一番星の子   作:孤独なバカ

9 / 23
第9話

「ディレクターさん、ADさんこれ食べて下さい。」

「本当にいつもありがとうね。キングくん!キングくんと苺プロさんより飲み物とお弁当の差し入れ頂きました!!」

 

一口で摘めるお菓子と少し高めの弁当を持ってくる。

そして、主演格に挨拶周りを行う。

 

「いちごプロ所属のキングです。」

「おっ。久しぶりじゃん。キングくん。相変わらず現場から好かれてるね。」

「お久しぶりです。結城さん。これ、つまらないものですが。」

「おっ!気が利くね。……ってこれ好きなんだよね。覚えてくれてたんだ。」

 

そういって嬉しそうにキットカットを取る結城さん。この人が今回のヒロインの相手役である。共演した俳優の好みは殆ど覚えている。何なら私生活でも結構食事に連れていってくれる人でこの気軽さで結城さんは最優秀男優賞を俺と共演した作品で受賞した。

 

「確か今日から続けて撮るんだよね?」

「はい。俺最終日までありますよ。」

「ドラマでここまでの役は始めてだろうし、何かあったら聞きに来ていいからね。それとまた、食べに行こうな!!」

「はい。お供させて頂きます。」

「それとなんだが……お前大丈夫か?今回のドラマの相手役ってあの有馬だろ?」

 

やっぱり噂になってるのか。元々評判は…何なら悪いほうだ。

 

「らしいすね。兄ちゃんが共演あるんですけどなんか殺そうかって言ってましたから」

「兄ちゃん?お前兄ちゃんいるの?」

「居ますよ。似てないですけど三つ子の俺一番下なんで。」

「三つ子?……あ~そういうこと?」

 

その言葉に俺は苦笑する。その意図を掴んでいるのだろう。このキャストの意味を。

 

「はい。だからこそ嫌でも注目集まりますよ。今回の月9は。なんならNGシーンに少しネタ練り込むんでその時合わせてくれませんか?」

「おうよ。思いっきり弄る感じでいいか?」

「はい。」

「それとなんだけど、番宣は基本的に出る方向性でいいよな。NGとかはあるか?」

「歌番組以外なら大丈夫です」

「…お前一応歌手だろ?」

「ネットのですよ。歌に関しては趣味なんで。」

「……あのレベルで趣味って。嫌味って取られても仕方ないぞ。まぁ、分かった。本当あの子も家族がまともだったら使いたいんだけどなぁ」

「…結城さん。」

「ごめん。ごめん。よろしくな。キング。子役のところ居づらかったらいつでもこいよ。」

 

……本当に推しの子のキャラって親に恵まれたキャラ少なすぎるだろ。俺は母さんに恵まれてるからいいけど。

挨拶周りは順調に進んでいく。一応主演格では一番年齢は低い。初共演の人の好みなどは先に共演した先輩に、聞いていることも幸いする。

 

「…あっ。」

「……?」

「貴方がキングね。」

 

同じくらいの背でありながら赤い髪のショートカットの女の子がいた。

 

「初めましてだよな。有馬かなさん。一応いちごプロ所属のKINGです。」

「…えぇ。有馬かなよ。よろしく。」

「……ん?」

 

あれ?噂通りと違うんだけど。なんか大人しいというか。

 

「どうしたのよ。」

「いや、噂と相当違ったから。」

「…噂って…、まぁあんまりいい噂ではないんでしょうけど。」

「……」

 

自覚してるんだって突っ込みたくなったが堪える。すると少し震えており、明らかに緊張しているのが分かる。

 

「あれ?……ドラマ出たことあったよな。」

「あるけど……こんなに大きなのは久しぶり。」

「まぁ、俺もだけどほぼ毎回出番あるからな。」

 

流石に有馬は緊張するか。正直俺は映画で一度主演格やらせてもらってそこで役者としてはブレイクした方だ。

 

「…せっかくだし合わせる?俺は挨拶終わってるし。都合が良ければだけど」

「いいの?……それに貴方主演格なのに挨拶周りしているの?」

「お前マジか……」

 

少しため息を吐く。なんか理由が分かったような気がする。

 

「一応、子役はどんなに凄くても迷惑をかけることになる。だから挨拶周りはしとかないと次推薦されないぞ。特に子役はコネ塗れなんだから。」

「コネってあんたも推薦?」

「いや。今回は俺とアイ軸になってるのが配役で分かる。殆どは俺かアイが共演したことある配役だろ。これ。」

 

だから顔なじみが多い。なんなら有馬かなとアイも共演経験はある。顔なじみが多く、誰を軸に誰を輝かせたいのかという演出になっている。

 

「だから挨拶周りっていうのは大切なんだよ。自分を相手によく見せることも子役としては大事な仕事のうちだよ。」

 

自分を売り出し、できるだけのコネを作る。この芸能界は貸し借りの世界。そうやって色んな現場を体験していく

 

「…それがあんたの素なの?」

「ん?……あ~俺演技だと幼稚ぽいもんな。こっちが素かも。直したほうがいい?有馬さんのほうが先輩だし」

「…いいわよ。素の方で。それで案内してくれるんでしょ?」

 

あれ?小説版や漫画と目茶苦茶違うんだけど。……なんか危ないような、そんな感じを受ける

 

 

「…んじゃ行こうか。」

「うん。」

 

そうして俺はさっき挨拶していた部屋へ向かう。

もしかして、小説版の後だったりするのか?

1年早まっていたとしたら……それは結構無茶しないといけないかもなとため息を吐いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。