世界の意思にさようなら   作:宇美築ラゲク

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第11話 赤い入口

 焦りと絶望感が全身を駆け巡る。

 

「やばいやばいやばい!」

「翔(しょう)! はやく!」

 

灰芽(はいのめ)が声を荒らげる、急いで引っ掛かったところをはがし、奥に進もうとした瞬間、重たい激痛が稲妻のように走り、そこで体が動かなくなってしまった。

 

 でもなんだろう……

 

意識はある、もうすぐ死ぬから、徐々に意識が薄れていく感じでもない、はっきりとしている。むしろ先程の焦りと絶望感がなくなって冴えている。

 

 死んだのか?

 

よくわからない変な感覚だ。首は動かせないが、はっきりと目の前の映像は見えている。少し奥にいる灰芽(はいのめ)と美奈(みな)さん……、自分の身体が化け物に食われていることもわかる。どうやら爪でほじくりだして食べているようだ。

 

頭部だけになり、ごろごろと奥の方へ転がる……

ドラゴンは全部食べ終えたと思ったんだろう、大きな翼を広げこの場を去った。

 

「さぁ、化け物は去ったわ。ここを出るわよ。」

「ああああああ、利賀(とが)さんがぁぁぁ、おぇぇ……」

「しっかりして、ここにいても何も始まらない! それに翔(しょう)なら大丈夫。」

「はい?」

「まあ、後で説明するわ! とりあえず出ましょう!」

「で、でもあそこ……」

 

美奈(みな)さんの目線の先は、さっき僕が惨殺された入口だ。真っ赤に染まり、肉片が周りに飛び散っている。

 

「でもここにはいられないじゃない! 私はマスクがあるから匂いは平気だけど……」

 

黄色く汚れ、酷いにおいを放っている天使だったはずの彼女を、灰芽(はいのめ)は励ましながら、無理やり美奈(みな)さんを引っ張って出した。瓦礫の隙間から2人が出てから少し経った後、僕の体は再生し始めた。

 

「え? ど、どうなっているんですか?」

「まあ、最初は驚くよね……」

 

灰芽(はいのめ)が慌てる美奈(みな)さんを落ち着かせている中、僕の体は完全に復活した。体感的に3分ぐらいだろうか。

 

「すごいわね……再生能力があがっているんじゃない?」

「それより、この鷲掴みしている手、放してくれるか? あとできれば、こんどから両手で持ってほしい。僕の頭は、ボールじゃない。」

「了解したわ ちなみに頭だけのときは、痛みとか意識はあるの?」

「痛みはないけど意識はあるよ。」

「ふーーん」

 

灰芽(はいのめ)の気の抜けた反応を断ち切るように美奈(みな)さんが問う。

 

「なんなのですか、説明してください。もう何が何だか……」

「ええ、説明するわ 彼と私の事、今この世界で何が起きているか。美奈(みな)さんもここで何があったのか教えてくれるかしら? もちろん無理にとは言わないわ。」

 

灰芽(はいのめ)は美奈(みな)さんの様子を伺いながら、この世界に起きている出来事について詳しく説明した。その後、僕たちは美奈(みな)さんたちの身に何があったのか。知ることになる……

 

 

 お天道様の顔が見えてきて、闇が明けた。本来なら希望に溢れた時間帯のなかそれは、天から現れた……。翼の生えたドラゴンが次々と人をとって食べ始めたのだ。凶悪な手で捕まえられた人は丸のみにされた。人が白魚の踊り食いを食べるように、ドラゴンの表情はただ食べるだけじゃなく、どこか楽しんでいる様だった。

 

「なるほど、だから血痕の後がなかったんだ。」

「全員が食われたわけではないでしょ」

 

ふたりの反応に気にせず、美奈(みな)さんは説明を続ける。

逃げ遅れた彼女はこの瓦礫の場所に隠れ、何とかやり過ごせたようだ。

 

「なるほどなるほど、でもよかったわね。運よく瓦礫の隙間があって」

「よくないですよ、なんでこんな目に合わなきゃいけないんですか! 私が何をしたっていうんですか!」

「ご、ごめんなさい、そういう言わけじゃ……」

 

まさか美奈(みな)さんがここまで精神的にやられているとは、灰芽(はいのめ)も勿論、悪気があって言ったわけではないのだろうが。

 

 今は何処か安全な場所で休むべきなんだろう……

 

「灰芽(はいのめ)どこか安全な場所はないのか?」

「そうね、やっぱりほかの区画に移動するのがいいと思うわ。そこから世界樹対策課に、今回のことも連絡できるでしょうし。」

「わたしも……早くお風呂に入りたい……」

 

彼女は汚れと匂いが気になっているのだろう、

いや、汚れた心を洗い流したいのが一番の理由なのかもしれない……

 

「僕も早く行きたい。」

「そりゃそうよね。なんせ今下半身布切れいちまいですもん」

 

そう言って、灰芽(はいのめ)は大笑いした。

仕方ないじゃないか、服までは再生しないんだから!

 

 

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