どんな女がタイプだ?   作:ブラザー

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忙しかったのもありますけど言い訳せず言います!!
龍が如く0やってました!!!!
極やってからプレイしたせいで真島の兄さん……? 真島の兄さん……!? ってなっててヤバいやつという認識しか無かったのにかっこいいという認識しか出来なくなってしまった……これが恋……?

それはそうと文字数ってどのくらいがいいんでしょうね、だいたい1万文字近くにしてますが……長いと読みづらいよね。少なくとも私は1話が長すぎると読む気力なくなります。中・高の時は読めたんですけどね。





戦闘訓練 参

 

 

 

 

 

「――好きな女の好み(タイプ)はなんだ?」

「作戦を決めるのでは!?」

 

オールマイトの指示で核が設置されている部屋に辿り着いた俺は、両腕を組みながら開口一番にそう問いかけた。

何を言っているんだ、こいつは……?

 

「何を言っているんだ、お前は……?」

「まんま表情と同じことを告げなくても……そう聞きたいのは僕の方なのだが! 出会ってまだ三日目の相手に聞くことではない! そういう話題はもっと親密になって友達になってからではないだろうか!」

「ふむ……俺は雄英1年B組東堂葵だ」

「あっ、同じくB組の庄田二連撃です……ではなくて」

「これでお友達だな。早く答えろ、男でもいいぞ」

「えぇ……君、思ってたより自由だな……」

 

喋り始めたら知り合い。

自己紹介すればお友達。

あとは本人次第だ。友達の定義がないのであるならば、そうだろう。

少なくとも俺は記憶(東堂葵)A組(葉隠)からそう学んだ。

彼女もまた入試で一緒になっただけの俺を友達という判定にしたのだからな。

 

「ちなみに俺は身長(タッパ)が低めの(ケツ)が大きい女が好み(タイプ)だ」

「誰も聞いていない……っ!!」

「面倒だな、いいから答えろ。俺は退屈な男と協力などしたくない」

「……ぬう。確かに僕が知らないだけなのだろう。東堂にとってのコミュニケーションであるなら、否定から入るのは良くないことだ……僕も腹を括ろうと思う」

「そうだ、それでいい。さあ、答えろ!!」

 

深呼吸をして、死地に向かうような覚悟を決めたような目をしている。

いい目だ。期待出来るなと密かに思い、俺は耳を傾けた。

 

「僕の好みは……年上で黒髪で清楚な感じがしつつもドジな部分がある人、だろうか」

「庄田……お前……」

 

しゃがんで肩を掴むと、少しずつ俺の力は強くなっていく。

今の俺は庄田からしたら影で目が見えないだろう。*1

冷や汗を搔く庄田に、俺は――

 

「良いな」

「……へ?」

 

思わず微笑を浮かべた。

何故か頬が引き攣って素っ頓狂な声を上げているが、肩から手を離して立ち上がった俺は見下ろしながら答える。

 

「ちゃんと答えられるやつは好きだ。案ずるな、お前は強くなれる!!」

「そ……それとこれとでは全く別だと主張する!」

「さぁ、作戦を考えるとしよう。考える必要はないがな」

「ダメだ、ついていけない……」

 

何処か不満そうな庄田は無視した。

残り時間は3分。いつまでも話してるわけにはいかん。

しかし拳藤たちが取る行動など考えるまでもなく予測出来る。

 

「こ、こほん。とにかく相手は拳藤と鉄哲だ。搦手はないと思うけど……でも拳藤は頭が冴えてそうだ」

「ああ。向こうの作戦までは完全に読むのは難しい。だが狙いは分かる」

「狙い?」

「拳藤は俺の力を見ている。俺が位置を変えられることを知っているからな。だというのに核を狙ったらどうなる?」

「なるほど……人だけでなく、物体、この場合核と位置を入れ替えることが出来るから核を狙う確率は低くなる……なぜなら攻撃を受ける危険性があるからか」

「そうだ。そして拳藤は俺の戦闘力を知ってることから戦闘不能にするのは無理だと判断するだろう。相方が鉄哲である以上、作戦もさほど機能せん。狙いはお前だ、庄田」

「僕を早々に撃破して、二人がかりで東堂を狙う……もしくは一人が足止めをして核を一人が狙う。確かに合理的でもある。だけど東堂だけを狙う可能性もあるのでは?」

「ない」

 

はっきり言って、拳藤と鉄哲が組んだところで俺に勝つことは出来ない。慢心ではなく、事実だ。

鉄哲の強度は所詮鋼鉄。パンチで潰せる。拳藤も個性を使用すれば威力は上がるが、上から潰せるからだ。

 

「理由はひとつだ。お前の個性はなんだ?」

「僕は……“ツインインパクト”。打撃を与えた箇所に任意のタイミングでもう一度打撃を発生させ、二度目は数倍の威力を発揮出来る。物に向かってやれば遠距離も可能……ってことは」

「そうだ、遠距離攻撃持ちなど潰すに限る」

 

俺を放置して遠距離攻撃してくる可能性のある庄田を無視するのはナンセンスと言える。

それこそ俺に二人でかかって最速で倒せる自信があるならば話は変わってくるが。

拳藤が取る手段は庄田を撃破し、核を確保。もしくは核だけを狙う戦法。だが後者はあまりに確率が低い上に俺の攻撃が来る危険性から可能性が高いのは前者。

俺の手だけ封じればいいため、時間稼ぎ程度ならやれると踏んでいることだろう。

 

「そして庄田、お前では二人には勝てん」

「……!」

 

庄田の動きは悪くない。

見た目はふっくらしているが、動きそのものは悪くないからだ。

しかし相手は近距離に優れた二人。普通に個性を使用しても相性が悪い。

俺の予想が正しければ、鉄哲を庄田に嗾けるだろう。だからこそ、知恵をやらねば戦闘不能になって終わりだ。直接戦闘ではツインインパクトを発動前に押し切られる。

無論、そうなった場合は俺がなんとでもするが。こんなところで負けては小森に合わせる顔がない。

 

「無論、()()()()ではな。俺が今からお前に“技”を伝授しよう。お前の個性ならば俺が知る技を再現することが出来るはずだ」

「技……?」

「それならば鉄哲の防御を貫けるだろう。使い分けが必要な技だが、虚を突くにはいい技だ。今回で完全に身につけろとは言わん。怯ませる程度でも発揮出来れば御の字だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

いよいよ時間が迫ってきた。

正直言って、私たちの勝率は低い。だからといって簡単に負けてやれないよね。

鉄哲と私じゃ作戦を組み立てようにも限度がある。遠距離攻撃を持ってたら別だけど、お互いにない。

当然そうなると、シンプルなものになる。

飛行も出来ないしね。

 

「鉄哲、とにかく作戦はさっき話した通りに」

「俺が庄田を捕まえるか戦闘不能にするってことだな! わーってる!」

 

だからこそ、2対1の状況を作り出さないといけない。

私よりも適任なのは鉄哲だ。

何より鉄哲は入試時の東堂を見てない。

それならまだ動きを見てる私の方がマシだと思う。

別に戦わずに核を狙うべきという考えもあると思うけど、それは危険すぎる。東堂の位置を入れ替える力。

核を狙っても入れ替えに対処出来ずにやられる可能性の方が高い。かと言って東堂を相手に二人がかりで挑んだとしても庄田に無防備を晒した途端、一気に押し負けるのは目に見えて分かる。

少なくとも確保テープで庄田を捕まえたらいいから私がどれだけ東堂を相手に時間を稼げるか、なんだけど。

 

「問題は読まれてそうなことなんだよなぁ……」

 

思わずため息が出る。

あの見た目で頭も回るとか、改めて意味が分からない。

講評でも思ったけど、判断能力や戦況を見極める力、戦闘力。どれも私らを遥かに凌駕している。オールマイト先生が言ってたように。

だからといって、諦めたくない。

今は敵わない相手かもしれない。

敵わなくたって、逃げるより挑んで、その経験を糧にした方が私たちはより成長出来る。

それに……何の策もないわけじゃない。

一度っきりだけど、私と鉄哲が取れる策がある。東堂の虚を突く作戦。ただしこれも、結局は庄田が居れば叶わないもの。

2対1で初めて成立する作戦だ。

だけど私のパワーと鉄哲の耐久力ならきっと何とかなる。

 

『それでは! 屋内戦闘訓練、開始(スタート)!』

 

始まった瞬間、侵入した私たちはクリアリングしながら進んでいく。

東堂が突っ込んでくる可能性もないとは言いきれない。

ただ東堂の場合、個性で確実に負けないようにするには核部屋に居座っているとは思う。

それでも訓練だし、警戒は怠らない。

1階。異常なし。

2階。異常なし。

3階。異常なし。

4階。異常なし。

5分経過した今、特に何か罠とかある様子もなく、5階のひとつの部屋の前に来た私と鉄哲は音を立てないようにほんの僅かに隙間を開け、部屋を確認した。

核が僅かに見える。

ここまで接敵がなかったことから間違いなく二人とも居るだろう。

顔を見合せて頷く。

 

「鉄哲、頼むよ」

「任せろ!」

 

鉄哲が肉体を鋼鉄にし、扉を殴り飛ばしていた。

同時に侵入すると、中央には目を閉じて腕を組んだ状態で待機している東堂とこちらを警戒している庄田が居た。

 

「行くぜ庄田ァ!!」

「やはり僕か!」

(やっぱり読まれてたッ!)

 

突っ込む鉄哲に合わせて私は未だに構えすらしない東堂に向かっていく。

攻撃で意識を逸らした隙に確保テープで捕まえる!

戦闘不能になんてまず出来ない!

 

駆け出し、跳躍した私は落下速度を加えて蹴りを繰り出す。

動かない。

目を開けない。

腕を組んだまま。

私の蹴りが――

 

「っ……!」

 

片手でキャッチされていた。

ようやく開いた東堂と視線が合う。

引き抜こうとするけど、全く動きもしない。

ここまで力が強いとは……!

 

「俺を知るお前が俺を狙う。そして鉄哲が庄田を撃破前提、か。当然そうするだろう。俺もそうする。だが、拳藤一人で俺を止められるか?」

「そうするしかないからね!!」

「ならばやってみせるといい。今の俺はヴィランだ。女だろうと容赦はせん」

 

体が一気に持っていかれ、急速に地面と距離が近くなる。

咄嗟に手を大きくして地面に向けると、あまりの勢いに手をついた地面にヒビが入った。残っている片手で薙ぐように振るうと、足が解放される。

 

「いいパワーだな」

 

そうは言ってるけど、全然距離が離れていない。ほんの数cm離れたかなというくらいの、気持ち程度。

自らバックステップしながら鉄哲に目を向けると、拳を叩きつけているところだった。

しかし避けられている。

あっちも時間が掛かりそうだな。逃げに徹しての反撃、直接戦闘では鉄哲に分があることを悟られてる。

 

「どうした? 来ないのであればこっちから行くぞ」

 

屋内というのもあって力を加減してるのか、私でも目で追える。

かなりの速度で迫ってくる東堂に対して大きくした両手を前に突き出して防御を展開すると、跳ぶのが見えた。

天井ギリギリまで跳躍していて、天井を利用して落下してくる。

 

「同じ攻撃!」

 

私がやった攻撃と同じような足蹴りを放ってくる東堂に私は全力で後ろへ跳んだ。

回避に成功するけど、衝撃で体が持っていかれる。

何とか地面に手を突いて堪える。

 

解放(ファイア)!」

「うぉおお!?」

「鉄哲!」

 

鉄哲が私が立っている場所まで吹き飛ばされたように着地した。

体を固めていたからか、問題はなさそうだ。

吹き飛ばされた先を追うと拳を振り切っている庄田の姿があって、近くに寄った東堂が首を横に振っていた。

 

「それでは遅すぎる。格上相手ならば今ので反撃を貰っていた。もっと発動を早くしろ」

「結構早くやったつもりなんだけどな……」

「戦場では数秒もあれば命のひとつやふたつは散るぞ」

 

どうやら東堂は指導しているらしい。

というか戦場って。

お前学生だろ。

 

「鉄哲、どうだ?」

「庄田の動きが悪くねェ。避けられてばっかだ!」

「そりゃね。頭使って攻めたらいいと思う。避ける先を考えるんだ」

「っし、分かったぜ!」

 

自信満々に拳を合わせていたが、本当に分かってるのか。

とにかく庄田を捕縛するか戦闘不能にしなくちゃ話にならない。

視線を彷徨わせ、テーブルを巨大化した手で掴むと投げ飛ばす。

左右に分かれて避けたところで、私は東堂に向かってドラム缶を転がした。そのタイミングで一気に駆け出す。

 

「頭を使う!!」

「頭突き!?」

「そういう意味じゃねーから!!」

 

魚雷のように真っ直ぐに飛んで行った鉄哲に思わずギョッとすると案の定避けられていた。

すぐに音が響き、ドラム缶があっさりと蹴り返されたことに気づいて跳んで回避する。

柱を掴んで回転し、接近してくる東堂に蹴りを入れる。

けど、背中を曲げて避けられた。

どんな反射神経してんだ、こいつ。

とにかく距離を離す!

 

攻撃を避けられたと理解する頃には、二度目の回転で勢いを活かして空中に逃げ、離れる。

 

「ふむ……やはりお前は良いな、拳藤」

「急に口説かれても困るんだけどな」

「口説く……? 確かにお前は容姿も優れているしスタイルもいい方だろう。肌も綺麗な上、お前自身の明朗な性格も魅力的に映るだろう」

「いやごめん忘れて」

 

東堂に褒められるのは悪い気はしないけど、まさか本当にそっち方面で褒められるとは思わなかった。

普通に恥ずい。

 

「というか、急にそんなこと言って私を動揺させようと思ってるってこと?」

 

ないとは言いきれないだろう。

そもそもこいつは何処か私を試してる節がある。

東堂の機動力なら私に追いついて攻撃をすることが出来たはず。

 

「いや純粋に思ったことを告げたまでだ。その歳で自分の力量をしっかりと客観視し、なおかつ戦いながら鉄哲に意識を割いても問題なく動け、柔軟な思考や空間把握能力。咄嗟の判断力もいい。お前自身も戦いのセンスがある。場数を踏んでない割にいい動きばかりだ。だがやはり、経験が足りないな」

「アンタ幾つだよ」

 

同年代なのに全く同年代に見えない。

というか、なんで私が鉄哲の動きを見てるのも察してるんだ。

流石にそこは私も予想してなかったんだけど。東堂って実は年齢詐欺だったりしない?

 

「肉体もしっかりと鍛えられている。手を使う個性だというのに、よくもまあ細い足であれほどの一撃が出せるものだ。しっかりとケアもしているのだろう。ゴツゴツとした筋肉ではなく、女らしさのある柔らかさも残してある。男としては色々と視線に困るところではあるが、元々ボディラインが強調されるチャイナ服というのもあって仕方ないことなのだろう。正直似合ってると言う以外の言葉が思いつかん」

「っ! なんでそこ口にしたっ!?」

 

流石に詳しく指摘されると、私も恥ずかしくなってさっきより顔に熱が集まる。

確かにチャイナ服だから深めのスリットの影響で足が見えるわけだけど、動きやすさ重視にするなら仕方がないというか。足技も使う以上はこの方が便利というか。

だけど同時に、こいつにとってはそんな風に考えられる()()があるということだ。

私の動きを完全に目で追いながらも、分析する余裕がある。

 

「脚力というのは大事な武器だ。地面を蹴る力によって加速を生む速度は変わる。オールマイトだって超パワーによる加速で途方もない速度を引き出しているだろう。そしてお前の個性を生かすなら、もっと足の力を利用しろ。上半身の力に頼りすぎだ。それだけでは所詮質量で叩きつけてくるようなロボとそう変わらん。体重移動と身体全体の連動が何よりも大事だろう」

「踏み込みってわけね……」

 

何故か私にまで指導が入ってるけど、言ってることは分かる。

武道においても精神はもちろんのこと、踏み込みという動作は大きな影響を与える。

地面を強く踏みつけることで、その反動として地面から“床反力”が返ってくる。この力を利用して足から、腰、体幹、上半身、そして拳に連鎖することで大きなパワーを生み出す。

そもそも運動エネルギーにおける物理の公式からも分かる通り、エネルギー=1/2 ×質量×速度の2乗ということから体重というのがどれだけ大切なのか分かりやすい。だから武においては体重移動が重視される。

問題は私の場合、拳を大きくするわけでどうしても体が持っていかれるということ。

 

「いっそのこと攻撃の瞬間に大きくすればいい。そのまま質量で叩きつけるのも十分な攻撃に繋がる。改善点こそあるが、今はそれでいい」

「……さらっと心の中読むのやめてくんない?」

「読めるわけないだろう。お前が悩んでそうなことを予想しただけだ」

「全く……けどいいの? そんな塩を送るような真似しちゃってさ」

「なに。小森を受け入れてくれたことに対するサービスだ、気にするな」

 

そういう東堂はどこか達観したような表情だった。

幼馴染というのもあって、希乃子のことを大切に思ってるんだと思う。でもあの様子からして、希乃子は個性のことで何かと言われてきたんだと思う。

どんなことを言われてきたのか予想はつくけど……東堂って体が大きいのもあってどっちかというと怖いって感情の方が先に来やすいのに、話してみると優しいのが分かるんだよな。

 

それより。

視線の端では庄田を壁際に追い詰めている鉄哲が見える。

私の背後に核があるため、狙える位置。

しかし核を狙ったところで意味を成さないことはよくわかってる。東堂は核すら囮にしてるのだろう。

狙ったら負けるのは私。

なら!

 

背後ではなく、鉄哲の方に私は駆ける。

そんな私に一瞬で肉薄してきた東堂に向かって両腕を大きくして扇子のように風圧を起こす。

僅かな隙に全開まで伸ばした確保テープを上空に投げた。

視線誘導。

広げた両手で左右から挟むように包み込む。

途中で両手が全く動かなくなり、東堂が両腕を左右に立てて受け止めてるのが見えた。

 

「鉄哲!」

「ドラァアアア!!」

 

両腕が塞がってる状態の東堂に向かって、方向転換した鉄哲が跳びながら襲いかかる。

いくら東堂のパワーでも挟んでしまえば入れ替えするのは不可能。それに本人のフィジカルがいくら高くても簡単に拘束を外すことは出来ないはず!

 

「視界を限定しつつ個性を封じるためにも両腕を塞いで鉄哲が攻撃。悪くはない。だが良くもないな。ひとつ教えておこう。俺の個性は“位置を入れ替える力”という先入観があるようだが、もうひとつ隠された力がある。それは――」

 

本気で潰す気で力を入れてるというのに、私の両腕がだんだんと開かれていき、弾かれる。

思わぬ威力に体が後ろへ持っていかれ、尻もちを突いた。

 

「身体能力を強化することが出来るということだ」

 

そして。

首だけを動かして拳を避けた東堂の拳が鉄哲の腹部に突き刺さり、銅鉄で固めている鉄哲が個性が解けるレベルの一撃で吹き飛ばされていた。

 

「巨大ロボを破壊した時もこの力を使っている。無論、俺自身のフィジカルも含まれているがな」

「……マジか」

 

とんでもない力を持ってるのは知ってたけど、個性で強化してたなんて聞いてないぞ。

不義遊戯。

意味的にはウソを信じさせて騙す、遊ぶって意味だと思うけど、全然違う。

確かに入れ替えるだけなら個性の名前なんてもっと分かりやすい名前になるはず。それだけじゃない、一言じゃ説明出来ない力だからこんな意味の分からない名前だったのか。

入れ替える力に身体能力の強化。

ある意味で二つの個性を持っているってこと……いやそういった特別な力があるってわけか!

 

「鉄哲!」

 

こうなった以上、一か八かに出るしかない。

立ち上がる鉄哲が頷いたため、手を大きくして鉄哲を持ち上げる。

 

「やれ、拳藤!!」

 

砲丸投げのように全力で鉄哲を投球した。

私の力が加わった上、本人がスティールで固めることで威力も上げてある。

それに対し、東堂は拳を構えるとしっかりと踏み込み、腰を捻ると肩を水平に前に出して息を吐くように体幹を締めながら肘から拳までを一直線に、拳を繰り出していた。

動きからも分かるくらい、見惚れるくらいに綺麗なストレートパンチだ。かかとの浮いた右足を外側に捻り、一緒に腰を回転させることで体重の乗った一撃を繰り出す、完全に力が籠った一撃。

固めた鉄哲の拳と拳がぶつかり合い、軽い衝撃波が巻き起こる。

だけど身体能力の強化をしてないことに私は気づいた。経験したから分かる。

これほど力の移動が出来る東堂が強化した状態で鉄哲とぶつかり合ったら鉄哲はあっさり押し負ける。

まるで()()()()()()()ような。

 

「今だ、庄田」

 

その私の予想は正しかったようで。

東堂の背後から出てきた庄田が懐へ潜り込んでおり、その拳を叩きつけていた。

庄田では東堂に比べて威力は低い。

鉄哲を倒すことは出来ないんじゃ……。

 

「効か――」

解放(インパクト)!」

「ガハァ!?」

 

だというのに、鉄哲が意識を失ったかのように後ろから倒れていた。

個性が解けてるからか東堂が腕を掴んで地面にゆっくり降ろしていたけど、何が起きたのか一瞬分からなかった。

 

「及第点にも及ばんな」

「……採点が厳しすぎる」

「……そういう事ね」

 

遅延した衝撃波ってこと、か。

人間、ずっと力み続けることなんて出来はしない。

一撃を耐えたという一瞬の緩みに、加えられる本命の一撃。

鉄哲なら後からされても不意の一撃に驚く程度で動けなくなることはない。でも今回は緩んだところを狙われた。

ツインインパクトは数倍の威力になるんだったか、その一撃はかなりのものだ。

ただでさえ東堂の攻撃で弱っていたのもあるだろうけど、警戒が解ける瞬間に発動するのは脅威だ。

この感じからして、東堂が提案して教えたんだと思う。自分一人の力でも勝てたはずだけど、授業だから庄田にも役目を与えた……ってところかな。

……改めて敵に回したくないな。

 

「残りは拳藤だけだが――どうする?」

「まぁ……降参するのが正解かもしんないけどね。だけどせっかくの訓練だから。ありったけをぶつける」

「そうか、ならば俺が受けてやろう」

 

鉄哲が戦闘不能になった以上、どうやっても勝ち目はないことは分かってる。

物を投げても通用しないし、確保テープは私の手元にはない。

だけど得られるものが無いわけじゃない。

確保テープで鉄哲を拘束して離れる庄田と、仁王立ちする東堂。

どうやら1対1にしてくれるらしい。

息を吸い込み、吐く。

全身の力を抜いて、私は一気に駆け出した。

加速しての手刀。

右腕で受けられ、反転して肘打ちすると受け流される。

流れるように右足を上げての蹴り。

左手で押さえられる。

体を回転させるように左足で回し蹴りをすると、それすら手で受け止められる。

 

「だったら!」

 

距離を離し、踏み込んで両手を大きくしながら叩きつける。

その際に体が手の質量に負けて足が浮くけど、両手を上空に向けた東堂によって受け止められていた。

衝撃によって東堂の足元の地面にヒビが入り。私は浮いたままそのまま前のめりになって全力で力を注ぐ。

ビクとも、しない。

 

「さっきより良い。だが、それまでだ」

 

私の体は持ち上げられ、弾かれると大きく体が浮遊感を覚えた。

反撃をしようとしたところで、拳を構えているのが見える。

――あっ。ダメだ、これ。

 

両腕を戻す時間がない。足も弾かれた際にかなり浮いてるせいで反撃が出来ない。

位置的に、腹部辺り。

足を上げて膝で防御、間に合わない。

回避。

不可能。

完全に負けを悟った私はこれから来るであろう痛みに、思わず目を閉じる。

 

「だがもう少し、不意を突いたり力の流れを把握すべきだったな」

 

けれど痛みは来ることなく。

耳に響いたのは一つの音だった。

 

パンッ!!

 

浮いていたはずなのに足が地面に着いてる。

その妙な感覚に目を開くと、 先程私が居た位置には確保テープが落ちてきていて、東堂が片手でキャッチしていたところだった。

それで私は確保テープと位置を入れ替えられたのだと理解して、その場に座り込む。

 

「……降参」

『ヴィランチーム、WIN!!』

 

私は大人しく降参を選択すると、すぐに無線機からオールマイト先生の声が聞こえた。

振り向いた東堂が私の元へ来る。

 

「怖がらせてすまんな」

「戦闘訓練だから当たり前でしょ……。ただその、ごめん、立てる気がしない」

 

東堂の一撃が来るって思ってたから、身構えはしてたけど怖かったかと言われたら怖かった。

というか多分、腰抜けた。

いやだって、鉄哲が固めても貫通する一撃だろ。

さすがに怖いって。私でも普通に力負けしてたし。

むしろ無防備な状態で攻撃が来るってわかってて平気なやつがいたらびっくりする。

 

『ヒーローチームもヴィランチームも最後の講評があるからね。戻ってきてくれ!』

 

「庄田、鉄哲を任せていいか」

「もちろん」

「なら拳藤は俺が連れて帰るとしよう」

「へ?」

 

そう言った東堂が目の前で膝を曲げて屈すると、肩に背負うように担ぎ上げられる――所謂お米様抱っこ。

 

「……ってちょっと待て! この体勢でか!? ちょ、もっと別の……!」

 

暴れると面倒臭そうな顔をされた上に無視された。

カメラに映ってるだろうけれど、この状態で戻られるのは恥ずかしすぎる。何の羞恥プレイ!?

これでも男に負けないレベルで力は強い方なんだけど、見た目から分かる通り東堂のパワーは私以上。

私の抵抗は虚しく、私の精神は削られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

ツインインパクトという個性を利用したら逕庭拳の真似が出来ると思ったのだが、やはり難しいようだ。

そもそもあれは虎杖悠仁(ブラザー)の瞬発力の高さが原因で通常遅れる筈のない呪力の流れが体の動きより遅れるという事態を引き起こし、拳に纏わせた呪力が本人の動作に追いつかずズレが生じた結果、微量の呪力を纏った拳の直後に本命の呪力がぶつかる、というのが発生原因。

一度の打撃で二度の衝撃が来るという混乱を相手に与えるというのは大きな武器であり、東堂葵(ブラザー)との蜜月を経て呪力操作が上達して、ある戦いを得たことで通常攻撃とディレイ攻撃を分ける事が可能となったらしい。

それにより、呪力を纏った強力な一撃と遅延攻撃が出来ることによって隙を作れる技へと昇格したというもの。

なぜなら俺の不義遊戯のように、相手にとってはどっちの攻撃が飛んでくるか分からないからだ。

流石あの五条悟から大きな武器と呼ばれるに至ったらしい技ではある。

未完成だとメインウェポンにするなら悪癖だ。100%の呪力を乗せた方がいい。

でなければ特級には通じない技だが、完成後は別だ。

あの両面宿儺相手にもこの一撃が決め手のひとつとなっている。

そもそも彼は黒い光に愛されてるので、同じモーションで天与呪縛のフィジカルギフテッドに近い強烈なパンチか逕庭拳か黒い光のどれかが飛んでくることになる。

完成前は逕庭拳がメインウェポンだったが、完成後は任意なのだからそれだけで厄介さが分かるだろう。

他にも赤血操術や両面宿儺の術式を使ってくるという、知ってる者からすれば選択が迫られるのだが、そこのふたつは今は関係ないので語る必要はない。

 

「では講評の時間だ! まぁ、今回は言わずもがな東堂少年なのだが……。君、庄田少年や拳藤少女に指導していただろ? 訓練だからいいんだけどね、あの様子からして東堂少年なら一人でも勝てたと思うし。ただもう完全に先生だったからね。少年って呼んでいいか分からなくなってきたぞ、私」

「もちろん庄田少年や鉄哲少年も悪くはなかった! 庄田少年は個性を上手く扱えるように頑張っていたし鉄哲少年のガッツもいい! 特に拳藤少女は最後まで諦めずに戦おうとしてたね、それは大切なことさ! 現場ではその時間稼ぎが応援に繋がる場合もある! 東堂少年の個性なら逃げることは出来ないし背を向ける方が危険だ。正直今回に限っては1枚どころか数枚上手だった東堂少年が原因な訳だが……相手が違ったならまた変わった結果になっていただろう! だがまあ、壁を経験するのも得がたい経験だ。これを糧にすることが出来れば大きな前進に繋がるだろうさ!」

 

まるで俺が全ての原因みたいに言われて釈然としないが、オールマイトの言う通り別の組み合わせだったら拳藤と鉄哲は厄介な相手だっただろう。

戦闘能力はB組の中でも上澄みだ。

俺と小森以外のB組なら何とかなっていたと思う。

 

とまあ、最後のオールマイトの講評が終わり、授業も終わりを迎える。

 

「いやー、お疲れさん! しかし皆、真摯に取り組んだ! 初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ! それじゃ着替えて教室にお戻り!」

 

まるで何処か急ぐように去っていくオールマイトの姿に、俺は少し不思議に思った。

No.1なのだから忙しいのは分かる。

分かるのだが、何かそれとは違うような気がしなくもない。

授業が終わってあんなに急ぐ必要が何処にある?

いくらNo.1といえど、雄英の先生をやるならスケジュールは組まれているはずだ。

となれば急ぐには何かしらの理由が――。

 

「葵?」

「いや、なんでもない」

 

詮索すべきではない、か。

オールマイトには秘密も多いだろう。

それより早く着替えるとしよう。

戻ってきてからというもの、一切顔を合わせてくれない拳藤には後で謝っておくとして、更衣室は別なので俺は男子陣と一緒に更衣室に向かう。

 

「しっかし効いたぜ東堂! 首席だってのは知ってたけどすげーな! 庄田も最後のアレ! びっくりしたぞ!」

「ありがとう。ただ東堂曰く、及第点でもないらしい……」

「俺は十分に見えたけど……」

「1度コピーした時から気になってはいたんだけど、東堂の個性は一体どういうものなんだ?」

「確かに鉄哲が個性を使ってるのに解除されたし、生身の威力だけとは思えないよな」

「二つの個性があるってことですかな?」

「位置の入れ替えと超パワーってことか?」

「凄いパワーだよねぇ」

「少なくとも拳藤以上だろ?」

「それは教室に戻ってから話すとしよう、俺の個性についてはクラスメイト全員に話した方が早いだろう」

 

男性陣ほぼ全員から話しかけられたが、一人一人に説明するのは合理的ではない。

この後教室に戻るため、女性陣を含めてその時に話すとしよう。

俺の個性の話だ。

 

 

 

 

*1
アニメとかでよくあるイメージ。




庄田くんの好みは分からないし調べても情報がまず少ないので、見た目からアクセル・ワールドの黒雪姫にしました。
ふくらかで低身長だとどうしてもアクセル・ワールドのハルユキを思い出してしまう……。
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