どんな女がタイプだ? 作:ブラザー
実質4日連続総合、二次創作1位でしたね。少なくとも21時まではそうだった気がする。ありがとうございました……!
それにしてもお気に入り登録7000超えて投票数400人ってなに……それも10と9の合計で328……?
なんでしょうね、例えるなら元気玉を作って無駄には出来ないと思う孫悟空の気持ちが分かったというか、72名の方に関しては制限がある貴重な10を付けていただいて。
いやもうありがとうございますとしか言えないんですけど、プレッシャーが半端なくて強烈なボディブロー受けた気分です。白目剥きそう。
メンタルがクソザコですまない……っ!!
昼休み。
個性把握テストを終えたため、食堂で食べることになった私たちは移動していた。
流石にたくさんでは行けないから、私。一佳ちゃん。小大ちゃん。物間、葵のメンバー。
相変わらず私は葵の隣をキープして歩いている。
「あー!」
すると、大きな声が聞こえた。
思わず振り向くと、そこには姿が見えない制服だけ浮いている人がいる。
「東堂くん! やっと見つけたーっ!」
「む……っ」
「避けられた!?」
「いや、普通に考えて避けるだろう」
飛び込んできた透明人間の女は、葵が簡単に避けると見事空振っていた。
そそくさ、と葵の前に出る。
この女は、危険。
私の葵は渡さない。
「東堂、知り合い?」
「入試で少し会った。俺が抱えていた……ああ、見えないか。とにかく巨大ロボを相手する時に少しな」
「え、友達じゃないの!?」
「友達……?」
「酷い! 私にあんなことしたのに!?」
「葵?」
葵? ねえ、それどういうこと。
何したの。何かしたの?
あんなことってなに。
えっちなこと?
そんなに何かしたいなら私にやっていいのに。
そこの女じゃなきゃダメなの? そんなことないよね? 私ならいつでも受け入れるよ?
「誤解を招く発言をするな。あと……友達の定義がわからん」
「えへへ、つい。でも、それなら友達でいいじゃん!」
「そういうものか……」
顔が見えないから感情を読み取ることも出来ない。
誤解という発言に心を鎮めつつも、長らく友達がいなかった反動が、ここに来たみたいで葵があっさりと折れていた。
やっぱりこの子、距離感というか詰め方が危険。今はまだ好意を抱いてる訳じゃないのは分かるけど、葵が気になってるのは間違いない。
そんな匂いがする。女の勘がそう言ってる。
「……すまん、まず誰か教えて貰っていいか?」
「あ、ごめんなさい! A組の葉隠透です!」
「A組……で、そのA組が“僕ら”の東堂に何か用かな?」
「いや、俺はお前らのでは……」
「葵黙ってて」
「……」
ちょっと落ち込んでた。
ごめんね、葵。
後でぎゅーってしてあげるから。それから膝枕もしてあげる。だから今は黙ってて。
これは必要なことなの。
物間はA組に対して何か思うところがあるみたいで、警戒心を露わにしている。
「用ってわけじゃないんだけど……話したくて? というか、なんかガード固いね!?」
「当たり前だろう、彼は僕らの大事な首席だ。敵に渡したくなんてないね。君たちは僕らよりも進んでるらしいじゃないか、遅れてる僕らを嘲笑いにでも来たってわけかな?」
「て、敵……!? そんなことしないよ!? というか爆豪くんが何か言ってたから、やっぱり首席だったんだね、東堂くん」
「ま……まあまあ。ここで時間潰してても仕方ないしさ、ひとまず移動しようよ。で、葉隠さん……だっけ。私らは今から食堂に行くんだけど、そっちは?」
「私も一緒! たまたま東堂くんを見かけたから話でもどうかなーって。お邪魔だったならやめとくけど……」
邪魔と言えば、邪魔。
でも葵の知り合いなら無碍には出来ない。
知り合いと仲良くしたいという気持ちは至って普通で健全なもの。
「A組はA組で連んでいたらいいじゃないか。わざわざB組に関わってくる必要なんてないはずだろ」
物間、もっと言っていいよ。
「もちろんA組の人たちとも仲良くしたいよ? でも初めて出来た友達が東堂くんだもん。だから大切にしたいっていうか……ダメ、かな……」
「……東堂はどうなんだ?」
「皆が構わんのなら好きにすればいい。それよりも時間が無くなる方が互いに得もないだろう。利と損を考えて動くべきだ」
「そう……まぁ、本人が良いって言うならいいけどさ……。そういうことだし、ついてくるならついてきなよ」
「ね」*1
「やった、ありがとう!!」
透明女、葉隠が同行することが決まって、身振り手振りから喜んでるのが分かる。
私は物間に冷たい目を向けた。
「はぁ……物間役立たずノコ」
「……僕に当たり強くないかい? 小森、まずA組の情報を集めるのは大切だと思うんだ。情報は武器だよ」
「それはそうだけど……仕方ないノコ。当たってごめんね」
「気持ちは分かるさ。だけど東堂が取られるわけじゃない。今のうちに体育祭に向けて情報を得てやろう。利用出来るものは利用しないとね」
思わず感情をぶつけてしまったけど、葉隠に聞こえないように小声でそう言われた。
その言い分は分かるけど乙女心としては複雑なので、なんともいえない感情が漂う。
私とは真反対の子。
明るくて元気いっぱいで、服越しからも胸もある。なんだか感じられる目線からは私と同じくらいの身長かもしれない。
透明だから顔は見えないけど、確実に美少女。
……先に行ってた葵が戻ってきた。
「どうした? 二人とも」
「いいや、まだ信じられないなとね」
「うん、スパイかも」
「スパイ……? ああ、多分そういうことは考えてないだろう。気にする必要は無いと思うぞ。あの感じからして、感情のまま動いてるように見える」
「そうだね、警戒しすぎたようだ。じゃあ行こうか」
誤魔化すことに成功し、物間が先に歩いて行った。
その横を通り過ぎて葉隠が戻ってくる。
「そこのお二人さんー! 早く! ほら、東堂くん……って動かない!?」
「その体格で動かせると思ったのか? もっと鍛えるといい」
「んーっ! んーっ!! 完全に岩!!」
葵の手を、恐らく両手で引っ張ってる葉隠。
――自然と葵の手を掴んでる。頬を膨らませ、私はすぐに近寄っていく。
「俺達も行くぞ。葉隠、俺で遊ぶな」
「はい!? 私全然遊んでないんですけどー! こんなに真剣なのは昨日の個性把握テスト並み――って、わぁ!?」
全力で引っ張ってた葉隠は足を滑らせたのか、後ろに体が持っていかれ、倒れるよりも早く葵が掴まれていた手を握り返した、んだと思う。
あっさりと引っ張り返し、ぽすん、と葵の胸に彼女は飛び込んでいた。
「っ〜!」
「だから言っただろうに……」
「ああ遊んでたわけじゃないから! 本当だよ!? 信じてよぅ!!」
「終わりノコ」
体を間に入れるようにして、二人の仲を引き裂く。
手が離れた。
すぐに葵の手を掴んで、私は一佳ちゃんたちを追っていく。
置いていくようにしたけど、すぐに追ってきた。
葵と手を繋いでていいのは私だけ。
葵に匂いをつけていいのも私だけ。
今まで居なかった、明確な敵。
私の中で葉隠の警戒度は、一番上にまで位置していた。
だからといって、別に害するつもりはないけど。
それはヒーローらしくもないし、葵は望まないノコ。
でも触れさせない。ベタベタしていいのは私だけなの。私の特権だから。
◇
人の腕を作物を引き抜くように引っ張って遊ぶのはどうかと思うのだが、小森に連れられて……というよりは小森の力じゃ俺は動かないため、向かう先を理解して俺が足を動かしてただけだが、6人で食事することになった。
B組5人のA組1人。いじめの現場に見られないことを願いたいものだ。
席がちょうど6人制があったのもあり、極端に俺の体格が大きいのもあって邪魔になる。
真ん中に居座ると、左に小森。右に葉隠。
対面に小大、拳藤、物間と座ることになっていた。
まあ小森は確定としても葉隠は唯一の知り合い、本人曰く友人らしいので妥当だろう。
小森が上手いこと邪魔にならない程度に密着してる以外は普通に座ってるだけ。
料理はランチラッシュというプロヒーローの一流の料理で、プロが作る料理が食べられるからか食堂は混んでいる。
中には弁当を持ってきてる人もいるため、全生徒がいるわけではない。
ただ1年だけでなく、2年や3年もいるからか当然人が多いのも必然だろう。
葉隠が俺以外初めてましてというのもあり、それぞれ自己紹介を終えたところだった。
といっても名前だけだが。
体育祭がある以上、情報は少しでも隠しておくのは正しいメリットだ。
術式の開示は“縛り”によって自らの能力を高めることが出来る。俺の場合は開示しようともちょっとしたバフが得られるだけで特にデメリットはないのだが、わざわざ手の内を明かす必要はない。
今のところ俺の個性は両手を叩くことで入れ替えると思われてるだろう。呪力に関してはまず間違いなくやるであろう戦闘訓練辺りで使うため、手札として隠しておきたい。
どうせならば勝ちたいからな。
「除籍だよ、除籍! 正直ね、心臓が飛び出るかと思ったもん!」
「うわぁ……入学初日にそれはやばいね。ブラド先生から聞いてたけど本当だったんだ」
「ゴーリテキキョギって言ってたけどね、結局嘘だって!」
「いいや、それは事実だろう。復籍の権限があるとブラドも言っていた」
「イレイザーヘッドは本当にやるってブラド先生も言ってたノコ」
「……え、マジで? じゃあ私ら、本当にピンチだったじゃん!?」
「東堂が言ってた通りだ。残念だったねぇ!? うちの東堂が! うちの東堂が!
「めちゃくちゃマウント取ってくる! 何この人!!」
「ね」*2
「小大は何言ってるのか分からない……!」
「面白いと言ってるぞ」
「何で東堂くんは分かんの!?」
「ん」*3
「気にするな」
「すごい、A組に負けないくらいキャラが濃い……!」
「嘘でしょ、A組も似たようなもんなの……?」
IQ53万の俺の頭脳を持ってすれば、圧縮された言語くらい理解出来る。
物間の敵対心というか敵愾心は何故か強いが、ひとえに自分を受け入れてくれているB組に既に仲間意識を持ってるからなのだろう。
「そう、それ。A組には何でも問題児くんがいるんだって?」
「あー……うん、まぁ、確かに爆豪くんとかはそうかなぁ……。緑谷くんは個性がちょっと問題らしくってね」
「個性が問題? どういうことだ、入学した以上は個性に問題を抱えたままで居られるとは思えないが」
一体どこでその情報を得たのかは気になるが、それよりもこっちだ。
個性に問題があるとはどういうことなのか。個性というのは長い時間をかけて成長させていくもの。体の体質にあってない事例もあるようだが、基本的に本人ならば自在に扱えるようにはなっている。
特に高校生にもなれば。
無論、あくまで自在に扱えるというのは完全に制御出来るという意味ではなく、安全を確保出来る程度で扱えるということだ。
それこそ一度も個性を使用してなければ話は変わってくるが。
「なんかね、超パワーに肉体が持たないんだって。指にだけ発動させてたから、それで相澤先生に認められてた! でも折れてたよ。結構噂になってるんじゃないかな? ここに来る前、誰かが緑谷くん見て巨大ロボを吹っ飛ばした人って言ってたしね」
「へえ、自壊するほどの超パワーか。東堂とどっちが強いかな……いや自分で言っててあれなんだけど、増強型ではない東堂と比べる方がおかしいよな」
「それはそうノコ」
「ね」*4
流石に呪力なしだと俺の方が負けるだろう。
生身で増強型やパワーのある異形型などにはどうやっても勝てん。といってもそいつの個性が自分の筋力の倍を強くする程度だったとして、70kgとかなら3倍までは勝てるが。
しかし肉体が持たないほどの超パワーか……。制御が出来てないということだろうか。流石に自壊するほどの超パワーのままってのはおかしいはずだ。
生まれ持った個性でそれは有り得るのか? 確かに個性は未だ謎に包まれているし、俺でも分からないことは多い。
「確かに東堂くんもパワーすごいもんね! あの巨大ロボの攻撃、両腕で受け止めたの本気で驚いた!」
「……これ、本当の話なのかい?」
「事実だ。壊した時は個性を使ってるがな」
「ああ、それは私も見てたから証言になれるぞ」
「同じく」
「流石“私の”葵ノコ」
「ねー、すごいよね! ……あれ、今なんかおかしかったような?」
「気の所為。それよりもっとA組のこと聞かせて」
「いいよー!」
「ナイスだよ小森……!」
勝手に情報をペラペラと話すのはいいのか気になりはしたが、まあ話すとしてもどういう人物がいるのか程度だろう。
まだ個性把握テストだけで彼女自身も個性を上手く知らないだろうからな。どういう個性……能力の方ではない意味でどう個性的かを話している。
性格を知れるだけでも分析には役立つ。しかし先入観は持たない方がいい、と後でアドバイスはしておくべきだな。
ただ異形型に関しては居るだけで個性の答えを言ってるものなのはどうしようもない。見た目から分かりやすい人と分かりにくい人はいるが。
それと何人か既に噂にはなっている。
俺もそうだが、A組だとエンデヴァーの息子や八百万家のご令嬢、ヘドロの事件のバクゴーという人物。
何でもエンデヴァーの息子は氷と熱を持ち、八百万家のご令嬢は物を創造出来るらしい。
物を創造……か。
俺の知識に浮かぶのは、やはり構築術式。
己の呪力を用いて無から物体を作る事ができる術式で、燃費は頗る悪い。
東堂葵の後輩にも使う者が居て、どちらかと言うと八百万という名前からは“彼女”のことが思い浮かぶ。
と言っても後者は東堂葵自身は出会ってないので聞いた話でしか知らないのだが……。
何はともあれ、普通の会話に見せかけて情報を得てやろうとする物間は意外と策士というか強かだな、と俺は聞いていて思っていた。
翌日。
小森と一緒に登校していた俺だが、門の周りにはカメラやらマイクを持った――いわゆるマスコミが詰めかけていた。それもかなりの人数だ。
一体何の用なのか、耳を澄ませてみると。
「そこの君! オールマイトが雄英に就任してから周りはどんな――!」
「オールマイトの授業は一体どのようなことを――!」
「オールマイトが身近に存在するというのは――!」
「オールマイトの授業風景について――」
どうやらオールマイトが雄英に勤め始めたことが伝わったらしく、インタビューに来たのだろう。
この辺りは流石No.1ヒーローというべきか。
「葵……」
「分かっている」
普通に考えて学生の登校時間時にマスコミが張り込むなんて何を考えてるのか。
敷地内ではないので個性が使えないのが面倒だが、行くしかあるまい。
俺の体格で突っ込む訳にはいかないため、しばらく待機して人が減ったところで動き出す。
「――オールマイト。あれ、ヘドロの時の」
「やめろ」
前の方で俺たちより早くに捕まってた人が居たが、あっさりと抜けていた。
とにかく小柄な小森を守るようにしなければならないが、恐らく俺に集中するだろう。
つまりマスコミの相手は問題ないため、あとは小森に危険が及ばないように中に入るだけだ。
女子と登校する。俺たちにとっては普通であり、幼馴染という関係性だったとしても未来のヒーローが男女で歩いていたらマスコミにとってはいいネタでしかない。
それを理解してる小森が俺の後ろに隠れるように移動して服を掴んでくる。
それを確認した俺は堂々とした態度で校門に近づくと、マスコミも気づいたのか視線が一気に集まる。
「あ! 生徒――でっか!? 何cm!?」
「すごい巨体! プロヒーローと遜色ないような……流石雄英の生徒……!」
「筋力の個性かな?」
「あの、オールマイトについて――」
「授業はまだ受けてないんでな、分からん。オールマイトならば対人戦闘についての授業でもやるだろう。何処が楽しみかと言われればNo.1に相応しい姿を見られたならば十分だ。あと先程うっすらと聞こえたから言わせてもらうが、オールマイトと俺の間に関係性は一切ない」
先程の質問の嵐からおおよその質問を予測して先回りして答えると、マスコミが驚いたように静かになっていたので、その間に抜ける。
相手が情報を整理出来る前に先に情報を叩きつけてやればいい。これで1番助かることは、小森に一切被害が及ばぬことだ。
俺の体格と小柄な小森ならば必ず俺に注目が集まる。時間を掛ければ小森が目をつけられるからこそ、ぱっぱと抜け出す方がいい。
「ん」*5
「小大か。そっちは無事のようだな」
「おはようノコ、小大ちゃん」
校門を同じタイミングで潜ったのか、既に俺の隣に移動している小森の隣に小大がやってきて話しかけてきた。
教室は同じだ、わざわざ離れる必要もないだろう。
「ん?」*6
「葵に掛かれば余裕ノコ」
「上手くいくかは賭けに近かったが、変に頭の回転が早いやつが居なかったのは助かった。恐らく俺の見た目も含めて情報整理に時間が掛かったのだろう」
「ん」*7
「聞いてないから分からんが……完璧なインタビューを求めた結果なんじゃないか。俺たちは素人だ。そこまで完璧なものを求められてもどうにも出来ん。だがヒーローならマスコミ慣れする必要もあるし悪い事じゃないだろう。次また機会があれば、今度は目線や手振りなどを入れることで分かりやすくするといい」
「ん!」*8
「気にするな。この程度ただの会話のひとつに過ぎん」
「……なあ、ずっと思ってたけどさ。なんで普通に会話出来てるんだ?」
「慣れれば誰でもできる」
「そういうもんかなぁ」
ツリ目気味の通りすがりのクラスメイトに声を掛けられたので、ついでに一緒に教室に行った。
俺たちが教室に入る頃には既にクラスメイトも多く居て、時間もかなり押していたので席に座る。
黒板は大きいとはいえ、念の為にブラドに言った俺は本来は3番目なのだが、一番後ろになっている。
教室は5×4のため、俺の席は右から3番目の1番後ろの席だ。
そのため、右には昨日の個性把握テストで力を借りた角取という女生徒。
目の前は首元から漫画のような吹き出しを出している男で、こっちは吹出だったはず。左は辮髪の様な髪型が特徴の男で、鱗だったか。
その3人が前と左右になる。左上は左目が隠れた灰色の髪と、目の下に隈ができているのが特徴の――柳といった女生徒。右上は俺とは真反対のふっくらな体格の男、庄田といった男が俺の周囲となる。
近い距離なのもあってそれぞれ挨拶をされたため、無視する訳にもいかないために返すと、予鈴が鳴る。
すぐにブラドが教室に入って来た。
「早速だが今日は学級委員長を決めてもらう」
その突然の発表に、クラス内は賑やかになった。
「学級委員! いいな、やってみてぇ!」
「メラメラ〜ってしてくるよね!」
「他をまとめ、導く役目。やはり経験はしておきたい!」
「Class President! イイ響きデスネー!!」
「面白そうじゃん」
「ね」
ワイワイと次々と声が挙がり、このままでは話が進みそうにない。
しかし俺としては別にやりたい気持ちはない。
だがみんなやりたがる理由は集団を導くトップヒーローの素地を鍛えることが出来るからだ。
そのため、ヒーロー科では恐らく今もやってるであろうA組同様人気だ。
俺は命の掛かった、実戦経験を継いでるのもあるため、むしろ俺は辞退してその経験を他に譲るべきだと思っている。
何よりただでさえ忙しいヒーロー科で委員長までやってしまえば、スケジュールの管理が困難になりかねん。
「皆! やりたいのは分かるけど、まずは先生の話を聞こう! 話が進まないと決めることも出来ないから!」
拳藤が声を挙げたお陰か、すぐに静かになった。
クラスが一言で落ち着いたため、ブラドが話を進める。
「まぁ、やりたい者も多いだろう。どう決めるかは皆に任せる。それと連絡だが、今日のヒーロー基礎学は教室に待機していてくれ。担当の教諭がここまで来て説明する。じゃあ委員長を決めるが、どうする?」
「先生、推薦ってありですか? だったら拳藤がいいと思う。さっきだってみんなをまとめてくれたしな!」
「え、私!? いや、別にそんなつもりじゃあ……」
銀色の、ワイルドな容姿の男――鉄哲が手を上げて拳藤を推薦していた。
本人は驚いて席を立っていたが、先程の騒ぎの声を静めたのは彼女だ。
それは他の人も同じ考えに至ったのだろう。
「確かに、さっき静めてくれたしな」
「少ししか話してないけど拳藤いいやつだしいいんじゃないか?」
「そうだよな、もう既に委員長の風格あるっつーか」
「ね」
「リーダーシップあるしな!」
「一佳で良いと思う」
「これもまた神のお導きでしょう」
「姉御って感じがあるし」
「賛成ですぞ!」
次々と支持する声が上がり、B組の総意となりつつあった。
俺は特に異論は無いため、皆に任せて見守っている。実際拳藤は頭の回転が早い。まとめ役にも最適だろう。
「待て待て、本人の意思が大切だ。まだ日が浅いというのにここまで支持を集めるのは凄いとは思うが、やるかどうかは本人が決めねばな。ということだ、拳藤。委員長やるか?」
「そういうことならやらせてもらいます! せっかく皆が推薦してくれたので」
ブラドがクラスを落ち着かせて拳藤に聞くと、彼女は引き受けることにしたようだ。
「じゃあ委員長は拳藤に決まりだな。後は拳藤が進行してくれ」
「はい! じゃあ、まずは副委員長を決めようと思う」
その場から移動し、黒板の前に立って教壇に手をつくようにすることで注目を集めた拳藤が早速進行を開始している。
委員長を決めたならば、補佐する副委員長を決めるのは自然のことだ。
「それで副委員長なんだけど、やっぱり女子より男子が良いと思うんだ。男子のまとめ役になって欲しいから。誰か立候補ないか? 自薦でも他薦でもいいぞ」
「じゃあ僕は東堂を推薦させてもらうよ」
無言を貫いていたら、物間が俺を推薦してきた。
しかし俺は自分で言うのもなんだが、協調性はない方だ。気に入った相手ならばまだしも、全員に気をかけてやることなどできん。
「気持ちはありがたいが、辞退しよう。俺は自己中心的だ。あまり人と関わったことがないのがクラスに悪影響を及ぼすかもしれん。その点で言えば、骨抜とかはどうだ。推薦入学者なだけじゃなく、物腰や対応が柔軟で適しているだろう」
「ということらしいが、どうする? 骨抜がいいならそれで決定でもいいと思う。他に誰か自分で立候補する人もいないみたいだからな」
「皆がいいなら、俺やりたいな。東堂がわざわざ俺に推薦してくれたし」
実際推薦入学者というのも箔があるのもあり、優秀な生徒なのには違いない。
一言話した程度だが、観察した限りでは最適だと思った。
これに関しては特に異論は無いようで特に声が上がらなかったのもあり、骨抜が副委員長として決定した。
「よし。ならば学級委員長は拳藤。副委員長は骨抜で決定とする。2人はこれからよろしく頼むぞ」
「「はい」」
そこまで手を焼くこともなく決まったのはいいことだな。
特に俺としては全力回避するつもりだったため、心から良かったと思う。
余計な時間を取られてリアタイ出来ない方が最悪だ。流石に学校ある時はどうしようもないので、そこだけは断念せざるを得ないが……。
そして当然昼休みはあるので、食事を摂るべく食堂に足を運ぶ。
いつものメンバーだが、何故か人が増えた。
女子は柳。男子は鉄哲、宍田、回原。
随分と大所帯となってしまったな……。
流石に6人以上の席はないため、分かれた。
俺、小森、物間、拳藤。
あとは残りのメンバーは近くの席。
「にしてもよぉ! 俺は別に東堂で良いとは思ってたんだぜ。だって首席だろ? 副委員長でも良かったくねーか?」
「確かにな。東堂なら問題なくこなしそうだったが」
「推しのアイドルの出演が見れんくなるだろう。断る」
「アイドルですぞ?」
「へえ、東堂ってアイドルに興味あるんだ。なんか意外だな」
「ね」
「正確にはアイドルヒーローノコ。私が好きだから会場に連れていった時にハマったの」
「幼馴染なんだっけ?」
「うん」
「趣味嗜好は人それぞれだ。僕たちに口出す権利はないよ。それよりも拳藤にはこれからは頑張って貰わないとね。頼むよ学級委員長」
「既にお前が不安要素だよ」
「僕が何をしたと?」
「A組煽ってただろ、あんまやるなよな」
「フッ、無理だね」
「おい。何とか言ってくれ東堂」
「俺は指図は受けんぞ」
「……こっちにも居たか……ッ!! もう不安しかない!!」
拳藤が頭を抱えているが、俺と物間は似たような考えをしていたようだ。
視線が交差し、ニヒルな笑みを浮かべつつ手を差し伸べられたので、意図を察して何となく握った。
「頑張って、一佳」
「一佳ちゃんなら出来るノコ」
「がんば」
「頼んだぜ委員長」
「任せた拳藤」
「応援してますぞ」
「せめて希乃子は幼馴染を何とかしてくれ!!」
「私は葵が葵らしく居てくれた方がいいから嫌。ごめんね」
「くっそ! 頑張るよ、そうするしかないもんな!!」
「葵は問題起こさないから大丈夫ノコ」
「信じていいんだよな……?」
「――葵に親友が出来なければ」
「なんで最後に不穏なこと言うんだよ希乃子……!! というかそれどういうこと!?」
早速委員長として苦労が絶えないようだが、この調子ならばクラスをまとめてくれるだろう。
俺のことは気にせずに他の相手をして欲しいものだな。
拳藤がため息を吐いてテーブルに疲れたように顔をつけた時だった。
突如、警報が鳴り響く。
「なんだぁ!?」
「警報? 何かあったのか!?」
「この音ウラメシイ」
「耳がキーンとなりましたぞ」
「ん?」*9
「あの、何があったんですか?」
セキュリティ3とやらが突破されたらしく、拳藤が近くの年上と思われる人物に聞いていた。
「校舎内に誰かが侵入してきたってこと! 3年間でこんなの初めてのことだ。君らも早く避難するんだ!」
それだけ言って教えてくれた人は走っていくが、俺たちは顔を見合わせる。
「東堂、どう思う?」
「葵……」
「ここに居た方がいいだろう。出入口は人でごった返してると思った方がいい。パニック時において人が取る行動なんて容易に分かるだろう」
「私もそう思う。あの様子からして多分あの先輩以外も移動してる。ぶっちゃけ東堂以外巻き込まれるんじゃないかな」
俺の体格ならば問題ないが、まずこの場の全員人の流れに押し負けるだろう。
その時は俺が回収すればいいだけの話だが、かと言って情報がないのは不安要素になりかねん。
ならば、ここでやるべきことは……。
「柳、スプーンを動かして窓際に持っていってくれ。雄英のセキュリティが破られたなら外で何かが起きてるということになる。俺が確認しよう。その後にまた浮かせてくれたら戻ってこられるからな」
「わかったよ」
ポルターガイスト。
人間1人分の重量であるならば動かせるらしく、術式ではなく個性となっている不義遊戯とは相性が良い。
浮いたスプーンがまあまあな速度で窓側へと進み、俺は両手を叩いて慣性をそのままにしながら窓を見る。
目に映ったのは朝にも見たマスコミ。それと対応してる小汚い男性とプレゼント・マイク。A組から出てくるところは見たことがあるため、恐らくあの人がイレイザーヘッドだろう。
落下前に振り向きながら両手を叩き、元の位置へと戻る。
スプーンは落ちて犠牲になってしまっただろうが、誰かが巻き込まれるよりかはマシだ。
「どうだった?」
「マスコミだな。どうやら朝から居たマスコミが我慢できずに入ってきたようだ」
「なるほど。相変わらず便利な力だね、東堂」
「そうか?」
「なんだよ、マスコミかよ! 人騒がせだな! まだ昼食べてる最中だぞ!?」
「気持ちは分かりますが、過ぎたことはどうしようもないですぞ。鉄哲氏」
「ん」*10
「巻き込まれなくてよかった」
「そうだな。マスコミなら別に移動しなくていいと思う。向こう側も落ち着いたのか少しずつ人が戻ってきてるし。助かったよ、東堂」
「……」
脱力したように座り込んで、昼飯を再び摂る姿を見ながら俺は顎に手をやる。
果たしてただのマスコミにこんなこと出来るだろうか。
雄英には至るところにセンサーが存在している。これは未来のヒーローを育成する場であるのと同時に最高峰の学校であるがため、学生の命に危険が及ばぬように学校側も対策をしてるからだ。
しかしどういう状態であれ、セキリュティを壊した人間がいる。ただのマスコミにそんな度胸はあるか?
あるならもっと早くにそうしているはず。無いのであればなぜ今この時間にやった? 学生が集まる時間にやるメリットは?
ない。
であるならばこれはマスコミの仕業じゃないはずだ。マスコミじゃなければ何者か。これに関してはある存在しかない。
ヴィラン。
しかしいくらヴィランでも未来のヒーローがこれほど居る上、教師陣であるプロヒーローを相手取れるとは決して思えない。それこそ襲撃なら大勢を連れて来なければ勝ち目なんてないに等しいからだ。
仮に誰かを人質に取ったところでジリ貧になるのは明白。だが授業中や休み時間ではなく、昼休みなら人は特定の場所に大勢集まるだろう。
現に食堂は人が大勢いたわけで、そんな時間にセキリュティを突破すればどうなる?
教室は分からんが、少なくとも食堂に居た学生は避難しようとし、教師陣は学生やマスコミの対処に手を焼かれる。
その結果何が起きる。何がある?
学生は冷静さを失い、避難すべく一定の場所へ向かおうとする。教師陣は対処に追われ、雄英そのものは手薄になるだろう。
そこから考えるならヴィランは雄英を襲撃に来た訳ではなく、雄英の
だが……何が目的だ? 分からん、今まで3年間なかった。
今年だけそのような行動に出たということは、今年に何か大きな変化――オールマイト?
オールマイトは今年から教師に就任した。
だから今朝からマスコミが我先にと記事にすべく集まった。
ヴィランにとってマスコミを最大限利用出来る存在はオールマイトの話題性のはず。マスコミからしたら話を聞きたい。ヴィランからすれば騒ぎを起こすことで注意を他所へ向けさせたい。この場合はマスコミに。
朝から張り込んでいたマスコミならば話を聞けるならば雄英に入れるとなれば間違いなく入ってくる。
それが不法侵入であろうと、
実行犯は恐らく少人数。1人か2人。その程度ならマスコミに紛れることは可能のはずだ。
ヴィランの狙いはオールマイトだとしたら、何もしなかった理由はなんだ? 違う。先程何かを得ようとしていると俺は考えた。
もしかしたら――。
「……葵?」
「いや、なんでもない」
0.01秒の思考。
小森が俺の顔を覗き込むように見てきたが、彼女に心配をさせるわけにはいかん。見えないように握ってきた手を握り返しながら息を吐く。
確証はないが、ブラドに言っておいた方がいいかもしれんな。
ヴィランの狙いがオールマイトなのはほぼ確定だろう。わざわざオールマイト就任後にこんな危険なことをしでかすのはそれ以外とは思えん。
学生を狙わなかった以上、考えられるのは雄英の情報だ。
もしかしたら
それだけで今の社会秩序を崩壊させるには十分すぎる。
流石にここから先、何の授業があるかは俺も分からないが、今日の午後がB組のヒーロー基礎学。明日はA組のヒーロー基礎学があるはずだ。
今日実行したことからB組は関係ないだろう。
狙いはA組の情報……か? もし襲撃でもしてくるつもりならば明日のヒーロー基礎学の時間かもしれない。
所詮は学生の言葉だ。
俺が何を言ったとしても信じられることなどないだろうし、何かが変わるとは思えんが、推測でも話しておくべきだろう。
問題はどう話すか。
ふむ、そのまま話した方がいいか。
マスコミにやれるとは思えない。ヴィランの仕業じゃないか。狙いはカリキュラムで、オールマイトかもしれない、と。
なんで分かんだよ、キッショとは書いてて思った。AFOが知ったらまず間違いなくドン引きしそう。何だこの(半裸の)変態!? って感じで。
自分で書いてるのにね、不思議。
というかB組ってあまり喋ってないキャラ多すぎて難しいですね。USJでオリ主を活躍させたいのもあると思うけど、二次創作がA組ばかりなのってこれもあるのでは?