『比較的大人しく無邪気、天真爛漫で妹気質。愛される力があるが自覚なし、だが他人からの悪意には敏感、傷付きやすい。優しい……』
たしかに、そうだと思う。
長年占い()をしていた私よりも洞察力に優れている。
もしかして、この人も心が読めるの?
「ナシに不死鳥の尾羽。ヤナギに一角獣の毛。リンゴに一角獣。いったん試してみてくだされ」
やはりまだ難しいようだ。
この段階で決まることは無いか……
私はこいしが杖を選んでいる間に、カウンターにおいてあった杖のカタログ?的なものを手に取る。
それぞれの材質の傾向や杖の基本情報などがわかりやすくまとまっている。
杖は紀元前から使われていたらしい。杖なし呪文もあるが、杖は魔力を媒介するのに適しているため魔法を使うのをサポートしてくれるようだ。
「全ての杖は持ち主を選び、その持ち主に対し忠誠心を持つ」。忠誠心は不変ではなく、持ち主が敗北すると次の持ち主に移る。杖の忠誠心を得ていない魔法使いや魔女がその杖を使おうとすると、使えはするが唱える呪文の威力が弱くなってしまう。しかし、杖に対する敬意がない魔法使いに対しては忠誠が薄れ、そうなると魔法が使いにくくなったり、いうことを聞かなくなったりする。逆に、丁寧に杖磨きをしたり、頻繁に使う、材木の持つ特性に合致した素質を示せたりすると、杖は自身の持つ最大限の力を発揮してくれるようになる。杖は「生きている」がゆえに、一度破損すると修復することができない。杖は道具ではなく相棒でありパートナーだ。愛情を注ぎ「育てる」ことであなたを守り支える一番の味方になる、とのことだ。
へえ、奥が深いのね……
私の素材は……ギンヨウボダイジュ、あったわ。
希少かつ魅力的な杖用木材で、19 世紀に大流行した。
需要が供給を上回ったため、恥を知らぬ杖作りどもは低品質の木材をギンヨウボダイジュの色に染め、客に本物だと信じ込ませて売りつけていたほどである。
そこまでの人気を博した理由は、見た目が飛び抜けて魅力的であることに加え、占い師や開心術に熟練した者が使うと最高の力を発揮するといわれていたためである。
いずれも神秘の術であるため、ギンヨウボダイジュの杖の所有者は高い地位にあると見なされた。
さすが私の杖ね。私の能力にぴったりじゃないの。美しいっていうのも素晴らしい。
不死鳥の尾羽は……
最も貴重な芯材。
使える魔法の幅広さが随一。しかし本領を発揮するまでに時間がかかる。
最も自発性が高く、自分の判断で勝手な振る舞いをする事も。なので魔女や魔法使いに敬遠されがち。持ち主に対する選り好みが激しい。手懐ける、自分好みに調整する、忠誠を得る事が難しい。
そうこうしている間に、こいしも決まったようだ。
こいしのまわりにさわやかな甘い香りのしゃぼん玉がたくさん浮かんでいる。
「リンゴに一角獣の毛、33センチ、よくしなる。大変優しくて忠誠心の強い杖じゃ。よい杖に出会えたようですぞ」
えーっと、リンゴは……
リンゴの木の杖は、作られる数が少ない。
強力な杖で、高い志と理想を持つ者に向いているが、これはリンゴ材が闇の魔術とそりが合わないためである。リンゴの木の杖を持つ者は、人に愛され、長生きするといわれている。
私が気づいたところでは、リンゴの木の杖と相性がぴったりの客は、人としての魅力にあふれていることが多いようだ。
そうね、少なくとも私はこいしが大好きよ!
それで、一角獣の毛は……
最も一貫性の高い魔力を生みだし、揺さぶりや妨害を受け難い。
闇の魔術に最も感化され難い。
あらゆる杖の中で最も忠実。持ち主が熟練の魔女魔法使いであるかどうかに関わらず、最初の持ち主との結びつきを強く保ち続ける。強度の点で他よりも劣るが、木材で補う事も可能。
取り扱いを極度に誤るとふざぎ込みがちで、芯が「死ぬ」事もあり、そうなると芯の交換が必要。
うんうん、こいしの一番の味方になってくれそうな杖ね!優しいあの子にぴったりだわ。
「おや、その冊子を手にとっていただけるとは。ぜひ杖を大事にしてやっておくれ」
「ええ、もちろん。一番の味方だもの!大事にするわ」
私たちはほくほく顔で店を後にした。
「なんか、本当に魔法学校に行くんだなぁって!」
「そうね、昔の魔法使いたちが杖を大事にした理由が分かった気がするわ」
さあ、初ダイアゴン横丁の最後は……ペット選びだ!
pixiv百科事典、わかりやすいです。