「かな先輩。少し寄りたいところあるけどいい?」
黒川さんを送り、俺とかな先輩は帰宅するとなったとき、俺は一声かける
「…あんたね。週刊誌に撮られたら言い訳できないわよ。」
「それでも今のかな先輩は流石にほっとけないかなぁって。」
「……えっ?」
「ちょっと話そうか。俺は週刊誌に撮られても気にしないし。あんな演技されたらね。黒川さんや母さんたち居ない方がいいだろ?」
「…本当あんたは……」
かな先輩の諦めたような顔に俺は苦笑する。
まぁ、俺は原作以上に壱護さんから情報を聞いてるわけだし、何なら少しだけかな先輩からも聞いたりしている。
「それに丁度午後から事務所のレコーディング室予約入れてたし…」
「……レコーディング室?」
「ストレス発散でカラオケしてるんだよ。世間に出したらちょっとまずそうな曲歌ってストレス発散してるんだよ。今日はフリーだから予約入れてた。」
「…へ?」
「一応カラオケみたいなもん。カラオケも設備で入れてるし、……歌うの制限されてるんだよ。なんか好き勝手歌ってたら音楽業界が壊れるって釘を刺されてて。」
「キングあんた何をしたのよ。」
前世の記憶はチートであることの一つだ。母さんにも歌ってもらっており、母さんの声でいきものがかりの『気まぐれロマンティック』、スキマスイッチの『奏』、HoneyWorksの『ファンサ』や『世界は恋に落ちている』などを歌ってもらってる。
正直別アニメの声とは違い母さんの声で歌う『奏』や、『ファンサ』は俺ですら何度も繰り返し聞いている曲である。
なお、作詞は隠していたが俺ってことがバレてるんだが……。曲調も全部違うのに。
ついでに作曲は小説版で視点Bとされている緋山愛衣さんがやってくれてる。元はB小町メンバーのめいめいと言われていた人だ。
歌を聞いただけで殆ど作曲してくれて、生み出したメロディーは本当に転生者じゃないのかっていうくらいにほぼ違和感がない。なので俺が歌う楽曲では取り分は半々の契約を結んでいる。本当に抜けられたらまずく、レコード大賞の作曲部門で最優秀賞を取ったほどの実力だった。
これで、俺の作曲しかやらないと宣言している人だから本当ありがたい。引き抜きとかも来てるらしいが面倒だと断っている。
なお、母さんと本当の意味で仲がよく、よくうちに来てお酒を飲んでいる。星野家どうでしょう!!の際にはルビーとアクアの面倒は見てくれているほどだ。
てか、母さんの交友関係で上手くいってるのってこの人くらいだし、俺とアクアが孤立気味なのは完全に母さんに似たんだろうなぁって思ってしまう。
「…というわけで週刊誌の心配もなし!!防音もしっかりしてる。ただ少し事務所の人に泣き顔が見られるだけ。」
「最後がなければね。それに今日はアクアとルビーも事務所じゃない!!」
「まぁ、アイツらは俺がレコーディング室入ろうとしたら毎回いるからなぁ。何なら今日はアイも後から来ようとしてたし。」
「あの、レコーディングでなら分かるけど……カラオケで?」
「カラオケでだけど。」
大体オリジナル曲歌うから実質的にライブみたいとのこと。『一緒に歌える!!』と本気で仕事を巻いて帰ろうとする母さんがいるくらいには観客は多いんだよなぁ。
「本当あんたらのところは家族仲いいわよね。」
「……俺たちは母さん一人で育てられてたからな。それに、父親の顔も見たことがないし……母さんがずっと愛してくれてるのは分かるから。」
「……そう。」
その後少し黙り込むかな先輩を連れて事務所へ向かう。
正直俺たちの家族は歪なのは言うまでもない。中学上がってからうちに来て、距離の近さに驚いていた。何なら母さんに同じようにされているのを偶に見る。
レコーディング室に向かう前にミヤコさんに報告に向かうとルビーとアクアもそこにいた。
「ただいま戻りました。」
「お疲れさま。二人ともどうだった?」
「実は……」
俺は劇場であったことを報告するとミヤコさんが呆れたようにしている。
「…貴方ね。とことん厄介事に巻きこまれるわよね。」
「…否定出来ないけど、断るわけにはいかないんだろ。虹野さんのコネができるのは苺プロとしてはかなり恩恵があるんじゃないの?」
「貴方ね。……はぁ。察しがよすぎるのも貴方の悪点よ。貴方は既に仕事を選べる立場なのだから。」
「ん?……そういうのはちょっと早いっていうか……面倒臭いっていうか……」
「……本当にアイに似てるわよね。そういうところ。」
母さんも俺も仕事は全部入ってきた仕事である。基本的に仕事はNG以外は全部こなしているのもある。
「…ってことで打ち合わせするからレコーディング室借りていい?1時間くらいは誰も入れないでくれるとありがたいんだけど……。」
「……え?」
「「ダウト!!」」
ちょっとだけ嘘を試してみるがやっぱり通らないよなぁ。
「…よく分かるわね。」
「家族ですから。」
「…もしかして二人とも母さんの嘘見抜けないこと気にしてる?」
その言葉にギクッという効果音が似合いそうなほどの反応。図星か。
「そうだよ!!ほぼ確実にアイの嘘見抜いてるじゃん!!」
「キングだけママのこと知ってるみたいでズルイ!!」
「えぇ。母さんこそ簡単なのに……」
「それはないわよ。未だに気づけるのキングくらいでしょ?」
それはそうなんだけど……明らかに嫌そうな顔するんだよなぁ。演技の顔をするから素じゃないって気づいてしまう。
「それで実際は何でレコーディング室使いたいのかしら。……男女2人きりになって……そういうこととか。」
「いや、かな先輩の両親のことで。」
「……かな先輩の両親?」
「ちょっと待って。……まさかオーディション会場に来たってことではないでしょうね?」
「……ひっ!」
あ~ミヤコさん結構キレてる奴だ。ミヤコさん結構俺たちのことを原作同様に息子のように扱ってる節があるし。契約もしっかりしてるから……。
「いや、オーディション内容が……ちょっと壱護さんから聞いてたのと……似ていたし。」
「……あぁ。そういうこと。」
「……えっと。」
「もしかしてキング、ルビーとアクアに話してないの?」
「いや、流石にかな先輩の意志なしではちょっと……躊躇うというか。プライバシーですし。」
「……あんたはそのプライバシーを完全に無視して踏み込んできたわけだけど?」
その言葉は否定できない。いや、よくよく考えたら殆どストーカーと同じようなことしてるんだよなぁ。
「そういったところは本当ルビーと似てるよな。お前。」
「だってかな先輩本当につまらなそうだったし。」
「…まぁ、いいけど。」
「ミヤコさん!?」
ルビーが驚くがミヤコさんはため息を吐く。
「かなさんのことはキングが連れてきたのだから任せるわよ。話の内容は聞かないでおくけど、一応そういうことがないか私は見ておいていいわよね?」
「お願い。」
「……うぅ。せっかく楽しみにしてたのに。」
……本当こいつ。音楽になると厄介オタクみたいになるよなぁ。アクアですらこれに関しては諦めろっていうし。これに母さんが加わる前に入ってしまおう。
レコーディング室の中はいたってシンプルな作りになっており、ほぼ俺しか使ってない。少し違うのはカラオケが入っているところくらいだろう。
持ってきた椅子に腰掛ける
「……さてと、んじゃどこから話そうかな。」
「……話すって言ったって、何をよ。」
「……予測ついてるんじゃないの?演技をみたら俺が大体わかるってことは身にしみて分かってるんだろ?」
「………」
「……かな先輩はここに入ったこと後悔してる?」
口調を変えるとかな先輩も嘘は通じないと思ったんだろう。
「後悔してるわけがない。それはホント。でも、今日のオーディションで昔のこと思い出した。」
「……」
「キングは知ってたの?この台本のこと?」
「知るわけないだろ。……でも台本を見て真っ先に思い浮かんだのはかな先輩の方。……そしてかな先輩は絶対にそっちを選ぶって確信してた。」
「そう。だからつまらなそうにしてたんだ。」
「……見てたんだ。」
「お互いさまでしょ。」
……あ~もしかしてバレてるか。これ。
何であんなつまらなそうにしてたのかバレてるのか。
「あんたって父親に会いたいって思う?」
「……会いたくないっていうのがホンネ。」
「そうなの?ちょっと意外かも。」
「……正直あの母さんの告白って嘘だし。何ならうちの家族ってかな先輩より闇深いよ。俺のお父さんって母さんのこと殺そうとしてたから。」
「……えっ?」
「カミキヒカル。それが俺の父さんの名前。そして、同じアイドルグループのB小町に所属していたニノとその彼氏に母さんを殺させようとしてたんだ。」
その一言でかな先輩は言葉を失う。
「信じられないかもしれないけど、ここからはホントの話だから。」
そして、あの事件の結末を俺は話し始めた。
これにてストックは全部出し切ったので暫く更新ペースは落ちます