女の人の悲鳴だった。一体何があったのだろうか、そんな事を考えている暇なんてない、ゼノとかいう化け物が来たのかもしれない。助けに行こうとしたが
あれ?
体が動かない……
僕の体は動かなかった。すぐにその原因が分かった。足が震えていたのだ。警備は出来ても、いざ事件が起きると、何もできない……それがぼくだ。
情けない 悔しい
「大丈夫!」
隣でポンッと背中を叩いてくれた
金縛りにあった身体が動くようになったのだ。
「大丈夫よ、あなたは強い。なにより私もいるし!」
最後の一言は余計だが……
「急ごう!」
悲鳴のあった場所についた時には遅かった。あたりは一面血の海に覆われている。男女……、これは……こども……、それを見た瞬間、一気に嫌な想像が膨らみ、同時に吐き気に襲われた。
「気をしっかりして! おそらくまだ近くにいる。」
そうだ、しっかりしないと まだ終わってないんだ。
ギャアアス
遠くの方で化け物の叫び声が聞こえた。
「あっちか、結構離れているのね。」
急いで音のなった方向に向かおうとした瞬間、茂みから一つの影が見えた。
狼
一瞬そう見えたのだが、その考えはかき消された。狼の身体、血のような真っ赤な毛に覆われ、牙が鋭いナイフのよう……いや、 ナイフそのもの、何よりも目がこの世の生物とは思えないおぞましいものだった。地獄から呼び出された番犬と言われても疑わない姿をしていた。
どうすれば……
こっちは大人2人とはいえ、武器はない……
「時間は欠けてられないわ、最速で終わらせる。」
彼女の言葉は自信に満ち溢れていた。
「いい機会だわ、あなたに、私の能力を見せてあげる。」
明け方のまだ涼しい時間帯、いつもならまだ肌寒いのだが、今は違う。気温が急速に上がっているのだ。いや、これは
「これが……
「そうよ、かっこいいでしょ」
少し失われた中二病心を取り戻してしまったが、今はそんな場合ではない。化け物がこちらに向かっているのだ! ウサインボルトもビックリの速度だ。僕たちとの距離、もうわずか!
「武器生成!」
「おお!」
思わず声が出てしまった。彼女の背中の炎がボウボウと燃え上がっていく。
たぶんこれから火を武器の形に変えて戦うのだろう。以外と接近戦タイプなんだな!
ジュ、ザシュ
肉が焼け、切断され、あまり聞いたことのない音が僕の耳と目に入っていく。一瞬の出来事だった。まるで時代劇でも見ているような鮮やかで、美しい姿に目を奪われた……が、ひとつツッコみたい
「どう! 令和の石川五右衛門と呼んでもいいのよ!」
「たぶん、マンガの方のことを言ってるのはわかるけど、だいたいの人は泥棒の方を真っ先に思い浮かべるからやめといた方が……、それより一言いいか?」
「ん?」
どうしてもツッコみたかったこと……
「おまえ、背中の火を使うんじゃなくて、背中から出ている煙をつかうのな。」
そう
「うるさいわね! まずは一体目!」
「とにかくお疲れ! お前強いんだな!」
「こんなの朝飯前よ。それよりも、次の場所に行きましょう。まだほかにも何体かいるみたい」
少し照れた彼女だったが、すぐに気持ちを切り替えた。
それもそうだ、新たな被害者が増えるかもしれない……
ぼくの脳裏に彼女の姿が浮かんだ。
「早くいかないと、ゴホゴホ! ちょっと、煙たい!」