SEKIGAKU DIARY   作:nami73

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 セキガクが戦うのは去年敗戦したグンジョウ工業学校だった。
 去年の雪辱を晴らすかのように上級生たちが躍動。あっさり1回戦を突破するのであった。


対決、ロイヤルツイン

 マフィンがメガシンカを解禁し、あっさりと快勝で締め括られたグン工との1回戦に引き続き、そのままカントー予選は2回戦へ突入した。

 今日でベスト4が決まり、明後日24日にベスト4、明明後日25日に決勝がテレビ中継入りで行われる運びとなっている。

 如何にポケモンバトルのメッカであるカントー地方といえども学生レベルの予選大会から目を光らせているような類は相当の物好きであるという認識が一般的なのだ。

 

「アレが『学生バトル界のポケランジェロ』と言われているタマ大3年のシモーニだ。在学中に既にパトロンを得てバトル部の活動とプロの彫刻家を両立させているらしい」

 

「ほほーう、二足の草鞋とはなかなかやるじゃあねェの」

 

 2回戦を観戦する中、ダブルスでクチバ海上学校のタッグを圧倒するタマ大のタッグ、その片割れに対してホタルが呟けばナギが対抗意識を露わにする。

 

「アルバイトばっかりやってる苦学生と同列扱いじゃあ、ポケランジェロさんとやらも形無しね」

 

「ぶぶぶい」

 

 そのしょーもなさにイーブイを撫でながらミコはアハハ、と苦笑いながらにツッコミを入れた。

 ポケランジェロとはポケモン歴1470年代から1500年代後半までに『水の都』アルトマーレで活躍した芸術家である。

 そんな偉人の名を異名として持つシモーニのこうせきポケモンガントルを背に乗せたてつヨロイポケモンコドラのトレーナーとして、カオルは終始冷静であった。

 

「エアームド、戦闘不能! ガントルの勝ち!! よって勝者、タマムシ大附属3年シモーニ選手&2年カオル選手!!」

 

 

 

「固定砲台の役割を担うガントルを背負ってフィールド中を駆け回り、絶えず砲撃でダメージを稼いでゆくライド系のタッグ戦術というわけか」

 

「ホタル副部長? ガントルって、102.0kgって図鑑に載ってたんスけど、それ背中に乗せて走れるのってヤバくないスか?」

 

「それだけみっちり鍛えてあるということだろう。なぁナギ?」

 

「そりゃあそうよ。なんせオレの妹なんだしな」

 

「そこは関係なかろう」

 

 リコは、タマ大ベンチが沸き立つことがないのをふと見る。

 クチバ海上側のタッグも決して悪い動きはしていなかったが、それでもその上より抑え込み、勝つのが当然であるという圧倒的な強敵の風格を感じていた。

 キラリはというと、一回戦からずっとフェンス際に張り付いてデータマンの仕事に邁進している。

 

 

 

「パラセクト、戦闘不能! カイリキーの勝ち!! よって勝者、タマムシ大附属3年タイテン選手!!」

 

「うむ!! 敵を撃ち倒したり〜!!」

 

 

 

「アレがタマ大の副部長を務める3年のタイテン……」

 

「副部長っていうか副武将スよね、アレ」

 

「だけど実際厄介だよ。カイリキーは元々攻撃力の高いポケモンとはいえ、タイプ相性としてはかくとう技が効果今ひとつなパラセクトを相手にかくとう技だけでねじ伏せるパワーだなんて」

 

「相手とのレベル差もあるが、やはり半減をものともしない辺りは柔……即ち技で相手を制圧するタイプである部長のヒカミとは真逆のタイプだな」

 

「いや、そりゃ違うぜ」

 

 ホタルを中心としてアン、ミコが話す中にフリードが口を開く。

 

「タマ大の連中は基礎として柔も剛もしっかり身に付けている。その上で、部長と副武将に関しては技と力をより際立たせているんだ。自分たちのトレーナーとしての領分を心得てんだろうな」

 

 監督として珍しく真っ当かつ正確な目利きをしてみせるフリード、その言及内容にリコたちは息を呑む。

 

「間違いなくタマ大はカントー最強チーム。イメージとするなら……マフィンが5人いるようなもんだと思った方がいいな」

 

 遠回しにフリードは、マフィンならばタマ大の精鋭相手にも互角であると明言する。

 それ以上に告げられた内容に戦慄するよりないのがリコたちだった。

 何せ今日に至るまで誰1人として、練習内のバトルでマフィンに勝った者などいないからだ。

 

「まぁリコちゃん好き好き度なら俺の圧勝だけどね〜」

 

「やかましいわ」

 

 そんな当の本人は、あっさりとシリアスな空気をぶち壊しにするのでホタルからのチョップを頭にくらうのだが。

 

 

 

「ポニータ、戦闘不能! ニャヒートの勝ち!! よって勝者、チャバ農中等部1年ムラエリ選手!!」

 

「にゃッひぁ〜!!」

 

「よッし!!」

 

 

 

「チャバ農が勝った……ということは!」

 

 ロイがナギを振り向けばナギも頷いて見せる。ベスト4を戦う最初の組み合わせは、タマ大vsチャバ農と大方の予想通りに決まったのだ。

 

「ムラエリちゃん」

 

 儀礼を済ませ、引き上げるところの彼女とリコは目が合う。

 白い歯を見せる不敵な笑みは、必ず決勝まで勝ち上がってリコと再戦をするという決意の表れだ。

 

「負けらんないね」

 

「うん」

 

 アンにリコは言葉を返す。

 続けて入場するトキワ台のミコトからも熱視線を向けられるリコは、静かに闘志を燃やしていた。

 

 

 

『トキワ台強し! ダブルバトルで1勝からのシングルバトル2もまた圧倒しております!』

 

「く、くそう! なんという盤石な布陣。どこにも隙が見当たらぬ」

 

 フィールドを支配するは下半身が蜂の巣と一体化し、まるで大きなドレスのように見える貫禄ある女王蜂……はちのすポケモンビークインだ。

 その周囲を無数のはちのこポケモンミツハニーが固め、グレン島学院の生徒が繰り出すみつごどりポケモンドードリオを追い詰めていた。

 

「「「くぁ〜……!」」」

 

 三つ首それぞれからの眼光を受け流すでもなく睥睨するビークイン。

 睨みをきかせる瞳の質はもちろん、量すら圧倒的に上回る中で何をたじろぐ必要があろうか。

 

 

 

「ねぇナギ先輩。アレっていいの?」

 

「あ? 審判が止めに入ってないんだからいいんじゃね?」

 

 ロイの投げかける疑問に対し、ナギはルール上の観点から返事をする。

 

「……ビークインは体内から発するフェロモンによりミツハニーを操作、使役する。即ちあのミツハニーたちは、ビークイン1体分の戦力とイコールになっている」

 

「じゃああのトキワ台の部長さんは、ビークインを通してミツハニーたちの指示もこなしてるってこと!?」

 

「……群体系のポケモンを扱うには相応の高等技術が要る。それを彼女はマスターしている」

 

 ロイが疑問に浮かべた生態的なところをキラリが捕捉すれば、フィールドでは展開されていた圧倒劇に終止符が打たれようとしていた。

 

 

 

「ビークイン! こうげきしれい!! ……火力全開⭐︎」

 

 ビークインと数多のミツハニーたちの羽音が止まぬ中、その双眸が真っ赤にギラつく。

 

「びぃぃぃ……びぃッ!!」

 

 獰猛なる攻撃色となった瞳でビークインが右手をドードリオへ向ければ、

 

「「「「「びびびびび!!」」」」」

 

 周囲のミツハニーが四方八方から多色のビーム攻撃を仕掛ける。

 

「まだだ! 指揮系統をやれれば!!」

 

「「「かかかぁ〜!!」」」

 

 直撃を逸らし、ビームの雨を掻い潜りながら疾走するドードリオだが、それすらもミサキからすれば想定の範囲内であった。

 むしタイプエネルギーのビーム攻撃は、その1発1発こそ大したダメージには繋がらないものの、問題はその物量にあった。

 

「パワージェム……それじゃ、バイバ〜イ」

 

「びィッ!!」

 

 ドリルくちばしを仕掛けに来たところへ、避けようのないタイミングでいわエネルギーを凝縮した弾丸を放り込まれてはドードリオには耐えようがなかった。

 元より肉薄の距離まで辿り着く段階でこうげきしれいをいなし続けていくために体力を激しく消耗していたからだ。

 ミツハニーからの弾幕で沈められるか、ビークインからの1発で沈められるか、ドードリオに待つ未来はこの2択しかなかったのだ。

 

「ドードリオ、戦闘不能! ビークインの勝ち!! よって勝者、トキワ台中2年ミサキ選手!!」

 

「ありがとうございました〜⭐︎」

 

 愛嬌を振る舞う『星の瞳』が一瞬リコたちセキガクバトル部を視界に入れ、ウインクを飛ばしてはすぐまた客席の応援団へ向けられる。

 ミサキとしてもミコトが気にかけた娘のいるチームを相手取る方が面白いと考えてはいた。そのためには2回戦を勝ち上がって来てもらわねばならないが。

 

「やはりトキワ台が上がってきたか」

 

 ホタルは静かに呟いた。しかしそれ以上語ることはしなかった。まずは自分たちがベスト4を決めなければ何にもならないからだ。

 

「よし、行こう!」

 

 マフィンの号令でトキワ台と入れ替わりにベンチに入る。2回戦、そして本日最後の試合でベスト4が出揃うのだ。

 

「頑張って!」

 

「はい!」

 

 入場口からチームの入退場が入れ替わる中、ミコトからの気さくなエールからは絶対の自信が窺える。

 『勝ち上がって来なさいよ』というようなニュアンスを含んだ一言に、リコは首肯を返した。

 オーダーに口出しする権利などはないが、トキワ台と戦うことになったなら、是非とも彼女と戦ってみたいとリコは思った。

 

 

 

「これより2回戦第4試合、セキエイ学園vsロータ学習院の団体戦を行います!!」

 

 儀礼ののちに改めて顔を突き合わせれば、皇族御用達の学校というのもあって、皆育ちの良さが表情や細かい仕草から滲み出ていた。一般庶民の学び屋でしかないセキガクとはえらい違いであるとリコは思う。

 

「セキエイ学園の皆さま、本日はよろしくお願いします」

 

「お互い力の限り競い合いましょうね」

 

 その中でも別格で、チームメイトもどこか遠慮がちな空気を向けている金髪碧眼の姉妹こそが、アインとリインのオルドラン姉妹である。

 ロータの町は地理的な観点や周囲との交わりから大まかにはカントー地方の一部として扱われるが、厳密には町そのものが独立した国家である。

 その国民たちの支持を得てオルドラン城に君臨する皇女アイリーンの息女としてこの世に生を受けたのがアインとリインだ。

 双子として生まれながらも姉妹仲は良好で、当人同士の認識では姉のアインが王、リインが副王として将来のビジョンを共有している。まぁ、その辺りに関しては当人たち含めて真剣勝負の場では関係ないというのが意見の一致するところであるが……。

 とにかく、両チームのオーダーとしては以下の通りとなった。

 

ダブルバトル

ホタル&ロイvsアイン&リイン

 

シングルバトル2

ミコvsフダイ

 

シングルバトル1

マフィンvsイチモン

 

控え

ナギvsトザーマ

 

「そのままダブルバトル、セキ学2年ホタル選手&1年ロイ選手vsロータ学習院1年アイン選手&1年リイン選手の試合を行います!!」

 

「頼むぞ、ニンフィア!」

 

「ふぃ〜!」

 

「いくぞーッ! ストライク!!」

 

「すとぅらぃッ!!」

 

 ホタルはニンフィアを、ロイはストライクを先発させる。

 

「分かってるなロイ。キラリのデータでは連中の戦略の要としてあの姉妹ダブルスで流れを作りに来る! それを抑え込んで逆にこちらに流れを引き寄せるんだ!」

 

「はいッ!!」

 

 1年世の中で初めてのメンバー入りとなり、ロイのテンションは既に最高潮であった。

 

「「出て来てください、私たちのナイトよ!」」

 

 皇族の姉妹だからと決して特別扱いを受けたりはせず、他の部員と同じようにユニフォームを着用し、市販のモンスターボールを投げ込む仕草が完全にシンクロしている辺りは双子の姉妹であろう。

 

「「ばおおおうッ!!」」

 

 透き通るような声音が重なった後に、無骨なる鳴き声もまた重なる。

 はどうポケモンルカリオ……オルドラン城を預かる皇族にとっては切っても切り離せない魂のポケモンである。

 

「試合開始ィィィィッ!!」

 

 互いにここを勝てばベスト4進出となる大事な緒戦、先に動き出すのは……、

 

「「不吉なる調べを相手に!!」」

 

「「ばうッ!!」」

 

 オルドラン姉妹だ。

 

 2体のルカリオが両手甲部の白い骨を硬質化させ、頭の上で擦り合わせることでフィールド中に不快な音波を放ってゆく。

 

 

 

「うぅ〜ッ、鳥肌立つぅ〜ッ」

 

 さながら黒板を指で引っ掻いた音を聞くような不快音にアンはたまらず耳を塞ぐ。

 

「……データ通りの立ち上がり。ホタルたちなら、大丈夫」

 

 キラリは僅かに眉をひそめながら一言呟く。

 

 

 

「このまま攻め込みます!」

 

「ルカリオ!」

 

「「はどうだん!!」」

 

「「ばあおッ!!」」

 

 きんぞくおんにより相手の特殊防御力を下げ、そこからはどうだんを中心に攻め立てる戦法は、1回戦で見たのとキラリのまとめたデータ通りだ。

 それに加え、『球を飛ばしてくる』のなら、ホタルは黙っていられない。

 

「やるぞニンフィア! ロイも対処を」

 

「ふぃぃあ!」

 

「はい!」

 

 飛んでくるはどうだんに対して、

 

「ふぃッ!!」

 

 ニンフィアはリボンで上空へ打ち上げ、

 

「らいくぅッ!!」

 

 ストライクは右腕の鎌で両断することでそれぞれやり過ごした。

 




 『ミサキ』
 11歳。トキワ台中学校2年生。
 バトル部部長でチームの『クイーン』として君臨している。ミコトとは『仲の良いお友達(本人談)』
 2年生ながら3年生を相手に圧倒する実力とカリスマは本物だ。
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