どんな女がタイプだ? 作:ブラザー
※第1話が規約に引っかかったので対応して添削しました。ある程度地の文を追加したため、コピーにならないと思うので多分大丈夫かと……普通に頭から抜けててやらかしてました。
スマホでニュースの記事を見てると、小森が生えてきた。
いや正確には机の下から潜ってきて、そのまま俺の膝上に座ったという形だ。
体格や身長差的に座る場所もなければその方が見やすいのは分かるのだが、座る場所が悪かったのか微調整するように小さく動く。
スカート越しに感じられるお尻の柔らかさに俺は生まれて15年間。
俺と苦楽を共にしてきた親友を抑えるように鎮めていた。
流石にそこで動かれると困る。
「何を見てるノコ?」
「昨日の記事をな。新しくデビューしたヒーローがいるらしい」
シンリンカムイの必殺技が出る前にヴィランを倒したという女性ヒーロー。
個性は巨大化のようだ。
なんともまあ、被害が多そうな個性だ。
「葵……」
「待て、誤解するな小森。この人は俺の
「ふーん……?」
同志から感じる目が冷たくなった気がした。
推しのアイドルは低身長だ。おおかた俺の好みが変わったのではと思い込んだのだろう。
確かにこのヒーローはケツをアピールしてるが、そっちはともかく流石に身長がデカすぎる。
個性使用時はビル以上はあるんじゃないか。
俺にとっては対象外である。
だから体重をかけて押し付けるように動かすな。俺の理性が旅立ってしまう。
というか気になっていた記事はそちらではないのだ。
「これを見ろ、小森」
「んー?」
別の街だが、ヴィランに捕まって抵抗を続けるタフな中学生を助けるべく、同級生らしき人物が飛び込んだというもの。
事件はオールマイトが解決したらしいが、中々に勇気があるようなやつだと思った。
だが結局オールマイトが解決したということは力に見合っていない行動ということだ。
――危ういな。
力がないと考えるに、ヒーロー科に来ることはないだろう。だが相性もあるからなんとも言えん。流動的な相手が苦手な場合もある。
少なくともオールマイトが行動を窘めていたならば良いが。
「ヘドロかぁ……葵なら」
「殴り飛ばす」
「言うと思ったノコ」
殴ることは出来ないが風圧で吹っ飛ばすことは出来るだろう。
呪力を用いれば容易だ。
ただまあ、この街に現れなかったのは良かったというべきか。
流石の俺も鍛えた体に呪力を集中させたところでオールマイト並のパワーは出せん。オールマイトが解決まで時間が掛かったということは何らかの事情があるのだろう。
オールマイト自身に個性の限界があるのか。それともイレギュラーが発生したのか。
年齢も年齢だ、個性の
オールマイトの活躍は5年前よりかはニュースで見なくなっていることだしな。
と言っても、そこから考えられる推測でしかない。確証もなければオールマイトほどの
俺の気のせいかもしれん。
「何、そもそも俺ならば拘束を解くことくらい苦にすらならん」
「確かに、防御不可の必中だもんね」
「そういうことだ、何も心配はないさ」
あの時のような人質に取られることはない。
取られたところで奪い返せばいいだけの話。
「それより授業が始まるぞ、戻れ」
「うん」
休み時間が終わりを迎えるため、小森は俺の膝から降りると自分の席に戻っていった。
それから特にこれといった大きな事件は起きておらず、俺たちは変わらない日々を過ごしていた。
主に個性を伸ばしたり、ダンスや歌のレッスンを見たり、共に出掛けたり、開催されるライブや握手会に参加したり。
日常とは、平和の証。
仮免やプロヒーローの資格を持たぬ以上俺たちは学生だ。学生であるならば学生を謳歌せねばならない。
サイリウムを振ったり推し活をしてる記憶の方が多い気もするが、まあ息抜きは大切だろう。
無論、同志の誕生日は互いに祝った。
俺は9月だが、同志は12月だ。
そうして月日は流れ――
2月。
いよいよ雄英入試の当日であり、俺と小森は電車に乗って雄英の前に辿り着いていた。
雄英とは略称であり、正式には国立雄英高等学校。
日本が誇る最大の中等教育機関であり、世界有数のヒーロー科を有している。
高度な状況判断と戦闘力のみならず、天災人災を問わず人命救助に関する膨大な知識を要求されるヒーローを養成する教育機関で、国内に雄英と並ぶ学校は関西圏にある国立士傑高等学校だけと言われている。
トップヒーローを輩出して来たのもあり、知名度だけで言えばトップクラス。
結果一般入試倍率は300倍にもなっており、求められる偏差値は脅威の79。
入試倍率は「受験者数÷募集定員」によって算出される。
募集定員は36人であり、その枠を毎年約10800人が奪い合う。狭き門。
本来は40人だが、うち4人は推薦入試の枠だ。
「いよいよ実技試験の日ノコ!」
中学より遥かに大きい校門。
その後ろには校舎が見える。
これで来ることになったのは2度目だ。
今日は実技試験当日。
筆記試験は勉強さえしていれば問題ないが、今回は話が違う。
なぜなら試されるのは実力なのだ。
俺たち以外にも立ち止まっている人は度々見かけ、緊張しながら校門を潜っていた。
ふむ、俺から見ても俺たち以上の実力者は居ないな。
試験の内容に依るが、まあ
相変わらず腕にしがみついている小森に目を向けると、彼女自身も特に緊張をしている様子はない。
これならば十分ポテンシャルを発揮出来る、か。
「どけデク!!」
「かっちゃん!」
「俺の前に立つな、殺すぞ」
物騒なやつもいるものだ。
あの姿は見たことがあるな。ヘドロ事件のバクゴーといったか。
実力は……あるようだがあの程度脅威ではないな。
もじゃもじゃの緑髪の少年がビビっているのが見える。
あの感じ、全然戦い慣れてすらいない。それどころか服越しだから分かりにくいが、幼少から鍛えていたならばもう少し筋肉があってもおかしくはない。
恐らく鍛え始めたのはここ1年の間か。
でなければ、あのビビり具合は理解出来ん。力があるならばあの程度の暴言ではビビったりしないだろう。
しかし知人ということは、まさかやつがあのニュースになっていた飛び出したという人物か?
まさか受験するとは想定外だった。だがあの鍛え具合からして俺と同じ個性に気づいてなかったパターンの人間か……? しかし妙に気になる。何故だろうか。
そう分析していたら、ガチガチに緊張している緑髪の少年が足を踏み出そうとした時、盛大に躓くのが見えた。
――流石に試験前に怪我はまずい。助けるとしよう。
小森に目を向けたら頷き、離れてくれたので両手を構える。
見てないならまだしも見てしまった以上はヒーローを目指す身としては動かねばならない。
そのまま叩こうとしたところで、俺より先に少年に触れている少女が居た。
浮いている。
浮かせる個性といったところか。
必要なくなった俺は両手を降ろす。
「行くとするか」
「うん!」
特に緊張もない俺たちは、説明会が開かれる受験会場へと歩いていった。
何故か俺に対しての視線が凄いが、身長が高い影響だろうか。
こればかりは視線を集めてしまうのは仕方ないと言えるだろう。
「今日は俺のライブにようこそー!! エヴィバディセイヘイ!!」
DJの様な出で立ちの金髪を立てたグラサンの男は受験者達の方にマイクを向けて耳を澄ました。
プロヒーローというのもあり、普段なら声が挙がったのかもしれんが返ってきたのは沈黙だ。
俺も別にプロヒーローが特別好きというわけではなく、好きなのはアイドルなので名前は知っているがその程度でしかない。
場に何とも言えない微妙な空気が漂い始めた。
「こいつはシヴィ――! 受験生のリスナーにお待ちかねの実技試験の概要をさくっとプレゼンするぜぇ! アーユーレディー!?」
場内が再び静まり返った。
この場ではそのノリは辞めた方がいいのではないか、俺は素直に思った。
名誉のために言っとくと彼、プレゼント・マイクはヒーローとしてもDJとしても一流らしい。
詳しくまでは俺も知らんがな。
しかし、一度説明が始まればプレゼントマイクはふざけること無くその仕事を全うする。
「リスナーにはこの後10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!! 持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」
モニターにはA〜Gまでの会場が表示されており、手元の受験票を見てみれば、俺も小森も会場場所は違っていた。
連番でも違うということは、俺たちのような幼馴染や友人同士で協力させないためか。
「葵とは別々なんだ……」
「大方、協力するならば即興でやって見せろということだろう。ヒーローならば現場で即席のチームアップを組む場合がある」
「なるほど、納得ノコ」
周りが静まってる中で小声とはいえ話すと、妙に大きく聞こえてしまうもの。
故に声を潜めて互いの耳元で話した。
俺の予想も間違っていないだろう。持ち込みは自由ってことは武器は可能か。
別に必要ないが、使えるならばヌンチャクくらいは待ってきても良かったかもしれんな。
「演習場には“仮想ヴィラン”を三種・多数配置してあり、それぞれの『攻略難易度』に応じてポイントを設けてある! 各々なりの個性で仮想ヴィランを
簡潔でわかりやすい。
ポイントが高ければ高いほど強度が上がるのか強くなるのだろう。
どれ程の強度かは分からないが、倒せない人用にも停止スイッチは存在してるはずだ。
出なければあまりに身体能力向上系の個性が有利すぎる。なくてもあっても増強型が有利なのは変わらんが……。
それと破壊ではなく行動不能にすればポイントが入るなら攻撃型の個性以外でも立ち回り次第でどうとでもなるといったところか。
武器も使用可能ならば戦闘向けでなくても身体さえ鍛えてたら何とかなるだろう。
体ではないのは、心の方も鍛えておかねば恐怖心で足が竦むからだ。肉体と心。故に身体。
「もちろん他人への攻撃など
「質問よろしいでしょうか!?」
静寂を打ち破るように手を高く挙げていた人物が1人。
如何にも真面目という風貌だ。
「プリントには
何千、何万人といる中で堂々と大声で問題を指摘出来るのも一種の才能であろう。
リーダーとしては悪くない。だが俺は指図されるのが嫌いだ。俺の苦手なタイプだな、女の好みも合うとは思えん。真面目すぎて答えられないような人種だろう。
それだけで俺の興味は失った。見定めする必要すらない。
「ついでにそこの縮毛の君!! 先ほどからボソボソと……気が散る! 物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」
俺達も話していたが、互いに耳元で話してたのもあって標的にはならなかったようだ。
だが校門前で転びそうになっていた少年は指摘されていた。お陰で笑われている。
こうなることは予想出来るだろうに……少し気に入らんな。
「オーケーオーケー! ナイスな質問サンキュー! そいつは0Pの仮想敵、謂わばお邪魔虫ってやつだ。各演習場に一体、倒せないこともないが倒しても意味はない。スーパーマリオブラザーズのドッスンみたいなもんさ! 各会場に一体所狭しと大暴れしている『ギミック』よ!! リスナー達には避けながらポイントを稼ぐことを勧めるぜ!」
「有難う御座います! 失礼致しました!」
真面目なのは分かるが、硬すぎだ。
頭を90度まで下げてから着席していたが、先の説明を聞いてか少し周りの声が増えてきた。
「どう思うノコ?」
「わざわざお邪魔虫を用意するということは、この試験には“裏”がある。行動不能にしてポイントを稼ぐだけならば、どう足掻いても超えられない差が生まれるだろう。後半に行くに連れてロボットが減っていき、出遅れたものは合格圏内から容赦なく落とされてしまう」
そう、これがこの試験の肝だ。
だがそれだと前半に弱くて後半に強い個性はどうなる?
あまりに不条理だ、まず試験内容自体を変更すべきすら思える。
雄英の予算も幾らでも出せるわけではないことから数は限られるはずだ。
それを補う何かがなければ、あまりに理不尽だ。
「だが奴が“他人への攻撃”、といったアンチヒーローな行為はダメと言っていた。ならば求められるのは“ヒーロー”らしい行動。ここまで言えば――言わずとも分かるだろう?」
「人を助ける行動、ノコね」
「そうだ、俺の予想が正しければな。余裕があるなら積極的にやっていくといい」
俺の出した結論は、つまりこれだ。
人を助けるのがヒーローであるならば、この試験もまた人を助けることを見ているはず。
実力だけを見たとして、ヒーローは強いだけでやっていけるほど甘くは無い。自分が強ければヒーローにはなれても市民からの支持はなく、ヒーローとして埋もれて消えることだろうしな。
伊達にIQ53万は名乗っていない。
「俺からは以上だ!! 最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう!! かの英雄ナポレオン・ボナパルトは言った!! 『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』と!!」
「
「それでは皆良い受難を!!」
説明と啖呵を聞いて、次々と退出していく。
皆テンションが上がってるのか無言だった。感じられるのは高揚感に満ちた空気感。
俺と小森は至って変わらず平常心のまま、試験終了後に待ち合わせする場所を決めてから分かれた。