SEKIGAKU DIARY   作:nami73

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 ベスト4を控えた休養日、リコたちはトキワ台の一行とバッタリ出会う。
 試合の前哨戦としてのボウリングは散々な結果に終わるものの、どちらも良きリフレッシュをしたのであった。


いざ勝負! トキワ台中学

 7月24日。セキエイスタジアムは、真夏が押し付けてくる物とは別質の強烈な熱気に包まれていた。

 全国大会を目指すための地方予選、そのカントー代表が今日決まるのだ。

 準決勝第1試合、タマムシ大学附属中学vsチャバ農業大学第1高校中等部の戦いは、既にシングルバトル2に差し掛かっていた。

 

『カントー代表の椅子をかけての第98回全国中学校ポケモンバトル大会地方予選、準決勝第1試合! 先のダブルバトルではタマ大附属きっての豪傑であるタイテン副部長を独創的なコンビネーションの元に活かしたシモーニ選手とのタッグがチャバ農オリベ選手とエンシュウ選手の2年生タッグを完封! 続くシングルバトル2でもタマ大ムード一色であります!』

 

「ムラエリちゃん…!」

 

 データ収集の任務に邁進するキラリの隣で、リコは最前列のフェンスを両手で掴みながらフィールドに向け熱視線を向ける。

 

 

 

「チャバ農魂ッ!!」

 

 そのフィールドでは、旗色の悪い中ムラエリが気を吐いていた。

 

「にゃひぃお……!!」

 

「かえんほうしゃ!!」

 

「ひとぼあああ!!」

 

 傷付いたニャヒートの口から放たれるほのおのブレスがコドラを襲う。

 

「がんせきふうじ!!」

 

「こどぁ〜!!」

 

 シングル2を任されるカオルは冷静さを崩さない。

 コドラの前面にフィールドから盛り立つ形の岩塊を隆起させてかえんほうしゃを防いでゆく。この試合において、ムラエリ側の有効手は全てこのがんせきふうじの前に遮られていた。

 

『ッ!? 岩塊の溶け出すスピードが速い!?』

 

 

 

「ニャヒートの特性『もうか』だ!」

 

 ニャヒートと同じほのおタイプの初心者用ポケモンを持つロイがすぐにそれまでの攻防との違いを感じ取る。

 

 

 

「こどぉ……!」

 

「コドラ、きんぞくおん!」

 

 鋼の鎧を振るわせることで放たれる不快な高音が、岩塊を溶かし抜いてコドラを襲うブレスの軌道を逸らす。

 

「ぐッ……!」

 

「とっしん攻撃!!」

 

「どぉらぁ〜ッ!!」

 

 かえんほうしゃの威力を殺してから、コドラは自らのボディを弾丸としてニャヒートへ迫る。

 

「負けてたまるもんか……! なんとしてもリキュウ部長まで回すんだ! ニャヒート!!」

 

 カオルの詰めの一手を前に、ムラエリは一縷の望みを賭けた。

 

「フルパワーでほのおのキバ!!」

 

「にゃあひがあああ!!」

 

 もうかの特性により、牙が纏う炎の熱量も増加。

 肉弾突撃のコドラめがけ、ニャヒートは真正面から飛びかかり、灼熱の牙を突き立てた!

 

「にゃが…!?」

 

「どらぁい!!」

 

 確かに牙は突き立てられた。が、コドラの鋼の鎧を破り、体力を奪い去るには至らなかった。

 

 

 

「てっぺきで防御力を高め、特殊攻撃に対してはがんせきふうじでカバー……兄貴とは違って正統派なファイタータイプだね」

 

「オレぁ所詮奇襲しか取り柄のない卑怯者さ。だがあいつは違う。正真正銘本格派さ」

 

 ミコにナギはおどけて見せる。その視線が、妹としてではなく、この先戦うことになるであろうライバル校の選手の『癖』を盗むために光っているのが分からないミコではなかった。

 

 

 

「タマ大附属『常勝哲学』! どんな試合、どんな相手にも必ず全力で挑むべし! コドラ!!」

 

「こどおらぁぁぁッ!!」

 

 コドラがとっしんの勢いを活かして頭を振り上げる。

 

「にゃが〜ッ!?」

 

『あーッとニャヒート、吹っ飛ばされたーッ!!』

 

「ニャヒート〜!!」

 

 上空へ投げ出されたニャヒートはそのまま落下し、受け身も取れずに背中からフィールドに叩き付けられる。

 審判が駆け寄れば、完全に目を回していた。

 

「ニャヒート、戦闘不能! コドラの勝ち!! よって勝者、タマ大附属2年カオル選手!!」

 

「「「「「常〜!! 勝〜!! タマムシ大!!」」」」」

 

「どおら〜ッ!!」

 

 勝ち名乗りを受けるコドラが一際大きな雄叫びを上げ、やがて全身が光に包まれてゆく。

 

「ごッどらぁぁぁッ!!」

 

「コドラが、ボスゴドラに進化した……!」

 

 無事勝利を収めた安堵と、大事に育て上げたポケモンが進化した喜びにカオルは表情を和らげる。

 その肩を整列のためにベンチから出たヒカミがよくやった、と軽く触れた。

 

『試合終了とともにスタジアム中に響き渡るタマ大コール! タマ大附属、チャバ農業を破り決勝進出へ駒を進めましたーッ!! しかも2年生エースであるカオル選手のコドラがボスゴドラへと進化し、ますます戦力アップです!!』

 

 

 

「やはり決勝はタマ大か」

 

 ホタルは唸った。部単位で知己となっていたチャバ農がストレートで敗れ去った事実は、タマ大附属の圧倒的な強さを物語っていた。

 

「最高じゃあないか。最強の相手を破ってこそ、全国制覇にも箔がつくってもの」

 

「マフィン」

 

 席を立つ部長にホタルも続く。普段部の全体を取り仕切るのは副部長に任せているが、ここぞというところで言葉を発するだけの風格をこの変質者は備えていた。

 

「これまでと変わらずまずは準決勝! 1つ1つ目の前に全力でぶつかっていこう!」

 

「「はいッ!!」」

 

 アンとロイが元気よく返事し、皆席を立ち入場準備のため通路口へ向かう。

 

「……リコ」

 

「は、はい」

 

 キラリに呼び掛けられ、リコもまた移動を開始する。

 敗戦となり泣き崩れ、リキュウ部長に宥められているムラエリの姿から目を離せなかった。

 

「……」

 

 一団の先頭を歩くマフィンの背は最後尾からは見えない。シンプルにマフィンの身長がリコと変わらない以上地方のない話だ。

 それでも確かに『先頭にいる』ことは分かった。

 

「……勝敗は兵家の常」

 

「えっ……?」

 

「……リキュウ部長は、チャバ農に次に生かすことの大切さを説くはず。彼女たちは、もっと強くなる」

 

「そう、ですよね」

 

「……私たちは、まだまだマフィンを引退させはしない」

 

 キラリなりの後輩の気遣いだと思えたリコは、マフィンの気配を探るのを止める。

 胸を張り、真っ直ぐ歩きながら試合へ向け意識を高めることとした。

 気持ちを切り替えるリコを横目でチラと見たキラリは、それ以上言葉を発しなかった。

 

 

 

『決勝戦1番乗りを決めましたタマ大附属の相手として名乗りを挙げるは因縁深きトキワ台か!? ここまで快進撃のセキガクか!? 注目の準決勝第2試合がいよいよ始まります!!』

 

「これよりトキワ台中学校vsセキエイ学園の試合を執り行います! 礼ッ!!」

 

「「「「「よろしくお願いしますッ!!」」」」」

 

 センターサークルに両陣営一列に並んでの一礼。そこからモニターに対戦表が表示される。

 

ダブルバトル

ホカゼ&クロコvsキラリ&ドット

 

シングルバトル2

ミコトvsリコ

 

シングルバトル1

ミサキvsマフィン

 

控え

コンゴウvsナギ

 

 

 

「あっ! お姉さんだ! 見て見て博士! お姉さん出るって!」

 

「そうだね。楽しみだ」

 

 チャンの付き添いとして今日もシゲルは試合の観戦に来ていた。シゲルの存在により妙に畏まるフリード監督が普段の姿を知るリコたちからすればおかしさを通り越して違和感の塊であった。

 

 

 

 フリードがベンチで見つめる中、セキガクメンバーは全員で円陣を組んでいた。

 

「それじゃ副部長、よろしく」

 

「あぁ」

 

 マフィンに促され、ホタルは首肯する。

 

「入場前に部長が言った通りだ! ボクたちは1つ1つ目の前のことを全力で取り組むのみ! それこそがたった1つある全国制覇への近道として団結して臨んでいこう!!」

 

「「「はいッ!!」」」

 

 リコ、アンにロイが一際元気よく返事をする。

 

「セキガクゥゥゥーーーッ!!」

 

「「「「「ファイオゥッ!! ファイオゥッ!! ファイオゥッ!! ファイオゥッ!! ファイオゥッ!!」」」」」

 

「ウオーーーーーッ!!」

 

 ホタルの号令に合わせ、全員で声を張り、最後にマフィンが咆哮する。

 大一番を迎えた際のセキガク伝統の円陣パフォーマンスだ。長らく弱小校として辛酸を舐め続けて来たが故に事実上封印されていたのが久々に陽の目を浴びた形だ。

 

 

 

「向こうも気合い入ってる。こっちも気合よ、クロコ!」

 

「分かっておりますお姉様! このクロコ、必ずや勝利をお姉様に!」

 

「私じゃあなくてチームに捧げてちょうだい」

 

 鼻息荒い様子に気合いの方は問題ないとミコトはネクストサークルから苦笑いをする。

 クロコのタッグのホカゼは、後輩でありながら部長であるミサキとのアイコンタクトで互いに首肯を交わしていた。

 ホカゼはミサキの圧倒的なカリスマに惚れ込み、先代より受け継いだ部長として最初に行ったのが、彼女へ部長の座をそのまま譲り渡したことである。

 これによりミサキは1年生の頃から部長を経験しており、トキワ台はミサキの判断を中心として構築されたチームなのだ。

 

 

 

「これよりダブルバトル、トキワ台3年ホカゼ選手&1年クロコ選手vsセキ学2年キラリ選手&ドット選手の試合を行います!!」

 

 これまでと変わらずルールは2C1D……1体やられればそこでおしまいだ。

 

「では参りましょうか、サワムラー」

 

「しゃあああいッ!!」

 

「パルシェン、出番ですの!」

 

「しぇんぬ」

 

 ホカゼはキックポケモンサワムラー、クロコはパルシェンを繰り出す。

 

「……マフォクシー」

 

「ふぉぉう…!」

 

「いくぞ、ぐるみん!!」

 

「みんぬ!!」

 

 キラリはマフォクシー、ドットはぐるみんが先発だ。

 

『初手から先制してやる……!』

 

 ドットの意気込みが全身から迸っていた。大会本番デビューに燃えていた。

 

「試合開始ィィィィッ!!」

 

「先手必勝だ! ぐるみん、パルシェンに10まんボルト!!」

 

「ぐぅ〜! るぅ〜! みぃぃぃん!!」

 

 ドットの指示でぐるみんが全身より電撃を放つ。タイプ相性からして教科書通りの攻めだ。

 

「ホカゼ先輩、サワムラーのお手を」

 

「えぇ」

 

 襲い来る電撃にクロコは動じない。サワムラーがパルシェンの殻へスッと手で触れてからだった。

 

「パルシェン、テレポート!」

 

「しぇん!」

 

ビシュン!

 

「ぐりぁ!?」

 

「なにィッ!?」

 

 自慢の10まんボルトをかわされ、ドットもぐるみんも驚かされる。

 

 

 

「あのパルシェン厄介だな。てめえだけじゃあなくて味方も一緒にワープ出来るとは。本場のエスパータイプの領域と変わらんぜ」

 

 セキガク側ベンチからナギが舌を巻く。

 

 

 

「……マフォクシー、左斜め後ろを確認」

 

 キラリの指示した方向にマフォクシーはチラと視線をやれば、そこにパルシェンが殻のトゲを向けたままワープアウトして来る。

 

『……パルシェンはデータ通り』

 

「パルシェン、ロックブラストを!」

 

「るるるぅあ!!」

 

 左右のトゲからいわエネルギーの凝縮された岩弾が発射される。

 

「……防御体勢」

 

「まッふぉッ!!」

 

 マフォクシーはここでパルシェンのテレポート先に気付いたフリをしながら右袖とも見える体毛より枝を取り出し、サイコパワーを纏わせることで長さを延長。

 

「しぇッ……!?」

 

「なんですの!?」

 

 両手でバトンを回す要領で枝を激しく回転させ、岩弾をガードした。

 

「ならば今この時マフォクシーは両手が塞がってらっしゃるということ! サワムラー!」

 

「しゃーいしゃいしゃいしゃい!」

 

 パルシェンの影からサワムラーが跳躍を見せる。

 『キックの鬼』と言われる所以である特殊なバネ状の両脚を活かし、マフォクシーの上を取った。

 

「かわらわり!」

 

「させるかぁーッ!!」

 

「ぐるぁーッ!!」

 

 跳躍に活かした脚のバネを戻し、サワムラーが両脚をマフォクシーへ向け蹴りの弾丸を撃ち込む射線上へぐるみんが飛び出してゆく。

 

「……ドット」

 

「ならば構いません。先にニドリーナの方を!」

 

「喰らいつけ! どくどくのキバ!!」

 

「ぐるみゃおらぁ〜!!」

 

 サワムラーのバネ脚が撃ち出されたところにぐるみんは大口を開け、牙に猛毒を仕込みながらかぶりつく。

 

「ぐるぶぁ!?」

 

 技と技の衝突の結果は、ぐるみんが一方的に弾き飛ばされた。

 




 『クロコ』
 10歳。トキワ台中学校1年生。
 ミコトをどこまでも信望している女の子でちょっと?変態的な執着を見せる。
 バトルとなればテレポートを駆使した機動戦で着実に相手を追い込むぞ。
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