社員寮の部屋は、失われていた世界が存在していた。世界樹による厄災により、多くの人が家を失い職を失った。大切な人を失ってしまった人もいる。そんな状況の中、ホテルの一室のような綺麗な部屋を貰えるなんて、しかもちゃんと一人部屋、トイレとシャワー室、おまけにキッチンもある。ガスはまだ通ってないが十分だ。
前に住んでいた安アパートと同じくらい、7畳ぐらいのワンルームの部屋だ。この寮が分かっただけで僕は世界樹対策課がちゃんとした場所だと確信した。あまりにも変人ばかりだったので、大丈夫なのかと疑っていたのだ。
おっと、隣の人にも挨拶しないと
僕の部屋は206号室、隣の205号室にも人がいるようだし、これから仕事仲間になるわけだ。礼儀として挨拶に行かないと、手土産とかはもちろんないが……まあ、こんなご時世だし仕方がない。
僕は部屋を出て隣の205号室の前に立ちノックした。中から出てきたのは、自分と同じぐらいの年齢で優しそうな男だった。
「初めまして、206号室に入居、いや新入社員の
僕がそう言うと、彼もお辞儀をして挨拶を返してくれた。
「こちらこそよろしくお願いします。
よかった。隣人は普通の人で……
「何かあったら気軽に相談してください。あと、隣の207号室の人は気が強いですからね……、挨拶に行かれるのであればお気を付けて下さい」
「気が強いのですか?」
「ええ、なにかあったら教えてください。すみません、今日は仕事が長引いてしまって、今度しっかりと挨拶させて下さい」
「そうだったのですか、お疲れの中すみません」
「いえいえ、それではおやすみなさい」
205号室の
勇気を振り絞り、扉をノックする。すると中から黒髪のすこし目つきの悪い女性が現れた。年齢は20台半ばから後半ぐらいだろうか、とにかく不機嫌そうな顔をしている。ツンツン委員長って感じだ
なるほど確かに気が強そう……
そう心の中で思いつつ、僕は平常心を保って誠実に挨拶に入る。
「初めまして、隣の206号室に入った
「そう……わたしは
そういうと彼女は扉を閉めた。よっぽど早く終わらせたかったのかよ、気が強いというより、感じが悪いやつだった。
朝焼けが、にじむように東の空にひろがりはじめる。久しぶりに気持ちのいい朝を迎えることが出来た。ここに来る前は区画のテント生活、言っちゃ悪いが、ホームレスみたいな生活だったからだ。
「さて、追い出し部屋へと行きますか」
僕は気分が良かったので、つい独り言を言ってしまったが、そんなことも気にせずドアを開け、仕事場へ向かう。
「
仕事場に向かう途中、
「おはよう、二人とも仲良いね。部屋どうだった?」
「最高でしたよ。こんなに良い暮らししてもいいなんて、……避難生活されている方々にに申し訳ないです。」
「あまり気にし過ぎるのはよくないわ。気分良く休んで仕事頑張って、少しでも早く、区画の人たちにいい思いさせるんでしょ!」
そうだ、僕たちはこれから働くのだ。馬車馬の如く働かされるかも知れないのだから、ちょっとぐらいの贅沢はイイじゃないか。
調査課戦闘係の部屋に入ると、昨日はいなかった人がいた。フィギュアだらけの机の前に一人、男性が立っている。年齢は30代ぐらいだろうか? 眼鏡をかけて、スーツをピシッと着こなした姿は、まさに仕事ができる人って感じだ。でもどこか、隠し切れないオタク特有のオーラを放っている……
「やあ、初めまして私の名前は
「夢?」
「そう夢だよ、今この混沌に満ちた世界には、アニメという希望が失われている。わたしの夢はアニメを、オタク文化を復活させることなんだ!」
小学生が夢を語るかのような熱い純粋なまなざしが眩しい。
「君たちにはないのか! 夢が! さあ、
「ええ、私ですか!」
急に振られて戸惑う
「わ、私は少しでも 皆さんが元の暮らしに戻れるようになればと……」
「いいね、優しいんだね。次、
「僕は……すいません。今はまだ特に……」
「まだないんだね、それでも大丈夫。いずれできるさ! ようこそ世界樹対策課日本支部へ、ここが君たちの部屋だ!」
「あ、
なぬ!っと驚いたキラさん、どうやらここまでの流れを考えてたようだ。ちょっと痛い人だが、とても良い人だとすぐに分かった。
夢か……
なんだろうさっきから頭の中で声がする……
でも、よく聞こえない……