尚、「内容はすべてフィクション」であり「実在の人物とは一切関係ありません」。
ということにしておきましょう、怖いから。
(モチーフのネタはありますが、現実にはありえないので本気でお願い致します)
今回は状況解説回。
時間は車が爆発する直前、煙幕に包まれた時点に戻る。
「先輩、この煙幕は!?」
「万が一の場合に備えてあった煙幕噴霧器だ、ついでに準備しておけ」
「なんの!?」
「相手に爆破させたと勘違いさせるから、お嬢様抱えて車の外に飛び出せ!
強化外骨格が怪我を阻止してくれるから絶対にお嬢様の負傷だけは避けろ!」
そういった先輩は足元においてあった軽油缶をアクセルに載せる。
時速60キロ前後で走行する車から飛び出して土手の裏側に身を潜めるという手段は非常識だが、それだけに相手の虚を突く手段として万が一に備えて用意してあった手段だ。
「このプランの出番はないと信じていたんだが」
そう言いながら先に飛び出した後輩のすぐ後に車から飛び出し、強化服を擦りながら転がった上で脇の歩道を突破したことで、土手に隠れる三人。
ちょうど隠れたタイミングで相手が橋を上がってきたため、三人の姿は幸いにも見つからなかった。
そして発射された弾頭が当たった瞬間に「手元に持っていたスイッチ」を押して、車両が爆破される。
「念のため、C4を足元に仕込んでおいてもらって正解だったな」
「俺達そんな車に乗ってたんすか!!」
「喚くな、彼奴等の前から“消えて”おくためにはこの手段もやむ無しってのがプランなんだ・・・・んじゃプランBでいくぞ」
そう言って、近くにある巨大な給水塔のような建物に近寄っていく“先輩”。
その建物の名は首都圏外郭放水路第三立杭、桂華に連絡すると同時にありとあらゆる手を使って政府に連絡した結果、「万が一の場合は使用して良い」という認可を受けたことで万が一の徒歩移動許可を得ることが出来た場所である。
当然のことながら「千葉県に逃げてそれでお仕事を終わらせよう」と思っていた二人からすれば不承不承で使わざる得ないルートではあるが、それでも保険として掛けておいたことにホッとしていた。
事前に渡されていた身分パスのカードをリーダーに通し、立杭の中に入っていく三人。
その途中で“先輩”が足を止め“お嬢様”に話しかけ始めた。
「で、予定通り本物の瑠奈お嬢様は大宮回りですか、影武者さん」
「ええ、貴方の初期プランの通りに・・・・・・帝東鉄道がそんなに信用できなかったんですか?」
「いえいえ、帝東鉄道そのものは信用してたんですがね・・・・何せ万国の労働者よ団結せよ!!な連中が駅郊外に横断幕を設置するほどなんですよ・・・・会社の黙認で電車から見える位置にね」
その答えに呆れたような表情で影武者こと久春内七海が額に手を当てながら、二人に質問をし始める。
「で、お嬢様に対してテロを起こす理由は?」
「まずは鶯谷のネットカフェ絡み、あれで警察が暴力団の名前を使ったのがまずかった。
やってない事をやったと言われてあの連中が面子を潰されたと感じないほうがおかしい」
「で、そこで勢力拡大を狙いたかったうちの関係者どもがしゃしゃり出て、俺の前で相談始めるんですもんねぇ」
「・・・・その件でこいつが俺に電話してきた時に“馬鹿じゃねぇの”とは思いましたが、それに相乗りする馬鹿が大量に出てきたので、こりゃまずいとばかりに初期プランをご提案したんですよ」
などと面倒臭いことこの上ない事情を説明し始める二人に、流石に目が点になる久春内七海。
しかし話がこれで終わってたらこんな大事には成っていない。
「まず地元のヤクサが地元の桂華関係の施設に攻撃を加えるというのが当初のプランでした。
いわゆるカチコミというやつですが、これなら浦和辺りに垂れ込んでそれで終わりになるはずだったんですよ」
事がややこしくなり始めたのは、他の集団もそのどうでもいい嫌がらせに相乗りをし始めたことである。
「本来はヤクザが嫌がらせして、桂華が報復して組が壊滅で終了するはずが、お嬢様が成田で大暴れした際に普通の手段での報復が無意味だと思い込み始めた奴が出たのが原因でしょう。
何を考えたのか、それともそそのかしたバカがいたのか・・・・・今となっては何故そこまで複雑化したのか不明ですが、途中から「電車を爆破して足を止めて傷物に」なんてプランが降って湧いてきたらしいんですよ」
「それも当初の話が出た4月の初旬頃が最初のプラン、それが1週間後にはそんな感じに話が肥大化してましたからねぇ」
二人はあくまで「其の場から得た情報」を整理して話しているに過ぎない。
しかし久春内七海の口からその一言が漏れたことで、二人も深淵の縁に手をかけることになってしまった。
「新宿では「なにもなかった」んですよ」
「・・・・・・なあ、これ聴かなかったことにして、お嬢さんをここに置き去りにしてもいいと思うんだ」
「・・・・・奇遇っすね、俺もそうしたいと思うんですよ」
「・・・・・でも無理なんだろうなぁ」
「俺この件で小野の親父に愚痴ってるから、無理なんじゃね?」
「お前、俺以外にも愚痴ったんか!」
「ちょっと待ってください、その小野って方って麴町警察署の副署長の?」
「あ、あの親父そんなに偉くなってたんだ・・・・前のノリで話ちった」
非常に気になる一言に、嫌な予感が増しながら“先輩”が確認する。
「で、お前はその小野さんとどういう付き合い?」
「ガキの頃に親父の仕事をやらされた時に、乗り込んで親父を越境逮捕した人」
「越境ってことは・・・お前何処で仕事してた?」
「浅草」
一体いつ頃の話なのかは不明だが、明らかに別の意味で危険な話になってきている。
無理やり話を戻すべく、“先輩”が事件の拡大の原因をさらに話し出す。
「で、どっからともなく金主と同志が増えたヤクザ連中は気を大きくしてしまったと。
で、武器を大量に揃えてチンピラで襲撃させる・・・・・って形で襲撃されましたが、こりゃ単なる陽動でしょうね」
「何故そう言い切れるんです?」
「弁護士費用の問題ですよ。
ヤクザ一人でもム所に入れるような大事を起こすと、その弁護士費用と家族を養うだけで1億掛かるってのがこいつから聴いた相場らしいですが、今回のは襲撃してきたチンピラを雇う金銭とそいつらにばら撒いた武器以外、億単位の金を投じてどうこうって形跡がない」
「・・・・・確かに」
線路の爆破こそ派手になったが、チンピラに後を追わせて襲撃させるで終わるとすると、ヤクザ連中からすると報復の一つも果たして無いのである。
シノギとメンツでは前者が大事な彼らだが、メンツを立てるためにもお嬢様や関係者へのけじめが絶対に必要になってくる。
そしてここまでその動きがないとすると。
「あれは見せ札で、何処かで本物を投入するってことだろうなぁ」
「本物ってぇと、どんなのです?」
「いっちゃん分かりやすいのが、江戸川まで辿り着いた所で本物の軍隊崩れによる襲撃・・・・なんだが、ズブの素人がこれに対処できるわけがないから、万が一の時のためにこんなもの着込んだわけで」
「まあ想定外の状況で車から脱出するときにも傷をつけましたけどねぇ」
「まぁなぁ」
乾いた笑い声を響かせ泣き笑いになりながら、半ばヤケクソになる“先輩”と“後輩”。
そんな二人に久春内七海としても掛ける言葉がない。
「まぁ気を取り直して、そうなるとこのまま歩いて放水路の出口にってのは難しいんですが、俺等を襲撃した馬鹿がこの放水路の外部カメラにバッチリ写っているんで後でどうにか出来るのもまた事実なんですよ」
要はこの場に留まって救助を待つという手段だ。
だが、敢えて江戸川方面に行くことを“先輩”は伝えた。
「一応打てる手段は全部打っているので、連中にこちらの出来る範疇で意趣返しもしておく必要があるんですよ」
「俺等自身が舐められても困りますし、お嬢様の安全を確保しきれた上で反撃できるんでぜひ」
この二人の「最後の切り札」に対する信頼と、何より河川の匂いから逃げるために久春内七海も頷かざるえなかった。
「んじゃま、龍Q館の入口まで嬉しくない歩き旅を始めますか」
予備として持っていた防護マスクを久春内七海に渡す“先輩”。
泥水だらけの外郭放水路のデッキ部分を約4キロ、強化外骨格の運動機能を起こしてなるべく早く突破するため、先導する形で“先輩”が前方警戒を、久春内七海を抱えた形で“後輩”が後方を警戒しながらも急いで駆け出した。
説明部分はスラスラと書けたが、首都圏外郭放水路の内部に地元民だからこそ入ったことがないと言う。
ただ、逃げ道としては「見つからない」うえに、この時期は「部分開業」なので国交省の偉い人たちに後で土下座でなんとかなる・・・・と良いなぁ。
とはいえ、ここ自体は「行ったことがない」人でもドラマ等で見たことあるんですよねぇ。
何せ仮面ライダーとかで、割と使われている場所だから。
なので内部に入ったことがある方からツッコミがあったら修正予定。
こっからはQ&Aを騙る設定暴露コーナー
Q:こいつら(先輩&後輩)、武器何処で調達するつもりだったの?
A:もうどうしようもない場合は、16号沿いにある銃砲店で最悪調達予定だった。
まあやってたら関係各所から大目玉だったので、最終手段だったわけですが。
実際に狩猟用と思われる銃を取り扱っている銃砲店があったりします。
(ガンスミスショップの看板は見るけど、中には入ったことがない)
Q:先輩はいつお嬢様の正体に気付いた?
A:電車から降りてきたお嬢様の側に涼子さんと中島隊長、橘由香や側近団も居なかった上に、声が違ったので気付いたけど無視してた。
多分、変装しても割と耳が良いので声色の違いには気付いちゃうと思う。
Q:お嬢様の報復待っておけば?
A:お嬢様にもうちょっと恩を売っておきたい理由があるので、久春内七海の安全第一で出来る限りの賭けに出た。
“先輩”は兎も角、“後輩”はこの街から出来れば逃がしたいんねん。