C.T.B 揺り籠から戦場まで ―老人徴兵制の未来。武器は阿波踊り!?―   作:電機羊

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【時代】2136年(送信側)
【送信枠】sideA(比較的安全)
【位置】GPS:取得不能(妨害)
【ノードID】torrent-8 Shut Up and dance.
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(送信開始)


【ノードID】torrent-8 Shut Up and dance.

[sideA]

 

実記:皇紀2781年(西暦2120年)6月14日

天候:晴天

 

(ジャッジ)「両名!リング上へ!」

ジャッジ(判定員)が叫ぶ。

 

格闘場の対角線上に、オニワカとマエダが姿を見せた。

 

唸る兵士たち。

「きたー!ザ・レジェンド!!」

「ハーフ・キラー復活!」

「くー!俺の青春ー!!」

「鬼若!鬼若ー!……」

 

(ジャッジ)「クッソ共ー!静粛にー!!

…よろしい。これより訓練兵第3721番オニカワ・カイシュウと第3746番マエダ・ゴロウの

 

―決闘を始める!!」

 

唸る兵士たち。

 

(ジャッジ)「ルールは2つ!

1:リング上は、立ち合う兵士共が認める限りは何を使用するかの制限はない。

2:勝敗は戦闘不能状態。判断はジャッジが下す。

 

なお、決着後の取り決めは全員が協力し速やかに履行せよ。

―以上! 両者リング中央へ!!

各自、コーナーポストへ。

 

3……2……1

 

ーでは始めよ!」

 

 

(兵士たち)「ウオー!!」

 

 

実記:同日12時25分 決闘開始

 

 

鬼若:勢いよくリング中央へ飛び出す。

 

前田:両手を平行に、右腕をやや高く上げ、膝を使い下半身のみで上下に揺れ始める。

 

鬼若:マエダの動きに反応、立ち止まる。

 

(兵士)「ギャハハハ!なんだあのタコ!あれ何?祭り!?超ダセー!鬼若さん早くヤっちまってて下せぇ!!」

 

前田:上下運動を繰り返しながら、オニワカとの間合いを徐々に詰めていく。

 

(鬼若)(心)「(?なんだこの奇妙な動きは。隙が無いのか、隙だらけなのかが…。)」

 

鬼若:様子見のため右のミドルキックを放つ。

 

前田:膝を曲げた低い姿勢から、左肘をミドルキックに合わせる。肘がカウンターとなりオニワカの右足を強打。

 

(鬼若)「ウッ!!」

 

(佐藤)「上手い!吾郎ちゃん!!木戸ちゃんの作戦大当たりだね!奴さん凄い集中力だよ。」

 

(木戸)「…まだ始まったばかりじゃき、なんとも言えんのぉ(汗)。」

 

鬼若:被弾した右足を2〜3回、空で伸ばして仕切り直す。

 

(前田):再びジリジリと間合いを詰める。

 

(鬼若)(心)「(…不気味な奴だ。今の肘、ほんの数ミリずれていたら骨折していた…。出来過ぎだ。なら―)」

 

鬼若:思い切って間合いに飛び込み、下半身の揺れを止める狙いで顔面パンチの連打。

 

(兵士たち)「オオー!!」

(佐藤)「ヒエーッ!!」

 

前田:パンチに合わせ、両腕をパッと“花が咲く”ように上げ下げしガード。

次に両腕を同時に振り下ろし、オニワカの首へモンゴリアン・チョップ(両手刀の打撃)を見舞う。

 

(鬼若)「がはぁ!」

 

(兵士)「おいおい……なんかおかしくないか?タコの攻撃…効いてるのか!?」

 

(鬼若)(心)「(ッつ。なるほど…ガチの隠密戦闘術でしたか。なら、こうしましょうか…。)」

 

鬼若:動きをマエダに合わせ、モハメド・アリ・スタイルばりのボクシングステップを踏み始める。

 

(前田)(心)「(ありゃあ一体…?いや、集中集中…。)」

 

リング上でなければ西洋と東洋のダンスバトルにも見えただろう。

小気味良くステップを取るオニワカ。膝を曲げ伸ばし、摺り足で迫るマエダ。異質とも言える決闘だった。

 

オニワカが獣のような『動』で攻めれば、マエダが絢爛でしなやかな『静』で捌く。

 

この攻防は実に長く続いた。

観る者は皆、これが真の“武芸(Martial Arts)”だと言うだろう。

 

だが当人たちにとっては、恐ろしいほどの集中力という一本の糸の上での舞踏。

これは先に糸が切れた方が地獄に堕ちる“死亡舞踏会”なのだ。

 

(鬼若)「あぁ鬱陶しいですねェ!!あなた。本当に鬱陶しい!!」

鬼若:腕と脚の攻撃を次々に遮られ続け、焦ってラグビースタイルの体当たり攻撃。

 

(佐藤)「うひゃあ!!」

 

前田:飛んできたオニワカの全身を、両腕で花びらのように包み込む形で抱え、そのまま半身を捻りながら倒す。

 

(兵士たち)「ウオー!!」

 

柔道ならこれは完全に『一本!』であった。

だがこれは決闘だ。マエダは反撃を警戒し、すかさず跳び下がった。

 

兵士たちはざわめき始めた。

「誰アイツ……やばくね?」

「凄ぇ……弄って危なかったんだな俺ら……」

「……でも鬼若さんの攻撃も当たってなくね?」

「ウソッ……鬼若さんの戦闘力、低すぎ!?」

「お前それ昔の広告じゃんw」

「わはははは」

 

(鬼若)(心)「(クソッ…言いたい放題。ゴミ共はこれだから信用ならない。……ならお望みの物を披露して終わらせてやりますよ。)」

鬼若:ポケットから山切り型のチタン製ナックルを取り出し、両手にはめた。

 

(兵士)「ここで出たー!!伝説の鉄拳!!」

(兵士)「よく動画で使ってたやつな。」

(兵士)「…不利だから使うってか?神聖な決闘で!?」

(兵士)「でも懐かしいなぁ!まさか本物観る日が来るとは!ハーフ・キラー!!」

(兵士)「強いけどマエダはただのサラリーマンだぞ?鉄拳は酷いわー。」

 

兵士たちの賛否両論には耳を貸さず、オニワカはマエダの顔面めがけて重い右フック。

マエダは今まで通り左前腕でいなした。

 

……が、今回の結果は違った。

山切りのチタン・ナックルがマエダの前腕に喰い込んだのだ。

 

(前田)「あああ!!あいたぁぁ!!!」

 

(送信終了まで1分)

 




[sideB]

前田は東京中をまわり、若者を助けた結果、信者は自然に増えていった。
それもそのはず。当時“老人に牙をむく老人”などいなかったのだ。
若者たちにとって前田は、初めて見る尊敬に値する年配者だった。

彼は、
『日本国の世直りはええじゃないか、豊年踊はお目出たい』
などと言うよくわからない言葉が好きだった。
はるか昔、前田が父親から踊りと一緒に教わった歌で、豊かでたのしい
国を作りたい、という意味らしい。
彼は「オニワカ国王と話し合いたい」とよく言っていたが、
ある日それが実現することになった。
前田吾郎の名を聞いた国王の方が、「会いに来るように」と言っているらしい。

「来る時は1人で」が条件だった。当然信者たちは引き留めた。罠に決まっている。
 
しかし前田は

”まぁええじゃないか、アヤットサー”

と、書き置きを残して、その夜姿を消した。

しかし、我々はこんな日が来た時を考え、彼の上着の第二ボタンにカメラを仕込んで、状況をモニタリングできるようにしておいた。
何かあれば私たちも―一緒に行動を起こせるように…


(送信遮断)
-log-
シルバニア王国東京都青梅市 新日本軍化学工場より

Next Packet: はじまりの舞
Est. Time: Unkonwn

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