「……ってこと。」
「…冗談じゃないのよね?」
「残念ながらね。髪色とかアクアとルビーそっくりだろ?」
転生とかそういうこと以外はかな先輩に話した。東京ドームの日に自宅にストーカーが来て母さんを狙って殺されそうになったことも話した。
「…かな先輩も知ってるだろうけどうちの家族って過保護だろ?そういう経緯があってのことだし。」
「……それって話していいの?」
「ダメだと思うけど、かな先輩そっちの方が話しやすいかなぁって。」
「キングってやっぱりどこかズレてるわよね」
「…あれ?俺らの家庭にも闇はあるって簡単に伝えようとしていたのだけど。」
「闇どころかブラックボールじゃない!!」
もしかして話し損だった?かな先輩は呆れたようにしている
「……はぁ。貴方ってホント変わってるわね。」
「否定できないけど……」
「でもキングの家のことを考えたら私の家のことなんて些細なことじゃ。」
「そういうことじゃない。かな先輩もやっぱり何処かズレてる。」
やっぱり違和感があるとしたらここだろう。
「…私が?」
「あのね。普通、俺の家に住まないといけないくらいの家庭状況って普通におかしいんだよ?」
「それは……」
「俺もある程度知ってるけど、普通なら聞いた内容だけでも児童相談所行きだよ。」
「……分かってるわよ。そんなの。」
「うん。分かっているはずだけど、納得はしてないんでしょ?」
「…」
「見て欲しかったんだよね。かな先輩の母さんと父さんに。」
子どもには良くある承認要求。元より漫画や小説でそれが強いことが分かっていたこともある。
「別に当然じゃない。そんなこと。俺も母さんと共演することが一番の目標だったわけだし」
「…アイと?」
「うん。お母さんの夢だったらしいから。正直俺もここまで早く出来るとは思ってなかったけど…」
「それ喜んでいたでしょ?」
「いや、彼女役がよかったって文句垂れてた。」
「アイって少し変わってない?」
「変わってるよ。しかも本気で言ってた。」
母さんの嘘を見抜けるし、恐らくその見た目を保っていたらそういう役も来るのであろう。
まぁ、NGにするのだが……流石に母さんと恋人役はきつ過ぎる。
「…あのね。もう踏み込んでるからいうけど……かな先輩は我慢しすぎ!!演技もそうだけど普段からもっとワガママでもいいんだよ!!」
「…あのね。あんたは経験ないのかもしれないけど……」
「その話は既に恋空の時聞いてる。」
「そうだった?」
「うん。喧嘩した時に聞いたよ。」
「……そんなこと言ってた?」
「言ってたよ。どうせ態度が悪くてNGくらった話だったり人の顔を伺って生きてきた話でしょ?」
「……」
「俺思っている以上にかな先輩のこと知ってるよ。だから言うけど、もうちょっと俺にはワガママでいいよ。」
「キングには?」
「うん。」
その言葉にかな先輩は俺の方を見る。
「…あのね。友達として言うけどどんなにワガママでも俺はかな先輩のこと見捨てないし、何か悩みや相談があったら仕事中じゃなければいつでも話聞くからもう少し素直になっていいんだよ。」
「…っ!」
「別に俺自身結構言うときは結構強めに言うし間違ってるんならその理由を説明するくらいはするけど、離れたりはしないし。」
「……あのねぇ。そういったことを簡単に。」
「俺が簡単にそんなこというように見える?かな先輩だから言ってるの。」
俺の言葉にかな先輩は少し言葉を詰まらせる。
「…流石にフリルとかそこら辺にもいえないよこんなの。でも、少し分かるんだよ。俺だって孤独なんだから。」
「…あんたが?」
「演技下手くそな奴がコネだとか、ヤラセだとか言われてみろ。ホントイライラするし、ぶん殴りたくなる。それに、女優とかアイドルから、言えない立場から嫌らしい視線でこっちを見てきたり、食事に連れていくついでにお持ち帰りされそうになったことだってあるんだぞ。職場でもこれなのに学校に言っても俺は子役としてのキングであって、お溢れをあやかろうとしてたり、気になるアイドルとかの……」
一度愚痴をこぼすと全てが溢れてくる。本当にストレスがかかる仕事なのだ。演技や歌は楽しいから続けているだけの仕事。なんなら結果を求められるから余計にストレスがかかる。
「キングもそんなこと思うんだ。」
「時には普通に苛つくし、傷つくことだってあるよ……幻滅する?」
「気にしないわよ。そんなこと。」
「……そういうところなんだよなぁ。かな先輩は。」
だからこそ居心地がいいんだけど。多分もうこの姿は本当に仲良くなった人にしか見せれない。
そんな中でかな先輩は少し目線を逸らす。何かボソッと言ってるがその声が聞こえなかった。
「…あれ?何かいった?」
「何もないわよ。……ホント敵わないと思っただけだから。」
少し苦笑するかな先輩。俺何も言ってないんだけど。
「……私はママに言われて芸能界に入ったのよ。ママが芸能界に入りたかったことはどうせ調べたんでしょ?」
「調べたのは調べたけど、かな先輩の口から聞きたい。」
「……ホントあんたは。」
少しだけ呆れた様子のかな先輩に俺も苦笑する。こういうことがかな先輩には効くことは前世の頃から知っている。
そうしてかな先輩は話し始める。少し震える手を持ち少しでも気が楽になれるように。
殆どが小説版や漫画で話していたことだったので内容は知っていた。そして暫く話続け、そしてあの時期になる。
「丁度事務所の契約が切れそうだった時に恋空のオファーが来たの。」
月9ドラマ恋空。ここが原作との大きな違いだ。
「…ホントに最初オファー来た時はホント何考えてるんだろうと思ってた。既に終わったって思っていたから。レギュラー番組も打ち切られて既に役者オワコン扱い。そんな中でキングから呼ばれたことを知って、子役仲間からはそんなに評判が良くなかったでしょ?」
「そうだな。俺はオーディション一度も受けたことなかったし。」
「そう。それで噂になってて、ママもどうせコネとかで使って仕事得てるって。どうせ助演男優賞も飾りみたいなものだと思ってたし。どうせ呼ばれたのもファンとか引き立て役とかそんな扱いなんだろうなぁって思ってた。」
何処か自嘲気味に答えるかな先輩。
「…でも、初めて演技をやって、こんなにもやりやすいって思ったの初めてだった。合わせる演技をして貴方が私を前に出そうとしてくれてたのも分かってた。でも、前みたいに前に出るのが怖かった。また失望されるんじゃないかって。こんな演技ができるのだからもっとキングのほうがいい演技が出来るんじゃないかって。」
「……」
「でもホントにあの時アンタが無理やりでも表舞台に戻してくれた……演技が楽しいものだと思い出させてくれて、それで居ながらホントにいい劇に仕上げてくれて、それでいながらどんなに強いこと言っても側にいてくれてたでしょ?私にとって始めてできた友達だったから……ママにもキングがバカにされたのが許せなかった。」
「……へ?」
「1話放映の時あったでしょ?放映した時に久しぶりにママに褒められたの。……でも、その時にキングのことをボロボロに言ってて、何なら歌も私があの曲を歌ったほうがいいとか。」
その言葉に俺は苦笑する。正直そういう耐性は嫌でもつくものだから、直接言われるくらいしか問題はないのだが……
「…多分あんたは気にしないとか言いそうだけど、それでも私にとったら、大切な友達だから、初めて声に出しちゃって。……そしたらママはヒステリー起こしちゃったし大げんかよ。」
何も言えない。これ俺にも原因あるよな。いや、確かにかな先輩の演技を引き立てるようにしたけど……こんなことに繋がるとはホントに予想してなかった。
「…言っとくけど、キングのせいじゃないから。」
「いや、でも。」
「…言っとくけど、後悔なんてないから。……だから言いたくなかったのよ。あんた自分のことなら気にしないのに他人のことは物凄く気にするから。」
呆れた様子のかな先輩。いや、流石に俺のせいで家庭崩壊起こることなんて気にしない人は居ないと思うんだけど。
「…それに、私も気づいちゃった。ママは私のことを人気子役としてしか見てなかったって。」
「……」
「…私ね。キングが羨ましいって思うことがあるの。ルビーやアクア、アイの歪だけど、それでも私はママと普通の親子で居たかっただけなのに……演技を褒めてほしかっただげなのに。」
いつの間にか涙が溢れているかな先輩。嗚咽が漏れ涙が溢れる。
ホントにこうして見るとかな先輩はずっと孤独だったんだろう。
……正直イケメンムーブとかしたくないし、黒歴史になるかもしれないけど、かな先輩を軽く引き寄せ抱きしめる。一瞬こっちを見るがそうされることを多分誰よりも望んでいると思うから。
「……頑張ったね。かな先輩。」
その一言でかな先輩はこちらに身を委ねてくる。顔を胸に当て嗚咽が聞こえてくる。
その後気が済むまで泣き続けたかな先輩は泣き寝するまで一言も話さずに泣き続けた。
……その後母さんやルビー、ミヤコさんに詰められ、ずぶ濡れのまま数時間正座でお説教を受けたのはまた別の話。