表題の件について、以下の通り報告いたします。
調査対象 : 民間協力者 虎杖 悠仁
一. 事件内容記録
発生日時 : 一二月二五日(時刻不明)
発生場所 : 第九七管理外世界、地球、海鳴市
発見の経緯 : 任務担当者(リンディ・ハラオウン)の証言と記録映像により、判明した。
被害状況 : アースラ武装局員一三名の死亡を確認
二. 虎杖に対する概要
海鳴市での『闇の書事件』の調査。
一二月に入り、複数の魔導師及び魔力保持者や 魔法生物等が襲われる事件が発生。八割
がた容疑者である『闇の書』の守護騎士達による魔力蒐集であると推測がついたため、
さらに詳細な現地の調査、及び『闇の書』の守護騎士達の確保を任務として民間協力者で
ある虎杖に命じた。
三. 行動・経緯推測
一二月二四日、虎杖悠仁が事件現場入り。
本人からこの件においての事前の要望等はなく、単独行動を命じたのもアースラ艦長(リン
ディ・ハラオウン)である。理由としては、虎杖の自主行動を可能だと判断したため。また
虎杖は偶然事件現場にいたと思われる。
当日は午後五時、虎杖は海鳴大学病院へ同じく民間協力者の高町なのはとフェイト・テスタ
ロッサ、他一般人二名と共に入った。
その後、『闇の書の主』と思われる少女、八神はやてと接触し、その繋がりで守護騎士達と
も対峙する事態となった。
虎杖は高町なのは達と別れ、単独行動を開始。
四. 闇の書事件が発生
虎杖が高町なのは達と別れて間もなく『闇の書』が覚醒。闇の書の自動防衛プログラム『ナ
ハトヴァール』が起動し八神はやては管制人格と融合した模様。
海鳴市の八割を結界で覆った。
海鳴市はその後、修復魔法により復元させた。
局員の死因を調査したところ、全員が民間協力者である虎杖悠仁の犯行であると断定。
虎杖は一二月二四日に闇の書と対峙し、闇の書の結界内部のおよそ八割を全焼させた。
五. この事件に関して、虎杖の動機は不明
精神的な障害により一時的に不安定な状態に陥ったという可能性はなかった。
なお、この事件には闇の書の関連性もあり、虎杖と共通する属性の面でさらに動機等は
なかったか、調査中である。
追記=虎杖の関係者らしき人物が『三名』事件現場に現れた模様。
六. 今後の処分等
虎杖悠仁は、関係者共に現在行方不明。
発信器を追跡した結果見つかったのは切断された右腕のみ。これ以上の捜索は不可。
事件現場の状況を鑑みて、
引き続き、虎杖悠仁を殺害容疑者として捜索し、生存を確認後、処刑対象となる。
なお、虎杖悠仁の関係者三名も同様、闇の書事件共同正犯とし、死罪を認定する。
【一二月二六日 時空管理局最高評議会 以上】
◇◆◇◆◇◆◇
それは酸鼻を極める光景だった。
最早災害なんてレベルじゃない、地球崩壊三分前の光景と言えよう。
まさに神話における『世界の終末』そのものを見ているようだった。
「現場の状況は!? なのはさん達の容態をすぐに確認してッ!!」
軌道上アースラの艦橋に響く警報に、アースラ艦長リンディ・ハラオウンは喉を震わせた。通常ならばアルカンシェルを撃って『闇の書の呪い』を消し去る予定なのだが、虎杖の暴走を止めるためになのは達が立ち向かってくれている。
そんな中、虎杖から『オーバーSSSランク』並みの魔力値を計測したことからもはや確保どころかなのは達の生存は絶望的だと言っても良い。けれども見捨てるわけにはいかなかった。少しでも希望があるなら、と淡い考えをしている時点でもう危ないと思うが。
リンディの声に別室にいるエイミィがコンソールを操作し、息を詰まらせて告げる。
『なのはちゃん達のバイタル確認中······す、凄まじい魔力反応でしたが、全員の生存を確認ッ!! クロノ君が現場に到着したおかげで助かりましたッ!!』
「······そう、良かった」
けれどもリンディは安堵せず依然として険しい顔をして眉を顰めた。
そう、虎杖の瞬間魔力値がオーバーSSSというあり得ない結果が出たのだ。少なくても管理局の観測機で計測できるのはSSSが限界。それよりも高い数値など存在するはずがないのだ。それが出るということは現存の観測機器がイカれてるとしか思えない。特に虎杖の反応は、途中から限界値を越え、かつてないほどの数値を示している。歴史上初かもしれない。
街中には世界を滅ぼすほどの大災害を巻き起こす『闇の書の呪い』の暴走が間近に迫っているというのに、それ以上の怪物が野放しにされているということに対して最早ついていけない。現場の状況も把握できない。
故にリンディ達は街中に虎杖が暴れまわっている様子を、艦橋のモニタを睨んでいることしかできなかった。
と、画面の数値に視線を落としていたエイミィが、戦慄した調子でごくりと息を呑む。
『ば、バンクを調べた所、観測史上初のことだらけです。【オーバーSSSランク】の魔導師すら時空管理局の方で確認できていないのに、それが現れるなんて·······記録上にありません』
「一体、何者なの·······虎杖君はッ!?」
エイミィの言葉に、リンディはもう疲れたように目元を押さえる。確かに、今まで存在していたどの魔導師達よりも遥かに格上の数値反応が観測されている。
「現場に到着したクロノと連絡は取れる? 虎杖君を何としても止めなくてはならないわ」
『は、はい! 今すぐに連絡を取りますッ!!』
リンディは表情を険しくした。控えめに言って、今すぐにでも非常事態宣言を出さなければならないような状況だ。もし虎杖が敵であったら、そしてこのまま『闇の書の呪い』が暴走を始めたりしてしまったなら、一体どれだけの被害が出るか想像もつかない。
そんな時、エイミィが声を上げる。
『────! リンディ提督、時空管理局最高評議会より入電!!』
「こんな時に·······一体何なの?」
クソ忙しいこんな時に、などと眉間に皺を寄せるリンディにエイミィは告げる。
『い、虎杖悠仁及び【闇の書の呪い】を共にアルカンシェルを使用して即刻排除せよ······とのことです』
「ッ!!」
リンディは悔しげに奥歯を噛み締めると、拳を固めてガン! と机を殴り付けた。
「覚悟はしてた。でも、本当にこんなことになるなんて···········ッ!!」
一瞬、リンディの脳裏に愛する夫の姿が脳裏に過る。
色々と困らせることが多い夫であったが、彼は己の信念に悖る行為だけは決してしなかった。きっと彼ならば、自分の責務を全うするために迷うことなく命を捨てる決断をしただろう。だが、今リンディがそれをすれば悲劇を繰り返すことになる。
上層部は、一つの星の被害など眼中にないだろう。
けれども、これ以上命を失わせたくないリンディはその命令だけは納得いかなかった。私情を挟むことは許されない。しかしそれだけはどうしても避けたかった事態だ。
だが、もう選択肢はない。
タイムリミットは無情にも迫っている。
虎杖が先程の大技をまた繰り出そうとしている様子が見えた。
『リ、リンディ提督·······』
エイミィは心配そうな声を作ってくる。
もう選択肢はない。
彼女は握り締めているアルカンシェルの発射解除キーを見つめる。
いい加減覚悟を決めろ、と言うのか。
リンディが数秒の間懊悩していると、
『─────領域展開─────』
「······え?」
それは見ている者にすら影響を与えた気がした。
突然の事態に思考が途絶した。
大技を披露しようとしていた虎杖だったが、直後に背後にあった寺のような建造物が崩壊する。あらゆる『何か』が毛穴という毛穴から潜り込み、頭脳の中心へと集約されていく膨大な情報量。
『─────無量空処─────』
それは人間が溜め込める量ではない。風船には決まった量の空気しか入らないのと同じ原理だ。それ以上の量を無理矢理に流し込まれれば、どういう末路を迎えるかは明白である。
目や鼻から赤い血の飛沫が舞った。
血管や神経も無事では済まなかった。
無数の枝のように分かれたそれらの配線が、ブチブチと引き千切れていく感覚を怪物は知った。
その大技を発動をするために脳を無理矢理に行使すれば、待っているのは甚大な拒絶反応。
こんな神話がある。
仏教の守護神達の集団、『天部』に属する神『帝釈天』は宇宙の中心に聳え立つ『須弥山』の頂上にある忉利天に住んでおり、天部の神々の中で『最強』の武神であると謳われている。
そんな『帝釈天印』を結ぶ『銀髪の目隠しをした男』は、仏教において宇宙観における最高位の天である無色界に属する世界、別名『空無辺処』とも呼ばれ、あらゆる物質を超越した精神的な世界、空間の無限を表した境地を構築した。
両面宿儺が地獄を統べる『閻魔天』を結ぶのなら、それと対比する天を統べる『帝釈天』を結んで相殺する。
その力を受けた少年の脳はダメージを負い、立ったまま数秒間気絶した。
目隠しの男は、微かに笑った。
笑って、なのはの近くに降り立ち、
『ほら』
『!?』
『今だよ、トドメは任せたッ!!』
そう言って、なのはにトドメの一撃を放つように促した。
そして。
高町なのははレイジングハートと共に、まるで砲弾のような速度で一気に空間を突き抜けて、少年の胸元にその鋭い槍を突き刺した。
◇◆◇◆◇◆◇
領域展開。
簡単に言ってしまえば、結界で閉じこめた相手を必ず当たる技で一方的に叩きのめす最終奥義。
領域が発動した時点で勝ちは確定し、その結界術に勝る領域を展開しない限り逃げることはほぼ不可能。領域外に出るにはその押し合いで勝たなければならない。
しかし。
領域は閉じ込めることに特化した結界、逆に侵入することは容易い。
何故なら侵入者にメリットがないから。
伏魔御廚子のように相手を領域に引き入れた時点で約束された勝利を掴み取ることができるのであれば尚更。
だが。
それに勝る領域を展開してしまえば、たとえ伏魔御廚子のようなチート技を押し負かすことができる。
現時点で伏魔御廚子に勝てる領域はただ一つのみ。
「─────領域展開─────」
直後だった。
人差し指に中指を巻き付けただけで。
本当に、何の冗談でもなく。
世界の全てが壊れ、
「─────無量空処─────」
圧倒的な情報量が流れ込む。
瞬きの間、と表現するにはとてつもなく一瞬すぎた。
絶句する暇も、知覚する暇も、伝達する暇も与えない。
ひたすら平坦で半導体のシリコンウェハーよりも狂いのない平面が広がり、ミクロン単位の起伏もない空間がひたすらに続き、認識を壊した。
時空。
従来の概念すら通用しない空間。
たったそれだけで。
両面宿儺の領域、伏魔御廚子の発動を阻止してみせた。
そんなことができる奴は、
脳の仕組みの違いから普通の人間にも負荷がかからぬほどの情報量。発動した本人もほとんど一か八かだったろう。そもそもそんな短時間に設定すること自体不可能とも言っても良い。常識的に物理学的にあり得ないのだ。格闘ゲームの一フレームさえ六◯fpsだとすると約◯.◯一七秒で、それ以下の秒数となると視認どころか反応すら不可能な領域。狙って出せるものではない。しかしそれをやってみせた。
まさしくチート────『最強』と呼べる。
虎杖の視界は明滅していた。
闇の中、投げ出された虎杖の視界に、悠然と浮遊していた『一人の男性』がいた。
領域は、止んでいた。
そして、『少年』の意識も切り変わっていた。
その頃には。
ボロボロ、と。
苦心の想いで突っ込んでくる少女の目から、子供らしく涙が溢れているのが見えた。
◇◆◇◆◇◆◇
『小僧············せいぜい噛み締めろ』
◇◆◇◆◇◆◇
そんな声が聞こえた気がした。
風のない更地の上に、虎杖の体は横倒しに転がっていた。
虎杖は倒れたまま、ゆっくりと目を開く。
脳に流し込まれた情報量に耐えきれず意識を失っていた時間は、おそらく短い。デジタル表示で答えるならせいぜい一分程度だろう。だが、投げ出された手足の先が異様に冷たかった。正常な血の巡りさえも阻害され、その膨大な情報量による障害なのではないかと疑いたくなる。急激な脳への負荷で血流が不規則になっているのかもしれないし、最悪気を失っている間に心臓が止まっていた可能性もある。
いや。
そもそも抜かれていたのだから、動かす心臓なんてなかったはずだ。
けれども、脈はある。
虎杖は首を動かさずに視界に景色を映し出す。
「········」
まず最初に取った行動は指先に力を加えること。人差し指はゆっくりと、痙攣するかのように動いてくれた。瞼を動かして瞬きすることもできた。ビクビクと震えている唇の隙間から酸素が取り込まれ、吐き出されていくし、重く感じる体の中、確かに心臓の鼓動が感じ取れた。
「ぁ、あ·······?」
けれども、それを虎杖は素直に喜べなかった。
先程の情報を無理やり流し込まれたように、虎杖の脳内にありとあらゆる記憶が脳裏に過ったからだ。
いくつもの死を見た。
いくつもの絶望を見た。
あからさまに虎杖に苦しみを与えつけるように、彼の中で蝕む『呪い』が愉快そうに今までの記憶を見せつけてきた。血肉を引き裂き、そこからドーム状に大きく広がっていった。まるでプラネタリウムのように街全体を覆う、血と肉を使った芸術が今まさに目の前に広がる。
心というものに形はないが、それが明確に壊れていくのを虎杖は実感していた。金槌を叩きつけたり、刃物で突き刺すような、派手な破壊ではなかった。腐食に蝕まれるような、少しずつ、それは確実に虎杖に自覚症状が生まれた時には手遅れになってしまうような、小さくも大きな破壊だ。
「あ、ぁァ·······あッ!!」
朦朧とした意識のままに、虎杖は嗚咽を溢す。
全ての情報が完結するまでの積み重ねを、一つ一つ、血まみれの手で築いていく。
認識が。
途絶した。
「うぅ、おえぇェェェええええええええええええええええッッッ!!!!!!」
あまりの事態に麻痺しかけた思考を、虎杖が取り戻した瞬間、喉まで出かかった悲鳴を吐瀉物と共に吐き出した。
このあまりにも広すぎて、手の付けようのない世界で、虎杖は取り返しのつかないことをした。
両足から再び力が抜ける。
その場で胎児のように体を丸めてひたすら絶叫する。
ここまで狂ってしまった世界、それを引き起こした自分が怖かった。
自分の犯してしまった過ち。
自分以外の全てが消えた後に襲ってくる恐怖。
こんなものに耐性はない。耐性が付くことさえ間違っている。これはあってはいけないことだ。ありとあらゆる可能性の中でも、最悪の邪悪だ。たったの一回も経験してはならない事態に、虎杖悠仁は放り込まれている。
虎杖の軋んだ心は、とにかく拒絶を求めた。
現実からの逃避。
そうするように出た言葉は、
「死ねよ·······死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねッ!! 自分だけ、自分だけッ!! 死ななきゃ────ッ!!」
バチンッ!! という破裂したような音が聞こえた。
小さな手が振り下ろされた音だった。
口の中が切れる。頬が異様に熱い。右目の瞼が腫れ上がる。
それでも、少女は容赦しない。
倒れ込んだ虎杖の腹の上へ馬乗りになり、何度も何度も掌を打ち付ける。
そして至近で呟く。
「やめてよ、悠仁君」
「!?」
「死ぬだなんて、軽々しく言わないで」
両手で襟首を掴んだ少女、高町なのはは金属バットを振るうような重い音を響かせる。
直後に、虎杖の額になのはの額が勢い良く激突した。
「私は、私達はそんなことのために悠仁君を助けたんじゃない。死んでほしくて助けたんじゃない。生きてほしいから助けたの。だから、お願いだからそんな悲しいこと、軽々しく言わないでッ!!」
「ッ!!」
「だけど─────」
言って。
泣いて。
更地の上で転がされていた虎杖悠仁の上に馬乗りになっていた高町なのはは。
そのまま少年の背中に両腕を回して。
優しく抱き締めた。
そして。
言いたかったことを、少女は震える声で言った。
「······良かった」
「!?」
「······おかえり、悠仁君」
それは時空管理局の魔導師とか、強大な力を持つ魔法使いとか、そんなものではなかった。一人の人間として存在している、何でもない女の子の声だった。
ぱたぱた、と。
虎杖の肩に透明な雫が落ちた。そこは丁度袖を失くした部分だった。
それは、春の雨のように温かかった。
「·······」
虎杖悠仁は、ゆっくりとした動きで、震える唇を動かした。
ぽろり、と。凍った涙腺からなのはと同じように涙を溢す。
そしてこう言った。
「·······ただいま······それと、ごめん」
「うん、うんッ!!」
高町なのはは、虎杖悠仁という少年が胸の内に秘めていた苦しみを静かに受け止めていた。
たったそれだけで、高町なのはは嬉しかった。
ようやく、友達が戻ってきてくれた。
それに安堵したかのように、なのはもまた、涙を再び溢した。
その様子を、フェイトや八神はやてらは優しく見守っていた。彼女達もまた、虎杖が無事に自我を取り戻したことを喜んでいるようだ。
よく見たら、彼女達もなのはと同様にあちこちに傷を負っている。
きっと、意識を失っている間かなり迷惑をかけたのであろう。それについてもちゃんと謝罪し、そしてそれ相応の報いを受けなければならない。その覚悟は既にある。呪術界に足を踏み入れた時点で自分の死に様はもう決まってる。だからせめて、最後は悔いのない死を遂げよう。
そう改めて覚悟した直後だった。
「いやぁ、こんな小さな女の子を泣かせるなんて。悠仁~? どんな理由があろうと男が自分よりも年下の子を悲しませちゃ駄目なんだよ?」
と、いきなり奇妙なテンションボイスが飛んできた。何が奇怪かと問われれば、そのテンションもさる事ながら、それが空気も読まず、というところだろう。
(え? 今の声って·······え!? ちょっと待てもしかしてッ!?)
虎杖が声のした方を振り返ると、両手をポケットに突っ込んでこちらの様子を覗き込んでいる身長一九◯センチはあろうかという大男がニヤニヤと笑っていた。
「ご、五条先生ッ!?」
「いやぁボロボロだねぇ。記念に二年の皆に見せよーっと」
五条悟。虎杖の担任で、数少ない特級術師の一人。手足が長く、高い背丈に銀髪を逆立たせ、黒いアイマスクで目隠しをしているのが特徴の『呪術師最強』の称号を持つ男。
なんか呑気に虎杖の無様な姿をスマホで盗撮してくるが、そんなことはどうでもいい。
「な、なんでここに!? どうやってこっちの世界に来たのッ!? ここ一応並行世界なんだけどッ!?」
「そんな連発で質問されてもどこから答えていいかわかんないよ。こっちもよくわかってないし。それにそんなことを言及している暇もナシ。あ、一応忠告しとくけど、歯を食い縛ってた方がいいよ?」
「へ?」
五条の意図がわからず虎杖が首を傾げた瞬間に、
「くたばれゲテモノ野郎ォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」
虎杖のこめかみが右と左の両サイドから正拳突きを受けて万力っぽく押し潰された。
グシャアッ!! という壮絶な音が響く。
右から茶髪の少女、左からツンツンと尖った髪型をしている少年。
共に虎杖悠仁のクラスメイトだ。
「ほごォオッ!?」
突発的に横合いから同時に殴られた虎杖は顔面が押し潰されそうになり、くわんくわんと頭を振りながらこめかみを両手で押さえ、殴ってきた二人組を見る。
「く、釘崎ッ!? 伏黒までッ!?」
釘崎野薔薇と伏黒恵。
二人はまるで苛立ちを露にするように、伏黒は無言で両手の関節をポキポキと鳴らし、釘崎はもはや殺意があるかのように四本指の間に三本の釘を挟み物騒な金槌を手に睨み付けている。
「·······おい」
「·······何か言うことあんだろ」
何か思いっきり憎しみの込められた声が前から飛んできた。
あれまぁ、と天を仰ぎ見る五条先生。
なのははそんな二人の様子に恐れを抱いたのか、つい虎杖から離れてしまう。フェイトはどうしたら良いのかわからず、あたふたしながら虎杖とその二人組を交互に見やる。八神はやてらは君子危うきに近寄らずということで成り行きを静かに見守る。
虎杖は顔中に汗を噴き出しながら何か良い言い訳がないか考える。
考えに考えた結果、虎杖が出した答え。
「····················え、えっと、お久しぶり、です?」
ボケた瞬間に憤怒の表情のままに虎杖は二人の手により割と渾身の力を込めて殴り飛ばされた。虎杖の体がスタンガンを喰らったようにビクンビクンと跳ねる。
二人がどれだけ殺る気満々かと問われると、思わず虎杖の口から子犬みたいにキャンッ!! という悲鳴が迸るほどである。
突発的に顔面を殴られた虎杖は吹き飛ばされて地面の上をゴロゴロと転がっていった。打撃を受けた顔面は内側にめり込み、路面に擦った手足がヒリヒリと痛む。
(ひ、久々に喰らった気がする·······二人のガチ殴り)
ちょっと半泣きで目元を擦った虎杖。
で、そんな何とも危ない武器を手にしてズカズカと虎杖の元に詰め寄ってくる釘崎。彼女の右手がさっきから金槌を握り締めていてそれで頭かち割られるのではないかと内心ビクビク震えている。
「ふざけてんのか?」
「す、すみません······」
「オマエが行方不明になったせいでな、こっちは一日中探し回ったんだぞ。見たくもないような映画館とか、カビ臭そうな裏路地とか、とにかく行きたくもないような場所に一々行って、神経磨り減らしてまで探してやったんだぞ。それなのに何? やっと見つけたと思ったら宿儺に体乗っ取られてるってのはどういう了見なわけ? アンタ制御できるんじゃなかったの? 私らの前でめちゃくちゃ大見得切ってたくせに何なのこの体たらくは。三秒以内にさっさと説明しろッ!!」
三つ数える前にあなたのその金槌が今すぐ叩き割りますと言っております。そんな感じであっという間に目と鼻の先までやってきた釘崎は殺意剥き出し状態。
地面に倒れている虎杖の襟首を掴んで鋭い目付きで見てくる。その目だけで人を殺せそうだ。
虎杖は五条先生を見る。助けを求めているのだ。生徒を守るのが先生の役割のはずなのに、いやー青春だねぇという感じで見ているそこは、物理的な距離は一メートル足らずのはずなのに何だか永遠に辿り着けない気がする。
伏黒に至ってはわざとらしく知らんぷりをしている始末。
自業自得と言いたいんだろう。
虎杖は半分痙攣したような喉で、それでも必死になって言葉を絞り出す。
「え、えっと、そ、その、まあ、何と言うか──────」
「──────かも」
「え?」
なんか触れちゃいけない逆鱗に触ってしまった? などと虎杖が思っていると釘崎は思い切り平たい声で、
「しかもこんな小さな子供達を痛め付けるとか男としてどうなのその上宿儺になったせいで思いっきり呪術規定八条の秘密に抵触してるしこれからどうコイツらに説明しろっていうんだよああもう本当に厄介なことにしてくれたわね始めは知りもしない場所に飛ばされたと思ったらなんか宿儺が大暴れしてるし私達が止めなかったらどうなってたかわかんないわよそもそも何がどうしてああなったわけ?」
人間、どこにも句読点付けずに一息で話されたらそれだけで恐怖を覚える。
表情の有無に口調の強弱によって喜怒哀楽を読み取ることができるはずなのに、釘崎は平たい声で無表情のまま顔を近付けてきている。
断言しよう、八方塞がりであります。
釘崎は人形みたいに真顔のまま襟首を掴む手に力を込めると、
「怒らないから正直に言ってみなさい。私がアンタを探すために消費した時間を取り戻せるくらいの納得いくやつを。こちとらな、アンタのために楽しみにしていたショッピングタイムさえ削ってまで探し回ったっていうのよ。本当なら今頃ザギンで新商品を買いに行けたっていうのにいきなり遠足とか言われてそれで急に特級呪物の『石』回収したらこんな所に放り出されるわでとにかくストレス溜まってイラついてんのよぉぉぉおおおおおおおおおッ!!」
「ちょっ!? 最初怒らないって言ったじゃんッ!! って、ていうか、ゆ、ゆゆ、揺ら、揺らさないでぇッ!!」
どんどんと形相を鬼みたいに険しくさせていく釘崎は恐るべき力でがっくんがっくんと首を揺さぶり、虎杖は首の骨が折れるのではないかという危機感を覚える。
「ま、そんなわけで僕達もここに来れたってわけ。理解できた?」
「わけがわからないよ!? 何!? あの特級呪物もう一つあったってこと!? そんなご都合主義あっていいものなののののののののッッッ!!!??」
虎杖は吐き気に襲われながらそう訊ね、釘崎の由良由良に苦しめられる。
「う、うぷ········ッ! て、ていうか今そんなこと話してる場合じゃないんだってッ!! このままじゃこの世界そのものが消えるんだよぉッ!!」
ピタリ、と釘崎は手を止める。
しばらく凍りついたまま、五条と釘崎は首を傾げる。
その言葉に、伏黒は硬く閉じていた口をようやく開く。
「どういう意味だ?」
「そこから先は僕から説明させてください」
と、ここまで黙っていたクロノがふらついた足取りで近付いてくる。
「君は?」
「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンです。あなた方は、虎杖の関係者か何かでしょうか?」
「そ、僕はこの子達の担任でね。こっちが伏黒恵、そっちの悠仁に跨がっている子は釘崎野薔薇。で、僕は五条悟。あ、僕のことは気軽に『先生』って呼んでくれても構わないよ!!」
「は、はあ·······」
クロノは思わずハイテンションな五条についていけずたじろいだ。初対面の相手がこうも陽気な感じでさらに目隠しまでして接して来られたら誰だって引く。
その目隠しに何の意味が? などという思考は捨て、クロノは説明する。
「それでは時間がないので簡潔に説明させてもらいます」
そう言うとクロノは海の方角を指差す。そこには黒いドーム状の物体が浮かんでいた。
「あそこの黒い淀み、『闇の書の防衛プログラム』が、あと数分で暴走を開始します」
「私が持ってるこの魔導書を蝕んでいた呪い、自動防衛システム『ナハトヴァール』」
『暴走は周辺の物質を侵食し、ナハトの一部にしていく。臨界点が訪れなければ、この星一つくらいは、呑み込んでしまう可能性がある』
八神はやてがクロノに続いて説明をし、そこにホログラムとして現れた管制人格、『リインフォース』が補足を入れる。
その説明になのはとフェイトは驚愕の表情を浮かべる。
国どころか星一つ消し去るほどの大災害が起ころうと言うのだ。これに驚かない者はいないだろう。
けれど五条は、ふむ、と顎に手を当てるだけであった。
「それで、僕らはアレを何らかの方法で止めないといけない。停止のプランは現在二つ。一つは極めて強力な氷結魔法で停止させる。二つ、軌道上に待機している艦船アースラの魔導砲、『アルカンシェル』で消滅させる。だからあとはこちらで何とかする·······と、言いたいところだが─────」
クロノはどこか悔しそうに言葉を途切らせた。
歯を食い縛るように、血が滲むように。
「僕らは先の虎杖との戦いでほとんど魔力を使いきってしまった。そちらの守護騎士の一人が回復魔法をかけてくれたおかげで何とか皆立てているけれど、使った魔力は休まないと取り戻せない」
「それに問題はそれだけじゃないんです」
癒しと補助を施したシャマルが言うと、それに続くように守護騎士達が言う。
「そもそも最初のは多分難しいと思います。主のない防衛プログラムは、魔力の塊みたいなものですから」
「凍結させても、コアがある限り再生機能は止まらん」
「アルカンシェルも絶対ダメ! こんな所でアルカンシェル撃ったら、はやての家までぶっ飛んじゃうじゃんかッ!!」
腹の傷がまだ癒えていないシグナムが苦心の末にそう言い、ヴィータが両手をクロスしてバッテンマークを見せて止めるが、そもそもアルカンシェルとやらの威力や効果をこちらはまるでわかってない状態だ。
いや、ていうか『魔法』って何だ?
という顔をしている伏黒と釘崎の隣で、正座をしている虎杖はブツブツと句を詠むように『どーもスミマセンでした。私が未熟なせいで皆様に多大なご迷惑をおかけしてしまいまして、誠に申し訳ございませんでした』と心の籠った謝罪を述べている。
そんな彼を無視して、五条は冷静に訊ねる。
「それって具体的にどれほどの威力があるの?」
「そうですね、発動地点を中心に百数十キロ範囲の空間を歪曲させながら、反応消滅を起こさせる魔導砲、って言うと大体分かりますか?」
五条が何かを言うよりも先に、傍で聞いていたなのはとフェイトが反対の意思を主張する。
「あの! 私もそれ反対ッ!!」
「同じく、絶対反対ッ!!」
「······僕も艦長も、使いたくないよ。でもナハトヴァールの暴走が本格的に始まったら、被害はそれよりも遥かに大きくなる。何より、僕らはほとんど魔力がない状態だ。傷も充分に癒えていない。そんな状態でアレの相手をするのは流石に厳しい」
「「········ッ!!」」
状況は極めて深刻だった。
結局なんもかんも良く理解できていない釘崎だったが、要はどっかの誰かさんが制御できず暴走しまくったせいであの黒い淀みを止めるための力がないというわけだろう。
釘崎は虎杖を刺し殺すような視線で睨み付けた。
だがそうも言ってられない。
この世界に降り立ってしまった時点で、自分達も世界の終わりを迎える瞬間に立ち会っているのだ。
「何かないか?」
クロノが守護騎士達に意見を求めるが、皆下を向いてしまっている。
「すまない。あまり役に立てそうもない」
「暴走に立ち会った経験は、我等にもほとんどないのだ」
「でも、なんとか止めないと。はやてちゃんのお家が無くなっちゃうの、嫌ですし······ッ!!」
「いや·······そういうレベルの話じゃないんだがな」
「だったらせめて戦闘地点をもっと沖合いにできたら────」
「いや、海でも空間歪曲の被害は出る。転送はほぼ無意味だろうな」
「
ほとんど絶望的な状況だった。
皆知恵熱を出して良い案がないか考えるが、どんなに思考を巡らせても最悪な結果しか生まれない。
普通ならこの時点で『非現実だ』等と言って投げ出すだろうが、生憎五条らも異能の力を司る者。理不尽とか不条理とかそんな一言で投げ出す事ができない問題があると知っていた。『呪い』に遭遇して普通に死ねたら御の字、ぐちゃぐちゃにされても死体が見つかればまだマシという現場に何度も赴いている。
凄惨な現場は見慣れたもの、今回もそういう事件に巻き込まれただけに過ぎない。
よって、
「簡単な話じゃないですか」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
伏黒が全然重要そうでもない口調で答えた。
「要はそのアルカンシェルっていうやつをここで撃ったら被害が出るから撃てないっていう話でしょう?」
「え? ああはい、そうですけど」
「それでさっきの会話から推測するに、その魔法ってやつでアレの転送自体は可能なんでしょう?」
「ま、まあ······強制転移魔法が使えるほど小さければの話ですが」
「だったら簡単な話だ。俺達がアレを叩き潰してコアを露出させるから、
「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」
なのは達の喉がひくっ、と驚いたように息を呑む音を立てる。
『軌道上』とは、宇宙空間における人工衛星や宇宙船が宇宙空間を移動する際の軌跡を表す際に使われる言葉で、先程のクロノの発言から推測するにアースラは今宇宙空間にいるということになる。
転送が可能であるならば、地球に被害が出ないように宇宙でアルカンシェルによって反応消滅を起こさせれば何の問題もない。
考えてみれば、とても簡単な事だった。
「なるほど、考えたね恵」
「と言ってもこの作戦は五条先生が主に動いてもらうことになりそうですけど。個人の能力値的に。っていうか一人で充分でしょう」
「ちょっ!? ちょっと待ってくださいッ!?」
クロノが慌てるように話を遮ってくる。
「む、無理ですよ。確かに計算上それは実現可能かもしれないが、現時点ではほとんど不可能に近いッ!!」
「そ、そうです!! ナハトヴァールが展開している魔力と物理を併せ持った複合四層式の防御を破るには生半可な攻撃じゃ届きません!! せめて集束砲撃クラスの砲撃を当てなコアがまず露出しません!! なのはちゃんら含めて私らが撃てても精々三発、その他の魔法を使って削ってたらそもそも魔力がすっからかんになって撃てなくなって詰んでまう!! 皆さんの力を借りてもどうしようもないんですッ!!」
確かに八神はやての言う通りだろう。
すでにここにいる皆は宿儺との戦いで消耗している。そんな状態で戦ってその何層もある防御壁を破るには相当な魔力が必要なはず。
たとえ破れたとてすぐに再生してしまい、コアを露出させるための力さえも最終的には残っていないだろう。なのは達が束になって四方八方手を尽くして、どれだけ頑張った所でアレのコアを露出させるにはもっと力がいる。
なのは達が集束砲撃を撃てたとて、防御壁を破る所で終わる。
コアまで到達しないのだ。
何よりその転送魔法ができる人物も現時点でシャマルしかいない。一人で転送するには負荷が大きすぎる。せめてアレを物凄く小さくできれば、剥き出しになったコアを捕獲して転送させることは、シャマル一人でも可能だろう。
だがそれには圧倒的に力不足過ぎる。
だからこそ、彼女達はこの作戦は実現不可だと判断した。
けれど、
「
「「「「「「「「ッ!?」」」」」」」」
「
五条の言葉に、なのは達は心底びっくりしたように息を呑んだようだった。
あっさりと。あまりにもあっさりと、五条悟は言った。
だからこそ、なのは達は五条が何を言っているのか理解するまで時間がかかった。
すると五条はアイマスクを外し、その『青い瞳』を露にする。
それだけで、なのは達は何も言い返せなかった。
五条の美麗なその素顔に感嘆させられたから、というわけではない。
呪術師の等級は、相性さえ無視してしまえば原則として同等級の相手と拮抗する。この世界でもそうだ。同ランク同士で互いにイーブンとなる。
だが。
一つ、彼女達が甘く見積もっていることがあるとすれば、五条達はなのは達の世界とは別の計測値であるということ。それは先の宿儺戦で身を持って知ったはずだ。
何より、だ。
五条悟は『特級』。その等級の意味は、実力の上限ではなく、『
その力量に、天井はない。
まして、今ここにいる特級術師は単なる特級ではない。
『現代最強の呪術師』と呼ばれる『五条悟』なのだ。
「そんじゃあまあ、ちゃちゃっと終わらせようか」
と、そんな五条の意図を読み取ったのか、伏黒と釘崎は各々武器を構えて、
「いつまで休んでるつもりだ虎杖」
「え?」
伏黒が指の関節を鳴らして振り返り、虎杖に声をかけると、
「アンタも戦うのよ、当たり前でしょ。ここまで私らだけじゃなく、こんな小さな子達にまで迷惑かけたんだ。このままじゃアンタも気分悪いでしょ」
「ッ!!」
虎杖は、口の端を歪めた。
それは理論や論理ではない、屁理屈や理性ですらない。もっと根本的な、本能とも呼べるものが叫びたがっている。
虎杖は、心の底から笑って、釘崎と伏黒の間に入り、両手を叩いて自ら一歩大きく踏み出す。
「応ッ!!」
虎杖らは並び、獰猛に笑っていた。
そんな彼らをなのは達は黙って見ているわけにはいかなかった。
「······私達も忘れないでよ、悠仁君!」
「!」
虎杖達の笑みにつられるように、高町なのはも小さく笑った。
「私達だって······まだ戦える」
なのはの横にフェイト・テスタロッサが並ぶ。
「私らの目的は同じ────戦おう、皆。闇の書の闇を、私達の手で!!」
最後に、カツンと足音を鳴らして。八神はやての後ろには、主を守護するための騎士達が武器を手に揃って並ぶ。
ポン、と。
虎杖の頭に力強い手が置かれ。
「いい友達に巡り会えたんだね、悠仁」
五条先生の言葉に、虎杖は強く頷く。
そのまま虎杖はただ険しく、その凄絶な光景を見つめていた。
八神はやてを蝕んでいた、『夜天の魔導書』を『闇の書』と言わせた『呪い』
その目映い輝きは、脈動するようかのように明滅しながら、どんどんその強さを増していく。やがてバチバチと音を立てて、辺りを侵食しながら魔力の余波を撒き散らしていく。
虎杖達は近くの岩場まで飛んでいく。
五条悟の術式によって、虎杖に釘崎と伏黒は空中を歩けた。
浮いた、という表現でも間違ってはいないが正確に言うなら違うと言える。五条の周りには『無限』というものがあって、近づくにつれて遅くなる。それと同じで、地面と五条の間には無限があり、落ちないというよりかは遅くなっているから最終的に浮いているように見える。
とは言っても、五条悟の近くにいなければ宙を歩けないため、運べる人数は限られる。
よって、五条は伏黒に言う。
「恵、確か鵺って一人くらいなら運べたよね?」
「はい、とは言っても長くは飛べませんが」
「じゃあ恵は空中戦は大丈夫だね。悠仁達は僕が運ぶから、それでいいよね?」
「押忍!!」
「オッケー」
準備は整った。
ならばあとは、いつも通り呪いを祓えば良いだけだ。
さあ────────
「終わらせよう」
闇の書の──────
「廻る呪いにッ!!」