呪術廻戦リリカルなのは   作:織姫ミグル

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第五章

 

 

がこん、という重たい金属音が響き渡った。

 

日本の警察とはまた違う、鉄格子の管理を行う刑務官達の言葉は威圧的だが熱がない。どこまでも冷たく、聞く耳の心臓を締め付ける叫びであった。監禁室の管理は紀元前から存在する古い職業だ。絵本の中には叫びや歌声を聞くと命を奪われるといった化物がちらほら出てくるが、それはこんな声から連想されたものかもしれない。

 

 

「ロック、1TDR98、チェック!」

 

「復唱。ロック、1TDR98、チェック!」

 

「復唱確認、次! 身元不明及び重要参考人である虎杖悠仁、施錠と拘束の確認に入る!!」

 

 

もはや彼に人権など存在しなかった。

 

囚人と呼ばれてもいい虎杖は黙って監禁室にどうやって入ってきたのかわからないが、急に姿を現した黒服の男達によって椅子から立たされ、その代わりに自分でも見たことがないほどの大きさの手錠をかけられてしまった。

 

黒服スーツのエージェントなんて都市伝説でしか聞いたことがなかったが、彼の存在をあまり公にしたくないということなのだろうか、それとも敢えて手錠をかけさせることで罪の軽い罪人をこれから護送するという演出を見せるためにやっているのか。

 

なんにしても、虎杖悠仁は暗い顔になった。

 

この冷遇さ、前いたところでも経験したことがあるため、その記憶を思い出して、思わず涙が出そうになる。

 

黒服のエージェント達に連れられ、監禁室からどういうわけか瞬間移動で部屋の外へと出された虎杖は、抵抗することなど許されるはずもなく、そもそも手錠が頑丈すぎて引きちぎることさえできなかったので、彼らの後についていくことにした。

 

 

「これから貴方が会うのは時空管理局顧問官、“ギル・グレアム”提督。下手なことを言うと貴方は即座に我々の管理する刑務所に放り込まれますから、決して無礼を働かないように」

 

「いや、そんな知らない人の名前出されてもこっちはピンと来ないんスけど」

 

 

意味深なことを呟きながら、エージェントは監禁室のドアを開ける。ドア自体は小さなものだったが、その先に広がる景色は半端なかった。そもそも室内の表現に『景色』と使っている時点で、どれだけスケールがぶっ飛んでいるか、SF映画をいくつも見ていた虎杖でさえ言葉を失うほどその片鱗が見えると思う。

 

時空管理局。と名のつくぐらいだから、ある程度は予想はしていたものの、ここまでSFチックな作りに『魔法』とは? と疑問に思うほどだった。魔法といったらやっぱりあの超有名小説家が書いた眼鏡をかけた魔法使いの少年の冒険の物語を描いた作品の風景を思い浮かぶが、ここにそれらしいものは何一つない。ちょっとした幅のある廊下、もはや何でできてるのかわからない未知なる合金で作られた廊下、あっちこっちにかけられた電灯も最新型でLEDライトの先を越える技術を使っているようにも見える。おまけに、なんか台車もない荷台を平然と運んでいる職員がいたので、今自分がいるところは尋常ではない。

 

 

「来たか」

 

 

と、そんな景色とかSF映画の舞台に圧倒されている虎杖の耳に、少年の声が届いてきた。日本語だ。やって来たのは小学生くらいの少年と、同年代くらいの二人の少女。少年はこの施設に合わせた正装でいるみたいだが、他の少女達は私服だった。

 

その少年を見るなり、エージェントが口を開いた。

 

 

「クロノ・ハラオウン執務官、お疲れ様です」

 

「ここまで彼を連れてきてくださりありがとうございます。あとはこちらで引き継ぎますので、どうぞお任せください」

 

 

クロノ・ハラオウンと呼ばれた黒髪の少年は何歳も離れているにも関わらず、それから視線を虎杖の方に移した。

 

 

「直接会うのは初めてだな。僕はクロノ。クロノ・ハラオウンだ。長い名前だからクロノでいい」

 

「あっそう? じゃあクロノ、お前一体何者なの? あんな歳上の人相手に腰を折らせるなんて、相当に偉い人なんじゃね?」

 

「それを聞きたいのはこちらの方なんだがな······時空管理局の執務官を任されている魔導師だ」

 

「もうここに来てから魔導師、魔導師って。そもそも魔導師が一体どんな奴なのかよくわかってねぇんだけど」

 

「こちらからすればむしろ君の方がおかしいと言えるんだがな。魔力もなしにあれほどのスピードを出したり、コンクリートで出来たビルを素手で粉砕したり、人間の常識を遥かに越えている」

 

「ま、自覚してる」

 

「とりあえずついてきてくれ、話はそれからだ」

 

「え? 手錠はめられたまま!? 俺行く先々で不審者に思われる可能性大なんだけど!?」

 

「心配するな、既に不審者だ」

 

 

ガーンッ、と落ち込むのも束の間、虎杖は俯きながら一言も発さずクロノと少女二人のあとをついていった。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「スゲー内装だな、本当にここ現実?」

 

「本当なら君のような人物が彷徨いて良い訳ではないんだが」

 

 

時空管理局本局内部のデカイ廊下を歩きながら、ふと虎杖はこう思った。

 

 

「っつか、そもそもなんで俺は釈放されたの?」

 

「釈放じゃない、あくまで仮釈放だ。目的地にたどり着くまでは変な行動は取らないでくれよ?」

 

 

虎杖の質問を聞いたクロノは前を向きながら口を開く。

 

 

「今から行うのは面談みたいなものだ。保護観察監、民間協力者、それらの許可をもらいに行くための、ね。管理局のトップ────つまりこの本局内で一番偉い人に会うわけだが」

 

 

そこまで言うと、クロノは横目でチラリと虎杖の衣服を確認して。

 

 

「······なので、出来れば正装してもらいたかったのだが、まあ君は並行世界からやって来た漂流者、そういう事情があるから仕方あるまい。だがまあ、その制服の上に赤いパーカーはどうかと思うがな」

 

 

控え目の指摘を受けて、虎杖のこめかみから痛い音が響く。さっきから年下相手に好き勝手言われまくって、流石の虎杖も冷静さを失いそうであった。

 

そもそも、この制服は自分の担任が勝手にカスタムした代物だ。自分の趣味ではない。

 

虎杖はクロノの発言に少し怒りつつ、年下相手に怒るのは年上のプライドが許さないので即座に我慢した。

 

 

「で、面談って? 俺は何話せばいいの?」

 

「君のことは後回しだ、まずはそこにいる二人に話がある」

 

 

そう言われて虎杖の後ろにいた茶髪のツインテールの少女と金髪のツインテールの少女にクロノは指差す。虎杖が会釈だけすると、どういうわけか金髪の子が茶髪の子の後ろに隠れてしまう。怖がらせた覚えはないんだが、その行動にちょっと傷ついた虎杖はポーカーフェイスでなんとかやり過ごした。

 

クロノは一つの扉の前で足を止める。

 

この施設内の中でも、一際デザインが豪華に施されている自動ドアだ。

 

 

「この先に君達に会わせたい人がいる。くれぐれも失礼のないようにな」

 

 

言いながらクロノは足を一歩踏み出し、自動ドアのセンサーに反応させる。

 

この先が面接会場、この管理局の一番偉い方が待つ部屋なのか。そう考えると虎杖の背筋にも自然と緊張が走る。異世界からの漂流者、という扱いなのだから、特に発言を求められることはないだろうが、これから始まるのは、自分のいた呪術高専の命運を握る面談となるだろう。

 

ごくり、と虎杖は息を呑む。

 

自動ドアがセンサーに反応して横に引っ込んでいく。

 

やや緊張気味の虎杖は、場慣れしているクロノに続いて自動ドアをくぐって中へ入る。SFRPGなんかに出てくるような、階段状の壇上にデカい玉座があるわけではない。最低限の話し合いが出来る程度の設備しか備えられていない部屋の中に、白髪で白髭を生やした中年の男性が窓の外を眺めていた。

 

 

「失礼します」

 

「クロノ、久しぶりだな」

 

 

そう言って振り返る男性。彼こそがこの管理局内でも一番の実力の持ち主なのだろう。確か、ギル・グレアムと呼ばれていた。年齢は五◯前後。流石に肌や髪など表面的な所は老いの影が見え始めているが、もっと根本的な部分·······芯や骨格といった所が一◯代の虎杖を凌駕しているように見える。

 

身に纏っているのは、青い軍服だ。

 

他の職員とは違って、肩章らしきものがつけられていることからして、かなりの権力の持ち主だと思われる。

 

 

「ご無沙汰しています」

 

「うむ、まあ席につきたまえ。紅茶を出そう」

 

 

虎杖だけでなく、二人の少女までちょっと緊張気味になっているのもお構いなしに、ギル・グレアムは紅茶を入れて、自分を含めた四人に配る。虎杖の分だけないのを見ると、彼はいないもの扱いされているのだろうか。

 

それとも、メインイベントは最後に起こすものという前兆か。

 

 

「それでは、面談を始めるか。このまま時間を浪費しては、何のために時間を取ってまで君たちに会いに来たのかわからなくなる」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

ギル・グレアムを始めとして虎杖達が集まったのは無機質な部屋。応接用として使っているのだとしたらかなりの簡素なスペースだった。

 

各々がソファに座り、適当にくつろいでいるの様子を見て、虎杖も座ろうとするが、

 

 

「すまないが、君は現在ここに座る権利はない。そのまま立っていてくれ」

 

 

と、クロノに言われ、ビキッ! とこめかみから割れたような音を響かせるも、確かに手錠をかけられた状態の人間がソファーに腰かけるのはおかしい。

 

虎杖は軽く面々の顔を見る。

 

管理局のお偉いさんに、まだ小学三年生くらいの少女二人が向かい合っている。今思えば異様な空気。そんなところにいる自分もおかしいと思うが、発言権はないので大人しく見守るしかない。

 

だが、これだけは言いたい·······ここは本当に二一世紀の現代社会なのか、と疑いたくなる雰囲気だった。

 

 

(······ホント、何で俺はこんな場違いな場所にいるんだ?)

 

 

居心地の悪くなった虎杖は窓の外の景色を眺めるために歩いていく。その間にも、会話は続けられている。

 

 

「保護観察監と言っても、まあ形だけだよ。リンディ提督から、先の事件や君の人柄についても聞かされたしね。とても優しい子だと」

 

「·······ありがとう、ございます」

 

 

金髪の少女、フェイトは照れくさそうに答えると、ギル・グレアムは手元にある端末を操作して、ある項目を眼にした瞬間に目が険しくなる。

 

 

「なのは君は、日本人なんだな。懐かしいなぁ、日本の風景は」

 

「え?」

 

「私も君と同じ世界の出身だよ、イギリス人だ」

 

「えぇ!? そうなんですか!?」

 

「あの世界の人間のほとんどは、魔力を持たないが、稀にいるんだよ。君や私のように高い魔力資質を持つものが」

 

 

彼は過去を懐かしむように、優しい笑みを見せて思いで話を語り出す。

 

 

「ははッ、魔法との出会い方まで、私とそっくりだ。私の場合は、助けたのは管理局の局員だったんだがね·······もう五◯年以上も前の話だよ」

 

「ほぇ~」

 

 

自分と同じ世界の出身者であることに驚いたなのはは開いた口が塞がらず、しばらく驚いていたが、ギル・グレアムは端末をテーブルに置くと、フェイトに対して話しかけた。

 

 

「フェイト君、君はなのは君の友達なんだね」

 

「······はい!」

 

「約束して欲しいことは一つだけだ。友達や、自分を信頼してくれる人のことは、決して裏切ってはいけない。それが出来るなら、私は君の行動について、何も制限しないことを約束するよ·····出来るかね?」

 

「·······」

 

 

フェイトはしばらく黙ったが、やがて真剣な眼差しでギル・グレアムの視線から外れないように固定すると、真っ直ぐに素直な思いを告げた。

 

 

「はい······必ず」

 

「うむ、良い返事だ」

 

 

それを聞いて安心したギル・グレアムはこれで面談は終了だ、と言ったがすぐさま外の景色を眺めている虎杖の方を振り向き、声をかける。

 

 

「虎杖悠仁君、だったかな? 君をここに呼び出したのには理由がある」

 

「? ナニ?」

 

「うむ、順を追って説明するか。問題の発端は今から数週間前に起きた。時空管理局局員の襲撃事件だ」

 

 

ギル・グレアムは手錠をかけられている少年にもわかりやすいように説明する。

 

 

「ここ最近、我々魔導師を狙った襲撃事件が多発していてね。その被害者のほとんどは、魔力の源、『リンカーコア』を奪われていた」

 

「·······???」

 

「『リンカーコア』とは魔導師にとって命と同等の価値があるのだ。そしてリンカーコアには我々の使用する魔法が情報として存在している。それを奪うということは、相手はその相手の魔法の特質を使えるということになる」

 

 

ギル・グレアムに見据えられるも、虎杖はキョトンとした顔になる。ギル・グレアムは自分の胸に親指で軽く叩きながら、

 

 

「証拠は充分ではないが、第一級捜索指定ロストロギア『闇の書』。それが今回の事件に関わっていると見ている」

 

「······『闇の書』·······」

 

 

確かあの赤毛の女の子が言っていた単語だ。それがなんなのかわからないが、先ほどの監禁室でロストロギアの回収も目的としていると言っていたことから、今回その本を回収するというのが彼らの任務なのだろう。

 

 

「証拠が集まり次第、我々時空管理局は全勢力を持って回収に向かうつもりだが、現時点では証拠が不十分だ。動きたくても動けないのが現状だ。そこで、今回の任務をクロノ執務官達に捜索捜査担当に決定した。君には、彼らと一緒に闇の書の捜索に当たって貰いたい」

 

「いや、手助けするとは言ったけど、何で俺が?」

 

「君は言ってしまえば無戸籍無住所の不法滞在人だ。どこの世界にも籍を置かず、一人のうのうと出歩いている。そんな人間を野放しにしておくことは出来ない。よって、監視も含め君には彼らの手助けをして貰いたいと思っている」

 

 

眉を顰める虎杖。

重要な会議の場で発言しても大丈夫かな、とおっかなびっくり彼は言う。

 

 

「だとしても、俺は魔法なんて使えないぞ? そんな奴に手を貸せって言われても、出来ることは限られてるし、ほとんど何の役にもたたないんじゃね?」

 

 

ふむ、とギル・グレアムは虎杖の顔を見た。

 

 

「それに関しては、私自身も同意しかねる······だが、資料によれば君のリンカーコアは他の者達とは違って闇の書に吸収されなかった。それはつまり、闇の書にとっての天敵ということだ。それだけでも、君には現場に出て貰う価値がある」

 

 

それに、とギル・グレアムは息を吐いて、

 

 

「報告書によると、君には僅かに魔力の気配があると書かれている。クロノや彼女達よりも魔法は使えないだろうが、もしかしたら空を飛んだりすることくらいは出来るかもしれないぞ?」

 

「!? マジ!?」

 

「確証はないがな。とりあえず、面会時間も過ぎているから話はここまでだが、君にはクロノやリンディ達と共に魔法の訓練を受けて貰う。それによって、多少は役に立てると思う。何より君の身体能力は人間の域を越えている。魔法なしでも充分に戦えるだろう」

 

 

にっこりとした笑顔でギル・グレアムは答えるが、

 

 

「ただ────」

 

「?」

 

 

視線を下へと向けるギル・グレアム。

 

まるで何かを躊躇っているような、そんな感じであった。

 

 

「君が行く必要はないと、私は思っている。報告書にあった君の言う呪いの力は素晴らしいとは思うが、現段階で空も飛べず魔法も放てないのであればどうしても君は不利な状況になる。最悪死ぬかもしれない。ならば今回の件は私達時空管理局に任せて、君はどこか安全な所で待機しておいた方が良いのではないかな?」

 

「··············」

 

 

心配してくれているのだろうか。

 

確かに、現状魔法が使えない虎杖は空を飛んでの戦いはできない。足の踏み場がなければ虎杖のポテンシャルは大幅に下がる。

 

だからそれが心配になっているのだろう。

 

ギル・グレアムの顔を見ると、あまり戦ってほしくなさそうな目をしている。

 

そんな彼であったが、虎杖は強い眼差しを向けて答える。

 

 

「いい! やるったらやる!!」

 

「しかし────」

 

「俺よりも小さいこいつらが死にそうな現場で一生懸命働いてて、俺だけ何もせず安全な所でただ隠れてるなんて納得いかん!!」

 

 

ふん! と鼻を鳴らす虎杖は、そのすぐ後にこう言った。

 

 

「それに俺には面倒くせぇ呪い(遺言)がかかってんだわ。だから何言われても、俺は最後までやり遂げる」

 

「··············」

 

 

真っ直ぐ見つめられて、ギル・グレアムは黙った。

 

そんな力強い目で見られたら、もう何も言い返せない。

 

彼は諦めたようにフッと笑って、

 

 

「わかった·········君には期待している」

 

「!!」

 

「外部に洩らすわけにはいかないためここでしか言えないが、どうか、クロノ達を頼むよ」

 

 

それを聞いた虎杖は敬礼する。敬礼して、いつもの調子で返した。

 

 

「オッス! 頑張っていきます!!」

 

 

そこで衝撃が走った。

 

スパン! と、後頭部に破裂したような音が響き渡ったのだ。原因はクロノであった。彼の手にはいつの間にかハリセンが握られており、それを使って虎杖の頭を叩きつけたのだ。

 

 

「何すんだよ!?」

 

「口を慎め虎杖悠仁。この人は仮にも時空管理局のトップに立つ存在の一人だ。歴戦の勇士、一番出世してた時で、艦隊指揮官、後に執務艦長にまでなられたお方だ」

 

「は、はあ········?」

 

「それにこの人は僕の指導教官だった方だ。無礼な態度は許されないぞ。たとえ、知らなかったとしても」

 

「ヘイヘイ」

 

 

虎杖はつまらなそうに息を吐く。そんなやり取りを見ていたギル・グレアムは構わないと言うかのように手を前に出してクロノの行動を制止させる。

 

 

「虎杖君」

 

「!」

 

「できることなら君には安全な場所で過ごしていて貰いたかったが、状況が状況だ。異世界からの漂流者であるため混乱しているかもしれないが·········どうか、手を貸してやって欲しい」

 

 

ギル・グレアムが腰を曲げてお辞儀をすると、クロノはその姿勢に思わず驚愕する。管理局のトップが頭を下げるなんて前代未聞だったからだ。

 

虎杖はそんな彼に微笑みかけ、手錠をされていても腕を曲げてガッツポーズ取り、大きな声で告げた。

 

 

「なんかわかんねぇけど、世の平和のために、謹んで協力させていただきます!」

 

 

と、虎杖もギル・グレアムに見倣うように頭を下げた。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

集められたのは自販機が置かれている休憩場所だった。そこで虎杖は手錠をかけられたまま、リンディ提督と呼ばれた緑髪の女性の話を聞いていた。

 

 

「さて、私達アースラスタッフは今回、ロストロギア『闇の書』の捜索、及び魔導師襲撃事件の捜査の担当をすることになりました。ただ、肝心のアースラがしばらく使えない都合上、事件発生時の近隣に、臨時作戦本部を置くことになります。分割は、観測スタッフのアレックスとランディ」

 

「「はい!!」」

 

「ギャレットをリーダーとした、捜査スタッフ一同」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「司令部は、私とクロノ執務官、エイミィ執務官補佐、フェイトさん、そして─────」

 

 

リンディは自販機に寄りかかっている虎杖に目を向け、その視線につられるように全員のスタッフが彼に注目する。

 

リンディは言った。

 

 

「保護観察も含めて、虎杖悠仁君にも一緒に住んで貰います。以上三組に分かれて駐屯します」

 

 

虎杖に拒否権はなかった。

 

手錠を外される条件、それは彼女達の目の届く範囲で行動するということ。別に気にしてはいないのだが、始めて会った奴相手に信用できるかどうか不安である。

 

リンディは問題なく続ける。

 

 

「ちなみに司令部は、なのはさんの保護を兼ねて、なのはさんのお家のすぐ近所になりまぁ~す!」

 

「「!!」」

 

 

それを聞いた途端、なのはとフェイトは顔を会わせて、次第に笑顔となり、心に封じ込めていた歓喜の心を声に洩らしていた。

 

 

「うわぁ~!!」

 

「·······」

 

 

その様子を虎杖は黙ってみていたが、彼は手錠をかけられたままリンディに質問を投げかける。

 

 

「えっと、あのさ?」

 

「うん? どうしたの虎杖君?」 

 

「なんとなくやることはわかったけどさ、約束忘れてないよな? 特級呪物の回収が俺の任務だ。例えそれがこの世界の物質だろうと、俺達の世界にあったものだ。手伝う代わりに、あれ返して貰わなきゃ協力できねぇわ」

 

 

虎杖の目的はあくまでも特級呪物の回収。それを取引に今回協力するということになっているはずだ。しかしリンディは、元からその気がないように顎に手を当てて考えると、やがてこう言い出した。

 

 

「ごめんなさいね、あれは私達にとっても重要な証拠品なの。確かに貴方の世界の代物かもしれないけど、今は返すわけにはいかないわ」

 

「え!? ちょっ!? 話が違っ────」

 

「と言っても、今回の任務が片付いたら返してあげなくもない」

 

「へ?」

 

「貴方はまだ時空管理局に信用されていない。だけど、貴方の功績度によっては、この人にならロストロギアを預けても大丈夫と上が判断してくれて返してくれるはずよ。だから、私達の味方であるということを証明するために力を貸してください。それが、貴方に残されている最善の選択よ」

 

「·······」

 

 

思わずムッとする虎杖。

 

しかしそう言う条件で監禁部屋から出れたわけだし、仕方ないと思った虎杖は黙って頷くと、リンディは微笑んでよろしい! と言って手をパンパンと叩き、皆に聞こえる声でこう言った。

 

 

「さあ、忙しくなるわよみんな!! ビシバシ働いて、事件解決目指して頑張りましょぉぉぉおおうッ!!」

 

 

手を上げたのは虎杖以外。

 

それにしても気になることがある。

 

自分はいつ、手錠を外して貰えるのだろうか?

 

 

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