一番星の子   作:孤独なバカ

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第16話

「はじめまして。苺プロ所属のキングと言います。」

「…うん。聞いての通り礼儀正しい子だね。虹野修吾といいます。今回はありがとうね来てくれて。そして」

「劇団ララライ所属。姫川大輝。」

 

やっぱりくるか。ここで会う気はしてたけど。でも原作とは変わってるところはある。それが映画ではなく28時間番組のドラマ撮影が姫川さんの仕事になるってことだ。

 

「…えっと、虹野さん。確かこの子って『恋空』の。」

「…姫川くんも流石に知ってたか。」

「流石に知らない方がおかしいですよ。結城さんと有馬かなを復活させた子役って有名ですし。」

「復活って、元のポテンシャルを引き出しただけですけど……」

「それでも凄いことだよ。誰もが終わったと思っていた役者を再生するって思っているよりも難しいことだよ。」

「……ありがとうございます。」

 

苦笑いしてしまう。

俺って思っていたより現場の評価高いことを自覚する。恋空と星野家どうでしょう以降本当に褒められることが増えた。

 

「……えっと、それでなんですが……俺と姫川さんだけですか?」

「えぇ。キングくんと姫川くんそして私の三人で。意見を増やしてもノイズになるだけなので。」

「……そりゃ責任重大なもんで」

「それでなんだけど……姫川くんとキングくんには思っていたことを言ってほしい。素直な感想が一番ですから。」

「……分かりました。それでなんですけど、かな先輩はどうします?俺は同じ事務所なので辞めますか?」

「いえ。君はそんなことで正確な判断ができないとは思いませんから。そのまましてください。」

 

……正直別の意味で正確な判断出来なさそうなんだけどなぁ。まぁいいか。

 

「…あれ?キングくん。」

「……うわぁ~。キングくんもここに来てたんだ!!久しぶり。」

 

すると舞台裏から2人の見知った顔が俺を話しかけてくる。てか正直菜々子さんは初出演作の共演者で転んだ時の手当をしてくれた人である。

 

「お久しぶりです。淳一さん。菜々子さん。」

「もしかして審査って君のこと?本当に偉くなって。」

「まぁ、でも本当に上手くなったよな。キングくんは。」

「……ちょっと恥ずかしいような、嬉しいような。」

 

この二人はかなり長い付き合いでデビューしてから何作品かでちょい役でも推薦で呼んでもらったことがある。

 

「星野家どうでしょう!も見たよ。あれかなり評判いいよね。」

「あの、お二人とも。キングくんのことは後でも予定空いてるらしいですから。」

「…あっ。うん。また後で話そうね!!一緒に晩ご飯いこ!!」

 

手を振って舞台に向かう二人に俺は苦笑してしまう。

 

「……仲いいのか?」

「淳一さんは刑事ドラマで共演経験ありますし、菜々子さんは俺の演劇の先生です。」

「……ほう。」

「キングくんは業界の関係者からの評判かなりいいですからね。さすがの関係性ですね。」

「まぁ、俺はこうやって出演増やしていったんで。」

 

人付き合いについてはかなり高いと思う。

そして虹野さんから渡された台本を見ると小説版の全容で夫婦喧嘩のシーン。そして空気役というのが分かる。

 

「…ところでこの空気役って何ですか?」

「……ふふ。なんでしょうか。キングくんはわかりますか?」

「大体何をしたいのかは……得意分野ですし。」

「……そうなのか?」

「姫川くんは知らないかもしれないですけど、キングくんはアドリブを多く取り入れるらしいですよ。この場合は貴方ならどうしますか?」

「二通りありますけど……」

「そんなにあるのか?」

「一応。空気といっても色んな意味があるので。ただアプローチが2つあって、夫婦を中心とするか自分自身を光らせるかで変わってきます。」

「……ほう。キングくんはもう気づきましたか。」

「得意分野なんで。」

 

原作視点があれ、その視点は多分今の俺でも10分はあればでてくるだろう。ただ言えるのは後者が圧倒的に有利になる。

これかな先輩には結構厳しめにやらないとなぁとため息を吐いた。

 

 

結論から言うなれば、全部原作通りの展開だった。そうまったく同じ展開で言うことがない

 

「退屈そうですね。キングくん。」

「……ん。答えの分かってる推理小説みたいなもんですよ。なんというか、……予想通りかなぁって。」

「…予想通り?」

「俺ならこうするをそのまま形にしたのがかな先輩と黒川あかねさんなんで。高藤エミリさんは演劇は向いているとは思いますけど……あの二人に比べたら、やっぱり見劣りします。鈴見さんは……まぁインパクトはありましたけど演技の方はと答えたらやっぱり厳しめになりますね。何とかしようとしたのはいいんでしょうけど……」

「なるほど。それで君が合格点をつけるなら誰にする?」

「黒川あかねさんかかな先輩ですね。黒川さんは3番目であそこまで分析できるのは普通にすごいです。かな先輩は、正直見慣れてるのもあって、まぁあれくらいはできるよなぁって。」

「そうなのか?」

「はい。かな先輩の実力は俺が一番分かってるつもりですし普通に完成度もこの中では高いかなぁって。……でもやっぱり楽しんで笑ってる方が俺は魅力的なんだと思います。」

 

だから上手い演技は見せてもらったけど、俺でもできる。けど、やっぱりかな先輩は楽しそうに周囲を巻き込む演技は確実にかな先輩しかこの世代ではできない演技だろう。

 

「……鈴見さんは子役の実績から、台本をそのまま遂行することに長けているとは思いますけど…内容理解が少し浅いかなぁって。……それにその表現力も黒川さんやかな先輩を見た後だとちょっと見劣りします。」

「…厳しいですね。」

「それだけあの二人が抜けてると思ってます。」

「そうだな。」

 

誰が見ても分かる完成度。それが分からなければ審査する価値すらないとすら感じるほど演技の差がある。

 

「…発想力という観点でいうと鈴見さんは子役としては上手くやってますが……役者として、かな先輩と黒川さんは立っているんじゃないかと俺は思ってます。黒川さんは分かりませんが、かな先輩はもう子役契約ではないので、その意識の問題っていうのもあるかなぁって。」

「…成る程ね。……本当にこの子面白いでしょ?姫川くん。虹野さん。」

「…へ?」

 

声がする方をみると菜々子さんと淳一さんが立っている。

 

「…はい。想像以上でした。」

「そうでしょ!?キングくんは凄いでしょ。」

「菜々子は本当に昔からキングくん推しだよな。絶対に売れる子役に毎回キングくんって言ってたくらいには。」

「だって初共演で緊張で転んだとき」

「菜々子さんそれ言わないで!!」

「キングくんは転んだことじゃなくて、演技できなかったことで泣いてたんだよ。」

 

俺が静止するまもなく菜々子さんは告げる。

 

「凄いよね。たった5歳の子役がオッケーが出た後に丁寧に謝ってから収録から退席したんだけど、治療してなかったから治療しに行ったら裏に戻ってからずっと声を潜めて泣いてたんだよ。」

「…あの、菜々子さん。そのくらいで。」

「なんで?キングくんのことなら1時間以上話せるよ」

「……あの、師匠?」

「だってキングくんって私にその後『演技教えて下さい』って頼みに来たんだよ。撮影がないにも関わらず頭を下げて。」

 

………本当に無茶をしたと思う。なんなら普通なら断られてもおかしくはない。

 

「その後幼稚園終わりにどんなに遠くても毎日撮影現場にきて、撮影の裏方をやりながら、ずっと演技について質問してきたんだよ。その時にこの子は上手くなるなって。」

「……本当にその節はご迷惑を。」

 

……てか普通に覚えてなかったんだよなぁ。そういえばこの人小説版に出てたことなんて全く覚えてなかった。

 

「別にいいよ。キングくんも必死だったのは撮影現場の誰もが分かっていたから。」

「……」

「2年間私のどんな撮影でもほぼ毎日付いてきてたからなぁ。」

「そんなことしてたのか?」

 

姫川さんの言葉に苦笑してしまう。

俺の最初は本当に下積み生活から始まった。

 

「姫川くんや虹野さんは知らないかもしれないけど、現場ではそのころからずっと愛されてたよな。ギャラなしでもドラマのキャストが空けばエキストラで出たり、撮影現場の雑用やったりで……土日なんて朝誰よりも早くきて掃除とかしてたから、撮影現場の名物みたいになってたな。」

「…ほう。それは……今の子には珍しいですね。」

 

歌でバズった分元々稼ぎなんて気にしてないと壱護さんから言われたことがあり、大分あの時は無茶させてもらった。そして何よりも勉強になったと思う。

 

「…だからこそかなちゃんを救ってあげたんでしょ?噂になってるよ。恋空もキングくんが呼んだって。……あの時に何があったのか私は分からないけど、かなちゃん、本当に変わったんだと思ったよ。確実にキングくんの影響を受けてるからね。……キングくんが何を言おうが関係ないよ。演技に関しては私はキングくんのことを一番分かってるから。」

 

頭を撫でられ、笑顔を見せる。

 

「君は本当は負けず嫌いで誰よりも優しい演技をすることをね。」

「…あの、さすがに恥ずかしいんですけど。」

「だってキングくんにはこれが一番弱いって知ってるんだよ。褒められるってキングくんが一番苦手にしてることでしょ?」

 

……本当にこの人は。

素直に撫でられると同時に敵わないなぁって思う。

 

「…だからね。キングくんはかなちゃんへの期待はかなり高いことも知ってるよ。……でも、よい演技をしたんなら褒めてあげないと。」

「……あれは演技なんかじゃないでしょ。」

「……。」

「かな先輩多分あれは素のかな先輩だと。」

「……わかってるんだね。」

「友達なんで。」

 

その言葉に菜々子さんがクスッと笑う。

 

「かなちゃんは今は君の言葉が誰よりも大切なんだよ。それが助けたものの責任。君が人ったらしなのは知ってるけどね。」

「……分かってますよ。」

「うん。それならかける言葉はわかってるよね?」

「………」

 

分かってる。かな先輩が何を思って演技してたのかも。この演技がどんな気持ちで演技してたのかも……

 

「……ところでこのオーディションはどうするんですか?」

「……えぇ。今回じゃ決めきれないので、後日今名前を挙げた四人でオーディションを再度行いたいと思います。3人も参加していただけると。」

「分かりました。」

「いいですよ。俺も面白いもん見えたんで。」

「キングくん。忘れないでよ。ご飯はまた今度でいいから。」

「分かってます。」

 

助けたことの責任を果たしに向かうしかないんだけど。

 

「…あの……菜々子さんオーディションの結果発表と次のオーディション内容まだ発表されてない。」

「……あっ。」

「本当貴方は、全部台無しですよ。」

 

呆れたような顔の虹野さんに俺も笑ってしまう。

 

「次のオーディション内容は二人一組になって、15分程の演技をしてもらいます。そして、その演出方をキングくんと、狭山くんにやってもらいます。」

「えっ?俺ですか?」

「はい。事務所の方には通していますから安心してください。レギュラー番組も暫く撮影はないことも知っているんで。狭山くんは知ってますよね?」

「知ってるというか……狭山耕平さんですよね?」

「えぇ。その狭山くんで間違いないですよ。」

 

狭山耕平。若手の演出家でれっきとしたプロである。

 

「…役者はキングくんが黒川さんと有馬くんを使ってかまいません。もし君たちが合格点を挙げられるなら……君含めた3人をこの演劇で起用します。」

「……」

 

そういうことか。このオーディションは子役を選ぶっていうよりも、能力を確かめるものだ。

 

「……それでどうしたらいいですか?」

「キング君にも台本を郵送します。そして、どういうふうに演出したのかもね。」

「……はい。」

 

これは結構大仕事になるだろうなぁとあの二人に関わることになることに頭を抱えるのだった。

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