「…キング!!」
自分の数倍はある女性に抱っこで持ち上げられる。
顔を覚えられない母さんだが、唯一自分の子供で母さん似の俺は分かりやすいのか一度も間違えられたことはない。
「ママ。おかえり」
「キングはいつもこの時間起きてるよね。」
夕方になり、なんやかんやアイが帰ってくるタイミングで起きているのは俺が多い。
母さんに抱っこされると子供の本能なのか少し落ち着く。人肌に触れているせいか温かい。
「また。キングが最初?」
「そうみたい。」
「……いいなぁ。キング。」
なんかキングって名前本当に恥ずかしいんだけど……
これこの先言われ続けるのか。
「そういえば私のドラマ決まったんだ!!」
「……?ドラマ?」
「そうだよ!!キング!!凄いでしょ?」
どうやら本当に興奮しているのか、母さんは俺の体を揺らしてくる。
「凄い!?」
「でしょ?それでなんだけど、今度はキングも撮影の場所に行こうね。」
「……ちょっ、ちょっとアイ!!」
斎藤さんが声を上げる。前にアクアとルビーはライブにいったが俺は一人で留守番してたのだ。オレも少し不安になっているが、母さんはなりふり構わない。
多分だけど、父さんの血が少ないのかオレは母さんの髪や目など似たところが多いらしい。
でもワガママモードになった母さんは止められず。
「……はぁ。結局こうなるのね。」
「そういえばキングは初めてのお出かけだったよね。」
外をみるとやはり元々が現代日本と被っているためそこまで外は変わってないように思う。
「…アクアさん、ルビーさん。どーしてもというから連れて行きますけど私の子供だと思う設定を忘れないで下さいよ」
「……あれ?キングはいいの?」
「キングは……この子に言っても理解出来てるのか分からないでしょ?……もうなるようになれよ」
二人の視線が突き刺さる。でも似たものは仕方ないし、これでも赤ん坊の振りをしているのだ。でも、母さんが告げる
「ん~。キングなら多分分かってるよ。」
「……へ?」
その言葉に俺すらドキッとしてしまう。
「アクアやルビーみたいに話すことも出来ると思うよ」
「でも話さないわよね。」
「うん。だって普段はルビーとアクアに譲っているから。キングは普段話さないけど、いつも真夜中に何の曲か分からないけど色々な歌を歌っているんだ。それもとても綺麗な歌声で」
「真夜中に?」
「うん。確かこんな曲だったはず」
そして母さんは曲を歌い始める。その曲は俺が前世子供の時におじゃる丸で流れたエンディング曲『カタツムリ』だった。自分が好きで何度か歌っていた記憶がある。てか数回歌っただけで覚えたのか?一応子供が歌っていてもおかしくない……いや普通に歌詞の意味は深いから赤ん坊どころか子供でも歌うことはないか。
「いい曲ね。てかそんな曲あったかしら?」
「ううん。歌詞検索をかけても出てこない、出版社に問いかけてみても聞いたことないって。」
……これ、やっぱりバレてるよな。まぁ、正直この二人とは違ってバレてもいいんだけど。
「凄くない!?ヤバい位の天才っぽい」
「…あのね。赤ん坊が普通作曲なんてしないでしょ?……まぁ、そのことが本当ならこの子は……苺プロにほしいわね」
「…本当!?」
「えぇ。でも、本当にキングくんが歌っているの?もし」
「……歌う?」
一応子供らしく聞いてみる。視線を集めるとアイが笑う。
「うん。キング、一緒に歌おう!!」
その笑顔は満面の笑みで、歌声は間違えなく天才アイドルを彷彿とさせた。
「…うわぁ!!双子ちゃんだ!!」
「そっちの子はお友達?」
撮影現場に行き監督に挨拶をした後は母さんはメイクに入る。ドラマ出演のために役作りはそこまで心配していない。
失敗も全部母さんなら反省に活かせるだろう。というよりも多分主演級じゃなければ母さんは活かせないと思う。
「…バブ、バブ」
「……」
そしてルビーのバブ声にドン引きしている俺とアクア。アニメや漫画で見てたけど……流石になぁ。アクアが抜けてから俺に女優たちが近づいてくる。
「君も可愛いなぁ!!どこの子?」
髪や頭を撫でられ続けたら流石に疲れるってことが判明する。
ふれあいコーナーの動物ってこんな感じなんだなぁって思ってしまう。
そんなことを思いながら俺はただずっと撮影を眺めている。
「……」
正直なんとも言えないよなぁ。物語も似た物語は正直昔からある童謡とかクラシックとかくらいだ。ドラマもアニメも漫画もテレビを観る限り、似たようなものはあるが、正直もはや何が同じで何が異なるのかが難しい。
歌が完全に違うのか、似た曲があるのかってことだけど。メロディーも、どうにかしないといけないし
……歌うために努力しようか。