C.T.B 揺り籠から戦場まで ―老人徴兵制の未来。武器は阿波踊り!?―   作:電機羊

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【時代】2136年(送信側)
【送信枠】sideA(比較的安全)
【位置】GPS:取得不能(妨害)
【ノードID】torrent-11 Honesty
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(送信開始)


【ノードID】torrent-11 Honesty

[sideA]

 

(木戸)「…そして決めた。」

 

(兵士達)「…ゴクリ」

 

(木戸):「“阿波踊り仕舞32手・秘技

鳴門の渦潮(なるとのうずしお)

 

ー『トリプル・アクセル』

 

をな!!」

 

(兵士)「な、何!?」

(兵士)「ト、トリプル(3回転半)!?」

 

(木戸)「…つまりはゴロはんは鬼若と同時に、カウンターでアクセル・ジャンプをして、鬼若よりもただ1回多く回って蹴った、っちゅうだけの話じゃ。」

 

(兵士達)「( …ゾクッ)」

(兵士)「ただ1回多くって…マエダ助走すらしてなかったぜ…。そこからトリプルアクセルって…。」

 

(木戸)「どうじゃ、お前んら。壺から出てきた大ダコは強いじゃろう(笑)。」

 

(兵士達)「タコ…」

兵士達は静まり返った。

 

前田は鬼若に近付いていった。

鬼若は、自身のスピードと前田のスピードが合わさったカウンターキックを、ダブルアクセル後のノーガード状態(回転後は足首を捻らずに着地する為の意識で精一杯なのだ)で受けた。

回し蹴り3回転半の破壊力を持つ一撃だ。…無事なはずがない。

 

ゆっくりとマエダは闘技場の端から片腕を押さえながらオニワカに近付いて行った。

そしてオニワカが倒れている場所に、あぐらをかいた。

 

(前田)「どっこいしょっ、痛ー!

…鬼若さん。」

 

(鬼若)「…なんですか。…早く…早く殺しなさい。」

それは勝敗の結末を飲み込んだ、静かだが力強い声だった。

 

前田の表情が緩んだ。

 

(前田)「もうやめましょう。もういいじゃないですか。私はもう闘いたくありません。」

 

目を見開くオニワカ。

(鬼若)「!…?バカな事言わないでください。これは決闘ですよ。どちらかが戦闘不能になるまで延々続けるんです…。」

 

対照的に心穏やかなマエダ。

(前田)「…じゃあ、ワタシの負けでいいです。闘う意志が無いので負けです。これでいいでしょ?」

 

オニワカはとうとう冷静さを失った。

(鬼若)「何を言ってるんですか!!…それでは貴方、あなたは明日軍を除隊する事になるんですよ!?」

 

地蔵様のように穏やかなマエダ。

(前田)「ええ(笑)。それで -それでもいいです。かあちゃんもわかってくれます。たぶん(苦笑)。

でなくても毎日怒られながら、なんとか生きていきますよ(笑)。そんな事より、」

 

(鬼若)「…?」

 

(前田)「…私ね、鬼若さん。私、決闘前に貴方の記事を読んだんですよ。

そこには、あなたは何十年もずっと、たった1人で父親の事件の犯人を探している、って書いてありました。…私なんて父が嫌いで嫌いで、十八で家を飛び出してから、帰省はおろか、ほとんど連絡も取ってないっていうのに。貴方は本当は、私なんかよりもずっと義理とか情を大切にしていて、ただ器用じゃなくて…ええと、

 

やっぱり…あなたは、

 

『善人』なんです。

 

だから、あなたの親への想いを見習って、試合前に勇気を出して私は父に電話してみたんです。

ー父の声は、何十年ぶりだったか…。懐かった…。

 

貴方のお陰です。…現在父は米軍基地で働いているらしくて、除隊したら真っ先に彼らのネットワークで貴方の仇を探してみるつもりです。父と一緒に。

 

鬼若さんが、貴方が許してくれれば、ですが。

 

ーあの…本当に、今朝はついカッとなって『可哀想』だなんて言ってしまってごめんなさい。

生きている身内を許せなかった私の方が余程、

 

『可哀想』

 

な奴でした。

 

それを早く伝えたかった。」

 

「ありがとう。鬼若さん。」

 

身体を震わせながらオニワカは赤い眼でマエダを見つめ、声を振り絞った。

 

(鬼若)「ジャッジ(判定員)ー!!決闘終了ー!」

 

近付く判定員。

 

(鬼若)「…私が負けました。」

 

 

(送信終了まで3分)




[sideB]**

(鬼若)「…蝦夷…逃亡生活を送るきっかけになったその場所は函館なのでは?」

(喜屋武)「ああ。…確かにそうだった。なぜ…。」

オニワカの身体に電流が走り全身の毛が逆立った。

しかし自分の感情のすべてを押し殺して話し始めた。

(鬼若)「…ロシア帰りの外交官でしたよね?亡くなったのは。たしか彼は泥酔者の一撃で心臓発作を起こして亡くなったという話は新聞で読みましたが、本当にそうでしょうか?
彼は実は外交官という名目でロシアに配属されていた陸軍省のスパイだったんですよ。
という事はひと通りの武芸はマスターしていたんです。
彼を倒すには並の腕前では不可能なはず、

例えば軍隊に教育できるほどの、

戦闘インストラクターとか・・・

ところで彼の名前は覚えていますか?

ー顔は覚えていませんか…」

喜屋武は一瞬目を見開いた。その顔にかつての上司の面影を見たのだった。

(喜屋武)「…!お前は…真田のガキか!」


”真田”はオニワカの父の苗字だった。”鬼若”は父が死亡したあと母親に半ば強制的に改姓させられた母方の苗字だった。父を尊敬していた鬼若は拒否したが、母は強引に手続きをした。
当時鬼若は不思議だった。なぜなら母は父を愛していたからだ。

(鬼若)「…そう…らしいですね、やっと見つけました。」

今その理由がわかった。

(鬼若)「…察するに、当時諜報員仲間だったあなたに陸軍司令部から隠密に父を消す司令が出た。父の権力は地方で拡大していましたし、ロシアの2重スパイという噂もあった。そしてそのデマを信じた陸軍省からの司令…といったところでしょうか?北海道ををロシア化から守るためという口実が大きいようですが、本当なんでしょうか?まぁそれはどうでもいいんです。今となっては。本当かも知れませんしね。ただ彼は私の前では、

やさしい”普通の父親”でした。

そうか…なるほど、どうりで情報が出ないわけだ。

母が強引に私を改姓させたのも
その後失踪したのも

すべて私を守るため…

だったんですね。」

オニワカは練兵場や戦場での喜屋武の行動も思い出していた。
それは戦場では優秀だとしても、実社会では決して許されることの無い無情な行いの数々であった。

(鬼若)「ーさっき火消しで何年も無駄にしたと言われましたが、本当ですか?

 暗殺後はいったいどんなポジションが用意されていたんでしょう? 

 また、

父の命の値段はいくらだったんですか?

そして、

…母は無事ですか?」

それを黙った聞いていた喜屋武は、これまでの人生で感じたことのない物凄い殺気を
オニワカに感じとり、はじめて「恐怖」というものを感じた。

その「恐怖」はすぐに嬉しさに変わり、それは喜屋武の心をくすぐった。


(喜屋武)「わっはっは!なるほどなあ!鬼若、いやぁ!それでこそ真田の息子だ!!
 
よし貴様、相手になってやるぞ。部隊のいない丁度いい場所まで案内してやる。わっはっは!」

喜屋武はオニワカを村の外れの少し開けた場所に案内した。

(喜屋武)「ここでいいだろう。さあ、続きを…いや決闘をはじめよう!!」

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(送信終了)


シルバニア王国東京都ちよだ区王宮

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