SEKIGAKU DIARY   作:nami73

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 カントーの地方予選はついに決勝戦となり、セキガクの相手は常勝タマムシ大。
 ナギとカオルの双子対決が確定する中、ダブルバトルがスタートするのであった。


パワー&アート

「カイリキー、出陣じゃあ!!」

 

「うほッ……!!」

 

「ガントル、戦いの芸術を描かん!」

 

「がんとぅ!」

 

 タマ大はタイテンのカイリキーとシモーニのガントルが、

 

「いくぞ、ニンフィア!!」

 

「ふぃ〜ッ!!」

 

「いくよ〜フタチマル!!」

 

「たぁちゃあ!!」

 

 セキガクはホタルのニンフィアとアンのフタチマルがそれぞれ先発を務める。

 皆一様に主人にとっていちばんのパートナーポケモンだ。

 

「シモーニよ、此度も頼むぞ」

 

「その期待に精一杯応えよう。ガントル!」

 

「とぅ!」

 

 タイテンからの目配せにシモーニは口角を上げて応える。

 

「いわなだれ!!」

 

「副部長、アレって……」

 

「案ずるな。その為にボクはここにエントリーされている」

 

 ガントルのいわなだれ攻撃、いわエネルギーが凝縮して作り出される岩石の雨が降り注ぐは、カイリキーの頭上。

 

「これぞタマ大流『剛と芸の融合戦術No.1』! なだれ投擲殺法じゃ〜!!」

 

「りきゃい! きゃいきゃい〜!!」

 

 カイリキーは鍛え抜かれた自慢の4本腕をフル活用して降り注ぐ岩石を掴み、セキガクタッグの2体めがけ次々投げ込んでゆく。

 

 

 

『カイリキー、ガントルのいわなだれを利用した奇策で先制を図るーッ!!』

 

「カイリキーの発達した4本の腕は2秒間に1000発のパンチを繰り出すことが出来るし掴んだ相手を地平線の向こうまで投げ飛ばしてしまえる」

 

「そんな腕力で岩をぶつけられればたまったものではなかろうな」

 

 一見無茶苦茶なようでいてポケモンの性質を読んでのコンビネーションにシゲルもシンジも一定の評価をする。

 

 

 

「アン! フタチマルをニンフィアの後ろへ!」

 

「うぃッスー!!」

 

「ニンフィア! 『ディグ&セット』!!」

 

「ふぃいあッ!!」

 

 投げ込まれてくる岩石に対し、ニンフィアは首元のリボンを展開。鋭いリボン捌きにより岩石の数々を受け止め、真上にトスしてゆく。

 

「アン!」

 

「おおっしゃあい!」

 

「たっちゃあ!!」

 

 真上にトスされた岩石に合わせ、フタチマルも跳躍していた。

 

「フタチマル! 打ち返しちゃって!!」

 

「たちゃちゃちゃ〜い!!」

 

「「ぬうッ……!」」

 

 ニンフィアの打ち上げた岩石をフタチマルがホタチを使い空よりカイリキーとガントルめがけ打ち下ろした。

 

 

 

『あーッとセキガクタッグ、タマ大のなだれ投擲殺法をバレー殺法で華麗に切り返し先手を打ったーッ!! コンビネーションプレーにはコンビネーションプレーで対抗です!!』

 

「ふむ。やはりトキワ台を破って決勝まで勝ち上がってきただけのことはある」

 

 タマ大側ベンチにて、腕を組みながらヒカミが呟く。

 タイテンとシモーニからなる『剛と芸タッグ』は全国でも成果を上げている。

 無論それだけ試合記録も多く残り、対策を求めて隅から隅までチェックされるのも当然だろうとヒカミは思った。

 タマ大の対戦表は準決勝から一切変更を加えていない。コレはセキガクを侮っているのかといったら決してそんなことはない。

 むしろその逆で、1人1人が最もパフォーマンスを発揮しやすい固定の編成の鉄板メンバーを信じているからこそのオーダーなのだ。

 

『タイテンとシモーニのコンビネーションはここからが本番さ』

 

 常勝タマ大に隙はない。それはヒカミの確信であった。

 

 

 

「たちッ!」

 

「ナイスフタチマル!」

 

 フタチマルがフィールドに着地し、照れくさそうに鼻を擦る。

 

 

 

「おいおい、なかなかやるんじゃあねェか? 今年のセキガクは」

 

「いやいや。タマ大もまだこれからよ。でもワンサイドゲームって訳じゃあなさそうなのは同感」

 

 相手の連携攻撃をそっくりそのまま跳ね返した形でファーストアタックを決めたので客席からは感嘆の声がチラホラと挙がっていた。

 

 

 

 相手の有力タッグの戦術を事前に調べ上げていたキラリの進言もあり、ニンフィアによるバレー殺法を用いた遠距離攻撃への対処に長けているホタルは自身をこのダブルスへオーダーしていた。

 アンに関しては、準決勝のリコやドット同様に確実な実力上位者を相手にしての潜在能力の目覚めを期待しての戦術であった。

 大一番を迎えても未来を見据えての不確定要素を考慮しなければならないのは弱小少数クラブの泣きどころともいえたが、そんなことはおくびにも出さない。

 

「流石にあれしきでは沈まんか」

 

 いわなだれをそっくりそのまま反射された形のタマ大タッグの2体の影がモヤから徐々に見えて来る。4本腕の特徴的すぎる人影が立っているので、少なくともカイリキーは健在であろう。

 

「副部長、アレって……」

 

「気を引き締めろアン。次の戦術No.が来る」

 

「とぅ〜……!」

 

 カイリキーは、ガントルを小脇に抱えていた。

 

「いいなシモーニ?」

 

「問題ない。思いきりやってくれたまえ」

 

「次なるは『剛と芸の融合戦術No.2』! 名付けてデストロイ・ロックブラスト!!」

 

「デストロイ・ロックブラスト?」

 

「どう逃げ回ろうともお主たちはこのガントルのロックブラストから逃れることは出来ぬ! 何故ならコイツは『追跡砲弾』だからよ!!」

 

 

 

「つ、追跡砲弾……? それって、どこまでも弾が当たるまで追いかけて来るってこと……?」

 

「ぽぉ……?」

 

 チャンとオドリドリの首を傾げる様がシンクロする。

 スピードスターやつばめがえしのように回避が極めて困難な技の種類はいくつか知っているが、ロックブラストがその類であるという話は聞いたことがない。

 

 

 

「狙いを定められている方が注意を引き、もう片方が背後を突く。いいな」

 

「あいッス!」

 

「ゆくぞぉぉぉ!!」

 

 ホタルとアンが頷き合う中、『追跡砲弾』が火を噴いた。

 

「とぅ! とぅ! とぅ!」

 

 放たれたロックブラストにたまらずニンフィアは右へ、フタチマルは左へ飛び退き散開をする。

 

「待て待て〜!!」

 

「りっきぃ〜〜〜ッ!!」

 

 回避されればすかさずカイリキーがガントルを抱えたまま猛ダッシュ。その間もガントルはロックブラストを発射したままだ。

 『追跡砲弾』とは、ロックブラストを発射するガントルをカイリキーが抱えて相手を追いかけることで成立するのだ。

 

 

 

「「「お前が追跡するのかよっ!!!」」」

 

 客席にて初見の何人かがツッコミを入れ、盛大にズッコケていたが、実際のところ絵面に反して成果は一定のものを得ていた。

 

 

 

「……スピードそのものはそこまで高くないとはいえ、カイリキーは全身筋肉の塊で極めて走破性に優れたボディをしている。大人100人を投げ飛ばせる筋力ならば平均102.0kgのガントルを抱えながら走り回るくらいわけない」

 

「あの追跡はロックブラストを当てに行くというよりは、相手のタッグの陣形を崩すためのものだよね」

 

「ホタル副部長もアンも冷静に対処してる! 2人とも頑張れー!!」

 

 タマ大タッグの戦術の狙いを語るキラリとミコを他所に、ロイは手に汗握りながらエールを送っていた。

 この辺りの爽やかさがチームの清涼剤であり、ロイの役割であるのだろうと上級生は思っていた。

 

 

 

「逃しはせぬぞ〜!」

 

「誰が逃げるものか!」

 

 カイリキーがガントルを向け、狙いを定めたのはニンフィアだった。ロックブラストが再度発射される……。

 

「ならば見事受けて見せい!!」

 

「ガントル、ロックブラスト!」

 

「とぅ! とぅ! とぅ! とぅ! とぅ!」

 

 放たれ続けるガントルのロックブラスト。

 

「ボクとニンフィアを、舐めるなぁッ!!」

 

「ふぃあああ〜ッ!!」

 

 対するニンフィアのリボンがまた乱舞した。

 

『ホタル選手のニンフィア、素晴らしいリボン捌きでロックブラストを迎撃です! 流石はセキガクバトル部の副部長、No.2の実力者であります!!』

 

『No.2だって? まさか……』

 

 ホタルはスタジアム中に響く実況に内心で僅かに自嘲した。

 データマンとして欠かせない仕事ぶりのキラリに、負傷から見事返り咲いてきたミコ。ナギは……個人的に好かないがトレーナーとしてひと角のポリシーを持ってはいるのだろう。多分。

 そんな特色ある同期たちに比べ、厳格さで以て声を張り上げ、全体を引き締めるばかりしか能がない凡庸な人物であるとホタルは自己を定義している。

 才能に溢れているのは同期ばかりではない。今年入部してきた後輩たちは皆粒揃いだ。これからも練習を続けていけば必ずや大成するだろう。

 そのためにはまず自分から率先して日々のトレーニングの成果を明示しなければならないのだ。

 練習は必ず身を結ぶ。そして勝利へと繋がるのだと。

 

「よし、カイリキーがニンフィアを向いた! フタチマル!」

 

「たぁちゃい!!」

 

 両腿のホタチを抜刀し、フタチマルは駆け出した。

 狙うは1つ、ニンフィアを狙ったカイリキーの背中である。

 

「いけーッ! シェルブレード、二刀流アターック!!」

 

「たちゃあ〜い!!」

 

 助走をつけて飛び上がり、フタチマルがホタチの二刀流を叩き付ける。

 

「ふふふ……!」

 

 タイテンは、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「なッ……!?」

 

「ま!?」

 

『あーーーッと、フタチマルのシェルブレード不発!! カイリキーの鍛え抜かれた背筋の前にみずのエネルギーブレードが挟まれ、止められてしまったーーーッ!!』

 

「ふふふ……ご存知の通りカイリキーとは大人100人を投げ飛ばす力を持つポケモン。その力の源である筋肉とは全身くまなく防ぐ強靭な盾にもなり得る!! 確かに貴殿のフタチマル、実によく育てられていることは認めよう! 故に太刀筋も頃合いも読みやすい!!」

 

「うぅッ……!」

 

「はッ……いかん! アン! フタチマルをカイリキーから離れさせろ!」

 

「良きひと太刀への返礼、受け取られよ!!」

 

「りきいし!!」

 

 4本腕のうち、左下の腕の脇にガントルを抱えていたカイリキーはシェルブレードを背筋で受け止めたまま、握り込んだ右上の裏拳をフタチマルへとぶつけた。

 

「たちゃまあッ……!!」

 

 裏拳を腹に受けたフタチマルはたまらず吹っ飛んでしまう。

 

「フタチマルッ!!」

 

 アンの声に応えるまでもなく立ち上がるまでは容易い。

 ただ、少なくともカイリキーに対して自慢のホタチを活かした攻撃をまるで無力とばかりに受け流されたのが精神的に効いてしまっていた。アンにも、フタチマルにも。

 

「ふぃー……!」

 

「くッ……!」

 

 ホタルもホタルでアンのことばかり気にかけていられる状況ではなくなっていた。

 ニンフィアのボディから伸びるリボンは触覚であり、本来ならば他者の気持ちを読み取るための器官であるのだがホタルはそのリボンを戦闘用の触腕として応用させていた。この戦術そのものはオリジナルでもなんでもなく、ニンフィア使いならば誰しもが思いつく程度の初歩的なテクニックでしかない。

 ただ、触覚を持つ部分である以上、打撃を受け続けていいことなどはないのもまた事実だった。

 バレー殺法における真髄である触腕を使ったディグ&セットによる迎撃はあくまでボディへの直撃を避けるためのものであり、リボンを通してもニンフィアのダメージは蓄積するのだ。

 

「頃合いであるな。シモーニ!」

 

「任された。戻れガントル!」

 

 カイリキーの小脇に収まっていたガントルがシモーニのボールに回収され、引っ込められてゆく。

 入れ替わりに出てくるは……。

 

「カバルドン!」

 

「んかぁ〜……!」

 

 じゅうりょうポケモンカバルドン。黄色いボディに黒の差し色は雄の個体であることを示している。

 分類通りに平均して300kg台である重量級の巨体はフィールドへ降り立つだけでもちょっとした揺れをフィールドへもたらす。同時に背中にある6つの穴から噴出される砂がフィールド中を覆い尽くし、たちまち視界を奪い去っていく。

 カバルドンの特性『すなおこし』によりフィールドがすなあらし状態へと切り替わったのだ。

 

『おっとここでタマ大タッグはポケモンをチェンジだ!! 一気に戦法を変えていくようです!!』

 

「これより披露するは『剛と芸の融合戦術No.3』! その名もズバリ、砂中迷走殺!! 今より我ら、タマ大勝利のための修羅とならん!!」

 

「させるか! ニンフィア、ムーンフォース!!」

 

「ふぃぃぃあッ!!」

 

 ニンフィアがすなあらしの先の物陰へとフェアリーエネルギーの弾丸を発射する。

 狙いは当然カイリキーだ。かくとうタイプはフェアリー技が弱点なのだから。

 

「ッ……!?」

 

 ホタルが感じ取るのは着弾より得た手応えに対しての違和感だった。

 命中する前にムーンフォースが斬り捨てられたかのような……

 

「がッぶぁ!!」

 

 刹那、ニンフィアの前に躍り出るは紺色の影……!

 

「しまったッ……!」

 

「ガブリアス、どくづきよ!!」

 

「がぁぶぁ!!」

 

 ガブリアスの右の爪がどくエネルギーによる紫色に染まり、ニンフィアの喉元を襲った。

 




 『シモーニ』
 12歳。タマムシ大学附属中学校3年生。
 芸術家志望であり独創性に長けた戦い方を得意とする。
 その真価はダブルバトルでより発揮され、味方を最大限に活かして戦うぞ。
 想定CVは斉藤壮馬さん。
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