第1話 インチキ占い師
『最近、彼が冷たいのよね……。浮気、かしら……』
はあ、今日は簡単そうなお客でよかった。
「いらっしゃいませ、お客様。本日は……ああ、彼氏さん、ですか……」
わざとらしく悲壮感を漂わせた声でただのガラス玉に手をかざす。
そうして心の声で聞いたことをそれらしく言うだけで客は勝手に驚いてくれるのだ。
私は古明地さとり。心が読める妖怪だが、それを生かして占い師をやっている。
もちろん占いはさっぱりなのでインチキではあるのだけども、背中を押してあげるお悩み相談と思えば悪いものでもないと思う。
騙しているという罪悪感は……まあ、少しは……?
しかし背に腹は代えられない。私たちだってお金を稼ぐ必要がある。
私は妹の古明地こいしとふたりで暮らしている。
各地を各国を転々としながら占い師(インチキだが)で稼いでいるのだ。
どこで生まれたのか、いつ生まれたのか、何も覚えていない。
妖怪とはそういうものだから。
だから唯一の身内、唯一の家族、こいしは私の大事な妹だ。
私と同じく忌避される能力を持った彼女。さとり妖怪にしてはこいしは優しすぎる。
嫌われることが怖いのだ。意図せず人を傷つけるのが嫌なのだ。
かわいい私のこいし。あの子を守るために私が頑張らなければならない。
「そうですね……」
『家に私の知らないピンクの歯ブラシがあったし、私のじゃない髪の毛も落ちてたし……。でも信じたいの……』
「正直に言うと、かなり怪しいですね」
それは浮気確定だろう。なんで占いに来たんだこの女性は……
「やはりそうですか?……でも、信じたいんです……占い師さん‼」
前言撤回。全然簡単そうじゃないわ!
なに、頑固すぎない?信じたいって……あなたナめられてるわよ。
「もう一度見てみますが……望み薄ですね……クロであることを覚悟しておいたほうがいいでしょう。」
「でも……占い師さん…「ですが
「しっかりと向き合って見ると良いと思います。あなた方に足りないのは、話し合い、でしょう。お二人の中で愛情がすれ違っているように思えます。彼を愛しているなら、まっすぐ伝えて話し合ってみてください。そうすれば、きっと良くなるでしょう」
「まあ!本当ですか!ありがとうございます!」
まあ、嘘なのだが。
しかし占いも恋愛相談も、ほとんど変わりはしない。
これでも十数年は人の悩みを聞いてきたのだ。
あとは、もう少し背中を押してあげるだけだ。
「そうですね……次の満月の日がいいでしょう。彼の家に行って話してみてください。月がお二人を導いてくれるはずです」
「ありがとうございます、さとり様。高名な占い師と有名なあなたに相談してよかった。ほんとうに、ありがとうございます」
ここまで来ると、プラシーボ効果だ。
元々占いは不確定なものなのだ。お守り程度だ。
浮気されている女は憑き物が落ちたような表情で帰っていった。
はあ、なんとかやり遂げた……
占いに来る人は、基本何か困っていてかつ頑固な人なのだ。
自分の望みがあり、それを肯定してほしい人、といえばいいだろうか。
肯定しているだけでは占いが外れたと文句を言われる。折り合いのつけ方が難しいのだ。
まあ、そういう客は金払いがいいのでヨシだ。
疲れた。今日はもう店仕舞いだ。ここにいるのも今週いっぱいくらいにしようかな。
そう思ったのも束の間、ドアにつけておいた鈴がなる。
「すみません、今日はもう店仕舞いで……
そういいながら顔を上げた先には、豊かなあごひげを蓄えたいかにも魔法使いという出で立ちの老人が立っていた。
「良いのじゃ、小さな開心術師どの。わしは客ではないからのう」
老人の目がいたずらっぽくキラリと光る。
「まあ、言わんでもお主ならわしの目的もわかるじゃろうが」
その通りだ。読める、わかってしまった。
この老人は、アルバス・パーシバル・ウルフリック・ブライアン・ダンブルドアは、古明地さとりと古明地こいしのことを”知って”いる。
バレた、なぜ、これからどうする
それに、なんだ……
「ホグワーツ魔法学校……?」