C.T.B 揺り籠から戦場まで ―老人徴兵制の未来。武器は阿波踊り!?―   作:電機羊

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【時代】2136年(送信側)
【送信枠】プロローグ(総覧)
【位置】GPS:取得不能(妨害)
【ノードID】From the Cradle To the Battlefield
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(送信開始)

※この物語は、22世紀の現代より暗号トンネルを利用して約100年前――21世紀の君たちへ向けて送る「近未来情報」である。

(通信終了まであと1分)


まず、私は――私と世界に何が起きたのか、そのすべてを書き記すつもりだ。
しかし不運にも、検閲に遭い突然情報が途絶える可能性がある。その点を理解してほしい。
実際、その場合には――この未来からの情報――我々は"逆遡(ぎゃくそ)送信"またはたんに通信、配信と呼ぶ――を受けとった過去の君たちが罪に問われる可能性も否定できない。

(もちろん送信方法には、現時点で最も安全な手段を採用している。だが突破技術は日々進み、「安全保障」は過去の言葉になりつつある。)

私からの情報は、二部構成だ。

比較的安全と思われる、この世界に至った背景や日常の記録
――
[sideA]

そして、位置情報を撹乱できる最後の“残り60秒”に送る、私のいる危険な世界のリアルー
――
[sideB]

どちらかだけを読んでも構わない。
だが、いつかはすべてを読み、何らかの行動を起こしてほしい。

――ここまで読んでも、なお先へ進む勇敢な諸君のみ、

"序文 CTB法"へ進まれたい。

(送信終了)


-log-
2136年5月21日
GPS:取得不能(妨害)

<br>
※本作は、22世紀からハッキングされた「検閲済みの日常(SideA)」と「さらに先にあるリアル( SideB)」の通信ログを交互に受信する形式で進行します。


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【時代】2136年(送信側)
【送信枠】sideA(比較的安全)
【位置】GPS:取得不能(妨害)
【ノードID】序文 CTB法
――――――――――――――――――――

(送信開始)

「じゃあここはもう時間の問題だな。……退却する。」
レジスタンスαの連隊長、JUNは言った。

「あぁ……ジジィどもは抜け目がないからな。さっきの突撃で、大分俺等の戦力は削られただろう。」
それに応えるレジスタンスβの連隊長である同志タツヤ。

(タツヤ)「クソッ! こんな事なら、もっと人生を楽しんでおくんだったな!」

(Jun)「諦めるなよ、タツヤ。まだゲームオーバーってわけじゃない。
…いつか、あの人が帰ってくるから。その日まで、絶えずメッセージを送り続けるんだ。
まだ取り返しがつく、あの時代へ…」

(タツヤ)「…そうだな。じゃぁアップロードを始めるぞ」

* * * *





【ノードID】From the Cradle To the Battlefield

 

[sideA]

 

 

議長国代表:「…以上! ここに新・戦時国際法を定めます。」

 

割れんばかりの拍手。

 

少し昔…そう、75年前(西暦2045年/令和27年)のこと。

 

世界G13(主要13ヶ国首脳会議)のリーダー達により、新しい世界の秩序が生まれた。

 

「C.T.B法」

“from the Cradle To the Battlefield”

(ゆりかごから戦場まで)

 

その発足のきっかけは21世紀初頭、超印霖(チョウ・インリン)爆殺事件に起因した、中国人民解放軍の台湾侵攻によるものからだった。

米・欧・日・豪の連合軍が台湾の友軍として参戦した第三次世界大戦である。

大戦は7年に及んだ。

核は最後まで使用されなかったが、最初の3年間のAI鳩とAI鴉(自律式自爆ドローン鳥群)による世界中の無差別攻撃とその報復に始まった戦争は、人類を自身の存亡の危機にまで追い詰めた。

 

AI鳩とAI鴉――こうなる少し前の世界で、鳥類、主に鳩と鴉をG13主導で、国家間を跨いだ治安維持の名目で、自律型AIロボット化させた。その群れに敵対関係にある国家間を静かに監視させることで表面的には世界は安定した。それらは本物の鳥のように公園や電柱などを中心に街中…主に人の近くで活動しているが、いざというときには集まり、集団で目標座標へ飛び込む”カミカゼドローン”の役割りを担う。そしてその攻撃の早さは警報より先に死が届くーー死の"メッセンジャー"と言われていた。(彼等の通信時に発する『クルップー』や『アー!アー!』という音に人々はいつも脅かされた。)

 

さらに戦争中期以降はウミネコ型も惜しみなく投入され、大陸をまたいだ成果を上げた。

そして大戦後期にはなんでもありの陸空海軍総力戦が五大陸中で激しさを極め、世界規模の恐ろしい人口激減が始まったのだ。

 

戦いは、決着も善悪も付かぬまま――人類は自滅の道を全力疾走した。

…そして休戦協定が締結された年、世界総人口はなんと20億人を切っていた。

それは大戦前の4分の1以下であった。

 

これはまずい。

先史から続く人類の"戦争"という慣習を見直さなくてはならない。

皆がそう思った。

だが結局、民族闘争のように武力なくしては解決できない難題もあるのだ。

 

――その後議論が何度も何度も繰り返されてついに「折衷的軍事協定」と呼べるものが発案された。

 

それが、

 

「C.T.B法」

“from the Cradle To the Battlefield”

「ゆりかごから戦場まで」法

 

であった。

 

戦争という名目の、未来を担う若者を失うだけの愚策を、65歳以上の高齢者を戦場に送り込む仕組みへとシフトさせる法案である。

 

第一、若年層と世界総人口の短期間での回復。

 

第二、急激な社会変化と新しい技術にもスピーディに順応できる社会づくり。

 

そして裏には、世界的な超高齢化社会における年金受給者削減の意図も盛り込まれていた。

 

初見で無謀で無茶な法案に思えた。

だが既に世界は平時とは呼べない待ったなしの状況であり、人類の未来を本気で考え抜いた末の結論でもあった。またこれは自分達の民族、否、人類の根絶を防ぐ苦肉の策なのだった。

 

可決直後は世論はもちろん各国の高齢政治家とその支持者層から極めて強い反発が起きた。

だがそれに対しては、世界中の若きトリリオネア(超富裕層)たちが団結し、その強大な財政力と根回し力をもって意見統制をすすめた。

 

…ルールの絶対性も見せる必要があった。それにはスケープゴート(生贄)が最適だ。

 

彼等は特殊情報部隊を使い、世界の代表的無法国 旧“North Korea” を

「C.T.B法を軽視し、20代の戦士を育成している」

という扇動的なデマを流した。

 

ロシアと中国、そしてアメリカは同時声明の下、一晩に数十万発の弾道ミサイルをこの“ならず者国家”に向けて撃ち込み、集中攻撃を浴びた旧Pyongyang(旧平壌)は地図から消え、旧Kim一族は滅亡した。

 

この強烈なメッセージもあり、C.T.B法は僅かな期間で完全に世界の領土問題のニューノーマルになったのだった。

 

(送信終了まで1分)

 





[sideB]

…いったいなぜ、危険を犯してこんな事をしているのかって?

…実は結局、人類は消滅するかもしれないんだ。
すでに今の私達では、90%の人類の滅亡は避けられない。
…君達が真実を知り、行動する事でのみ未来は変わり、人類は救われる。
…なぜなら今の状況は、自分以外なんの関心も持たない21世紀の人類の遺産の上に成り立っているんだ。

ああ……本当に早くしないとまずいんだ。
僕たちだけでは駄目なんだ。
だからまずは、しっかりと…こうなった経緯を知って欲しい。

[WARNING]
逆探知のリスクが増大しています。
現在のノードを破棄し、座標を移動します。

次の接続予定地点:東京都新疆区
送信予定:『補足:CTB施行後の世界の変容について』


-log-
2136年5月22日
GPS:特定できず。

<br>
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