早朝の広場、いつもは重たい腰を上げて、何人か起き始める時間帯、だが、今はこの場に誰もいない。あるのは、冷たくなった人だったもの……、血の海、普通の人なら気分が悪くなって立ち止まるはずなのに、慣れてしまったのだろうか……、僕はあまりにも冷静だった。
「広場だけどあまり死体がないわね、ほかの人たちはうまく逃げたようね」
となりの女は氷のように冷静だった。
こういった場面に慣れているのか、それとも力の代償なのか……
広場の隅の方に大男ぐらいの大きさの鳥、まるでダチョウ、いやヒクイドリのような見た目の化け物がいた。ヒクイドリより一回り大きい化け物は、足の爪が恐竜のように鋭く、簡単に人の喉元を切り裂けそうだ。何より異質なのは、くちばしに肉食猛獣が持つ牙がびっしりと生えている。危険であるのは間違いないが、
普通なら……
「あ、ああ……助けて」
化け物のそばに、微かにまだ息がある人がいる。しかし、化け物には知能があるのか、自分の獲物を横取りされまいと、その人を足で力強く押さえつけた。
「
「わかってる、でもこちらから仕掛けると……」
人質がいるためうまく動けない、なんとか注意をそらせば助けられるかもしれない。
「僕が、化け物の注意を逸らす。その隙に助けてやってくれ!」
咄嗟に出た言葉、考えなんてない。
「どうやって気を逸らすの?」
「回り込んで、この石ころを投げる。」
「えぇ!? そんなので!?」
でも動かなければ……
何も始まらない!
「そんなのってなんだよ! ほかに方法が思い浮かばないんだよ。それに早くしないと、あの人が死んでしまう。」
捕らえられている人は、血をだらだらと流し今にも死にそうだった。早くしないと間に合わない……、僕は焦っていた。
「でも、そんなことをしたら今度はあなたが危ない。」
「僕は死なない身体を手に入れたんだ。後は……まあ、何とかなる。」
「ノープランかよ……」
「わかったわ、のってあげる! 私はどうすればいい?」
「僕が怪物を引き離すから、その間に捕まっている人を助け出してほしい。助けた後、今度は僕を助けてくれ」
「情けないわね、わかったわ!
いたずら好きの女の子の様な顔を作った
「ああ、いいよ!」
この場面で断れる勇気なんて僕は持ち合わせていない。
地の底から聞こえるような、低いうなり声が広場を包む、張り詰めた空気……、上手くできるかわからない……、不安な僕を鋭い目がにらみつける。少しずつ化け物の後ろに回り、手に持っている小石に意識を注ぐ、いつでも投げることが出来る。
心臓の鼓動がバクバクする
いくら死なない身体になったとは言え、怖いし痛みはある。たった数メートル動いただけなのに、何時間も経ったような気分だ。まだ化け物の後ろに回り込んでいないが、手に持っている小石を早く投げて、この緊張感から早く解放されたい。そう頭によぎった次の瞬間、不快感を伴う粘性の叫びが僕に向けられ、化け物がこちらに向かってきた。まだ完全に後ろに回り込めてないが、作戦は成功だ。人質は解放され、
少しでも化け物と
しかし、化け物の足は速く、すぐに捕らえられてしまった。熊のような鋭い足爪で背中を蹴られ、地面に倒れたところを、岩でも乗っかているような重さで踏みつけけてくる。全く身動きが取れない自分、無様な僕を上から見下ろす化け物……、ライオンに捕らえられた獲物の気持ちがよく分かった気がした。ここまで何もできないと抵抗する気も起きなくなってくる……
ドス
鈍い音が僕の体中をめぐる
「うわああ」
痛い、痛い痛い痛い……
痛みで何も考えられない!
今自分は、生きたまま食われている。
それ以外のことは何も考えられなかった。
「だ、だれか助け……」
神にすがる思いで、振り絞った一言、その言葉にこたえるように、灰色の剣が化け物の体を貫いた。僕ごと!
「ぎゃああああ」「ギャアアアア」
化け物と叫び声が重なり合い
不快な音楽が響き渡った。