漆黒の制服を脱ぎ捨て、ユニフォーム姿を披露し躍り出るのはエクシード学園のアメジオだった。

 

「ア、アメジオ部長!?」

 

「アメジオ……」

 

 驚くのはリコたちだけではない。フリードもまた、懐かしき爽やかな風の主に目を見開いていた。

 そんなフリードを一瞥してから、アメジオは両チームの面々の前に歩み出る。

 

「スター団としては公式戦そのままの空気感で試合感覚を養いたい。それはセキエイ学園側も同様なはず。そしてその為に最低限の穴埋めが必要ならば、是非協力させて欲しい。俺としても全国でぶつかるかも知れぬライバル校の戦いぶりを近くで見てみたいしな」

 

 お目付役として同行していたジルとコニアは、アメジオが脱ぎ捨てた制服を拾ってからすぐに周囲を見回す。

 アメジオの独断はスピネル監督と通じている生徒がいるならまず間違いなく報告案件で、あのいけすかない男の耳に入ればまず間違いなくお小言を聞く羽目になるからだ。

 幸いなことに外野の中にはスピネル派の生徒はおろか、エクシード学園の生徒すら見当たらなかったのが幸運だった。

 

「僕は賛成! 控えにいてもらうくらいならいいんじゃあないかな?」

 

「どっちでもいいさ。引き分けなんてそうそう起きるもんじゃあないし」

 

 突然現れたアメジオの提案にロイもドットもあっさりと首肯する。

 1年生4人組のまとめ役としてアンもこの時点で2人と同じ意見に腹を決めていた。

 

「リコも構わないよね?」

 

 それでも一応確認を取るのは、リコが以前の練習試合でアメジオと試合をした間柄だからだ。

 当然、その辺りの配慮もルームメイト同士ですぐに伝わる。

 

「アメジオ部長、よろしくお願いします」

 

「よろしく頼む。それと、目上相手の言葉遣いはやめてくれ。俺もきみたちと同じ1年生なんだ」

 

「じゃあよろしくね、アメジオ!」

 

「あぁ、こちらこそ。といっても何をするでもないだろうがな」

 

 ロイが差し出す右手にアメジオは快く応じた。

 

「スター団の方々も俺がセキガクチームの控えに回ること、承認してくれますでしょうか!?」

 

「オッケーオッケー! そういう盛り上げ方、ボクたちも大好きさ!! そうだろうみんな?」

 

 アメジオにピーニャがサムズアップを送る。残る4人のボスたちも賛成の意を首肯して見せた。

 ピーニャが一瞬視線をやれば、ボタンもコクリと首肯を送る。

 両チームで話が纏まれば、センターサークルより分かれる中央部にキハダが入った。

 

「よし! それではこれより、セキエイ学園&エクシード学園連合チームvsオレンジアカデミーポケモンバトル部の試合を行うッ!! 両チーム、整列からの礼ッッッ!!」

 

「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」

 

 キハダの号令に合わせ、整列した双方ともに礼をする。

 こうして始まる対抗試合、オーダーは以下の通りだった。

 

ダブルバトル

アン&ロイvsシュウメイ&メロコ

 

シングルバトル2

ドットvsオルティガ

 

シングルバトル1

リコvsビワ

 

控え

アメジオvsピーニャ

 

 

 




 『メロコ』
 14歳。オレンジアカデミー1年生。スター団ほのお組『チーム・シェダル』ボス。
 粗暴な言葉遣いながら心根は優しい女の子で世話焼きの何でも屋。
 ほのお組の名に違わずほのおタイプの扱いが得意だ。
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