SEKIGAKU DIARY   作:nami73

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 ダブルバトルでアインとリインの双子姉妹を破り、続けてシングル2でミコの相棒イーブイが必殺技を炸裂させる。
 1回戦に続けてのストレート勝ちで、セキガクはベスト4進出を決めるのであった。


熱血のボウリング対決

『どうしてこんなことになったんだろう……?』

 

 シューズと床の摩擦音、そしてカコン! という小気味のいい音に混じって時折盛大な爆音が響くのはトキワシティのボウリング場。

 ボウラーズベンチにて、リコは呆然とするよりなかった。

 

 

 

 時は遡る。

 地本予選ベスト4進出を決め、明日にトキワ台中学との準決勝を控えたセキガクバトル部は翌日7月23日を『完全休養日』ということでオフにしていた。

 公式試合におけるポケモンのダメージとは練習試合のものとは比較にならないという観点から、全国学生ポケモンバトル協会よりポケモン愛護のために義務付けられているが故の対応だった。

 1回戦から2回戦はずっとベンチで試合に出ていなかったリコも出場メンバーと同じくオフとなり、寮に篭っていても仕方がないのでロードワークがてらにオーキド博士のポケモン研究所へでも顔を出そうかと考えていたところでアンから誘われた。

 

「ほら、前言ってたじゃん。トキワシティ案内したげるって」

 

 やり取りとしては入学してすぐの時からありはした話だ。

 これまで何度かアンとトキワシティに行ったことこそあれど、それらは大半が先輩たちを交えた夜食パーティーのための買い出し目的であり、純粋に遊びに出かけるというのは初めてのことだった。

 バトル部に入って以降、休日の時間の使い方と言えばそれぞれ自主トレが主であったからだ。

 

「ドットもアンに誘われたの?」

 

「暇だったからな」

 

 寮の玄関で合流したドットを交え、3人は町へ繰り出した。

 相も変わらずリコとドットは合流して以降は特に会話も、視線を合わせることもなく並び歩き、その前をアンが行く。

 アンは、取り立てて2人の仲をどうこうしようとはしなかった。

 ライバル関係大いに結構、リコもドットも醜い足の引っ張り合いをするタイプでないことは知っているし、いざとなれば自分が間に入ればいいと考えていた。それが自分の役割だと、なんとなく認識していた。

 

「「あっ」」

 

 そんなことを考えている時だった。

 先頭を歩くアンが足を止めるので視線の先を見てみれば、そこにはトキワ大のミコトがいた。

 

「あら、あなた方は……」

 

 彼女の隣にベッタリとひっつくツインテールの少女もまたミコトに続いてこちらのことを認識する。

 

「けい?」

 

 背中に張り付いているケーシィも顔を覗かせていた。

 

「どうかしたんです?」

 

 2人の左右に続く黒髪ロングのスレンダーなルイコと、ショートヘアの黒髪に色とりどりの花飾りが眩しいカザリは何事かと首を傾げた。

 

「そういえばトキワシティ、なんだもんね」

 

 トキワシティにあるからトキワ台中学校……思えばネーミングとしては安直なもので、ミコトたちの生活圏であるのもすぐに分かる話だ。

 これまでも互いを知らない状態だっただけで、すぐ近くですれ違ってたのかもしれないとアンは思った。

 

「お互い完全休養だからお出かけ、ってところ?」

 

「そうですね」

 

 リコとミコトは互いに苦笑する。

 

「そちらのお2人は……?」

 

「近所にあるサクガワ中学校のお友達ですの。というかわたくしはトキワ台バトル部1年のクロコ。以後お見知り置きくださいませ」

 

「あぁ、バトル部繋がりってやつ? サクガワ中学の1年生、ルイコでーす!」

 

「あの、同じく1年のカザリと言います。よろしくお願いします」

 

 気さくなルイコに対し、カザリは行儀良く頭を下げる。

 

「にしてもお互い辛いわね。完全休養日じゃあバトルも下手に出来ないし……」

 

「ぴかちう」

 

 ううむと唸るミコトの肩の上のピカチュウも倣う。

 完全休養日に無理を押してトレーニングやバトルをして、もしそれがバレでもしたら大目玉を食らうからだ。

 しかも悪質性が認められれば最悪出場停止すらあり得る。その悪質性にしても判断する側の主観が伴う話だ。おおよその目算で行動するにはあまりにもリスクが大きい。

 なにより出場停止でチームの皆に迷惑をかけるのは憚られるのだ。

 

「だからと言ってこうしてお互いバッタリ出会っておいて、何にもなしにサヨウナラってすれ違うだけなのも味気ないじゃない?」

 

「ま、まぁ確かに……?」

 

 考え込むミコトにリコは困惑の笑みを向ける。

 

「あっ、お姉さーん!」

 

 そんな時だった。リコへ元気よく駆けてきてギュウと抱き付くのはチャンだ。

 

「チャンちゃん」

 

「えへへ、こんにちは!」

 

「にゃろぅ……」

 

 満面の笑みをリコに見せながらハグに満足して自分から離れるチャンに、主人の右隣に控えていたニャローテはとりあえず見逃してやることにする。

 

「お姉様、ここは皆でボウリングでもいかがです?」

 

「いいわねそれ! せっかくだしセキガクとトキワ台で前哨戦と洒落込むとしましょうか!!」

 

「え? え?」

 

「「なんだか面白そう〜!」」

 

 リコが困惑を口にし、アンとチャンは目をキラキラと輝かせる。

 

「うわ、めんどくさ……」

 

 ドットは、この時点でお出かけに付き合ったのを後悔していた。

 

 

 

 思いがけない『前哨戦』の提案にアンが乗り気になってしまったことでリコもドットも断るに断れず、ミコトたちトキワ台からの4人組と一緒にボウリング場に入ったところで時を戻そう。

 ポケモン社会に存在するボウリングの歴史やルールの変遷は『こちらの世界』のそれと大して変わりはない。当然プロの概念もあり、プロボウラーも多数存在している。

 ただ、ボウラーたちが情熱を燃やすその競技性は、我々の知るそれとは少し勝手が違う。

 

「「第1回! セキガクvsトキワ台vsサクガワ! 女たちの三つ巴ボウリング大会〜!!」」

 

 景気良く場を仕切るアンとルイコ。

 

「「「びッ! びッ! びッ!」」」

 

 2人に合わせてボールリターンに置かれたボールポケモンビリリダマたちが囃し立てる。

 そう、ポケモン社会におけるボウリングとは、最小サイズのビリリダマをボールとして扱うのだ。

 リコの表情は、困惑から絶句に変わっていた。ビリリダマの生態は授業で把握している上で、ボウリング自体にそこまで馴染みがなかったからだ。

 ちなみに2人1組でチームを組んでの対抗戦であり、編成は以下の通りで投球順も紹介する順だ。

 

セキガクAチーム

第1ボウラー ドット

第2ボウラー アン

 

トキワ台チーム

第1ボウラー クロコ

第2ボウラー ミコト

 

サクガワ中チーム

第1ボウラー ルイコ

第2ボウラー カザリ

 

セキガクBチーム

第1ボウラー チャン

第2ボウラー リコ

 

「らぁッ!」

 

 ドットの投球からゲームが始まり、幸先よくピンを7本倒す。残る配置は4、7、8の3本だ。

 

「チッ」

 

「あたしに任せてドット! うおおおりやあああ!!」

 

 入れ替わりのアンがテンションのままに勢いよく駆け出し、ダイナミックなフォームで振り抜く瞬間だった。

 

「びりッ!」

 

「どっひゃあ〜!」

 

「アン!?」

 

 投球直前にビリリダマが爆発し、アンが盛大に吹っ飛んだのだ。

 

 

 

「なんで!? なんで!? なんで!?」

 

「足先がファウルライン超えてたからな」

 

 戻って来たドットが涼しい表情で答えるが、リコの疑問の発生源はそこではない。

 

「なんで急にビリリダマが爆発したの!?」

 

「ボウリング競技において扱われるビリリダマはみんなこういう場所に送られる前にきちんとルールを教え込まれてるんだ。だからルール違反したらペナルティとしてすぐに爆発する」

 

「えぇー……」

 

「あと、いかなる場合においてもマイボールのビリリダマが爆発したらスコアリセットだから」

 

「そうなの!?」

 

 ドットの説明にリコは驚愕の表情で、空いた口が塞がらなかった。

 スコア表が浮かぶモニターではドットが話す通り、セキガクAチームの7点がアンのボールであったビリリダマの爆発により消され、0点に戻されていた。

 

 

 

「よーし、やったるわよ」

 

「お姉様ファイトですわ〜!」

 

 続くトキワ台チームのミコトはクロコからのエールを受け、いかにも自信満々であった。その自信のほどはビリリダマを持つ手先にも表れている。

 

 

 

「うっわ、あの人マイグローブ持ちじゃん!」

 

「流石はお嬢様学校、金かけやがって……チクショウ」

 

 アンとドットが苦々しく呟く。

 

 

 

 自信満々なミコトの投球、その行方は……

 

「あっ、しまっ……」

 

 ガターだった。

 

「どひゃあ〜!」

 

 刹那、爆発によりミコトが盛大に吹っ飛ぶ。

 

 

 

「なんで!? なんで!? なんで!?」

 

「ガターだからだろ」

 

 またもリコがビリリダマの爆発に絶叫し、ドットが当然と涼しい表情で答える。もちろんリコの疑念はそこではない。

 

「なんで投げた後のミコトさんも一緒に爆発してるの!?」

 

「ボウリングだからに決まってんじゃん」

 

「はぁ!?」

 

 これには流石に意味が分からない、とリコは呆気に取られる。

 何故手元からビリリダマが完全に離れた状態からミコトが吹っ飛んでいるのか、という部分には誰も説明をしてくれなかった。いや、正確には『ボウリングだから』でアンもドットも納得していたのがリコには訳が分からない。

 チャンはというと、憧れのお姉さんであるリコの表情がコロコロ変わる様が面白かった。

 オーキド研究所で見る彼女は落ち着きや頼り甲斐のあるお姉さんそのものであったからだ。

 

 

 

「あーん、あともうちょい!」

 

「チャンちゃんボウリング得意なんだ」

 

「うん! パパやママとよくここ来てるから!」

 

 ゲームが進み、景気良く投球したチャンが6と10のピンのみ残した8本倒してリコと交代する。

 

『倒せなくてもせめてまっすぐ投げなくちゃ』

 

 ガターとなればビリリダマが爆発するということでリコは完全に緊張しきっている。

 元々ボウリング初挑戦ということもあってその足取りは覚束ない。

 

 

 

「にゃろあ!」

 

 

 

「ニャローテ…」

 

 ベンチから聞こえる相棒のエールに、リコは勇気を取り戻す。

 

「そうだよね。怖がってたら何も始まらない」

 

 リコはレーンをまっすぐ見つめ、ベンチに置いてあったハウツー本を読んでとりあえず頭の中に叩き込んだ振り子のスイングを精一杯再現する。

 

「右足の土踏まずの上に頭が載るイメージで膝と腰を軽く曲げてボールと頭が縦に並ぶように構え、ボールは両手で持つ……視線はまっすぐ前のスパットへ向ける……!」

 

 ハウツー本の中身をブツブツ暗唱しながらフォームを作る。

 

「お姉さん凄い!」

 

「ホントに初めて?」

 

 チャンがリコのフォームに飛び上がり、ミコトも感心していた。

 

 

 

「ふッ!」

 

 これが初体験だとは思えぬほどに綺麗な振り子のスイングを見せ、投球後のフォームも完璧だった。

 そう、フォームだけは……。

 

「あっ」

 

 綺麗なのはフォームだけ、結果としてはガターでしかなかった。

 

「ぶッ!!」

 

 

 

「お姉さーん!!」

 

 元より右隅の2本をピンポイントに狙う投球はいきなり初心者には荷が重い話だ。

 世の中、確かに勇気は必要だが、勇気だけではどうにもならないのだ。

 

『なんで……なんで……なんで……』

 

 こんなトンチキな競技がプロの概念が出来るくらい市民権を得ているのか、爆発で吹っ飛びながらリコは思うが、その答えが見つかるはずもなかった。

 

 

 

「やったねカザリ!」

 

「ガターせずに済んでよかったです〜!」

 

 1ゲーム10フレームを終え、最も得点を稼いで勝利したのはサクガワ中チームであった。

 ルイコとカザリがハグをし合い喜ぶ。スコアとしては130点ほどだった。

 勝因としては他3チームが定期的にビリリダマを爆発させてポイントを溶かしていく中、サクガワ中チームだけがガターせず、ルール違反を犯すこともなくゲームを終えたからだ。

 セキガクAチームはアンが勢い任せに先走るために幾度かファウルラインを越え、マイグローブ持ちのトキワ台チーム2人は対抗戦という意識もあったが、それはそれとしてシンプルに腕前がそうでもなく、セキガクBチームはチャンが好投する中リコが全てガターであった。

 要するにサクガワ中チームが凄かったというよりは、他があまりにもダメダメだったからに過ぎないのだ。

 

「これじゃあ前哨戦としては『引き分け』って感じね」

 

「ですね」

 

 夕方、ボウリング場を出てはミコトが右手を差し出す。

 アンに促されたリコは1歩前に出て握手に応じた。

 

「この決着も明日まとめてつけましょう。あなたたちと同じように、私たちも全国制覇目指してる以上絶対に負けないわ」

 

「お互い全力を尽くしましょう。そして、勝つのは私たちセキガクです!」

 

 握手とともに明日の健闘をリコはミコトと誓い合う。

 ビリリダマを何回も爆発させ、どちらも黒焦げの真っ黒けでさえなければ夕陽の下の青春の1ページとして綺麗な絵面になっていたことだろう。

 

「お姉さん! 明日もあたし応援いくからね!」

 

 その辺りの締まらない面を気にすることもなく、チャンはリコへ瞳を輝かせていた。

 

 

 




 『ビリリダマボウリング』
 ポケモン社会におけるボウリングといえばコレ! ピンを狙う興奮とビリリダマからのスリルがたまらない!
 ルールとマナーを守ってレッツボウリング!(守っていても爆発しないとは言ってない)
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