SEKIGAKU DIARY   作:nami73

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 危なげなく勝ち上がる強豪たちを見てからのセキガク2回戦の相手はロータの町の学習院。
 王家の双子が繰り出すルカリオコンビを前にホタルとロイが出陣するのであった。


ベスト4決定!

「まぁ凄い! はどうだんをあっさり対処なさるとは!」

 

「今度はこちらのサーブだ、ニンフィア!」

 

「ふぃぃぃッ!」

 

 生成したフェアリーエネルギーの球体を上空へ舞い上げれば、そこに合わせてニンフィアも跳躍をしてゆく。

 

「ふぃッ!!」

 

「「まぁッ!」」

 

 ムーンフォースをリボンで叩きつけ、弾道に勢いをつけていく。

 ホタルのバレー殺法に、オルドラン姉妹は目を見開いた。なんと独創的な戦術か、と純粋に驚かされた。

 

「ルカリオ! 弾き飛ばして!」

 

「ばうおッ!!」

 

 弾丸サーブを前にアインのルカリオが両手を合わせたフルスイングで迎え撃ち、力任せに弾くことでムーンフォースは審判サークルを掠めてフェンスに命中。

 

「リイン、ニンフィアの着地際を!」

 

「分かったわ!」

 

 すかさずリインのルカリオが駆け出した。狙いは弾丸サーブのために飛んだニンフィアだ。

 

「させるもんか!!」

 

「すぅらぁッ!!」

 

 リインのルカリオがニンフィア狙いで走ったところに黄緑色の影が割り込む。ロイのストライクだ。

 自慢の鎌を振り下ろすのに対してたまらずルカリオは両腕でガードをし、足も止められてしまう。

 

「なんと……!」

 

 その間にニンフィアはふわりと着地を済ませ、組み合った形のストライクとリインのルカリオの脇を通り抜けていった。

 

「そのまま片方を抑えておけロイ! もう片方はボクたちで仕留める!!」

 

「こ、この方々……最初からわたくしたちの連携寸断が狙いとは!」

 

「しかもなんというお手並み!」

 

 アインもリインも驚愕を隠せなかった。自分たちの戦術の基礎が完璧に読まれ、対応されている事実に舌を巻くよりなかった。それを『面白い』と受け取る純粋さは、生まれに関わりのない彼女たち自身の素養であった。

 

『……相手のタッグはルカリオ2体で開幕にきんぞくおんで特殊防御を下げてから特殊技を主体に攻めてくる。早い段階からプレッシャーをかけていき2体の連携を崩しにかかることが大事』

 

 試合前に受け取ったデータ。それを直接取っていたキラリからの注釈は的確かつ簡潔なものだった。故にロイでも役割を外さなかった。

 

『……記録の残っている練習試合ではルカリオたちを引き剥がしてもすぐに立て直しにかかろうとする。寸断が成功したらそのまま一気に畳みかけた方がいい』

 

「了解だキラリ!」

 

 試合前のキラリの注釈を思い出し、それに応えるようにホタルは左手首のZパワーリングを起動させる。

 

「向かい風の強さは己のゼンリョクの証!! やるぞニンフィア!!」

 

「ふぃぃぃぃぃあッ!!」

 

「まぁッ!?」

 

 フェアリーのゼンリョクポーズを決めたホタルから、Zパワーがニンフィアへ注がれてゆく。

 

「ルカリオ、ガードを! ッ…!?」

 

「ばぉうッ…!!」

 

 アインのルカリオはムーンフォースの弾丸サーブを強引に弾いたダメージにより両手が痺れていた。コレでは上手く防御を固めることが出来ない。一発限りの制約と引き換えに爆発的な威力を叩き出すZワザを前には回避行動は愚の骨頂。故にガード姿勢を取れるかどうかは重要なのだ。

 ここにきてアインは、セキガクタッグの狙いが『短期決戦』であると理解した。

 

「ストライク! 輝け! 夢の結晶!!」

 

「ううッ! ルカリオ、しんくうは!!」

 

 ホタルがゼンリョクポーズを取って仕掛けにいくのと同じように、ロイもユニフォームのズボンポケットからテラスタルオーブを取り出し、起動させて放り投げる。

 

「ばうばうばうばうばう!」

 

 ストライクが結晶に包まれてゆくところにルカリオは両拳を連続で振るい、文字通りの真空波を飛ばす。

 

「すぅとぅらぁぁぁい!!」

 

 その必死の連打は、頭に赤と緑の風船の形をしたひこうタイプのテラスタルジュエルを被るストライクには対して効き目が薄いものだった。

 かくとうタイプの技はひこうタイプには効果今ひとつなのだ。

 

「ニンフィア! アタックNo.1!! ラブリースターインパクト!!」

 

「ふぃぃぃあああッ!!」

 

「ストライク!! テラスタルパワー全開!! ダブルウイングだ!!」

 

「すらあああああッ!!」

 

 ニンフィアの全身より放たれる星型のエネルギー波がアインのルカリオを捉え、ストライクが突撃と共に背中の翅の羽ばたきをリインのルカリオへ叩き付ける。

 

「「なッ……!?」」

 

 姉妹のルカリオは猛烈な攻めを直撃で叩き込まれ、空高く打ち上げられ、そこから受け身もままならず同時にフィールドへ叩き付けられる。

 駆け寄る審判に対して目を回し、ダウンした様子を晒すのも2体揃ってのものだった。

 

「アイン選手のルカリオ、戦闘不能! ニンフィアの勝ち!! リイン選手のルカ、戦闘不能! ストライクの勝ち!! よって勝者、セキガク2年ホタル選手&1年ロイ選手!!」

 

『セキガクタッグの見事な速攻! ホタル選手とロイ選手がベスト4進出に向け大事な1勝目を奪いましたーッ!!』

 

「よし……!」

 

「やった! 副部長!」

 

 ロイが差し出す握り拳にホタルはフッ、と笑みを見せながらグータッチで応える。

 

「すとらい」

 

「ふぃッ!」

 

 ストライクとニンフィアも、主人たちの真似で鎌とリボンを軽く触れ合わせた。

 

 

 

「ホタル副部長とロイ、いい感じ!」

 

「うん! 何せ相手のエースをやっつけたんだもん!」

 

 快勝にリコもアンもテンションが上がる。

 ロータ学習院は良くも悪くもオルドラン姉妹の調子がそのまま総合力に直結するチームである。その姉妹を豪快に破ったことで一気に流れを持ち込めたのだ。

 ベスト4に王手をかけた高揚とは別に2人の中に芽生えるのはシンプルな闘争心だった。『自分も試合に出たい』と。

 

「おーしミコっちよぉ! 後に続いたれや!!」

 

 ナギが声を張り上げ、ホタルとロイの2人と入れ替わりでトレーナーサークルに入るミコに言葉を投げかける。

 

 

 

「任せといて!」

 

「ぶいッ!」

 

 ミコはベンチに顔だけ振り向き、白い歯とサムズアップを見せる。

 相棒のイーブイも威勢よく主人の足元で飛び跳ねていた。

 

 

 

「デカグース! とっしん攻撃だ!!」

 

「イーブイ! わるわるゾーン展開!!」

 

「ぶぅい!」

 

 ダブルバトルの快勝は、そのままセキガク側に抜群の勢いをもたらした。

 3年生のフダイ選手が繰り出したはりこみポケモンデカグースをイーブイが終始圧倒している。

 全身を使ったデカグースのタックルも、イーブイは自慢の相棒技の前に威力を殺して見せた。

 

「く、こいつ、強い……!」

 

 

 

「リキュウ部長」

 

「流石はセキエイ学園。我々との練習試合からさらに力をつけている」

 

 ムラエリにリキュウは穏やかな表情のまま頷いて見せる。

 

 

 

「お姉様、あのイーブイ……」

 

「うん。私のピカチュウと同じ。相棒化されてる」

 

 客席から試合を観るトキワ台の一団ではクロコにミコトが頷きながら、その視線はイーブイが圧倒するフィールドに釘付けのままだ。

 

「よしんばあのデカグースが勝ちを拾えたとして、続けてシングル1で試合を決めに出てくるのがアレ……か」

 

 ミサキの星を宿した蜂蜜色の瞳は、甘ったるい声音とは裏腹に目の前の団体戦の顛末を察していた。

 ネクストサークルに待機するマフィンの実力的に、ロータ学習院側が抗しきれるとはとても思えなかった。

 

 

 

「セキエイ学園……アサギ塾やチャバ農相手に練習試合で気を吐いていただけのことはあるようだ」

 

「あぁ。トキワ台も油断していたらば危うかろう。もしかしたら、もしかする」

 

 ヒカミ部長とタイテン副部長の会話を聞くカオルは、兄のいるセキガクの急成長振りに驚いていた。

 去年あっさり1回戦負けに終わった弱小校とはまるで別のチームのようにしか見えなかった。

 ただ、驚いて終わりではないのが『常勝』を掲げるタマ大附属の選手である。スタジアム中に散らばっているデータマンたちとは別に選手目線からも細かな相手のデータを推し量っていた。

 油断はしない。隙も見せない。だからこそ彼女たちはカントーにおいてその立場を不動のものに出来ているのだ。

 

 

 

「ぐすぁッ…!」

 

「し、しまった!」

 

 どばどばオーラによるサイコパワーの奔流をイーブイは叩き込む。

 デカグースが仰け反り、バランスを崩す。まさしく千載一遇の好機にミコとイーブイの瞳がキラッと輝いた。

 

「今だよイーブイ!! レッツゴー!!」

 

「ぶぅい〜ッ!!」

 

 デカグースめがけ走り込むイーブイがだんだんと加速する。

 

「必殺!! ブイブイブレイク!!」

 

 猛スピードで疾走し続けることで自身を一条の矢と見立てたイーブイの突撃がデカグースへ突き刺されば、勢いのままに後方のフェンスまで吹き飛ばす。

 

「で、デカグース!」

 

 フェンスにクレーターを作り、その中心部から剥がれ落ちてうつ伏せに倒れるデカグースは完全に目を回していた。

 

「デカグース、戦闘不能! イーブイの勝ち!! よって勝者、セキガク2年ミコ選手!!」

 

「よーッし完璧ィ! ナイスだよ相棒〜!」

 

「ぶいぶい〜!!」

 

 必殺技の威力と、その豪快な勝ちっぷりにまばらな客席より拍手が上がる。地方予選の序盤であるために数こそ少なかったが、それらは間違いなくセキガクのベスト4進出を祝うものでもあった。

 

 

「2回戦第4試合は、2連勝によりセキエイ学園の勝利とします! 一同、礼!!」

 

「「「「「ありがとうございました!!」」」」」

 

 ミコの勝利により団体戦の決着となり、両陣営がセンターライン上で挨拶を済ませる。

 

「完敗です。1から鍛え直さなくてはねリイン」

 

「えぇ」

 

「2人だけじゃあない」

 

「「え?」」

 

「不甲斐ないのは俺たちもさ。皇族の人たちに恥をかかせないように、って以前の話だ。負けたら悔しいんだ」

 

「イチモン部長…」

 

「負けたら悔しい、そんな当たり前のことを思い出させてくれたセキエイ学園の皆さんへの恩返しは、次に我々が勝つという形でさせてもらおうではないか!」

 

「「はい!」」

 

「リコちゃんたちは来年も面白くなりそうだね」

 

 敗れてなお奮起し、来年のリベンジを誓うロータ学習院の生徒たちを見ながらマフィンは口を開く。

 

「あはは……でも、ポケモンバトルって、そういうもので、だからこそみんな真剣であるべきだし、そこからポケモンたちと絆を育める、ですよね?」

 

「うん」

 

 苦笑いするだけではない、リコなりの言葉にマフィンは真摯な首肯を見せた。リコの中には確かに『セキガクの柱』としての自覚が芽生え、着実な成長に繋がってきているのが嬉しかった。

 

『これをもちまして全国中学校ポケモンバトル大会カントー地方予選、初日のプログラムは全て終了! 明後日に行われる準決勝を戦うベスト4が決定しました!!』

 

 スタジアムのモニターにトーナメント表が映し出され、各チームの紹介に入る。

 

『準決勝第1試合はタマムシ大学附属中学校vsチャバ農業大学第1高等学校中等部! カントーの覇者タマ大に対し、No.3のチャバ農が自慢の『詫び』と『寂び』のイズムを活かして成るか、下剋上ッ!?』

 

「引き上げるぞ」

 

 ヒカミがタマ大部員をまとめて引き上げる中、通路口でリキュウ率いるチャバ農と鉢合わせをする。リキュウは穏やかな表情のまま物腰柔らかな態度を崩さない。故に横並びでスタジアムを出る件の両校同士に言葉はなかった。

 それでも直接対決がかくてしたことにより生まれるピリピリとした空気を保ったまま、それぞれバスに乗り込み大会期間中部屋を借り受けるホテルへと向かっていった。

 

『準決勝第2試合はトキワ台中学校vsセキエイ学園です! トキワ台としては打倒タマ大の1番手としてここで負けられません! 一方のセキエイ学園もまた快勝を重ね勢いがあります! 大番狂わせはあるでしょうか!?』

 

 

 

「エッホ! エッホ! エッホ! エッホ! ベスト4進出って伝えなきゃ! エッホ! みんなに伝えなきゃ!」

 

「ならもっと早く走れノロマフィン!!」

 

 大会初日を終え、そのままランニングしながらセキガクバトル部は学園まで帰宅してゆく。

 相変わらずマフィンはぶっちぎりの最後尾で、威勢だけはいいのを先頭からホタルがツッコミを入れる。

 

「ベスト4か……」

 

「あたしたちも出たいよね、試合」

 

「うん」

 

 1回戦、2回戦とリコもアンもメンバーではなかった。試合に出たい……言葉こそ発さないが、そこはドットも気持ちを同じくしている。

 

「……ここから先は強敵揃い」

 

「えっ?」

 

「……データとは、必要なタイミングで活用してこそ良い結果をもたらす」

 

「つまり今日出なかったメンバーは秘密兵器ってこと!」

 

「ぶーい!」

 

 ミコの要約にキラリは小さく首肯する。

 先に言われてしまったことに関してキラリの表情に僅かな憮然が垣間見えたが、ミコはあははと苦笑いをするよりなかった。

 

「「はいッ!」」

 

「ウス…」

 

 リコとアンの表情が一気に明るくなり、互いを見合わせて笑みを作る。

 ドットも走るので握る拳の力を無意識に強めていた。

 

 

 




 『アイン&リイン』
 それぞれ11歳。ロータ学習院1年生。
 オルドラン城に住む王族の出身で母は皇女のアイリーン。
 生まれを気にすることなく分け隔てなく人と接するフレンドリーな双子の姉妹だよ。
 想定CVはアインが佐伯伊織さんでリインが高橋花林さん。
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